🗨️「うちは川から離れているのに、どうして道路が水びたしになったのですか?」
川の水があふれたのではなく、下水道や排水路が雨をさばききれずにあふれる「内水氾濫」が起きたためです。8月13日の千葉は1時間に115.0mm、下水道が流せる目安のおよそ2倍以上の雨が降りました。
[災害] この記事の要点
2026年8月13日、千葉県で記録的な大雨となり、千葉市などで大規模な道路冠水・浸水が発生した。気象庁の千葉観測所では日降水量351.0mm・最大1時間降水量115.0mmを観測し、どちらも1966年4月の観測開始以来1位を更新した。気象庁は同日19時30分、千葉県北西部に大雨特別警報を発表。ウェザーニューズが約2万件のデータを分析したところ、浸水・冠水の被害報告のうち55.7%が、低位地帯または浸水想定区域の「外」から寄せられていた。
2026年8月19日 発表
- 川から離れた市街地や駅の周辺に住んでいる人
- これから家を買う・借りる予定で、水害リスクを調べている人
- アンダーパスや地下駐車場を毎日のように使っている人
- 洪水ハザードマップだけを見て「うちは色がついていないから大丈夫」と考えていた人
この記事でわかること
- 洪水(外水氾濫)と内水氾濫は何が違い、内水氾濫はどこで起きるのか
- 1時間115.0mmの雨が、下水道の処理能力の何倍だったのか
- 「被害報告の55.7%が想定区域外」という数字の正しい読み方
- 家を買う・借りるとき、内水の地図が説明されないことがあるのはなぜか
先に結論
- 川があふれなくても街は冠水します。下水道や排水路が雨をさばききれずにあふれるのが「内水氾濫」です
- 一般的な下水道が流せるのは1時間に50mm程度。8月13日の千葉は1時間115.0mmで、2倍以上の雨が来ました
- 浸水・冠水の被害報告のうち55.7%は、低位地帯や浸水想定区域の「外」から届いています
- これは「ハザードマップが当てにならない」という話ではありません。色のない場所でも浸水することは、千葉市が地図の注意書きに自分で書いています
- 家を買う・借りるときの説明には、内水の地図が出てこないことがあります。洪水の1枚だけで判断しないでください
「まさか、すぐ隣でこんなことに」8月13日の千葉で起きたこと
市川市鬼高、京葉道路の原木インターチェンジに近い場所に事務所を構える40代の男性は、8月13日の様子をこう話しています。「道路が水であふれて、車が通るたびに波が起きていました」(AERA DIGITAL)。同じ記事によれば、翌14日、鬼高3丁目付近の産業道路沿いには、水没して動けなくなり、そのまま乗り捨てられたとみられる車が10台ほど並んでいました。
気象庁の千葉の観測所では、8月13日の降水量が351.0mm、最大1時間降水量が115.0mmでした。この地点は1966年4月から観測を続けていますが、日降水量も1時間降水量も、この日が60年で最も多い記録です。10分間降水量の1位だけは2009年8月9日の28.0mmのままで、すべての記録が塗り替えられたわけではありません。
雨は夕方から夜にかけて集中しました。気象庁は13日19時30分、千葉県北西部に大雨特別警報を発表しています。
1時間ごとに区切って見ると、いちばん多かったのは19時台の107.5mmです。区切りを取り払って最も多い連続1時間で数えたのが、記録に残る115.0mmにあたります。
川があふれていないのに、なぜ道路に水がたまるのか 洪水と内水氾濫の違い
「うちは川から遠いから大丈夫」ではありません。今回、千葉の市街地で広く起きたのは、川の水が堤防を越えてくる洪水とは別の水害でした。
川の水位が上がって堤防を越えたり決壊したりし、街へ水が流れ込むのが洪水です。外から水が来るので「外水氾濫」とも呼ばれます。これに対して、降った雨が下水道や排水路の処理能力を超え、行き場を失って地表にあふれるのが内水氾濫です。水の出どころが、川ではなく空になります。
順番にすると、こうなります。
雨が降る → 道路や住宅地に落ちる → 側溝・下水道・排水路へ集まる → 流せる量を超える → 行き場を失った水が道路にあふれる
水がたまりやすいのは、周囲より低い道路、アンダーパス、地下街や地下駐車場、駅の周辺、建物が密集した市街地、アスファルトやコンクリートに覆われた地域、そして水が集まってくるくぼ地です。舗装された土地は雨を地面へしみ込ませられないので、降った分がほとんどそのまま排水設備へ向かいます。目に見える川が近くになくても、内水氾濫は起こります。
下水道が流せるのは1時間50mm、千葉に降ったのは115mmでした
なぜ排水が追いつかなかったのかは、数字を並べると分かりやすくなります。
| 1時間あたりの雨量 | 値 | 処理能力との比 |
|---|---|---|
| 一般的な下水道が処理できる雨量 | 50mm程度 | 1.0倍(これが上限の目安) |
| 今回、複数の地域で降った雨 | 100mm超 | 約2倍 |
| 気象庁 千葉(8月13日の最大1時間) | 115.0mm | 約2.3倍 |
下水道や排水路は、どんな雨でも流せるように作られているわけではありません。想定した量までは流せる、という設備です。その上限を2倍以上超える雨が短時間に集中すれば、設備が壊れていなくても水はあふれます。今回の冠水は、めずらしい壊れ方をしたのではなく、設計の前提を雨が上回った結果として説明できます。
大雨と満潮が重なると、水は海へ出にくくなります
もう一つ、専門家が可能性を指摘している要素があります。雨のピークと満潮が重なったのではないか、という見方です。
下流側の水位が高くなると、上流から来た水が流れにくくなります。これを「バックウォーター」と呼びます。海の潮位が高い時間帯は、川や排水路の水が海へ出ていきにくくなり、街から水が引くのが遅れます。
ただし、これが今回の冠水の原因だったと確かめられているわけではありません。排水しにくい条件の一つが重なった可能性がある、というところまでです。断定されていない話を、断定して覚えないでください。
そのうえで、この見方は自分の生活にそのまま使えます。気象庁の潮位表では、地点ごとの満潮の時刻を先に見ておけます。大雨の予報が出ている日に満潮の時刻が重なっていれば、水の引きが遅くなる時間帯が事前に分かるので、車を高い場所へ移す判断も、外出をやめる判断も早くできます。
被害報告の55.7%は「浸水想定区域の外」から届いていました
ウェザーニューズは、8月13日の千葉県内について、ウェザーリポート9,938件と緊急アンケート10,009件、あわせて約2万件を分析しました。その結果、浸水・冠水の被害を示す報告のうち55.7%が、低位地帯または浸水想定区域の「外」から寄せられていたとしています。区域の中からの報告は44.3%でした。外のほうが多かったことになります。
報告が多かった地域として挙がっているのは、千葉市中央区、千葉市緑区、柏市、八千代市、市川市、千葉市美浜区、市原市、松戸市です。千葉市中央区は、千葉駅や京成千葉駅のある、県内でもっとも市街化が進んだ区のひとつです。
ここで大事なのは、この55.7%が「ハザードマップは当てにならない」という意味ではないことです。分析で使われた浸水想定区域は、主に川があふれることを想定した区域です。内水氾濫は別の地図で示されます。洪水の地図の外で内水氾濫が起きても、それは地図が外れたのではなく、見ていた地図の種類が違った、ということが起こります。
ハザードマップは「色がない=安全」ではありません
千葉市の「地震・風水害ハザードマップ(WEB版)」は、地震・津波・洪水・内水・高潮・土砂災害を切り替えて見られるようになっています。1枚の地図に全部が載っているのではなく、災害の種類ごとに別の地図です。だから洪水で色がついていない場所に、内水では色がついていることがあります。逆もあります。
そして千葉市自身が、地図にこう注意書きを添えています。
雨の降り方や土地の状態によっては、着色されていない場所で浸水する場合や、実際の浸水深が地図に表示した深さと異なる場合があります。
風水害の地図には「想定を超える降雨による氾濫は示していません」とも書かれています。「色がついていないから安全」は、地図を作った側が最初から否定している読み方です。ハザードマップは、その想定の範囲で浸水しうる場所を示したものであって、それ以外は浸水しないと保証した地図ではありません。
家を買う・借りるときの説明に、内水の地図は出てこないことがあります
ここからが、住まいを探している人にいちばん関係する話です。
2020年8月28日に宅地建物取引業法施行規則が改正され、不動産の取引では、水防法にもとづく水害ハザードマップにおける物件の位置を、契約の前に説明することが義務になりました。国土交通省のQ&Aによれば、この「水防法にもとづく水害ハザードマップ」とは、洪水・雨水出水(内水)・高潮の3種類を指します。内水もちゃんと入っています。
ところが同じQ&Aには、こうも書かれています。市町村で水害ハザードマップが作成されていない場合は、「当該宅地又は建物が所在する市町村においては、水防法に基づく水害ハザードマップは作成されておりません。」と説明する必要がある、と。さらに、浸水実績図のように水防法以外の規定にもとづく地図までは、説明義務の対象ではないとされています。
つまり、その市町村が内水(雨水出水)の浸水想定区域を指定していなければ、内水の話は「作成されていません」の一言で終わることがあります。市が独自に作った内水の地図や、過去の浸水実績図がホームページにあっても、そこまでは説明されません。自分で見に行かないと出てこない情報だということです。
なお同じQ&Aは、区域の外にある物件でも地図上の位置は示さなければならないとしたうえで、「浸水想定区域の外であるからといって、水害のリスクがないと取引の相手方が誤認することがないよう配慮してください」とも書いています。制度の側は、外=安全ではないと最初から言っています。
私はここを、買う側が自分で埋めるしかない差だと考えています。説明義務が確実に届くのは「その自治体が水防法にもとづいて作った地図」までで、内水まで届くかどうかは自治体が何を作っているかで変わるからです。営業担当者が隠しているのではなく、制度の作りがそうなっています。だから、聞かれなくても自分から聞く価値があります。
住む場所を決める前に見ておきたいのは、次の7つです。
- 洪水ハザードマップ(川があふれたときの想定)
- 内水ハザードマップ(雨水が排水しきれないときの想定。無ければ市の道路冠水箇所マップ)
- 高潮ハザードマップ(海の近くなら必ず)
- 地形と標高(重ねるハザードマップの色別標高図。周りより低い土地かどうか)
- 過去の浸水履歴・浸水実績図(実際に水が出た場所の記録)
- 周辺のアンダーパス・地下道・地下駐車場(通勤経路と駐車場所の確認)
- その自治体の下水道が、何ミリの雨を前提に作られているか
1つ目だけを見て終わりにしないことが、今回の千葉の教訓です。
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まとめ
- 千葉では8月13日に記録的な豪雨となり、千葉の観測所で日降水量351.0mm・最大1時間降水量115.0mmを観測しました
- 川の氾濫だけでなく、排水が追いつかずに水があふれる内水氾濫が広い範囲で起きました
- 都市部でも、短時間の猛烈な雨なら冠水します。舗装が多い場所ほど雨は排水設備へ集中します
- ハザードマップは洪水・内水・高潮など災害の種類ごとに分かれています。1枚だけでは足りません
- 色がついていない場所でも浸水することがあると、地図を作った自治体自身が注記しています
生活・仕事にどう効くか
- 住まい選び:洪水ハザードマップで色がついていない土地でも、内水のハザードマップでは浸水が想定されていることがある。物件を比べるときは、洪水・内水・高潮を別々に開いて3枚並べて見る必要がある。
- 契約の場面:重要事項説明で示されるのは水防法に基づく地図。市町村が内水(雨水出水)の浸水想定区域を指定していなければ、内水については「水防法に基づく水害ハザードマップは作成されておりません」と説明されて終わることがある。
- 車と移動:アンダーパス・地下駐車場・線路の下をくぐる道は、周囲の水が集まってくる場所。市川市鬼高では産業道路沿いに、水没して乗り捨てられたとみられる車が10台ほど並んだと報じられている。動かす判断は雨が強まる前に必要になる。
結局どうすればよいか
- 自宅と検討中の物件の住所で、洪水・内水・高潮の3種類のハザードマップを別々に開いて見る
- 内水の地図が無い自治体では、下水道部局の道路冠水箇所マップや、過去の浸水実績図を探す
- 大雨の予報が出たら気象庁の潮位表で満潮の時刻を確かめ、その時間帯はアンダーパスと地下駐車場を避ける
- 不動産の重要事項説明では「内水(雨水出水)のハザードマップはありますか」と自分から聞く
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公式出典
- 気象庁「過去の気象データ検索 千葉 2026年8月の日ごとの値」(8月13日 降水量351.0mm・最大1時間降水量115.0mm)
- 気象庁「観測史上1〜10位の値(千葉)」(統計期間1966年4月〜。日降水量・1時間降水量とも1位を2026年8月13日に更新)
- ウェザーニューズ「【令和8年8月千葉豪雨】2人に1人が浸水想定区域“外”で被災か」(ウェザーリポート9,938件・緊急アンケート10,009件の分析)
- 千葉市「千葉市地震・風水害ハザードマップ(WEB版)」(地震・津波・洪水・内水・高潮・土砂災害を切り替えて表示)
- 国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の一部改正(水害リスク情報の重要事項説明への追加)に関するQ&A」(2020年7月17日発表)
- 国土交通省「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化」
- 気象庁「潮位表(千葉)」
- AERA DIGITAL「千葉県豪雨『まさか、こんな場所で…』都市型水害の恐ろしさ」(現地の証言)
更新履歴
- 2026年8月19日 初版を公開
※本記事は2026年8月19日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。


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