川のそばではないから、水害は自分には関係ない。今回の千葉豪雨で、その思い込みが通用しないことがあらためて示されました。
水が集まったのは、河川沿いだけではありません。住宅街のくぼ地、坂の下、アンダーパス。普段は何気なく通る場所が、短時間の豪雨で危険な場所に変わりました。
この記事で分かること
千葉豪雨の被害状況、川から離れた住宅街で起きる内水氾濫、アンダーパスの危険、ハザードマップの限界、そして自宅周辺で今日確認したい3項目です。

図は千葉県が2026年8月20日午後4時に公表した第15報の数値です。消防庁の第15報(8月21日午前10時)でも、千葉県分の死者13人、重傷2人、軽傷44人、住宅被害3,690棟は同じでした。消防庁資料では、このほか行方不明者1人も報告されています。数値は今後変わる可能性があります。
千葉豪雨、死者13人のうち少なくとも9人が浸水想定区域内
読売新聞が亡くなった場所を自治体、警察、消防に取材し、自治体のハザードマップと照合したところ、13日夜の千葉豪雨による死者13人のうち、少なくとも9人が浸水想定区域内で水に巻き込まれたとみられます。
ここで注意したいのは、「9人」は公的な被害統計の分類ではなく、読売新聞が取材とハザードマップの照合で確認した人数だという点です。一方、死者13人や住宅被害3,690棟は、自治体からの報告を集計した公表値です。事実の出どころを分けて読む必要があります。
住宅被害3,690棟の内訳は、全壊3棟、半壊135棟、一部破損51棟、床上浸水1,871棟、床下浸水1,630棟です。床上・床下浸水だけで3,501棟に達し、暮らしへの影響が広範囲に及んだことが分かります。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
川から離れた住宅街でも起きる「内水氾濫」
内水氾濫とは、短時間に大量の雨が降り、下水道や排水設備で処理しきれなくなった雨水が道路や住宅地にあふれる現象です。川の堤防が決壊する「外水氾濫」とは仕組みが異なります。
舗装された道路や屋根から雨水が集まります。
側溝や下水管の処理能力を雨量が上回ります。
坂の下、道路のくぼ地、地下道へ水が集中します。
つまり、近くに大きな川が見えなくても安心とは限りません。周辺より数十センチ低い道路でも、水の逃げ場がなければ水位は急に上がります。住宅購入時も、河川の洪水マップだけでなく、自治体の内水ハザードマップを別に確認することが大切です。
柏市では住宅街のくぼ地に水が集中
柏市八幡町では、70歳代の女性が夫と軽乗用車に乗っていた際、住宅街にある道路のくぼ地で水没被害に遭い、亡くなりました。現場は河川沿いではありません。
県の雨量データから、現場では1時間に100ミリ前後の雨が降ったとみられます。坂の傾斜に沿って雨水が低い場所へ流れ、道路のくぼ地に集中しました。
柏市八幡町のポイント
- 現場は川沿いではなく、坂の下にある住宅街のくぼ地
- 柏市の想定最大降雨153ミリ/時による内水ハザードマップでは、最大浸水深3メートル以上5メートル未満
- 住宅街の中でも、周囲より低い一点に水が集まることがある
地図の色だけでなく、現地の高低差を見ることが重要です。物件を見に行くときは建物だけを見ず、駅や幹線道路から敷地まで歩き、坂の向き、側溝、道路のくぼみ、周辺住宅の基礎の高さも確認してください。
アンダーパスは大雨時に特に危険
千葉市中央区では、2か所のアンダーパスでそれぞれ死亡事故が起きました。読売新聞の照合では、どちらもハザードマップ上の浸水想定が5メートル以上10メートル未満でした。
アンダーパスは、鉄道や道路の下を通すため周囲より低く掘り下げられています。短時間の豪雨で排水ポンプの能力を超えると、両側の坂から雨水が集まり、見た目より深く冠水することがあります。
冠水した道路には入らない
国土交通省は、水深や道路の端が分からない場所、特にアンダーパスには進入しないよう注意を呼びかけています。「前の車が通れた」「少しくらいなら行ける」と判断せず、引き返してください。
車は水深が床面を超えると、エンジンやモーターが止まって移動できなくなるおそれがあります。大雨の最中に初めて迂回路を探すのではなく、普段から「このアンダーパスは通らない」という代替ルートを決めておく方が安全です。
ハザードマップ区域外でも被害は起こる
佐倉市上志津では、内水ハザードマップ上で浸水想定区域外だった場所でも、80歳代の男性が路上で亡くなりました。
読売新聞によると、佐倉市は2021年度にマップを作成した際、過去の台風や大雨で被害があった場所を主な対象としていました。上志津では過去に被害がなかったため、浸水想定区域外とされていました。佐倉市長は8月20日の記者会見で、被害状況を精査し、ハザードマップの見直しを検討する考えを示しています。
ハザードマップは重要ですが、絶対の安全証明ではありません。地図は一定の雨量、地形、排水施設などを前提にしたシミュレーションです。想定を超える雨、局地的なくぼ地、工事後の地形変化など、地図に表れない条件もあります。
色がない=安全、ではない
「色が付いていれば避ける」だけでなく、「色がなくても周囲より低くないか」「過去に道路冠水がなかったか」「排水先はどこか」まで確認しましょう。
自宅周辺で今すぐ確認したい3つのこと
1.自宅・職場・検討中の物件を複数のマップで見る
国のハザードマップポータルサイトで住所を検索し、洪水、内水、土砂災害、高潮などを重ねて確認します。そのうえで、自治体が作成した最新のハザードマップも開いてください。国の「重ねるハザードマップ」と、市町村の水害ハザードマップは役割が異なります。
2.普段使う道路の低地・坂の下・アンダーパスを洗い出す
自宅に色が付いていなくても、通勤・通学・送迎ルートに危険箇所があれば移動中に被災する可能性があります。交差点名や地下道名を家族で共有し、夜間や豪雨時には近づかない場所を決めます。
3.大雨時に車で通らないルートを先に決める
冠水してからのUターンは、後続車や狭い道路のため難しいことがあります。大雨警報や記録的短時間大雨情報が出たら使う「高い場所を通る迂回路」を、平常時に一度走って確認しておきましょう。避難が必要な場合は、自治体の避難情報と道路状況を確認し、危険な屋外移動を無理に始めないことも重要です。
住宅を買う前なら、ここまで見る
- 洪水・内水・高潮を別レイヤーで確認する
- 敷地だけでなく、駅・学校・職場までの経路を見る
- 現地で道路の高低差、擁壁、側溝、建物の基礎高を見る
- 自治体に過去の道路冠水や浸水履歴を問い合わせる
まとめ ハザードマップを見たあと、地形と移動ルートまで確認する
今回の千葉豪雨では、ハザードマップ上で危険が示されていた場所で多くの死亡事故が起きたとみられる一方、浸水想定区域外でも被害がありました。
大切なのは、ハザードマップを一度見るだけで終わらせないことです。自宅周辺の高低差、坂の下、くぼ地、アンダーパス、大雨時の避難・移動ルートまで、暮らしの動線に置き換えて確認してください。
「川の近くではない」ではなく、「水はどこへ集まるか」。その視点を持つことが、住まい選びと日々の移動の安全につながります。
参考情報
- 読売新聞オンライン「千葉豪雨、浸水想定区域内での死者9人…」(2026年8月21日配信)
- 総務省消防庁「令和8年8月千葉豪雨による被害及び消防機関等の対応状況(第15報)」(2026年8月21日10時)
- 千葉県「令和8年8月千葉豪雨に伴う対応」
- 柏市「柏市内水ハザードマップ」
- 千葉市「地下道の安全対策」
- 千葉市「千葉市地震・風水害ハザードマップ」
- 佐倉市「内水浸水想定区域について」
- 国土交通省「水深が床面を超えたら、もう危険!」
- 国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」
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※本記事は2026年8月21日午後1時時点で確認できた公的情報と報道に基づきます。被害状況や自治体の対応は更新される場合があります。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
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