🗨️「職場が地震で休業したままです。解雇されたわけではないのに、給料はもう出ないのでしょうか。」
職場の建物が地震で直接壊れたかどうかで変わります。建物が無事なまま、取引先や鉄道・道路の被害で休んでいるなら、平均賃金の60%以上の休業手当が出るのが原則です。
[災害] この記事の要点
2026年7月28日の熊本地震から約3週間が経った八代市・宇城市で、商業施設や飲食店が営業を再開できず、そこで働いていた人の休職・退職が広がっている。ハローワーク八代は7月30日に被災者向けの特別労働相談窓口を開設し、当初1日10〜20件だった相談が8月に入り30〜40件に増えた。ハローワーク宇城も8月3日に窓口を設け、2週間余りで約180件を受けた。熊本労働局が県内22カ所に設けた特別労働相談窓口には、8月20日までに延べ約1,800人から約2,000件が寄せられている。8月17日時点では約1,700件のうち雇用保険が約500件、雇用調整助成金が約300件だった。
2026年8月22日 発表
- 八代市・宇城市で職場が休業したまま、休職している人
- 地震のあとに退職・雇止めになった人
- 自宅が被災し、避難所や仮住まいから仕事を探している人
- 従業員を休ませて雇用を維持したい事業主
この記事でわかること
- 休業手当が出る休業と出ない休業の分かれ目(厚労省が8月4日に示した基準)
- 「災害だから解雇はやむを得ない」が通らない理由と、整理解雇で見られる4つの事項
- 雇用保険の特別措置3つと、使ったときに加入期間がどうなるか
- 雇用調整助成金の特例の対象期間(2026年7月28日〜2027年1月27日に開始した休業等)
- 八代・宇城で相談できる窓口と、失業した人以外でも相談できる内容
先に結論
- 職場の建物が壊れていない休業なら、休業手当(平均賃金の60%以上)が出るのが原則です。
- 建物が地震で直接壊れた休業だと、原則として支払義務はありません。分かれ目は建物の被害です。
- 「地震だから解雇は仕方ない」と考えている人がいますが、そうではありません。厚生労働省が明確に否定しています。
- 離職した人向けの雇用保険の特別措置には、それまでの加入期間が通算されなくなるという副作用があります。
- 八代・宇城の相談窓口は、辞めた人だけの窓口ではありません。休業中でも、給料の未払いでも相談できます。
八代・宇城では、店の休業がそのまま収入の途切れになっています
2026年7月28日の地震から3週間が過ぎた八代市と宇城市で、ハローワークに来る人が増え続けています。ハローワーク八代が被災者向けの特別労働相談窓口を開いたのは7月30日。開設直後は1日10〜20件だった相談が、8月に入って30〜40件に増えました。8月3日に窓口を設けたハローワーク宇城には、2週間余りで約180件。熊本労働局が県内22カ所に置いた窓口には、8月20日までに延べ約1,800人から約2,000件が寄せられています。
中身は8月17日時点の集計が出ています。当時の約1,700件のうち、雇用保険が約500件、雇用調整助成金が約300件。この2つだけで相談のおよそ半分を占めます。
八代市では、大型商業施設のゆめタウン八代が地震直後から休業したまま、再開のめどが立っていません。飲食店に勤めていた45歳の男性は、自宅も被災して避難所で暮らしながら、勤務先から営業再開は不可能だと説明されて退職しました。清掃会社で市内のスーパーを担当していた77歳の女性は、その店の再開が半年から1年後になると告げられ、やはり退職しています。
職場が休業したとき、給料は出るのでしょうか
「解雇されたわけではないのだから、給料が止まっても仕方がない」——そうとは限りません。厚生労働省は8月4日、今回の地震に合わせて休業・解雇に関するQ&Aを公表しています。分かれ目は、職場の建物や設備が地震で直接壊れたかどうかです。
| 休業の理由 | 労働基準法26条の休業手当 |
|---|---|
| 職場の建物・設備が地震で直接被害を受けて休業した | 原則として「使用者の責に帰すべき事由」に当たらず、支払義務はない |
| 建物・設備は無事だが、取引先や鉄道・道路の被害で仕事にならず休業した | 原則として「使用者の責に帰すべき事由」に当たる(平均賃金の60%以上) |
八代市と宇城市では、鹿児島本線の宇土〜八代が不通のままで、国道3号の渋滞も地震前の水準に戻っていません。建物は無事なのに、人も物も動かないから休んでいる職場は、表の下の行に当たります。
ただし下の行にも例外があります。①原因が事業の外部で起きた事故で、②通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けられない事故、の2つを満たすときです。取引先への依存の程度、輸送経路、ほかに手段があったか、災害からの期間、休業を避ける努力をしたかを総合して判断されます。迷ったら労働基準監督署かハローワークで聞くのが早いです。
もうひとつ。不可抗力の休業でも従来は手当を払ってきた会社が今回だけ払わないとすることは、労働条件の不利益変更にあたります。就業規則や労働協約の適法な変更手続きを踏まずには変えられません。
「地震だから解雇は仕方ない」は本当でしょうか
同じQ&Aは、この点をはっきり否定しています。災害を理由とすれば無条件に解雇や雇止めが認められるものではない、という一文です。
期間の定めのない契約なら、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない解雇は無効、と労働契約法16条が定めています。地震で事業が続けられなくなったことを理由とする解雇はいわゆる整理解雇にあたり、裁判では次の4つが見られると厚労省は説明しています。
- 人員整理の必要性があったか
- 解雇を避けるための努力をしたか
- 解雇する人の選び方に合理性があるか
- 解雇の手続きは妥当だったか
パートや契約社員のような有期契約は、期間の途中の解雇について労働契約法17条1項が「やむを得ない事由がある場合でなければ」できないと定めており、期間の定めのない契約より無効と判断される可能性が高いとされます。非正規雇用であることだけを理由に一律で解雇の対象に選ぶことも、パート・有期雇用労働法に違反する可能性があります。
私は、いまの八代・宇城でいちばん損が大きいのは、話し合いのないまま書類だけが進むことだと考えています。厚労省が発災の1週間後に出したQ&Aで整理解雇の4要素と雇止めのルールをわざわざ書いているのは、地震のあとでもそのルールが生きているという意味です。個別の相談は、各労働局と労働基準監督署の総合労働相談コーナーが受けています。
求人はあるのに通えない――宇土〜八代の不通が就職を止めています
「求人さえ出ていれば再就職できる」と考えている人がいますが、そうではありません。熊本日日新聞の取材では、JRが不通になったために熊本市の企業への就職を断念した女性がいました。
鹿児島本線は熊本〜宇土が8月2日に本数を減らして再開しましたが、宇土〜八代は不通のままで、JR九州は8月中の再開は困難としています。九州新幹線の熊本〜新水俣も同じです。さらに、自宅が壊れて避難所や仮住まいにいる人は、そこから通える範囲でしか探せません。車を失った人はもっと狭くなります。求人があるかどうかではなく、通えるかどうかで選択肢が決まるのが、いまの八代・宇城です(代替の足は宇土〜小川の代行バスもあわせて確認してください)。
子どもがいる人と、年齢の高い人ほど選べる仕事が減ります
ゆめタウン八代のテナントで働いていた30代の女性は、保育園に通う子どもを抱えたまま休職しています。子育て中の人は、保育園までの距離、送り迎えができる勤務時間、通勤時間の3つが同時に条件になり、1つでも合わなければ応募できません。一方、77歳で退職した女性のように、年齢が上がるほど職種と勤務条件の幅は狭くなります。八代・宇城では事業者が求人を取り下げる動きも出ていて、条件の制約が強い人から順に行き先がなくなります。ここが、地震の被害としてはいちばん見えにくいところです。
使える制度は3つ。休業中でも相談できます
1. 雇用保険の特別措置(働いていた人向け)
熊本労働局が案内している中身は3つです。
- 失業の認定日に行けなかったときは、行ける日に変更できます。事前の申し出も、理由を証明する書類もいりません。やむを得ない場合は求職活動の実績がなくても支給されます
- 交通の途絶や遠方への避難で管轄のハローワークに行けないときは、ほかのハローワークで手続きできます。必要な確認書類がなくても受け付けます
- 事業所が地震で直接被害を受けて一時的に離職した場合に、基本手当を受給できる特別措置があります。災害救助法の適用地域にある事業所が事業を休止・廃止した場合が対象で、再開後の再雇用が予定されていても受け取れます。被保険者期間が6か月以上あることなどの要件があります
3つ目には副作用があります。熊本労働局の資料には、この特別措置で失業給付を受けた人は、あとで被保険者資格を取り直しても、離職する前に被保険者だった期間は通算されないと書かれています。厚労省も、再び離職したときの給付日数などに影響する場合があるとしています。同じ職場に長く勤めてきた人ほど、この効き方は大きくなります。使う前に、自分の場合どうなるかをハローワークで聞いてください。
なお、離職せず休業したままの人が基本手当を受け取れる特例について、厚労省は「激甚災害法に基づく政令が制定された場合」に適用されると説明しています。今回の地震にこれが適用されるかは公表資料からは読み取れませんでした。該当しそうな人は窓口で直接確認してください。
2. 雇用調整助成金の特例(会社向け。休業手当の原資になります)
雇用調整助成金は、会社が従業員を解雇せずに一時的に休ませて雇用を守るときに、国が会社へ休業手当の一部を助成する制度です。お金が入るのは会社ですが、それで払われるのは従業員の休業手当なので、働く側にも関係します。
厚労省は8月20日、今回の地震に伴う特例を発表しました。対象は、地震に伴う経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主で、休業などの初日が2026年7月28日から2027年1月27日までのものが対象です。
- 【全国】生産指標を確認する期間を3か月から1か月に短縮する
- 【全国】直近3か月の雇用量が前年より増えていても対象にする
- 【全国】地震のときに事業所を設けてから1年たっていなくても対象にする
- 【全国】計画届をあとから提出できる
- 【熊本県内】残業した時間を休業の日数から差し引くルールをなくす
- 【熊本県内】教育訓練の実施状況に応じて助成率を下げるルールをなくす
間違えやすい点があります。施設や設備が壊れたこと自体は「経済上の理由」に当たらず、それだけでは対象になりません。一方、交通が途絶えて原材料が入らない、製品を出せない、修理業者や部品を手配できないといった事情で事業活動を縮めた場合は該当する可能性があるとされています。判断は会社ごとに分かれるので、ハローワークか労働局に確かめてください。
3. 特別労働相談窓口(辞めた人だけの窓口ではありません)
熊本労働局は県内22カ所に特別労働相談窓口を置いています。相談できるのは失業したあとのことだけではありません。休業中の給料、給料の未払い、雇用保険の手続き、再就職、労働条件、会社側からの雇用調整助成金の相談まで受けています。会社が倒産して給料が払われないまま辞めた場合には未払賃金の立替払制度があり、今回は申請の手続きが簡略化されています。
制度の対象になるかどうかは、契約の形、勤続期間、会社の状況で一人ずつ変わります。ここに書いた条件はどれも一般的な整理なので、自分が当てはまるかはハローワークか労働基準監督署で確かめてください。
生活の再建は、家を直したところでは終わりません
地震の被害は、家が壊れて終わりではありません。八代・宇城で起きているのは、次の連鎖です。
住宅が被害を受ける
↓
店舗・商業施設・事業所も被害を受ける
↓
営業できず休業・営業停止になる
↓
そこで働いていた人が休職・退職・失業する
↓
収入が減る、または止まる
↓
住まいと生活の再建がさらに遠のく
住まいの復旧、交通の復旧、地域の店や会社の復旧、雇用の維持は、別々の問題に見えて同じ生活再建の一部です。家を直す費用は、支援金や保険で足りない分を働いて埋めることになります。だから収入が止まると、住宅の再建そのものが止まります。会社側にも同じ連鎖が届いていて、八代市・宇土市・宇城市・氷川町の事業場には労働保険料の申告・納付の期限を延ばす措置が取られています。
地価や人口がこのあとどう動くかは、いまの公表資料からは読み取れないので、ここでは触れません。当面の住まいの費用は、みなし仮設の家賃上限と被害区分ごとの支援金にまとめています。
まとめ
地震の被害は、揺れが収まった時点では確定しません。建物、交通、店、仕事、収入の順に、時間差で広がっていきます。八代・宇城でいま表に出てきているのは、その4番目と5番目です。
休業中の人は休業手当が出る形の休業かどうかを、辞めた人は雇用保険の特別措置と加入期間の扱いを、会社は雇用調整助成金の特例の期限を、それぞれ窓口で確かめてください。相談は無料で、辞めた人でなくても受け付けています。
生活・仕事にどう効くか
- 働いている人:職場の建物・設備が直接被害を受けての休業は、原則として労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」に当たらず、休業手当の支払義務はない。一方、建物は無事で取引先や鉄道・道路の被害により休業した場合は、原則として「使用者の責に帰すべき事由」に当たる
- 仕事探し:鹿児島本線の宇土〜八代は不通が続き、JR九州は8月中の再開は困難としている。熊本市の企業への就職を断念したケースが報じられており、求人の有無ではなく通えるかどうかで選択肢が決まっている
- 事業主:雇用調整助成金は、休業等の初日が2026年7月28日から2027年1月27日までのものが特例の対象。全国共通の緩和4項目に加え、熊本県内の事業所には残業相殺の撤廃など2項目が上乗せされる。八代市・宇土市・宇城市・氷川町の事業場は、労働保険料の申告・納付期限も延長されている
結局どうすればよいか
- 休業中の人は、職場の建物・設備が直接被害を受けたのか、それとも建物は無事で取引先や交通の被害で休んでいるのかを確認する。後者なら休業手当を求められるのが原則
- 退職・雇止めになった人は、ハローワークで雇用保険の特別措置の対象になるかを確認する。特別措置で失業給付を受けると離職前の被保険者期間が通算されないため、使う前に自分の場合を聞く
- 失業の認定日に行けなかった場合は、行ける日に認定日を変更できる。事前の申し出も理由の証明書類も不要。避難先の別のハローワークでも手続きできる
- 事業主は、休業等の初日が2027年1月27日までに収まるうちに、雇用調整助成金の特例をハローワークへ相談する
- 解雇・雇止め・給料の未払いに納得できないときは、労働局と労働基準監督署の総合労働相談コーナーへ相談する
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公式出典
- 熊本日日新聞「<2026年熊本地震>「一日も早く仕事を」…突然の失業、職探しの日々 飲食店、テナント再開のめどなく 八代・宇城市」(2026年8月21日発表)
- Yahoo!ニュース ピックアップ「地震で突然失業 肩落とす被災者」(2026年8月22日発表)
- 熊本労働局「令和8年熊本地震で被災された方へ(労働行政関係)」(2026年8月22日発表)
- 熊本労働局「令和8年熊本地震に伴う雇用保険の基本手当の特別措置について」(PDF)(2026年8月22日発表)
- 厚生労働省「令和8年熊本地震に伴う雇用調整助成金の特例を実施します」(2026年8月20日発表)
- 厚生労働省「災害時における雇用保険の特例措置等について」(2026年8月22日発表)
- 厚生労働省「令和8年熊本地震に伴う休業・解雇・災害時の時間外労働に関するQ&A」(令和8年8月4日・PDF)(2026年8月4日発表)
- 厚生労働省「雇用・労働に関する特例措置や支援制度(令和8年熊本地震について)」(2026年8月22日発表)
更新履歴
- 2026年8月22日 初版を公開
※本記事は2026年8月22日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。


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