住まいが災害で被害を受けたとき、市区町村が出す罹災証明書の区分がひとつ動くだけで、受け取れる金額は最大300万円変わります。全壊なら基礎支援金100万円と加算支援金200万円で合計300万円。半壊は、被災者生活再建支援金そのものが0円です。この境目を決めているのは「損害割合」という1つの数字で、全壊は50%以上、半壊は20%以上30%未満。区分と金額を並べて見ておくと、調査の受け方も、写真の残し方も変わります。
先に結論
- 被害区分は6段階。損害割合50%以上が全壊、40%台が大規模半壊、30%台が中規模半壊、20%台が半壊、10%台が準半壊
- 被災者生活再建支援金が出るのは全壊・大規模半壊・中規模半壊まで。半壊・準半壊は対象外
- ただし住宅の応急修理は半壊・準半壊でも使える。支援金の線引きと修理の線引きは別
- 支援金はどの災害でも出るわけではない。市町村内で10世帯以上が全壊するなどの規模要件を満たした災害だけ
- 世帯人数が1人の世帯は、金額がすべて4分の3になる
支援金が出るのは「一定の規模の災害」だけ
先に前提をひとつ。被災者生活再建支援金は、自宅が壊れれば必ず出るお金ではありません。被災者生活再建支援法が適用された災害でなければ、区分が全壊でも1円も出ません。
適用の要件は被災者生活再建支援法施行令第1条にあり、市町村・都道府県の被害の量で決まります。主なものはこうです。
- 10以上の世帯の住宅が全壊する被害が発生した市町村
- 100以上の世帯の住宅が全壊する被害が発生した都道府県
- 人口10万未満の市町村で5以上の世帯が全壊した場合(適用市町村に隣接しているなどの条件つき)
- 人口5万未満の市町村で2以上の世帯が全壊した場合(同上)
- 災害救助法施行令の基準に該当する被害が発生した市町村
つまり、同じ「全壊」でも、地域全体の被害が小さい災害では支援金の枠組み自体が立ち上がりません。台風で自宅だけが大きく壊れたようなケースがこれに当たります。自分の市区町村が適用対象になったかどうかは、災害のあと都道府県が公表します。まずそこを確認してから金額の話に進んでください。
住んでいる場所が地震・洪水・土砂災害のどれに弱いかは、被害が出る前に調べておけます。災害リスク診断では、住所を入力するだけで無料で確認できます。
被害区分6段階と、もらえる額の早見表
ここからが本題です。罹災証明書の区分・損害割合・被災者生活再建支援金の上限を、1枚にまとめます。金額は世帯人数が2人以上(複数世帯)で、住宅を建設または購入して再建した場合の上限額です。
| 被害区分 | 損害割合 | 支援金の上限(基礎+加算) |
|---|---|---|
| 全壊 | 50%以上 | 300万円 |
| 大規模半壊 | 40%以上50%未満 | 250万円 |
| 中規模半壊 | 30%以上40%未満 | 100万円 |
| 半壊 | 20%以上30%未満 | 対象外(0円) |
| 準半壊 | 10%以上20%未満 | 対象外(0円) |
| 準半壊に至らない(一部損壊) | 10%未満 | 対象外(0円) |
中規模半壊と半壊の境目、損害割合30%のところで100万円の段差があります。この1%が、罹災証明書をめぐっていちばん争点になる場所です。
支援金の内訳は、住宅の被害程度で決まる基礎支援金と、そのあとの再建方法で決まる加算支援金の2階建てです。加算支援金は建て方によって額が変わります。
| 被害区分 | 基礎支援金 | 加算支援金 建設・購入/補修/賃借 |
|---|---|---|
| 全壊・解体・長期避難 | 100万円 | 200万円/100万円/50万円 |
| 大規模半壊 | 50万円 | 200万円/100万円/50万円 |
| 中規模半壊 | なし | 100万円/50万円/25万円 |
| 半壊・準半壊・一部損壊 | なし | なし |
「解体」は、住宅が全壊に至らなくても、倒壊の危険などからやむを得ず解体した世帯。「長期避難」は、危険な状態が続いて長期間自宅に戻れない世帯です。この2つは全壊と同じ基礎支援金100万円の扱いになります。
支援金は現金で振り込まれ、使いみちに制限はありません。ここが次の応急修理と決定的に違うところです。
| 被害区分 | 住宅の応急修理の限度額 |
|---|---|
| 大規模半壊・中規模半壊・半壊 | 1世帯あたり739,000円以内 |
| 準半壊 | 1世帯あたり358,000円以内 |
| 全壊 | 自治体に確認(修理により居住できる場合の扱いは災害ごとに案内が出ます) |
応急修理は災害救助法が適用された市区町村で使える制度で、居室・台所・トイレなど、日常生活に不可欠な部分を応急的に直すためのものです。限度額は年度ごとに国が改定するため、上の金額は2026年8月時点で自治体が案内している額です。
半壊・準半壊は支援金が0円でも、応急修理は使えます。「うちは半壊だから何もない」と決めつけると、739,000円あるいは358,000円ぶんの修理を自費で払うことになります。区分の表を2つ並べて見る意味はここにあります。
うちはどの区分に落ちるのか──損害割合はこう積み上がる
損害割合は、家がどれくらい「ひどく見えるか」で決まる数字ではありません。住家を屋根・柱・外壁・内壁・床・天井・建具・基礎・設備などの部位に分け、それぞれの部位が住家全体に占める構成比に、その部位の損傷の程度を掛けて、全部足し上げて出します。部位ごとの構成比は内閣府の運用指針に一覧で定められていて、調査員はその表に沿って計算します。
この計算方法から、2つのことが言えます。
1つめ。1か所だけの被害では、その部位の構成比が天井になります。 屋根がまるごと飛んでも、損害割合は屋根の構成比を超えません。外壁だけ、建具だけでも同じです。全壊の50%に届くのは、複数の部位が同時に壊れているときです。逆に言えば、被害が家じゅうに散らばっている場合ほど、拾い漏らした部位が結果を左右します。
2つめ。外から見えない部位ほど、こちらから申し出ないと数字に乗りません。 第1次調査は原則として外観からの調査です。内壁の亀裂、床の傾き、天井や設備の損傷は、外を1周しただけでは拾えません。それらが加わって初めて30%や40%に届くケースがあります。
自分の家の区分を詰めたいなら、内閣府の運用指針にある部位別構成比の表を手元に置き、被害のある部位を漏れなく書き出して調査員に伝えるのが確実です。「壁にひびが入っている」ではなく「北側外壁に3か所、洋室内壁に2か所、床は廊下が傾いている」と部位ごとに分けて言えると、調査の対象そのものが変わります。
停電や断水が続く中での片付けと写真撮影は、明かりと水の確保が先に来ます。手持ちの備蓄で足りるかどうかは、被害が出る前に一度数えておくと判断が早くなります。
世帯人数が1人だと、金額はすべて4分の3になる
被災者生活再建支援法第3条第7項は、世帯人数が1人である世帯(単数世帯)について、金額の読み替えを定めています。条文で読み替えられる額は次のとおりです。
| 項目 | 2人以上の世帯 | 世帯人数1人 |
|---|---|---|
| 基礎(全壊など) | 100万円 | 75万円 |
| 基礎(大規模半壊) | 50万円 | 37万5千円 |
| 加算(建設・購入) | 200万円 | 150万円 |
| 中規模半壊の賃借 | 25万円 | 18万7,500円 |
| 合計の上限 | 300万円 | 225万円 |
判定に使われるのは災害が起きた時点の世帯の状況です。同居していた家族が住民票上は別世帯だった、単身赴任で世帯が分かれていた、といったケースでは、こちらが思っている家族構成と支給上の世帯が食い違うことがあります。申請前に、罹災証明書と住民票の世帯がどうなっているかを見比べておくと、あとで金額が想定と違う事態を避けられます。
賃貸で受け取ったあとに家を建てたら、差額はどうなるか
加算支援金でつまずきやすいのがここです。全壊した家の世帯が、まずアパートを借りて賃借の50万円を受け取り、そのあとに家を建て直した──というケースです。
被災者生活再建支援法第3条第2項は、複数の再建方法に該当する場合、そのうち最も高い額を支給すると定めています。建設・購入は200万円、賃借は50万円ですから、両方に該当した世帯の基準額は200万円のほうになります。実務上は、先に受け取った50万円との差額150万円を追加で申請する形になります。賃借で受け取った時点で権利が消えるわけではありません。
ただし条件があります。加算支援金の申請期限(後述の37か月)を過ぎていれば、追加の申請は受け付けられません。仮設住宅やみなし仮設に入ったまま再建の計画が固まらず、気づいたら期限が近い、という並びは実際に起こります。賃借で先に受け取った人ほど、期限を先にカレンダーに入れておいてください。
賃貸住宅に住んでいて被災した場合の家賃の扱いは、支援金とはまったく別の話になります。こちらは借りている家が地震で壊れたら家賃はどうなる?民法611条の「当然減額」と、退去・敷金の扱いにまとめています。
区分に納得できないときは、もう一度調べてもらえる
罹災証明書の区分は、一度出たら変えられないものではありません。内閣府が示している調査の流れは3段階です。
- 第1次調査──原則として外観からの調査
- 第2次調査──申し出により、建物の内部に立ち入って行う調査
- 再調査──さらに申し出があった場合に、市区町村が内容を検討して行う調査
第1次調査は外観だけなので、内部の被害が反映されていないことがあります。「思ったより軽い区分だった」と感じたら、まず第2次調査を申し出る。それでも納得できなければ再調査を求める。この2段階が、正式な手続きとして用意されています。
ここで効くのが、片付けを始める前に撮った写真です。片付けたあとの部屋を見せても被害は伝わりませんが、当時の写真があれば「調査の時点では確認できなかった被害」を部位ごとに示せます。写真の撮り方と、罹災証明書そのものの申請手順は罹災証明書は「片付ける前の写真」で決まる|撮り方のポイントと、全壊・半壊を分ける損害割合にまとめてあります。
なお、罹災証明書の区分と、地震保険の認定(全損・大半損・小半損・一部損)はまったく別の制度で、判定する人も基準も違います。罹災証明書が半壊でも地震保険が大半損になることはありますし、その逆もあります。保険のほうの基準は地震保険はいくら出る?全損・大半損・小半損・一部損の認定基準と、請求の流れ5ステップで整理しています。
申請期限は基礎13か月・加算37か月
支援金の申請期限は、被災者生活再建支援法施行令第4条で決まっています。
- 基礎支援金──自然災害が発生した日から起算して13か月を経過する日まで
- 加算支援金──自然災害が発生した日から起算して37か月を経過する日まで
同条第4項には延長の規定もあり、危険な状況が続くなどやむを得ない事情で期間内に申請できないと認められるときは、都道府県が期間を延長できます。大きな災害では実際に延長されることがあるので、期限を過ぎたと思っても、まず窓口で確認してください。
期限を逆算すると、動く順番はこうなります。罹災証明書の申請と調査を先に済ませ、区分に納得できなければ第2次調査・再調査を申し出る。基礎支援金は13か月以内に出す。再建方法が決まったら加算支援金を出し、あとから再建方法が上がったら差額を37か月以内に追加申請する。この4つの期日だけ押さえておけば、取りこぼしはほぼ防げます。
この記事の数字の出典と、確認した時点
- 支援金の額・単数世帯4分の3の読み替え──被災者生活再建支援法(平成10年法律第66号)第3条
- 制度が適用される災害の要件──被災者生活再建支援法施行令 第1条
- 申請期限13か月・37か月と延長──同施行令 第4条
- 被害区分と損害割合の閾値──内閣府(防災担当)「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」
- 調査の3段階(第1次・第2次・再調査)──内閣府(防災担当)の被害認定業務の手引き
- 住宅の応急修理の限度額739,000円・358,000円と、自治体が業者へ支払う仕組み──熊本市「住宅の応急修理」(2025年8月22日更新)ほか自治体の案内
いずれも2026年8月時点の内容です。応急修理の限度額は年度ごとに改定され、支援金の運用も法改正で変わります。制度が適用されるかどうかと区分ごとの取り扱いは災害ごとに個別の案内が出るので、実際に手続きをするときは内閣府(防災担当)とお住まいの市区町村の最新の案内で必ず確認してください。


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