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「埋まったのに、まだ載っている」はおとりとは限らない。おとり物件の見分け方と、疑ってよい家賃の基準

※ 本ページには広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。

「埋まりました」と言われた部屋が、今日もまだサイトに載っている——それだけでは、おとり物件とは言い切れません。

ただ、本物のおとりに引っかかったときに失うものははっきりしています。内見のために空けた半日と、「せっかく来たので」と案内されるまま決めてしまう、予定より高い家賃です。

この記事では、問い合わせる前に広告だけで疑いを濃くする3つの確認を、順番に説明します。芯になるのは「安すぎる」を実数で判定する家賃の基準です。足立区の25㎡なら真ん中は約5.0万円——この数字を先に知っていれば、3.5万円の広告に半日を差し出す前に立ち止まれます。

先に結論

  • 「埋まったのに載っている」だけではおとり確定にならない。広告の削除は会社ごとの手作業で、成約後も数日残ることがある
  • 問い合わせる前に見るのは3つ。家賃が街の中央値より大幅に安くないか・情報の更新日・同じ部屋をほかの会社も載せているか
  • 「安すぎる」の目安は中央値の2割安。足立区の25㎡なら中央値は約5.0万円で、3.5万円は約3割安=疑ってよい水準
  • 黒が濃いのは「たった今決まった」の直後に別の部屋の案内が始まる・現地集合を断られる・内見できない理由が毎回変わる
  • 公取協が疑いのある広告を絞り込んで調べた一斉調査では、対象67社のうち11社からおとり広告が確認された(6社に1社)
目次

「申し込みが入った」と断られた部屋が、その後も載り続けた実際の相談

おとり物件とは、客を呼ぶためだけに掲載される「借りられない部屋」の広告のことです。消費者庁は、実在しない物件・成約済みなどで取引の対象になり得ない物件・取引する意思のない物件の3つを、おとり広告として整理しています(出典:消費者庁「不動産のおとり広告に関する表示」)。

Yahoo!知恵袋に、2024年10月に投稿された相談があります。

「おとり物件について。先日SUUMOで気になる物件を見つけたので、サイト経由で不動産屋に内見できるか問い合わせたところ可能と…」(質問タイトルの冒頭・原文のまま)

中身はこうです。内見の約束のあとで「先に申し込みが入った」と断られた。ところが広告はその後も残り続け、別の名前で問い合わせ直すと、今度は「11月末に退去予定なので内見できない」という、前回と食い違う説明が返ってきた。

出典:Yahoo!知恵袋の質問ページ(2024年10月31日)

この質問者は、偽名での再問い合わせという検証までやっています。それでも回答欄のベストアンサーは「矛盾しない場合もある」という趣旨でした。ここまでやっても白黒がつかないのだから、問い合わせてから見抜こうとするのは分が悪い勝負です。だから、問い合わせる前の確認から入ります。

見分け方①:その家賃は「安すぎる」のか、街の真ん中の家賃と引き算する

おとり広告の入り口は、目を引く安さです。解説記事はどれも「相場より安すぎる物件は疑う」と書きますが、いくらからが「安すぎる」のかを数字で示したものは見当たりません。そこで、当サイトが全国1,526市区町村ぶん集計している賃貸データから、「真ん中の家賃」(1㎡あたり家賃の中央値)を出します。

1㎡あたり家賃の中央値 25㎡に直すと 集計件数
東京都足立区 1,999円 約49,975円 164,160件
神戸市中央区(三宮周辺) 2,048円 約51,200円 51,750件
大阪市浪速区(なんば周辺) 2,388円 約59,700円 45,920件

出典:当サイト集計の賃貸データ(全国1,526市区町村・2026年8月時点)

この中央値はワンルーム〜1Kの単身向けが大半を占める集計なので、当てはめてよいのは25㎡前後の単身向け物件までです。60㎡のファミリー向けに同じ単価を掛けると、高く出すぎます。

使い方は引き算だけです。

  1. 広告の専有面積に、その街の1㎡単価を掛ける(足立区で25㎡なら 1,999円 × 25㎡ = 約5.0万円)
  2. 広告の家賃との差を割合で出す(同じ足立区25㎡で3.5万円なら約3割安
  3. 2割以上安ければ、安い理由が広告に書かれているかを探す(1階・築年数・線路沿い・定期借家・告知事項あり、など)

疑ってよいのは「中央値より2割以上安いのに、安い理由がどこにも書かれていない広告」です。なんば周辺(浪速区)の中央値は25㎡で約6.0万円なので、理由の見当たらない4.2万円の広告は、この線をはっきり越えています。

「2割」という線は法律の基準ではなく、私が目安として使っている数字です。根拠は2つあります。公取協などが公表してきたおとり広告の事例に、相場から大きく外れた家賃が繰り返し登場すること。そして、築古や1階といった理由のある安さは広告にそう書けるのに対し、おとりの安さは理由を書けないことです。

表にない街で同じ計算をするなら、いま見ているサイトでその街の同じ面積帯を家賃の安い順に並べ、真ん中あたりの物件で1㎡単価を出せば、近い線が引けます。

見分け方②③:情報の更新日と、同じ部屋のほかの広告

物件詳細ページには「情報公開日」「情報更新日」の欄があります。更新が数週間前で止まっている広告は、いまも募集しているかどうかから確かめる必要があります。止まっている理由には、埋まったのに消し忘れている白も、埋まったまま客寄せに残している黒も、どちらもあり得るからです。

もう1つは、同じ部屋のほかの広告です。建物名(出ていなければ「住所+築年数+階」)で検索して、同じ部屋をほかの会社も載せているかを見ます。確かめるのは2つ。ほかの会社が軒並み掲載を終えているのに1社だけ残っていないか。1社だけ家賃や初期費用が目立って安くないか。

同じ部屋が複数の会社から掲載されること自体は、異常でも違反でもありません。それが賃貸広告の標準の流れで、仕組みはSUUMOに同じ物件が4件も載ってるのはなぜ?で説明しています。

あわせて詳細ページの「取引態様」の欄も見ておきます。「貸主」「代理」なら大家側に直結した会社、「専任」と書かれていれば部屋を預かっている会社です。ただの「仲介」は、よその登録を転載した広告のことがあり、空き情報が古い側に寄ります。

このエリアの相場はいくらですか?

住所を入れると、国の成約データから土地・戸建て・マンションの坪単価の目安が出ます。無料です。



埋まった部屋の広告が消えないのは、削除が会社ごとの手作業だから

なぜ「埋まったのに載っている」が起きるのか。広告が作られる流れを知ると、白と黒の区別がつくようになります。

  1. 大家から募集を任された会社(業界では「元付」と呼びます)が、業者間で物件情報をやり取りするデータベース(レインズなど)に部屋を登録する
  2. 登録のとき、ほかの会社が広告に使ってよいかの区分(広告可・広告不可)を選ぶ
  3. 「広告可」なら、ほかの仲介会社(客付)が自社の名前でSUUMOやHOME’Sに転載する——1つの部屋が、何社ぶんもの広告になる

部屋が決まったとき、確実に止まるのは元付側の募集だけです。転載した各社のサイト掲載は、それぞれの会社が自分で消すまで残ります。削除は自動では連動しない、会社ごとの事務作業です。だから、悪意がゼロでも広告は数日残ります。

2023年9月の知恵袋にも、同じ困惑があります。

「埋まったと言われた賃貸物件が掲載され続けているのは何故でしょうか とある賃貸物件が気になり、メールで問い合わせ後に現地集合で内見しました。」(質問の冒頭・原文のまま)

出典:Yahoo!知恵袋の質問ページ(2023年9月26日)

回答欄は「複数の会社に配信された広告のタイムラグでは」という見方と「おとりでは」という見方に割れていました。仕組みの側から言えば、どちらもあり得ます。私は、消えない掲載の相当部分は黒ではなく、この事務処理の遅れだと見ています。転載の段数が増えるほど、消し忘れは構造的に起きるからです。

一方で、黒も実在し続けています。首都圏不動産公正取引協議会が2025年5〜6月に行った一斉調査(第14回)では、おとりの疑いがある広告を絞り込んで調べた結果、調査対象になった67社のうち11社、76店舗のうち12店舗からおとり広告が確認されました。6社に1社です。なお、抽出された721物件のうちおとり広告と確定したのは19物件で、これは疑い物件を絞り込んだあとの数字です。「賃貸広告全体の2.6%がおとり」という意味ではありません。

出典:首都圏不動産公正取引協議会「インターネット広告の一斉調査(第14回)」2025年10月公表/措置を受けた会社はR.E.portのおとり広告措置一覧で社名つきで毎月公表され続けています。

この「広告可・広告不可」の区分と、成約後に広告を落とす実務は、不動産会社向けの記事で内側からも書いています。レインズの「広告不可」が意味するもの募集終了後の掲載更新でおとり広告を防ぐ手順です。業者側がどこでつまずくかを知っておくと、白の消し忘れに腹を立てずに済みます。

黒が濃い返事、白のこともある返事

広告面の確認で疑いが濃くなったら、最後は問い合わせの返事で見ます。

黒が濃いサインは、この3つです。

  • 「たった今、申し込みが入りました」の直後に、頼んでいない別の部屋の案内が始まる。この続き方は、公取協の注意喚起や賃貸メディアの解説で繰り返し記録されてきた定型の流れです
  • 現地集合での内見を頼むと断られ、店舗への来店だけを求められる
  • 内見できない理由が、問い合わせのたびに変わる(冒頭の相談の「申し込みが入った」→「退去前だから」のように、説明が食い違う

白のこともあるサインは、この2つです。

  • 「埋まりました」と言われたあと、広告が数日残っている(転載の消し忘れ)
  • 「居住中のため、内見は退去後になります」(住んでいる人の退去を待ちながら募集する、普通の流れ)

黒が濃いと感じたときにやることは1つです。その会社が勧めてくる別の部屋に乗り換えるのではなく、気になっていた部屋そのものを、別の会社に当たり直します。前の章の仕組みのとおり、同じ部屋は別の会社からも扱えることが多いからです。どの会社からも「終わっています」と返ってくるなら、その部屋は本当に埋まっています。

通報するかどうかの判断と窓口は、おとり物件の通報先に分けてまとめています。

よくある質問

「埋まった」と言われた部屋が、まだ掲載され続けているのはなぜですか

広告は募集元の1社だけでなく、転載したそれぞれの会社が載せているためです。成約後の削除も会社ごとの手作業で、自動では消えません。数日の残留は消し忘れのことも珍しくない一方、内見できない理由が問い合わせのたびに変わる場合は、おとりの疑いが濃くなります。

おとり物件は違法ではないのですか

違法です。消費者庁は、実在しない物件・成約済みなどで取引の対象になり得ない物件・取引する意思のない物件の広告を、おとり広告として不当表示に整理しています。違反した会社には掲載停止や社名公表の措置が毎月出ています。ただ、借りる側から見れば遭った時間は返ってこないので、広告の段階で見分けるほうが安くつきます。

相場より安い部屋は、すべておとりですか

いいえ。1階・築年数・駅からの距離・定期借家など、理由のある安さは広告に理由が書いてあります。疑うのは、街の中央値より2〜3割安いのに理由が見当たらない広告です。足立区の25㎡なら中央値は約5.0万円なので、理由の書かれていない3.5万円は、この記事の確認を済ませてから動いても遅くありません。

一番の防御は、「この街の真ん中はいくらか」という物差しを先に持って探すことです。物差しがあれば、うますぎる広告に半日を差し出す前に気づけます。いま使っているサイトで黒が続くようなら、探す場所を変えてみるのも手です。

おとり広告の少ない掲載サイトで部屋を探す ▶

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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