🗨️「川のそばじゃないのに、どうして道路が冠水するの?」
街に降った雨を下水道が排水しきれなくなる「内水氾濫」だからです。さいたま市は2026年4月23日に、重要事項説明の対象になる内水ハザードマップを公開しています。
[災害] この記事の要点
2026年8月21日、さいたま市付近で16時20分までの1時間に約110ミリの猛烈な雨が降ったとみられ、気象庁が16時33分に気象防災速報(記録的短時間大雨)を発表した。さいたま市が同日午後7時10分時点で公表した第1報(速報値)では、人的被害はなく、道路冠水35件・床上浸水3件・床下浸水2件、消防局への通報15件のうち10件が車等水没だった。
2026年8月22日 発表
- さいたま市とその周辺で家や土地を探している人
- 川から離れているから水害は大丈夫だと思っている人
- 通勤や送迎でアンダーパス・地下道を通っている人
- これから重要事項説明を受ける人
この記事でわかること
- 8月21日のさいたま市で、何がどれだけ起きたか(速報値の区別内訳)
- 国が公表する「冠水注意箇所」の数と、実際に冠水した区のずれ
- 2026年4月23日から、さいたま市の内水ハザードマップが重要事項説明の対象になったこと
さいたま市付近で1時間に約110ミリ、警報はレベル4まで上がりました
2026年8月21日(金)、埼玉県南部で雨雲が急速に発達しました。ウェザーニュースによれば、南寄りの風と東寄りの風がぶつかったことで雨雲が発達し、しかも停滞しやすい風の流れになっていました。気象庁は21日16時33分、さいたま市に気象防災速報(記録的短時間大雨)を発表しています。テレビ朝日の速報とウェザーニュースは、いずれも16時20分までの1時間に、さいたま市付近で約110ミリ(解析雨量)の猛烈な雨が降ったとみられる、と伝えました。
さいたま市が公表した第1報には、その日の注意報・警報の動きがそのまま載っています。
| 時刻(8月21日) | さいたま市に発表されたもの |
|---|---|
| 4時27分 | 雷注意報 |
| 13時28分 | 大雨注意報(レベル2) |
| 15時49分 | 大雨警報(レベル3)/市は風水害警戒本部設置の準備体制へ |
| 16時01分 | 土砂災害注意報(レベル2) |
| 16時33分 | 気象防災速報(記録的短時間大雨) |
| 16時56分 | 大雨危険警報(レベル4) |
| 19時10分 | 大雨危険警報を解除、大雨注意報(レベル2)へ |
注意報が出てから危険警報まで3時間半です。数字として見ておきたいのは110ミリの大きさそのものよりも、この速さのほうだと思います。短い時間に大量の雨が一気に集中すると、下水道や水路の排水が追いつかなくなります。
住まいのリスクに対する備え
土地の履歴やリスクを知ったら、次は「起きたときにどうするか」です。最低限そろえておくと動けるものを挙げます。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
停電時は懐中電灯より、部屋全体を照らせるランタンの方が使えます。電池でも充電でも点くものだと、どちらが尽きても止まりません。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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道路冠水35件、消防への通報15件のうち10件が「車等水没」でした
さいたま市は同じ日の午後7時10分時点の状況を第1報として公表しました。市は冒頭で「本発表の被害状況等は速報値のため、今後情報が修正される場合があります」と断っています。以下の数字も、あくまでこの時点のものです。
| 項目 | 件数 | 内訳 |
|---|---|---|
| 人的被害 | なし | — |
| 道路冠水 | 35件 | 見沼区14/北区13/岩槻区7/西区1 |
| 床上浸水 | 3件 | 北区1/見沼区1/岩槻区1 |
| 床下浸水 | 2件 | 見沼区2 |
| 消防局への通報 | 15件 | 車等水没10/家屋水漏れ等4/停電1 |
| うち救助出場 | 2件 | いずれも車等水没(見沼区1・岩槻区1) |
| ライフライン・公共施設 | なし | ほかに公園の砂流出が北区1件 |
人的被害は、この時点では確認されていません。目立つのは道路と車のほうです。建物の浸水は合わせて5件なのに、道路の冠水は35件。消防への通報15件のうち10件、つまり3分の2が「車等水没」で、救助に出た2件も両方とも車でした。
家が浸かるより先に、まず道が使えなくなる。今回の数字は、都市部の大雨で最初に起きることをかなり素直に表しています。
いちばん沈んだ見沼区は、国の「冠水注意箇所」に1か所しか入っていません
ここからは、当サイトで手を動かして確かめたことです。
国土交通省 関東地方整備局は「関東甲信地域における道路冠水注意箇所マップ」を都県ごとに公表しています。アンダーパスや地下道、過去に冠水した低い土地の道路を、路線名と地先名まで名指しした一覧です。埼玉県・さいたま市版(令和8年6月10日更新)を開いて、さいたま市の行だけを区ごとに数え直すと、こうなりました。
| 区 | 国の冠水注意箇所(か所) | 8月21日の道路冠水(件) |
|---|---|---|
| 岩槻区 | 13 | 7 |
| 緑区 | 9 | 0 |
| 南区 | 5 | 0 |
| 大宮区 | 4 | 0 |
| 桜区 | 3 | 0 |
| 中央区 | 2 | 0 |
| 北区 | 2 | 13 |
| 見沼区 | 1 | 14 |
| 西区 | 1 | 1 |
| 浦和区 | 0 | 0 |
| 合計 | 41(うち1件は地先名に区の記載なし) | 35 |
登録数がいちばん多いのは岩槻区の13か所で、実際の冠水は7件でした。ところが8月21日にいちばん沈んだのは、登録が1か所しかない見沼区(14件)と、2か所しかない北区(13件)です。この2区だけで35件中27件、全体の77%を占めます。
これは国のリストが間違っている、という話ではありません。あのリストは「アンダーパスなど、構造的に水がたまる点」を集めたものです。今回のように市街地全体の排水が追いつかなくなる降り方だと、点のリストには載っていない普通の道が、広い面で水に浸かります。名前の付いた危険箇所を全部つぶしても、その日どこが通れなくなるかは分からないということです。
ちなみに埼玉県版には「上記の冠水注意箇所は、高速道路会社や道路公社管理の自動車専用道路等は含まれていません」という注記も付いています。
川があふれていなくても、道路と住宅地は水に浸かります
「水害といえば川の氾濫」と思われがちですが、都市部で先に起きるのは、たいてい別のほうです。
街に降った雨を、下水道や水路が排水しきれなくなって、道路や住宅地に水がたまる。これが内水氾濫です。川の水があふれてくるのではなく、行き場をなくした雨水がその場に残る現象なので、川から離れていても起こります。
とくに水がたまりやすいのは、周りより低い土地、アンダーパス、くぼ地、まわりの雨水が集まってくる場所、そして過去に何度も冠水している場所です。ただし、今回さいたま市で冠水した35か所それぞれの原因や地形を、市は発表していません。35件すべてが内水氾濫だったと決めつけることはできませんし、個別の地点について推測で語るのもここでは避けます。
「洪水ハザード」と「内水ハザード」は、まったく別の地図です
この2つはよく混同されます。見ているものが違います。
| 洪水ハザードマップ | 内水ハザードマップ | |
|---|---|---|
| 想定している水 | 河川が増水してあふれた水(外水) | 街に降って排水しきれなかった雨水(内水) |
| 危ないのはどこか | 河川沿い・低地 | 低い土地、アンダーパス、排水が集中する場所 |
| 川から遠ければ安全か | 比較的リスクは下がる | 下がらない |
さいたま市自身も、内水ハザードマップについて「このマップは一級河川の外水氾濫(洪水)は考慮していないため、最新の洪水ハザードマップも併せてご確認ください」と案内しています。片方だけ見ても足りない、と作った側が言っているということです。
さいたま市の内水ハザードマップは、2026年4月23日に入れ替わりました
さいたま市は令和8年(2026年)4月23日から、新しい「さいたま市内水ハザードマップ」を公開しています。水防法第14条の2に基づく雨水出水浸水想定区域図(令和8年3月31日指定)をもとに作られたものです。
市の説明では、下水道の排水能力を超える大雨で内水氾濫が起きた場合に想定される浸水区域と浸水深を、シミュレーションで示しています。地図面では浸水深0.1メートル以上から10.0メートル未満までを6段階に色分けしています。作成の条件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 想定した雨 | 想定し得る最大規模(時間最大153ミリ・総雨量249ミリ)が市全域に降る |
| 河川の条件 | 放流先河川の水位が高い場合 |
| 使った地形図 | 令和7年3月時点のさいたま市地形図 |
| 色分け | 浸水深0.1m以上〜10.0m未満を6段階 |
| 配布 | 区役所の情報公開コーナー、支所、公民館、図書館ほか。区ごとにPDFでも公開 |
ここで注意したいのは、今回の約110ミリと、この153ミリを割り算しても意味がないということです。110ミリは実際に解析された特定の時間・地域の雨量で、153ミリはシミュレーションの入力条件です。性質の違う数字なので、「想定の7割だから危険度はこれくらい」といった読み方はできません。読み取れるのは、これだけ激しい短時間雨量が現実に起きている以上、想定最大規模を前提にした地図を平時に見ておく意味がある、というところまでです。
なお、市の「防災まちづくり情報マップ」では、地図上の任意のメッシュをクリックすると浸水深が数値で表示されます。住所検索もできるので、色を目で読むより確実です。
重要事項説明の対象になったのは、この4月からの図面です
不動産の売買・賃貸の場面では、ここが本題になります。
令和2年(2020年)8月に施行された宅地建物取引業法施行規則の改正で、宅地建物取引業者は「水防法施行規則第11条第1号の規定により市町村が提供する図面における当該宅地又は建物の所在地」を、重要事項として説明することになっています。制度そのものは2020年からあるもので、今年になって急に義務化されたわけではありません。
変わったのは、さいたま市の側です。市はこう明記しています。
- 令和8年4月23日から公開している「さいたま市内水ハザードマップ」は、水防法施行規則の規定に基づくものであり、上記法令により重要事項としての説明が必要
- 令和8年4月23日以前に公開していた「さいたま市内水ハザードマップ(令和3年4月)」については、水防法施行規則の規定に基づかないもの
つまり、さいたま市で内水について重要事項として説明される図面は、2026年4月23日に用意されたということになります。旧版の地図は以前からありましたが、それは法令が指す図面ではありませんでした。
これから契約する人にとっては、内水の説明が重要事項説明書に出てくるのが当たり前になります。逆に言えば、今年の春より前にさいたま市で契約した人は、この図面での説明を受けていない可能性があります。すでに住んでいる人も、一度は自分の住所を新しいマップで見ておく価値があると思います。
家を買う・借りる前に見る3つと、現地で見る5つ
順番だけ決めておけば、そんなに手間はかかりません。
- 洪水ハザードマップ。川があふれたときの想定です。まずここ
- 内水ハザードマップ。川と関係なく、排水が追いつかないときの想定。さいたま市なら2026年4月23日公開の新しいほう
- 過去の浸水履歴。想定ではなく、実際に起きた記録です。さいたま市には「浸水履歴マップ」があり、各区の情報公開コーナーにも「さいたま市の水害に関する情報について」が置かれています
市自身が、内水ハザードマップには市民から通報のあった浸水情報が反映されていないため浸水履歴も確認するように、と案内しています。3つ目を飛ばすと、実際に水が出た場所を見落とします。
そのうえで、内見のときに自分の目で見られるところを5つ。
| 見る場所 | 何を確かめるか |
|---|---|
| 周辺道路との高低差 | 敷地が前面道路より低くないか。近所の家より一段下がっていないか |
| 地下・半地下部分 | 地下室・半地下車庫は、水がたまると自力では抜けない |
| 駐車場の位置 | 今回の通報15件のうち10件は車の水没。低い場所の駐車場は先に浸かる |
| 1階住戸 | 床の高さ、給湯器や分電盤の位置 |
| 避難ルート | 駅・学校・避難所までの道にアンダーパスや地下道がいくつあるか。別の道を選べるか |
まとめ:色が付いていたら住めない、ではありません
ハザードマップに色が付いている=その土地は買ってはいけない、という話ではありません。想定される浸水深がどのくらいで、そのとき自分の暮らしの何が止まるのかが分かっていれば、対策も判断もできます。市も「浸水が想定されていない地域でも、状況によっては浸水することもある」と注意書きを添えています。地図は白黒をつけるものではなく、条件を教えてくれるものです。
危ないのは逆のほうです。川から離れているから水害は関係ない、という決めつけ。8月21日のさいたま市では、人的被害が確認されないなかで道路が35か所冠水し、車の水没通報が10件出ました。川があふれた話ではありません。
洪水・内水・浸水履歴の3つを見る。現地では高低差と駐車場と避難ルートを見る。それだけで、地図の色を眺めるより多くのことが分かります。
生活・仕事にどう効くか
- 物件を選ぶとき:洪水ハザードマップだけでは内水のリスクが分からない。さいたま市なら2026年4月23日公開の内水ハザードマップと浸水履歴マップを別に見る必要がある
- 重要事項説明を受けるとき:さいたま市では2026年4月23日公開の図面が水防法施行規則に基づくものとなり、対象物件の位置について説明を受けられる。それ以前の令和3年4月版は、市の説明では法令が指す図面ではなかった
- 車の置き場所:8月21日の消防局への通報15件のうち10件が車等水没で、救助出場2件も両方とも車。低い場所の駐車場や半地下車庫は影響を先に受ける
結局どうすればよいか
- さいたま市の内水ハザードマップ(2026年4月23日公開)で住所の浸水深を確認する。「防災まちづくり情報マップ」ならメッシュをクリックして数値で読める
- 同じ住所を洪水ハザードマップと浸水履歴マップでも見る。内水のマップは一級河川の外水氾濫と、市民から通報のあった浸水情報を含んでいない
- 内見のときに、前面道路との高低差・地下や半地下・駐車場の位置・1階住戸の床高・避難ルート上のアンダーパスの数を見る
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
自分の場合を調べる(無料ツール)
- 災害リスク診断 — 住所から浸水・土砂・地盤のリスクを確認する
- 住所まるごとチェック — 住所の表記ゆれ・実在をまとめて確認する
- 不動産相場検索 — 市区町村ごとの土地・戸建て・マンション相場を見る
公式出典
- さいたま市「(令和8年8月21日発表)8月21日の大雨による市内の状況等について(午後7時10分時点)(第1報)」(2026年8月21日発表)
- さいたま市「さいたま市内水ハザードマップについて(令和8年4月23日公開)」(2026年6月19日発表)
- 国土交通省 関東地方整備局「関東甲信地域における道路冠水注意箇所マップ(埼玉県・さいたま市版・令和8年6月10日更新)」(2026年6月10日発表)
- テレビ朝日「【速報】埼玉県に記録的短時間大雨 さいたま市付近で1時間に約110ミリの猛烈な雨」(2026年8月21日発表)
- ウェザーニュース「埼玉県で1時間に約110mmの猛烈な雨 気象防災速報・記録的短時間大雨」(2026年8月21日発表)
更新履歴
- 2026年8月22日 初版を公開
※本記事は2026年8月22日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。


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