「人が減るんだから、土地なんてそのうち余って安くなるでしょ」。そう思って実家の売却を先送りしている人へ。土地の値段は、人の数では決まりません。
決めているのは3つです。その場所を欲しい世帯がいくつあるか、その世帯がいくらまで出せるか、売りに出る土地がどれだけあるか。この10年は3つとも「値段が上がる向き」に動きました。なかでも効いたのが2つめで、家を買った人の平均世帯年収は613万円から716万円へ、10年で103万円ふえています。
先に答え
- 土地の値段を決めるのは「①欲しい世帯の数 ②出せる金額 ③売りに出る量」の3つ。人口はどれにも直接入っていない
- ①人口が減っても、家を買う単位である世帯は2030年までふえる(5,570万→5,773万世帯)
- ②家を買う人の平均世帯年収は10年で613万→716万円。年収の何倍まで出すかも6.5倍→7.5倍に伸びた
- ③空き家は900万戸あるが、売り物として市場に出ているのは33万戸だけ
- ただし全部が上がるわけではない。全国の住宅地の36.8%は10年前より安い。分かれ目は駅からの距離
先に自分の市区町村の実際の取引価格を見たい方は、土地の相場を調べるから住所を入れてください。この記事の数字は、国土交通省・総務省・住宅金融支援機構・国立社会保障人口問題研究所が公表している一次データを自分で集計したものです。出典と集計条件は最後にまとめました。
答え:土地の値段は「人の数」ではなく「出せる金額×欲しい世帯の数」で決まる

土地の売買は、突き詰めると入札です。ひとつの土地に対して、欲しい人が何人いて、それぞれいくらまで出すか。その最高額が値段になります。
だから値段は3つで決まります。その場所を欲しい世帯がいくつあるか(買い手の数)。その世帯がいくらまで出せるか(買い手の財布)。同じ条件の土地が他に何区画売りに出ているか(選択肢の数)。
人口はこの3つのどれにも、直接は入っていません。人口は「買い手の数」に間接的に効きますが、あいだに世帯の分かれ方と引っ越しが挟まります。人が2割減っても、世帯が3割ふえて、その世帯が2割多く出せるなら、値段は上がります。この10年に起きたのは、まさにそれです。
ここから、3つを順番に実データで確かめます。
① 人が減っても、家を買う単位である「世帯」は2030年までふえる
家は人数で借りるものではなく、世帯という単位で借りたり買ったりします。ここが人口の話とずれる原因です。
国立社会保障・人口問題研究所の推計(令和6年推計)では、一般世帯の総数は2020年の5,570万世帯から増え続け、2030年に5,773万世帯でピークを迎えます。人口はすでに減り始めているのに、世帯だけはあと4年ふえ続ける計算です。
理由は、世帯が小さくなっているからです。平均世帯人員は2020年で2.21人。2033年に初めて2人を割り込んで1.99人になると見込まれています。単独世帯は2020年の2,115万世帯(全体の38.0%)から2050年には2,330万世帯(44.3%)へ。一方で夫婦と子どもの世帯は1985年の1,519万世帯がピークで、2020年にはすでに1,401万世帯まで減っています。
同じ100人でも、4人で1軒に住めば25軒で足ります。2人なら50軒、1人なら100軒必要です。人が2割減っても、世帯が3割ふえれば、要る家の数はふえます。
神戸市では、この逆転がすでに起きている

神戸市の推計人口で実際に確かめました。2017年1月1日の人口は1,535,559人、世帯数は718,182世帯。2026年1月1日は人口1,496,041人、世帯数766,350世帯です。
9年間で人口は39,518人減り、世帯は48,168ふえました。1世帯あたりの人数は2.14人から1.95人へ。全国が2人を割り込むのは2033年という見通しですが、神戸市はもう割っています。
家の数も減っていません。総務省の住宅・土地統計調査によると、全国の総住宅数は2018年の6,241万戸から2023年に6,502万戸へ、5年で261万戸ふえました。人が減っている国で、家は5年で261万戸ふえている——これが今起きていることです。
② 買い手が出せる金額が、10年で103万円上がった

ここが、人口減少の記事でいちばん抜けやすいところです。値段は買い手の財布で決まるのに、財布の中身の話がされません。
住宅金融支援機構は、フラット35を借りて家を買った人の年収を毎年公表しています。2025年度は35,553件が対象です。家を買った人の平均世帯年収は、10年で613万円から716万円になりました。
中身の変化はもっとはっきりしています。年収1,000万円以上の人の割合は2015年度の8.8%から2025年度は15.0%へ。逆に年収400万円未満は21.4%から15.9%に減りました。買っている層そのものが入れ替わっています。
さらに、年収の何倍まで出すかも上がりました。所要資金を世帯年収で割った年収倍率は、マンションで6.5倍から7.5倍へ、土地付注文住宅で6.9倍から7.8倍へ。年収が上がったうえに、その年収に対して出す倍率まで上がっている。買い手が出せる上限が上がれば、同じ土地の値段は上がります。
支えているのは共働きです。2025年の共働き世帯は1,333万世帯、専業主婦世帯は476万世帯。2人分の収入を合算して借りる世帯がふえた分だけ、1軒に出せる上限が上がりました。しかも無理をしているわけでもなく、月収に対する返済額の割合(総返済負担率)は2025年度で22.8%と、前年度より0.4ポイント下がっています。
ただしこの追い風は弱まります。日本銀行の政策金利は2025年12月に0.75%へ引き上げられ、約30年ぶりの水準になりました。金利が上がると同じ年収で借りられる額は減ります。②が逆を向き始めているという意味で、ここは今後の分かれ目です。
③ 土地はふえない。むしろ「買える土地」は減っている

「空き家が900万戸もあるのに、土地が足りないわけがない」。この900万戸の中身を開けると、話が変わります。総務省の令和5年住宅・土地統計調査による内訳です。
- 賃貸用の空き家 … 443万戸
- 賃貸用・売却用・別荘を除く空き家 … 385万戸
- 二次的住宅(別荘など) … 38万戸
- 売却用の空き家 … 33万戸
半分近い443万戸は、アパートやマンションの空室です。人に貸すために空けてあるので、売り物の土地ではありません。別荘などの38万戸も同じです。
売却用は33万戸。総住宅数6,502万戸の0.5%です。385万戸の「それ以外」は、転勤や入院で長期間不在の家、取り壊しが決まっている家などで、すぐ買える状態のものばかりではありません。相続してそのままになっている家もここに入ります。「空き家が多いこと」と「買える土地が多いこと」は別の話です。放置した空き家がどう扱われるかは空き家の勧告は去年978件だった話にまとめています。
新しく供給される側も絞られています。国土交通省の建設工事費デフレーター(2015年度=100)は、2025年12月時点で木造住宅が130.9、鉄筋コンクリート造住宅が134.9。10年で3割ほど建てる値段が上がりました。不動産経済研究所によると、2025年の首都圏の新築マンション発売戸数は21,962戸で1973年以降の最少、平均価格は9,182万円で過去最高です。売る数を減らして、高く売れる場所だけで事業をする形になっています。
事業者が用地を取り合う範囲が「高く売れる場所」に絞られるので、その狭い範囲の地価だけが跳ね上がります。東京23区の新築マンションがどこまで来ているかは平均2億6,520万円の中身で分解しました。
④ 人が動くから、行き先では足りなくなる
人が減っても、その人は消えるわけではありません。多くはどこかへ引っ越します。行き先では家が要ります。
総務省の住民基本台帳人口移動報告(2025年)で転入超過だったのは、東京都(65,219人)、神奈川県(28,052人)、埼玉県(22,427人)、大阪府(15,667人)など7都府県だけ。残る40道府県は転出超過でした。圏域では東京圏が123,534人の転入超過、大阪圏が8,742人の転入超過、名古屋圏は12,695人の転出超過です。
しかも神戸市の人口減の中身は、引っ越しではありません。2025年の神戸市は、出生7,864人に対して死亡19,090人で、自然増加が-11,226人。一方の社会増加は+4,779人で、市外から入ってくる人のほうが多いのです。人口が6,447人減った理由は、出ていく人が多いからではなく、亡くなる人が生まれる人より1万人以上多いからでした。
亡くなった方の家は空き家になります。ただしその家が駅から遠ければ、転入してきた人の受け皿にはなりません。人口減少と住宅需要は、同じ市の中でも別々に動きます。
ここまでが上がる理由。ただし上がっているのは全部ではない
①〜④は全国どこでも同じ強さで効くわけではありません。ここを分けないと、「地価が上がっている」というニュースを自分の土地の話だと勘違いします。
国土交通省が2026年3月18日に公表した令和8年地価公示は、全国の住宅地が前年比+2.1%、商業地が+4.3%、全用途平均が+2.8%でした。全用途の+2.8%はバブル期以来35年ぶりの上昇幅です。ただしこれは平均で、内訳はここまで違います。
| 地域 | 令和8年 住宅地の変動率 |
|---|---|
| 東京圏 | +4.5% |
| 大阪圏 | +2.5% |
| 名古屋圏 | +1.9% |
| 地方四市(札幌・仙台・広島・福岡) | +3.5% |
| 地方圏のうち上の4市を除く地域 | +0.6% |
全国平均の+2.1%を作っているのは東京圏です。地方の4市を除いた地域は+0.6%で、ほぼ横ばい。ここに住んでいる人に「上がった」という実感はないはずです。
1年ではなく10年で見ると、差はもっとはっきりします。国土交通省が公開している地価公示の生データから、住宅地の標準地のうち2016年と2026年の両方に価格がある16,227地点を取り出して集計しました。
- 上がった地点 … 9,712地点(59.9%)
- 下がった地点 … 5,978地点(36.8%)
- 変化率の中央値 … +5.0%
三大都市圏の9都府県(8,062地点)は75.2%が上昇し、中央値は+12.5%。それ以外の38道県(8,165地点)は51.2%が下落し、中央値は-0.9%でした。東京都だけを見ると1,473地点のうち93.9%が上昇、中央値は+32.2%です。
分かれ目は、駅から何メートルか

同じ16,227地点を、標準地から最寄り駅までの距離で切り直すと、分かれ目がひとつに絞れます。
| 駅からの距離 | 地点数 | 上がった | 下がった | 10年の中央値 |
|---|---|---|---|---|
| 500m以内 | 2,003 | 72.0% | 25.3% | +18.1% |
| 500m〜1km | 4,014 | 70.7% | 26.8% | +12.9% |
| 1km〜2km | 4,904 | 63.8% | 32.8% | +6.2% |
| 2km超 | 5,306 | 43.4% | 52.6% | -1.3% |
駅から500m以内では7割が上がり、2km超では半分が下がります。同じ「住宅地」でも、駅までの距離が10年後の値段を逆向きにしています。
神戸市の251地点で切ると、差はもっと極端になります。駅500m以内の51地点は94.1%が上昇して中央値+24.9%。駅2km超の59地点は45.8%が下落しました。人口が減っている同じ市の中で、駅前は4分の1値上がりし、バス便の住宅地は半分が値下がりしている。一極集中は「東京と地方」の話だと思われがちですが、実際には1つの市の中でも起きています。
理由は①〜③に戻ります。共働きで2人分の収入を合算して借りる世帯は、通勤が成り立つ場所しか選びません。買い手の財布が大きくなっても、その財布が向かう先は駅の近くに集中する。そして駅の近くの土地はふえません。
私はこう見ています
私はこの10年の動きを、「土地が値上がりした」のではなく「値段のつく土地の範囲が狭くなった」と見ています。
根拠は上の16,227地点です。全国の中央値は+5.0%ですが、その内訳は駅500m以内の+18.1%と駅2km超の-1.3%。全体が持ち上がったのではなく、上がる場所と下がる場所に割れて、上がる側の幅が大きいから平均が上を向いている、という形です。
実務でも同じことが起きます。駅から徒歩5分の土地は、売りに出せば複数の会社が査定に来ます。駅から2km・バス便の土地は、買い手の候補が「その地域に住む理由がある人」に限られるので、値段は近所の人がいくらまで出すかで決まります。前者は市場が値段をつけ、後者は個別の事情が値段をつける。同じ「地価」という言葉で呼ぶには、中身が違いすぎます。
だから「地価が上がっているらしいから、実家もそのうち高く売れるだろう」という待ち方は、駅から遠い土地では逆に働くと考えています。この10年は、世帯数も買い手の年収も追い風だった10年です。その追い風のなかで駅2km超の住宅地の中央値が-1.3%だったのなら、金利が上がって②が逆を向く次の10年に、何が起きて上がるのかを説明できる材料が要ります。
自分の土地がどちら側かを、今日15分で調べる
数字を眺めるより、自分の土地で確かめるほうが早いです。手順は4つです。
- 最寄り駅までの直線距離を測る。地図アプリで駅と自宅を選べば出ます。500m以内・1km以内・2km以内・2km超のどこに入るかで、上の表のどの行を読めばいいかが決まります
- 同じ市区町村で実際に売れた価格を見る。相場ツールに住所を入れると、土地・戸建て・マンションの実際の取引価格が出ます
- 10年前と比べる。地価公示は標準地ごとに過去の価格が公表されているので、近くの標準地を探して2016年と今を並べます
- 災害リスクを確認する。浸水想定区域や土砂災害警戒区域に入っているかどうかは、駅からの距離と同じくらい買い手が見ています
全国1,525市区町村・5種別の実際の取引価格から中央値を出します
よくある質問
人口が減れば、いずれ全国どこでも土地は安くなりますか
全国一律にはなりません。値段を決めるのは「欲しい世帯の数・出せる金額・売りに出る量」の3つで、どれも地域ごとに違うためです。2025年の人口移動報告では、転入超過は7都府県だけで40道府県が転出超過でした。人が集まる場所と出ていく場所が分かれている限り、値段も分かれます。
世帯数がピークを過ぎる2030年以降は、土地の値段も下がりますか
世帯数は2030年の5,773万世帯をピークに、2050年には5,261万世帯まで減る見通しです。2020年と比べた減少幅は310万世帯で、率にすると5.6%。この10年で全国の住宅地が中央値5.0%動いていることを考えると、世帯数だけで値段が決まるわけではありません。むしろ効き方が大きいのは②の買い手の財布のほうで、金利が上がるとここが逆を向きます。
空き家が増えているのに、なぜ新築が建つのですか
空き家900万戸のうち、売り物として市場に出ているのは33万戸で、総住宅数の0.5%です。残りは賃貸用の空室(443万戸)、別荘(38万戸)、長期不在や取り壊し予定の家(385万戸)。買いたい人が住みたい場所に、買える状態の空き家があるとは限らないので、新築の需要はなくなりません。
駅から遠い土地は、今すぐ売ったほうがいいですか
売り時は相場だけで決まるものではなく、税金の特例の期限や、家族の合意がとれているかにも左右されます。この記事で言えるのは、上の集計では駅2km超の住宅地の中央値がこの10年で-1.3%だったという事実だけです。「待てば上がる」を前提にする場合は、上がる理由を説明できるかどうかを確認してから決めてください。
出典と集計条件
- 国土交通省「令和8年地価公示」(2026年3月18日公表、調査実施25,565地点)
- 国土交通省「国土数値情報 地価公示データ(L01-26)」全47都道府県。用途区分「住宅地」のうち、2016年と2026年の両方に公示価格がある16,227地点を集計。変化率が±0.5%以内の地点は上昇・下落のどちらにも数えていない。標準地の位置での値であり、市区町村内のすべての土地を表すものではない
- 住宅金融支援機構「2025年度フラット35利用者調査」(2025年4月〜2026年3月、35,553件。借換えを除く)
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6年推計」
- 総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)」
- 総務省「住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)結果」
- 総務省「労働力調査(詳細集計)」(共働き世帯・専業主婦世帯。労働政策研究・研修機構 図12による)
- 神戸市「推計人口」(2017年1月1日、2026年1月1日)
- 国土交通省「建設工事費デフレーター」(2015年度=100、2025年12月)
- 不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年」


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