「もう住めない」と言われている街の隣に移れば、土地は安く買えます。千葉県流山市で実際に売れた土地は坪66.1万円、隣の野田市は坪19.5万円。坪あたり466,115円、率にして70.5%下がります。
ところが同じことを北海道の千歳市でやると、下がり幅は坪あたり21,488円、率にして11.7%です。半導体工場の話題で土地が動いた千歳市の隣、恵庭市は坪16.2万円でした。隣に移す理由が値段なら、この差では動く意味がありません。
この記事では、値上がりで名前が挙がった9つの街と、その隣16市町で実際に売れた土地の値段を並べました。使ったのは国土交通省が公表している実際の取引価格です。賃貸の家賃相場ではなく、買った人が払った金額のほうを見ています。
先に結論
- 9つの街とその隣16組を実際の成約価格で比べた。坪単価の下がり幅は11.7%から74.7%まで開いた
- いちばん下がらないのは千歳市→恵庭市の11.7%(坪あたり21,488円)
- いちばん下がるのは福岡市中央区→大野城市の74.7%(坪あたり1,173,552円)
- 土地が安い隣でも、建物ごと買うと逆転する組がある(宇都宮市90.3万円 → 下野市97.6万円・いずれも延床坪あたり)
- 家賃まで安いとは限らない(高崎市1,775円 → 玉村町2,032円・1㎡あたりの月額)
- 隣に移して浮く金額を先に出し、その額に見合う妥協かどうかを自分で決める
「もう住めない」と名指しされた流山市の隣は、坪19.5万円だった
きっかけは、2026年8月に公開されたこの動画のタイトルです。
> 【穴場】流山はもう住めない!?近隣のコスパ最強エリアとは?
(ゆーたび住まい探しの旅・2026年8月・2,763回視聴/2026-08-12時点)
流山市の値段については、Yahoo!知恵袋にもこういう質問が残っています。
> 流山おおたかの森のマンションって割高すぎないですか?中古のマンションで4000万円って?都内へのアクセスが便利な点以外なにもない所です。
ベストアンサーはこうでした。
> この近辺、私も高いと思います。さながらプチバブルですね。利便性があるとはいえどもつくばエクスプレスですから、微妙ですね。
出典: Yahoo!知恵袋の質問ページ
では、その隣はいくらなのか。流山市と、隣接する野田市・我孫子市で実際に売れた土地の坪単価はこうなっています。
| 市 | 土地の坪単価 | 中古戸建(延床坪あたり) | 家賃(1㎡あたり月額) |
|---|---|---|---|
| 流山市 | 66.1万円 | 151.9万円 | 2,323円 |
| 野田市 | 19.5万円 | 82.6万円 | 1,834円 |
| 我孫子市 | 33.1万円 | 112.4万円 | 1,853円 |
流山市から野田市へ移すと坪あたり466,115円(70.5%)、我孫子市へ移すと坪あたり330,578円(50.0%)下がります。集計に使ったのは流山市110件、野田市97件、我孫子市80件で、3市とも2024年第4四半期から2025年第4四半期までの取引です。この3市は集計期間がそろっています。
隣にずらすという発想は、書き手が思いついたものではありません。同じ知恵袋に、流山市の周辺で家を探している人の質問があります。中心部は高いので野田線沿線(梅郷・運河・江戸川台・初石・豊四季)を見ていて、隣の野田市も候補に入るかを聞いている内容です。条件は戸建てで600〜800万円台、3DK〜4LDK、徒歩15分以内にスーパーと学校とコンビニ、駐車場つき。読者はすでにこの動き方をしています。
出典: Yahoo!知恵袋の質問ページ
流山市そのものの内訳は別の記事にまとめています。流山市で売れた土地は1区画47.8坪が真ん中で、坪単価だけで予算を組むと足が出るという話です。→ 流山市の土地は坪単価だけで予算を組むと足りません
半導体で沸いた千歳市の隣は、坪あたり21,488円しか安くならない
ここからがこの記事の本題です。「人気の街の隣は安い」は、街によって成立しません。
北海道千歳市は、半導体工場の話題で土地の値段が動いた街です。北海道新聞の記事見出しがこうなっています。
> 千歳の基準地価16.5%上昇 ラピダス需要続く 波及効果で恵庭もプラス
出典: 北海道新聞の記事ページ
見出しに「波及効果で恵庭もプラス」と書かれているとおり、隣も一緒に上がっています。実際に売れた土地の坪単価はこうです。
| 市 | 土地の坪単価 | 中古戸建(延床坪あたり) | 家賃(1㎡あたり月額) |
|---|---|---|---|
| 千歳市 | 18.3万円 | 99.2万円 | 1,612円 |
| 恵庭市 | 16.2万円 | 72.2万円 | 1,502円 |
| 苫小牧市 | 7.4万円 | 68.9万円 | 1,414円 |
千歳市から恵庭市へ移したときの差は坪あたり21,488円、率にして11.7%。同じ千歳市から苫小牧市まで離れると坪あたり109,091円、59.5%下がります。
土地の坪単価(上下5%を除いた中央値・千歳市の18.3万円を横幅100%として描画)。千歳市86件/恵庭市68件/苫小牧市118件
千歳市と恵庭市はここだけ集計期間がそろっていません。千歳市は2024年第4四半期から2025年第3四半期まで、恵庭市は2025年第4四半期まで入っています。同じ条件で比べた数字ではないので、11.7%という値そのものは幅を持って読んでください。それでも、隣の苫小牧市の59.5%とは桁が違います。
集計に使ったのは千歳市86件(除外8件)、恵庭市68件(除外6件)、苫小牧市118件(除外12件)です。
私はこの3市の並びを見て、千歳市で予算が合わなかった人にとって恵庭市は解決策にならないと考えています。理由は、恵庭市へ移して浮くのが坪あたり21,488円だからです。同じ引っ越しの手間をかけて苫小牧市まで足を伸ばせば坪あたり109,091円。隣かどうかではなく、どこまで離れるかで金額が決まっています。中古戸建で見ても千歳市が延床坪99.2万円、恵庭市が72.2万円、苫小牧市が68.9万円で、恵庭市と苫小牧市の差は土地ほど開いていません。
9つの街と隣16市町。下がり幅は11.7%から74.7%まで
全部並べます。左が値上がりで名前の挙がった街、右がその隣です。

| 街 → 隣 | 街の坪単価 | 隣の坪単価 | 下がり幅 |
|---|---|---|---|
| 流山市 → 野田市 | 66.1万円 | 19.5万円 | 70.5% |
| 流山市 → 我孫子市 | 66.1万円 | 33.1万円 | 50.0% |
| 千歳市 → 恵庭市 | 18.3万円 | 16.2万円 | 11.7% |
| 千歳市 → 苫小牧市 | 18.3万円 | 7.4万円 | 59.5% |
| 福岡市中央区 → 春日市 | 157.0万円 | 43.0万円 | 72.6% |
| 福岡市中央区 → 大野城市 | 157.0万円 | 39.7万円 | 74.7% |
| 西宮市 → 尼崎市 | 112.4万円 | 76.0万円 | 32.4% |
| 西宮市 → 伊丹市 | 112.4万円 | 79.3万円 | 29.4% |
| 吹田市 → 摂津市 | 102.5万円 | 59.5万円 | 41.9% |
| 長久手市 → 尾張旭市 | 66.1万円 | 39.7万円 | 40.0% |
| 長久手市 → 日進市 | 66.1万円 | 43.0万円 | 35.0% |
| 那覇市 → 豊見城市 | 59.5万円 | 39.7万円 | 33.3% |
| 那覇市 → 南風原町 | 59.5万円 | 29.8万円 | 50.0% |
| 宇都宮市 → 下野市 | 18.8万円 | 5.1万円 | 72.8% |
| 高崎市 → 藤岡市 | 13.2万円 | 4.8万円 | 63.7% |
| 高崎市 → 玉村町 | 13.2万円 | 4.3万円 | 67.5% |
同じ街から複数の隣を選べる場合、いちばん下がらない隣に移したときの数字だけを取り出すとこうなります。
いちばん下がらない隣に移したときの、土地の坪単価の下がり幅(%)。横幅は0〜100%の目盛りで描画
この表を読むときの断り書きが3つあります。
1つ目は集計期間です。福岡と沖縄の6市区町村、それに千歳市・苫小牧市・尾張旭市・玉村町は2024年第4四半期から2025年第3四半期まで、それ以外の市町は2025年第4四半期まで入っています。組の中で期間がずれているのは千歳市と恵庭市、長久手市と尾張旭市、高崎市と玉村町の3組です。この3組は同じ条件で比べた数字ではありません。
2つ目は件数です。南風原町は9件(除外0件)、玉村町は15件(除外0件)、豊見城市は19件(除外1件)しかありません。中央値が1件か2件の取引で動く規模なので、那覇市→南風原町の50.0%と高崎市→玉村町の67.5%は、順位ではなく幅として読んでください。取引が多いのは宇都宮市392件(除外42件)、高崎市317件(除外31件)、尼崎市193件(除外19件)です。
3つ目は坪への換算です。取引価格は1㎡あたりで登録されていて、坪に直すと別の街が同じ表示になることがあります。この表でも流山市と長久手市がどちらも66.1万円、春日市と日進市がどちらも43.0万円と出ていますが、同じ相場だと読まないでください。
地域ごとに一言ずつ足しておきます。
福岡は下がり幅が最大の組です。福岡市中央区の坪157.0万円に対して春日市43.0万円、大野城市39.7万円。差は坪あたり1,140,495円と1,173,552円で、下がり幅は72.6%と74.7%です。西日本新聞は「福岡市のマンション家賃『1年で2〜3割』急騰 引っ越しシーズン『住みたい所に住めない』」という見出しで家賃の急騰を報じていますが、あれは賃貸の話です(出典: 西日本新聞の記事ページ)。買う側が払った金額で見ると、市の外に出るだけでこれだけ動きます。
沖縄は那覇市の坪59.5万円に対して豊見城市39.7万円、南風原町29.8万円。ただし豊見城市19件、南風原町9件という母数です。中古戸建(延床坪)で見ると那覇市168.5万円、南風原町139.2万円、豊見城市118.3万円で、土地ほどの開きはありません。
関西と中部は下がり幅が小さい側です。西宮市→伊丹市が29.4%、西宮市→尼崎市が32.4%、長久手市→日進市が35.0%。吹田市→摂津市の41.9%も、福岡や北関東の70%台と比べると小さい数字です。人気の街が連なっている地域では、隣に出ても値段の段差が付きにくいということだと私は見ています。
北関東は下がり幅が大きい代わりに、そもそもの水準が低い地域です。宇都宮市18.8万円、高崎市13.2万円。町ごとの差のほうが大きく出る面で、宇都宮市の内訳は宇都宮市の土地は町によって坪単価が7.3倍ちがいますにまとめています。
土地が安い隣でも、建物ごと買うと高くつく組がある
坪単価が下がったからといって、支払う金額が同じ比率で下がるわけではありません。この表には3つの逆転が入っています。
1つ目は宇都宮市と下野市です。土地は坪18.8万円と5.1万円で72.8%下がるのに、中古戸建は宇都宮市が延床坪90.3万円、下野市のほうが高い97.6万円でした。
2つ目は高崎市と玉村町です。土地は坪13.2万円と4.3万円ですが、家賃は高崎市が1㎡あたり月1,775円、玉村町が2,032円。賃貸だけを見れば隣のほうが高い組です。
3つ目は流山市と我孫子市です。50〜70㎡の中古マンションの1㎡あたりの値段は、流山市が319,872円(16件)、我孫子市が361,539円(8件)。土地では我孫子市が50.0%安いのに、この広さのマンションでは逆になっています。ただし16件と8件なので、これも幅として読む数字です。

中古戸建の坪単価は、取引総額を建物の延床坪数で割った値です。土地の坪単価とは割っている面積が違うので、土地の坪単価から引き算したり、土地の面積を掛けたりはできません。
そして土地そのものにも、坪単価では見えない部分があります。郊外に出るほど1区画が広くなるためです。流山市で売れた土地は1区画47.8坪が真ん中でしたが、那須塩原の土地は1区画96.8坪、土浦市の土地は1区画95.3坪でした。坪単価が半分の街で2倍の広さを買えば、土地代は変わりません。隣接する2つの町で同じことを検証したのが稲美町と播磨町は坪単価の差ほど総額が開きませんです。
今回の16組については、1区画の面積までは集計していません。隣の市町を候補にするなら、坪単価だけでなく売り出されている区画の広さを必ず確かめてください。
「土地を妥協して後悔してます」——浮く金額を先に出す
ここまで読んで「では隣に行けばいい」と受け取られると困るので、最後にこの声を置いておきます。同じYahoo!知恵袋の投稿です。
> 土地を妥協して後悔してます。住みたいエリアがあり、そこを第一目標にして土地を探していました。(中略)その土地はキャンセル後にすぐに売れてしまい、結局妥協して住みたくないエリアの土地にしました。正直あまり家の打ち合わせが楽しみでありません。一生ここに住むのかと気持ちが下がっています。どう前向きに考えたら良いでしょうか?
出典: Yahoo!知恵袋の質問ページ
この人が失ったのは金額ではありません。家の打ち合わせが楽しみでなくなった、という部分です。土地の値段は数字で比べられますが、こちらは比べられません。
だから順番はこうです。まず浮く金額を出す。坪あたりの差額に、自分が買う予定の坪数を掛けます。この記事の16組なら、坪あたりの差は千歳市→恵庭市の21,488円から福岡市中央区→大野城市の1,173,552円まで開いています。
金額を月々に落とすと判断しやすくなります。別の質問への回答に、こういう計算がありました。
> 3000万円の住宅なら月の返済額は月84,685円。埼玉や千葉だと、新築で庭付き2000万円はありますが、それだと56,457円です。
出典: Yahoo!知恵袋の質問ページ
3,000万円と2,000万円の差を、月84,685円と月56,457円という形で並べた回答です(金利と返済期間はこの回答者の前提です)。土地代が坪あたりいくら浮くかまで出したら、次はこうやって月々の額に置き換えてください。ここまで具体的になって初めて、通勤時間が20分伸びることや、実家から30分遠くなることと釣り合うかを判断できます。
浮く金額に見合わない妥協なら、隣に行かないほうがいいです。千歳市から恵庭市への11.7%は、私はその代表例だと見ています。
自分の街と隣がいくらか調べる手順
この記事に載せたのは9つの街だけですが、同じことを全国1,526市区町村で確かめられます。
- 気になっている街の相場を出す。検索窓に入れるときは県名から入れる。「金沢市」だけだと愛知県知多市金沢に当たります
- 隣接する市町を同じ手順で出す
- 坪単価の差に、買う予定の坪数を掛ける。これが浮く金額です
- 土地だけでなく中古戸建と賃貸も見る。この記事の3組のように逆転していることがあります
- 売り出し中の区画の広さを確かめる。坪単価が安くても区画が広ければ総額は下がりません
住所を書き換えれば全国1,526市区町村で同じ比べ方ができます
この記事の数字の出どころ
- 成約価格:国土交通省が公表している不動産取引価格情報。土地・中古戸建・中古マンション・賃貸の4種別を市区町村ごとに集計したもの
- 集計期間:市区町村によってそろっていません。福岡市中央区・春日市・大野城市・那覇市・豊見城市・南風原町・千歳市・苫小牧市・尾張旭市・玉村町は2024年第4四半期から2025年第3四半期まで、それ以外は2025年第4四半期まで
- 極端値の処理:生のデータには農地や山林が混ざっていて、そのまま中央値を取ると住宅地の相場からずれます(宇都宮市の最小値は1坪96円でした)。この記事では坪単価の上下5%を落としてから中央値を取り、落とした件数を各市町ごとに数えています。本文の「除外◯件」がその数です
- 土地の坪単価は取引価格を土地面積で割った値、中古戸建の坪単価は取引価格を建物の延床面積で割った値です。分母が違うので相互に引き算できません
- 中古マンションは50〜70㎡の物件に限定した1㎡あたりの値段、家賃は1㎡あたりの月額です
- 中央値は真ん中の1件の値です。件数が少ない市町(南風原町9件、玉村町15件、豊見城市19件)では1件の取引で動きます
- 記事中の引用はすべて実在の投稿・報道・動画タイトルです。出典URLは本文中に記載しています

