住宅ローンの金利が1%上がったとき、毎月の返済額がいくら増えるかは、住んでいる街でまるで違います。国土交通省の実取引価格をもとに309市区町村を計算すると、全国の真ん中にあたる街で月13,186円、35年の総額では554万円。このうち取引件数が20件以上あって数字が安定している207市区町村で見ると、増える額がいちばん小さい福岡県北九州市八幡西区で月2,853円、いちばん大きい東京都千代田区で月82,281円です。
金利の記事はどれも「借入額3,000万円なら」から始まります。けれど家を買う前の人は、自分がいくら借りることになるかをまだ知りません。先に知っているのは、住む街のほうです。借入額は、その街の売買価格で決まります。順番が逆なのです。
先に結論
- 専有70m²の中古マンションを実際の成約価格で買い、全額を35年で借りた場合、金利1.0%→2.0%で増える毎月の返済額は309市区町村の中央値で13,186円(35年で554万円)
- 街の名前を出せる207市区町村では、いちばん大きい東京都千代田区が月82,281円、いちばん小さい福岡県北九州市八幡西区が月2,853円
- 2026年8月のフラット35(21年以上35年以下・融資率9割以下)の最頻金利は年3.290%。全期間固定はすでに3%台に乗っている
- 「5年ルールがあるから返済額は5年変わらない」は全員には当てはまらない。5年経つ前に上がった家が実在する
- 今日できる確認は1つ。返済予定表の「利息」の欄を1行見る。返済額が据え置かれていても、利息は先に増えている
金利が1%上がると、毎月いくら増えるのか
試算の前提を先に書きます。専有70m²の中古マンションを、その街の実際の成約価格の中央値で買い、頭金なしで全額を35年・元利均等で借りる。この借入額に対して、年1.0%と年2.0%の返済額を比べました。価格は専有50〜70m²帯の成約価格の中央値で、この帯の取引が10件以上あった309市区町村が対象です。
結果は、309市区町村の中央値で毎月13,186円、35年の総額で554万円の増加でした。

比較のために、よく見る前提の数字も並べておきます。借入額3,000万円・35年・元利均等で同じ1.0%→2.0%を計算すると、毎月の差は14,693円、総返済額の差は617万円になります(住宅ローンの金利が1%上がると、総返済額はいくら増える?3,000万円・35年で試算)。全国の真ん中の街より、3,000万円という前提のほうが少し大きい。つまり「3,000万円なら」の記事を読んで身構えた人の半分近くは、自分の街ではもっと小さい数字で済みます。逆に、その倍以上を背負う街もあります。

返済がいちばん増える街と、いちばん増えない街
ここから先の表は、専有50〜70m²の取引が20件以上あった207市区町村に絞っています。まず、金利1%で毎月の返済額がいちばん増える20市区町村です。「70m²の価格」は、その街で実際に成約した専有50〜70m²の中古マンションの中央値を70m²に置き直したものです。
| 市区町村 | 70m²の価格 | 月返済(1.0%) | 月返済(2.0%) | 月の差 | 35年の差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京都千代田区 | 16800万円 | 474,240円 | 556,521円 | 82,281円 | 3456万円 |
| 東京都港区 | 16333万円 | 461,067円 | 541,062円 | 79,996円 | 3360万円 |
| 東京都渋谷区 | 14000万円 | 395,200円 | 463,768円 | 68,568円 | 2880万円 |
| 東京都中央区 | 12923万円 | 364,800円 | 428,093円 | 63,293円 | 2658万円 |
| 東京都目黒区 | 12600万円 | 355,680円 | 417,391円 | 61,711円 | 2592万円 |
| 東京都新宿区 | 11688万円 | 329,932円 | 387,176円 | 57,244円 | 2404万円 |
| 東京都文京区 | 11455万円 | 323,346円 | 379,447円 | 56,101円 | 2356万円 |
| 東京都品川区 | 10403万円 | 293,664円 | 344,615円 | 50,951円 | 2140万円 |
| 東京都豊島区 | 9031万円 | 254,945円 | 299,179円 | 44,233円 | 1858万円 |
| 東京都台東区 | 8924万円 | 251,905円 | 295,611円 | 43,706円 | 1836万円 |
| 東京都世田谷区 | 8615万円 | 243,200円 | 285,396円 | 42,196円 | 1772万円 |
| 東京都中野区 | 8571万円 | 241,956円 | 283,936円 | 41,980円 | 1763万円 |
| 東京都杉並区 | 7975万円 | 225,112円 | 264,169円 | 39,057円 | 1640万円 |
| 神奈川県横浜市西区 | 7749万円 | 218,742円 | 256,694円 | 37,952円 | 1594万円 |
| 東京都江東区 | 7470万円 | 210,865円 | 247,451円 | 36,586円 | 1537万円 |
| 東京都墨田区 | 6785万円 | 191,520円 | 224,749円 | 33,229円 | 1396万円 |
| 神奈川県川崎市中原区 | 6776万円 | 191,267円 | 224,452円 | 33,185円 | 1394万円 |
| 東京都三鷹市 | 6618万円 | 186,822円 | 219,236円 | 32,414円 | 1361万円 |
| 東京都北区 | 6533万円 | 184,427円 | 216,425円 | 31,998円 | 1344万円 |
| 東京都小金井市 | 6413万円 | 181,018円 | 212,425円 | 31,407円 | 1319万円 |
次に、増える額がいちばん小さい20市区町村です。
| 市区町村 | 70m²の価格 | 月返済(1.0%) | 月返済(2.0%) | 月の差 | 35年の差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 福岡県北九州市八幡西区 | 582万円 | 16,441円 | 19,294円 | 2,853円 | 120万円 |
| 北海道札幌市北区 | 988万円 | 27,895円 | 32,734円 | 4,840円 | 203万円 |
| 兵庫県加古川市 | 992万円 | 27,993円 | 32,850円 | 4,857円 | 204万円 |
| 徳島県徳島市 | 1052万円 | 29,706円 | 34,860円 | 5,154円 | 216万円 |
| 大阪府和泉市 | 1145万円 | 32,334円 | 37,945円 | 5,610円 | 236万円 |
| 福島県郡山市 | 1184万円 | 33,426円 | 39,226円 | 5,800円 | 244万円 |
| 愛知県一宮市 | 1234万円 | 34,833円 | 40,877円 | 6,044円 | 254万円 |
| 福岡県久留米市 | 1283万円 | 36,227円 | 42,512円 | 6,285円 | 264万円 |
| 静岡県沼津市 | 1346万円 | 38,000円 | 44,593円 | 6,593円 | 277万円 |
| 愛知県名古屋市港区 | 1346万円 | 38,000円 | 44,593円 | 6,593円 | 277万円 |
| 福岡県北九州市小倉北区 | 1346万円 | 38,000円 | 44,593円 | 6,593円 | 277万円 |
| 兵庫県姫路市 | 1400万円 | 39,520円 | 46,377円 | 6,857円 | 288万円 |
| 和歌山県和歌山市 | 1409万円 | 39,773円 | 46,674円 | 6,901円 | 290万円 |
| 三重県四日市市 | 1454万円 | 41,040円 | 48,161円 | 7,121円 | 299万円 |
| 兵庫県明石市 | 1580万円 | 44,610円 | 52,350円 | 7,740円 | 325万円 |
| 千葉県千葉市稲毛区 | 1615万円 | 45,600円 | 53,512円 | 7,912円 | 332万円 |
| 東京都青梅市 | 1655万円 | 46,706円 | 54,809円 | 8,103円 | 340万円 |
| 埼玉県入間市 | 1680万円 | 47,424円 | 55,652円 | 8,228円 | 346万円 |
| 北海道札幌市白石区 | 1692万円 | 47,753円 | 56,039円 | 8,285円 | 348万円 |
| 新潟県新潟市中央区 | 1723万円 | 48,640円 | 57,079円 | 8,439円 | 354万円 |
同じ「金利が1%上がる」というニュースを、同じ日に、同じ気持ちで読んでいても、手元で起きることはこれだけ違います。3つ並べます。
同じ金利1%で、毎月いくら増えるか(専有70m²・全額借入・35年)
東京都千代田区/70m²の価格 16800万円
月 +82,281円
35年で +3456万円(月返済 474,240円 → 556,521円)
309市区町村の中央値
月 +13,186円
35年で +554万円
福岡県北九州市八幡西区/70m²の価格 582万円
月 +2,853円
35年で +120万円(月返済 16,441円 → 19,294円)
同じ金利なのに、住む街で差がつく理由
理由はひとつです。金利は全国どこでも同じでも、借りる金額が街ごとに違うからです。
たとえば同じ専有70m²の中古マンションを買うとき、福岡県北九州市八幡西区の実際の成約価格の中央値は582万円、東京都世田谷区は8615万円でした。同じ間取り、同じ広さ、同じ35年です。それでも借りる額が違うので、金利1%が乗ったときに動くお金は、八幡西区の家庭で月2,853円、世田谷区の家庭で月42,196円になります。八幡西区の家庭にとっては通信費の見直しで吸収できる幅ですが、世田谷区の家庭にとっては固定費がもう1本増えるのと同じです。
ここが、金利の記事を読んでも自分の話に感じられない原因だと私は考えています。銀行やポータルサイトの記事が「借入額3,000万円なら」から始まるのは、貸す側にとって借入額が入口の数字だからです。申込書に最初に書く欄がそこにある。けれど買う側にとって、借入額は入口ではなく結果です。街を決め、広さを決め、価格が決まって、そこから頭金を引いて、はじめて借入額が出てくる。順番が逆のまま書かれた記事を読んでも、読者は自分の数字にたどり着けません。
だからこの記事は、街から入りました。自分の住む街、あるいはこれから住もうとしている街の名前が上の表にあれば、金利のニュースが自分にとって何円の話なのかは、その行を見るだけで分かります。
固定と変動、いまの金利はどこまで来ているか
上の試算で使った1.0%と2.0%は、比較のための刻みです。「変動金利が2%になる」と決まった話ではありません。ただ、この幅が現実味のない仮定かというと、そうではないことも数字で確認できます。
全期間固定のフラット35は、2026年8月の金利(借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下)で最も多い金利が年3.290%でした。金利の範囲は年3.290%〜年5.570%です。借入期間20年以下では最も多い金利が年2.970%、範囲は年2.970%〜年5.250%となっています(住宅金融支援機構の公表値)。全期間固定はすでに3%台に乗っているということです。
変動金利のほうは、住宅ローン比較サイトのモゲチェックが2026年8月3日に更新した集計で、みずほ銀行が年1.025%、三菱UFJ銀行が年0.945%、三井住友銀行が年1.275%、メガバンク3行の平均が年1.082%とされています。ネット銀行系の平均は年1.211%です。
ただし、同じ銀行の変動金利でも、集計している媒体によって数字が違うことがあります。団体信用生命保険の種類、自己資金の割合、ネット申込かどうかで適用される優遇幅が変わるためです。ここに挙げた数字は上の1社の集計に揃えてあります。自分に適用される金利は、必ず借入先の金融機関で確認してください。
「5年経つ前に月々の返済額が上がりました」——5年ルールを盾にできない家がある
Yahoo!知恵袋に、こういう投稿があります。
住宅ローン変動金利の5年ルールについて 5年間は金利が上がっても返済額は変わらないということですが、我が家は5年経つ前に月々の返済額が上がりました。
出典:Yahoo!知恵袋 q11314163156
5年ルールは、金利が上がっても毎回の返済額を5年間そのままに保つ仕組みです。125%ルールは、見直しで返済額が増えるときでも直前の1.25倍を上限にする仕組みです。この2つがあるから当面は関係ない、と読んだ人が多いはずですが、投稿者の家では5年を待たずに返済額が動きました。
理由になりうるものは2つあります。ひとつは、繰上返済などで返済額の再計算が走ること。もうひとつは、そもそも自分の契約に5年ルール・125%ルールが付いていないことです。この2つのルールは法律で決まっているものではなく、商品ごとの仕様です。付いていない商品では、金利の見直しがそのまま返済額に出ます。自分の契約にあるかどうかは、契約書か商品概要説明書の「返済額の見直し」の項目に書いてあります。
もうひとつ、順番の話もあります。短期プライムレートが上がったからといって、翌月に引き落とし額が変わるわけではありません。大半の銀行では基準金利の見直しが年2回と決められていて、そこから新しい利率での計算が始まり、引き落としに出るのはさらに先です。この時間差は住宅ローンの変動金利、8月3日に何が変わる?返済額が動くのは早くて2027年1月ですで時系列に整理しています。
そして、5年ルールがちゃんと効いている人にこそ、いちばん大きな誤解が残ります。返済額が変わっていない=影響が来ていない、ではありません。返済額が据え置かれている間も、金利が上がれば利息は増えています。増えた利息は返済額の内訳から取られるので、元金に回る分が減ります。減り方が遅くなった元金は、いつか返済額の見直しか、最後の残債として戻ってきます。
私は、5年ルールは家計を守る仕組みであると同時に、金利上昇の実感を5年ぶん遅らせる仕組みでもあると考えています。守られていること自体は悪いことではありません。ただ、守られている間に何が起きているかを見ないまま5年を過ごすと、見直しの通知が来た日に初めて全部を知ることになります。
自分の街の数字を出す手順
表に自分の街が載っていなくても、同じ数字は3つの手順で出せます。
1. 自分の街の中古マンションの相場を見る。当サイトの相場検索で、都道府県名と市区町村名を入れて調べます。上で例に出した2つの街は、開いた瞬間に結果が出るリンクを用意しました——福岡県北九州市八幡西区の相場を開く、東京都世田谷区の相場を開く。自分の街を調べるときは、市区町村名だけで入れると別の県の似た地名に当たることがあるので、必ず「兵庫県 明石市」のように都道府県名から入れてください。
2. その価格を借入額に置き換える。この記事は頭金なしで全額借りる前提で計算しています。頭金を2割入れるなら、借入額は価格の8割です。
3. 返済額を出す。年収から借りられる額と毎月の返済額の目安は、下のシミュレーターで出せます。
年収を入れるだけで、借入可能額と返済額の目安が出ます
金利上昇が自分に来ているか確かめる方法。返済予定表の「利息」の欄を1行見る
すでに借りている人が今日できることが、ひとつだけあります。見るのは返済額ではなく、利息の欄です。
返済予定表(償還予定表)には、毎回の返済額が「元金」と「利息」に分けて書いてあります。ネットバンキングの住宅ローンのページか、借入時に受け取った冊子、毎年秋に届く年末残高証明書と一緒の書類に載っています。開いたら、直近の月の行と、1年前の同じ月の行を並べてください。
見方はこうです。
- 返済額が同じで、利息の欄が増えている → 金利上昇はもう来ている。5年ルールで返済額が据え置かれているだけで、元金の減りは遅くなっている
- 返済額も利息も変わっていない → まだ反映されていない。見直しの時期を契約書で確認しておく
- 返済額そのものが上がっている → 5年ルールが無いか、再計算が走っている。契約書の「返済額の見直し」の項目を読む
この確認に費用はかかりませんし、1分で終わります。借り換えの相談も、固定への切り替えも、いまここでは要りません。やるのは現在地を測ることだけです。「返済額が変わっていないから大丈夫」と思っていた人が、利息の欄が増えているのを自分の書類で見ると、金利のニュースの読み方が変わります。
冒頭に挙げた投稿の隣には、こんな声もありました。
変動金利で住宅ローンを組みました。 金利が上がったら、払えなくなるのではないかと毎日不安です。
出典:Yahoo!知恵袋 q11295732036
この不安の大きさは、金利のニュースの見出しでは決まりません。決めているのは、その人が借りた額であり、借りた額を決めたのは住んでいる街の価格です。北九州市八幡西区で月2,853円の家庭と、千代田区で月82,281円の家庭が、同じ見出しを読んで同じだけ怖がっている。まず自分の街の行を見て、それから自分の返済予定表を見る。この順番なら、不安は数字に変わります。
都道府県名+市区町村名で、実際の成約価格が出ます
試算の前提と出典
- 価格:国土交通省 不動産情報ライブラリAPI(XIT001)の中古マンション成約価格。対象期間は2024年第4四半期〜2025年第4四半期。専有50〜70m²帯の成約価格の中央値を、専有70m²に置き直しています(全面積帯の中央値だとワンルームに引かれるため)
- 対象:専有50〜70m²の取引が10件以上あった309市区町村。全国のすべての市区町村を網羅したものではありません
- 街の名前を出した2つの表は、そこからさらに取引20件以上に絞った207市区町村から選んでいます。取引が10件台の街は中央値が1〜2件の売買で動いてしまい、街の名前を付けて公開するには不安定なためです
- 返済額:頭金なしで価格の全額を借入、元利均等返済、返済期間35年、ボーナス返済なし、繰上返済なし。年1.0%と年2.0%を比較しています
- 含まないもの:登記費用・事務手数料などの諸費用、管理費、修繕積立金、固定資産税、団体信用生命保険料
- 1.0%と2.0%は比較のための刻みであり、特定の金融機関の金利予想ではありません
- フラット35の金利:住宅金融支援機構「【フラット35】借入金利の推移」2026年8月分(公表ページ)
- 変動金利・10年固定の各行の水準:モゲチェック(2026年8月3日更新)の集計(該当ページ)
- 読者の声:Yahoo!知恵袋 q11314163156、q11295732036(いずれも原文のまま引用)
- いずれも2026年8月12日時点の確認です。適用される金利・返済額の見直し時期・5年ルールの有無は金融機関と商品によって異なります。ご自身の契約内容は借入先の金融機関にご確認ください。特定の金融商品を推奨するものではありません

