真夏の避難生活で気をつけること7つ|熊本地震の犠牲者の約8割は「地震のあと」に亡くなった
地震のニュースを見ると、どうしても「揺れそのもの」や「建物の被害」に目が行きます。ですが数字を見ると、本当に人の命を奪っているのはそのあとの数日から数か月の生活です。しかも真夏はその危険が跳ね上がります。
この記事では、公的機関や学会が発表している資料をもとに、真夏の避難生活で気をつけるべきことを7つに整理しました。
1. 「地震で亡くなる」より「地震のあとに亡くなる」ほうが多い
2016年(平成28年)の熊本地震では、犠牲者は278人にのぼりました。このうち建物の倒壊などによる直接死は50人。残りの218人は「災害関連死」として自治体に認定された方です(2019年4月12日現在)。つまり犠牲者の約8割は、揺れそのものではなく、そのあとの避難生活や環境の変化で亡くなっています。
災害関連死の内訳を見ると、原因がはっきりしています。
| 主な原因 | 人数 | 何が起きたか |
|---|---|---|
| 静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)など | 少なくとも33人 | 車中泊のあとに死亡 |
| 病院・高齢者施設の被災 | 少なくとも27人 | 転院・移動の途中で死亡 |
| 上記以外 | 残り | 持病の悪化、肺炎、心疾患など環境変化によるもの |
この表で伝えたいのは「避難所は危ない」ということではありません。避難のしかたを少し変えるだけで防げた死が、これだけあったということです。以下の6つは、そのために知っておきたいことです。
2. 熱中症 ── 真夏の避難生活で最初に来る危険
体育館や公民館は、もともと大人数が長時間過ごす前提で冷房が設計されていません。停電していればなおさらです。真夏の避難生活では、熱中症が最初の関門になります。
押さえるポイントは3つです。
- のどが渇く前に飲む。渇きを感じた時点ですでに水分は足りていません
- 水だけでなく塩分もとる。汗で失われるのは水分と塩分の両方で、水だけ飲み続けると体内の塩分濃度が下がってかえって具合が悪くなります
- 風の通り道を作る。窓を対角線上に2か所開ける、出入口付近の荷物をどかす、といった単純なことで体感が変わります
日中の車内は特に危険です。エアコンを切った車の中は短時間で高温になるため、「暑いから車で休む」という判断は、真夏には逆効果になり得ます。
3. 車中泊のエコノミークラス症候群 ── 熊本地震で33人が亡くなった
表にあったとおり、熊本地震では車中泊のあとに静脈血栓塞栓症などで少なくとも33人が亡くなりました。狭い座席で長時間同じ姿勢を続けると、脚の静脈に血のかたまり(血栓)ができ、それが肺の血管に詰まって起きる病気です。
車中泊そのものが悪いわけではありません。プライバシーが保てる、ペットと一緒にいられる、余震のときすぐ動ける、といった利点は確かにあります。問題は予防を知らずに何日も続けることです。日本循環器学会や厚生労働省が呼びかけている予防策は、次のようなものです。
- 4〜5時間ごとに車外に出て歩く。日中は意識して体を動かす
- 座ったままでも足首を上下に動かす/ふくらはぎをもむ
- 水分をこまめにとる。トイレを気にして水を控えるのが最も危険
- ゆったりした服装で、ベルトをきつく締めない
- できるだけ脚を伸ばせる姿勢で寝る。座席を倒す、荷物で足元を平らにする
- 弾性ストッキングがあれば使う
また車を止める場所も重要です。厚生労働省は、日陰で風通しのよい場所に駐車し、断熱シートなどを活用することを勧めています。エアコンをつけっぱなしにするアイドリングは、燃料切れや排気の逆流のリスクがあるため頼りきらないでください。
4. 「トイレを我慢して水を控える」という最悪の連鎖
断水すると、真っ先に困るのがトイレです。実際、今回の地震でも八代市では市内のほぼ全域、約6万戸で断水が発生しました。
ここで起きるのが「トイレに行きたくないから水を飲まない」という連鎖です。これは熱中症とエコノミークラス症候群の両方を同時に引き寄せる、最も避けたい行動です。避難生活での水分制限は、我慢ではなく危険と考えてください。
逆に言えば、トイレの見通しが立っていれば水をきちんと飲めるということです。備蓄の中でトイレは最も見落とされやすく、しかも代用がききません。トイレの女神PREMIUM 簡易トイレ 100回分のように回数のまとまったものを一箱置いておくと、断水の初動がまったく違います。
5. 夏の食中毒 ── 配給食を「あとで食べよう」としない
気温と湿度が高い時期は、配られたおにぎりや弁当、炊き出しの傷みが早くなります。避難所では冷蔵庫が使えないことも多く、常温で数時間置いた食品は危険です。
- 受け取った食事はできるだけ早く食べ切る。取り置きしない
- 手が洗えない前提で備える。アルコール消毒やウェットティッシュは水よりも軽く、優先度が高い
- 開封したものを翌日に回さない
下痢や嘔吐は、それ自体が脱水を招きます。真夏の避難生活では食中毒が熱中症の引き金にもなるため、切り離して考えないほうがよいところです。
6. 床で寝ない ── 睡眠と呼吸のためにできること
体育館の床に直接雑魚寝をすると、床から30cmほどの高さに舞うほこりを吸い込み続けることになります。加えて床は硬く冷たく、眠りが浅くなります。睡眠不足は持病の悪化や免疫の低下に直結します。
近年の避難所では段ボールベッドや簡易ベッドが導入されるようになりました。用意がある避難所なら遠慮せず使ってください。ない場合も、荷物や毛布で少しでも床から体を上げる、マットや新聞紙を重ねて断熱するだけで差が出ます。停電時は懐中電灯より、周囲全体を照らせるLepro LEDランタン(電池・充電の2way給電)のほうが夜間の移動や就寝時に使いやすいです。
7. 持病の薬と「お薬手帳」
熊本地震の災害関連死で、病院や高齢者施設の被災に伴う移動中の死亡が少なくとも27人あったことは前述しました。医療のつながりが切れることは、それだけで命に関わります。
- 常備薬は数日分を持ち出し袋に入れておく
- お薬手帳(または薬の名前を撮った写真)を持つ。手帳があれば避難先の医師や薬剤師が処方を再現できます
- かかりつけ以外でも薬をもらえる仕組みがあることを知っておく
これは一から集めると必ず抜けが出る部分です。まず防災グッズ32点セット(防災士監修)のようなセットで土台を作り、家族の人数分と常備薬だけを足すのが結局いちばん早く、確実です。
そもそも避難所に行くべきか ── 在宅避難という選択
家が安全だと確認できているなら、自宅で過ごす「在宅避難」も正当な選択です。慣れた環境で眠れて、トイレと水の見通しが立つなら、体への負担は避難所より小さくなります。
判断の目安になるのが、自治体が実施する応急危険度判定です。建物に貼られる紙の色で、緑は「調査済(使用可)」、黄は「要注意」、赤は「危険(立ち入り禁止)」を意味します。黄・赤の建物には戻らないでください。判定を待つ間も、外壁の大きな亀裂、建具が開かない、床の傾きといったサインがあれば自宅にとどまるべきではありません。
| 症状・サイン | 考えられること | すぐにすること |
|---|---|---|
| めまい・立ちくらみ・汗が止まる | 熱中症 | 涼しい場所へ移動し、水分と塩分。反応が悪ければ救急要請 |
| 片脚のむくみ・痛み、急な息切れ・胸の痛み | 静脈血栓塞栓症の疑い | 歩き回らずに医療スタッフへ。息切れは緊急 |
| 下痢・嘔吐 | 食中毒・感染症 | 水分補給と、他の人と隔てた場所の確保を相談 |
| 眠れない・食べられないが数日続く | 関連死につながる前段階 | 巡回の保健師・看護師に必ず伝える |
自分の家がどのリスクを持っているか、先に知っておく
避難生活の負担は、そもそも「避難が必要になるかどうか」で決まります。地震の揺れやすさ、土砂災害、洪水は、住んでいる場所によって差がはっきり出ます。
災害リスク診断では、住所を入力するだけで地震・土砂災害・洪水などのリスクをまとめて確認できます。避難所までの経路や、在宅避難が現実的かどうかを考える材料になります。
2026年7月の熊本の地震が、なぜ10年前と同じ県で起きたのかは別記事で解説しています。活断層の評価が公開情報として誰でも読めることも、あわせて紹介しています。
👉 なぜ熊本でまた震度7?10年前から「次はここ」と名指しされていた日奈久断層帯の南側
避難中の連絡と電池の問題は別記事にまとめています。無料開放されるWi-Fi「00000JAPAN」には、知らずに使うと危ない落とし穴があります。
👉 災害時のスマホ対策|00000JAPANの使い方と3つの注意点、電池を長持ちさせる設定7つ
まとめ
- 2016年熊本地震の犠牲者278人のうち、直接死は50人で、218人(約8割)は災害関連死だった。地震のあとの生活のほうが多くの命を奪っている
- 真夏の避難生活で最初に来るのは熱中症。のどが渇く前に、水分と塩分の両方をとる
- 車中泊ではエコノミークラス症候群で少なくとも33人が亡くなった。4〜5時間ごとに歩き、脚を伸ばして寝て、水を控えない
- トイレを我慢して水分を控える連鎖が最も危険。簡易トイレの備蓄は水や食料と同じ優先度で考える
- 夏は配給食を取り置きしない。食中毒は脱水の引き金になる
- 床で直接寝ない。段ボールベッドやマットで体を床から離すと睡眠と呼吸が守られる
- 常備薬とお薬手帳を持ち出し袋へ。医療のつながりが切れることが関連死に直結する
揺れが収まったあとに始まる生活のほうが長く、そこで守れる命のほうが多いというのが、過去の地震が残した最大の教訓です。今日のうちにトイレと水と薬だけでも確認しておいてください。
真夏の避難で効くもの
夏の避難生活で人が亡くなる原因は、熱中症と車中泊の血栓症にほぼ絞られます。対策が具体的な順に並べます。
汗で失われるのは水分と塩分の両方です。水だけ飲み続けると体内の塩分が薄まってかえって具合が悪くなります。停電で冷蔵が使えない前提でも常温で置いておけます。
避難所は大人数が長時間過ごす前提で冷房が設計されていません。据え置きの扇風機と違って、並んでいる間や移動中も首元を冷やせるのが利点です。
車中泊のエコノミークラス症候群対策として、厚生労働省や日本循環器学会が弾性ストッキングの使用を挙げています。歩く・水を飲むことが基本で、これはその補助です。
停電下で扇風機とスマホを動かせるかどうかが、夏の避難生活の体感を大きく変えます。大型より、避難所や車まで持ち運べる重さのほうが実際に使えます。
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