🗨️「地震で家が傾きました。このまま住み続けていいのでしょうか」
住み続けてよいかどうかは、国の基準が決めてくれるものではありません。数字で決まっているのは、罹災証明書の区分を出すときに使う傾きの線のほうです。木造なら1階部分の傾きが20分の1以上で「全壊」、60分の1以上なら少なくとも「半壊」。測るのは下げ振り1本でできますが、区分を決めるのは市区町村の調査です。
[災害] この記事の要点
2026年9月19日 発表
- 地震のあと家が傾いた気がして、このまま住んでよいのか決めかねている人
- 罹災証明書の区分に納得できず、何を根拠に申し出ればよいのか分からない人
- 直して住むか建て替えるかを、工事の見積もりだけで決めようとしている人
先に結論
- ✓ 木造なら、下げ振りを1.2m垂らして下の先が6cmずれていたら「全壊」
- ✓ ずれが2cm以上6cm未満なら、少なくとも「半壊」。15%で止まりではありません
- ✓ 鉄骨・鉄筋コンクリートは1/30(1.2mで4cm)から。液状化で調べると線は1/100まで下がります
全壊の線は1/20。木造なら下げ振り1.2mで6cmです
家の傾きを役所がどう見るかは、全国で同じ手順が決まっています。内閣府(防災担当)の「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」です。その第1編、地震による被害のところに、傾きだけで結論が出る項目があります。ただし線は1本ではありません。構造と、どちらの編で調べるかで変わります。まず木造・プレハブから見ます。
外壁又は柱の傾斜を下げ振り等により測定し、判定を行う。
傾斜は原則として住家の1階部分の外壁の四隅又は四隅の柱を計測して単純平均
内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」第1編 地震による被害
ここで出てくる「1/20」は角度ではなく、比です。下げ振りの垂直部分の長さに対して、下の先が横にどれだけずれたか。その割合だけを見ます。そして指針は、木造・プレハブの例として、糸の長さを1,200mmにしたときの数字まで出しています。
| 1階部分の傾き | 下げ振り1.2mでのずれ | 角度 | 被害認定での扱い(木造・プレハブ) |
|---|---|---|---|
| 1/20以上 | 6cm以上 | 約2.9度以上 | 損害割合50%以上=全壊。ここで調査終了 |
| 1/60以上1/20未満 | 2cm以上6cm未満 | 約0.95〜約2.9度 | 傾斜で15%+部位の判定。少なくとも損害割合20%以上30%未満=半壊 |
| 1/60未満 | 2cm未満 | 約0.95度未満 | 傾斜による判定は行わず、部位による判定のみ |
2cm以上6cm未満は、15%で止まりではありません。指針はこの段に括弧を付けて、「少なくとも、当該住家の損害割合を20%以上30%未満とし、『半壊』と判定する」と続けています。部位の損傷がどれだけ軽くても、この帯に入った時点で半壊より下にはならない、という書き方です。
いっぽう1/60未満、下げ振り1.2mで2cm未満のときは、傾斜による判定そのものを行いません。ただし区分が出ないわけではなく、屋根・外壁・内壁・床・建具・基礎などの部位ごとの損傷を積み上げて損害割合を出します。区分が6段階のどこに落ちると何が受け取れるのかは、全壊と半壊で、受け取れる額は最大300万円ちがうにまとめてあります。
下げ振りなんて家にありません。
糸におもりを結べば形にはなります。ただし、これは自分の家がどの帯にいるかを知るための測り方です。区分を決めるのは市区町村の調査で、測った数字がそのまま罹災証明書に載るわけではありません。
揺れた瞬間に、部屋の中で起きることを減らすもの
地震のけがの3〜5割は、屋内の家具類の転倒・落下・移動によるものです(東京消防庁)。壁にネジを打てない部屋でもできる手から並べます。
東京消防庁の実験では、L型金具で壁に直接ネジ止めするのが最も効果が高いとされています。賃貸で壁に穴を開けられない部屋での代わりがこれです。家具の両端の側板部を、できるだけ奥で突っ張ります。天井側にも強度が要ります。
突っ張り棒だけだと効きが落ちます。同じ資料が、ポール式にはストッパー式や粘着マット式の併用をすすめています。マット単独でも効果は小さいので、上の棒と2つで1組と考えてください。
お湯でも水でも作れて、袋のままおにぎりの形になります。断水すると鍋も食器も洗えません。洗い物の出ない形を先に入れておくと、水の減り方が変わります。
飲料水は1人1日3L。4人家族の1週間分で84L=2Lボトル42本なので、6本入りだと7ケースぶんです。5年保存タイプなら入れ替えの手間が減ります。
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測るのは1階の外壁の四隅。平均した数字で決まります
指針は、測る場所まで決めています。1階部分の外壁の四隅、または四隅の柱。そして四隅を計測して単純平均します。ここを知らないまま調査に立ち会うと、話がかみ合いません。
傾きは、いちばん傾いている1か所ではなく、四隅の平均で決まります。「この柱がひどい」と1か所だけを示しても、その数字は判定の入口に乗りません。逆に、四隅のうち1つが大きくても、残り3つが小さければ平均で薄まります。

外から見た結果が使われる道もあります。指針には、被災建築物応急危険度判定において「一見して危険」と判定された住家及び「建築物の1階の傾斜が1/20超」と判定された住家(木造)については、この判定結果を参考として「全壊」の被害認定を行うことも可能である、と書かれています。ただし同じ文は「応急危険度判定の判定結果を参考として被害認定を行うことができない場合もあるので、留意する必要がある」と続きます。参考にできることがある、という程度の話です。
鉄骨と鉄筋コンクリートは1/30。1.2mで4cmです
ここを取り違えている記事が多いところです。1/20は木造・プレハブの線で、非木造(鉄骨造・鉄筋コンクリート造)は別の数字が指針に書かれています。1/30、下げ振り1.2mなら4cmから全壊です。
| 1階部分の傾き | 下げ振り1.2mでのずれ | 被害認定での扱い(非木造) |
|---|---|---|
| 1/30以上 | 4cm以上 | 損害割合50%以上=全壊。ここで調査終了 |
| 1/60以上1/30未満 | 2cm以上4cm未満 | 傾斜による損害割合20%+部位の判定 |
| 1/60未満 | 2cm未満 | 傾斜による判定は行わず、部位による判定のみ |
この段には例外がもう1つあります。基礎ぐいを用いた住家は、傾斜が1/60以上1/30未満であっても、地震に伴う液状化等の地盤被害で基礎の最大沈下量または最大露出量が30cm以上になっていれば、損害割合50%以上として全壊と判定されます。傾きが浅くても、沈み込みの量で全壊に届く道がある、ということです。
うちは鉄骨だから、安心ということですか。
線が違うというだけで、安全かどうかの判断ではありません。被害認定は住み続けてよいかを決めるものではなく、支援や減免の区分を出すための物差しです。
液状化で傾いたときは、線が1/100に下がります
先に前提を1つ。液状化は「地震による被害」の外にある話ではありません。第1編の定義そのものに入っています。
地震による被害とは、地震により、地震力が作用することによる住家の損傷及び地震に伴う液状化、斜面崩壊、亀裂等の地盤被害による住家の損傷をいう。
なお、地震による地盤の液状化等による地盤被害が発生した場合や、斜面崩壊等による不同沈下や傾斜が発生した場合は、「第4編 液状化等の地盤被害による被害」に定める方法で調査を行うことも可能である。
内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」第1編 地震による被害
「行うことも可能である」。義務でも、第1編を使ってはいけないという意味でもありません。どちらの方法で調べるかは調査する市区町村が決めます。そして第4編の線は、第1編とはっきり違います。
| 傾き(1.2mでのずれ) | 第1編・木造で見ると | 第4編・液状化等で見ると |
|---|---|---|
| 1/20以上(6cm〜) | 全壊 | 全壊 |
| 1/60以上1/20未満(2〜6cm) | 15%+部位(少なくとも半壊) | 大規模半壊 |
| 1/100以上1/60未満(1.2〜2cm) | 傾斜では判定しない | 半壊 |
| 1/100未満(1.2cm未満) | 判定しない | 判定しない |
下げ振り1.2mで15mmのずれは、揺れの物差しでは0点、液状化の物差しでは半壊です。第4編は、床の傾斜が1/100以上の場合も同じ半壊の帯に入れています。だから地盤が緩んだ土地では、どちらの方法で調査してもらうのかが結論を動かします。自分の土地が液状化しやすい場所なのかは、地震の前でも後でも調べられます。調べ方は重ねるハザードマップ 液状化/同じ住所で答えが違うに書きました。
この数字は罹災証明の物差し。赤い紙とも保険とも別に動きます
傾きの数字を調べていると、性質の違う3つがすぐ混ざります。誰が、何のために測るのか。そこで分けると混ざりません。
- 応急危険度判定(赤・黄・緑の紙)……発災直後に、その建物へ今入ってよいかを応急で判断するもの
- 住家被害認定(罹災証明書)……市区町村が行う調査。支援や減免の土台になる区分を出す。この記事の数字はここの物差しです
- 地震保険の認定……損害保険会社が約款にもとづいて行うもの。判定する人も基準も別です
3色の紙の意味と、罹災証明書との違いは熊本地震「赤・黄・緑」のステッカー、応急危険度判定とは?罹災証明書との違いで先に整理しました。ここでは傾きの数字だけを追います。
「建て替えるしかない」の前に、原因を2つに分ける
同じ迷いは、地震のたびに書き込まれています。Yahoo!不動産の「教えて!住まいの先生」に、そのままの質問が残っていました。タイトルは「地震で少し傾いた家は建て替えるしかないのでしょうか?」。ベストアンサーが、この記事の芯と同じところを指しています。
どの程度の傾斜かにもよると思います。また、傾斜の原因が重要です。地盤沈下、液状化等による、支持地盤の傾斜なのか、上部構造体の損傷による傾斜なのかで判断は変わると思われます。
建て替えない場合の改修としては、ジャッキアップを行い、傾斜の原因部分を改修するという事になりますが、必ずしも建て替えなければならないという事は無いと思います。
Yahoo!不動産 教えて!住まいの先生「地震で少し傾いた家は建て替えるしかないのでしょうか?」のベストアンサーより
程度と原因。見るのはこの2つだ、という指摘です。そして決めるときには数字がもう1つ要ります。工事の見積もりだけでは、高いのか安いのかを判断できないからです。
比べる相手は、その家自体のいまの値段です。国土交通省の不動産取引価格情報から、熊本県八代市の中古戸建の成約36件(2024年10〜12月期〜2026年1〜3月期)を当サイトで集計すると、延床坪単価の中央値は223,829円でした。このうち築31〜40年の16件にしぼると186,413円です。延床40坪の家として単純に掛けると、約745万円になります。
工事の見積もりだけ見ればいいのでは。
片側だけだと、高いか安いかを決められません。700万円台の家に何百万円かけるのか、という形に並べて初めて、直すか建て替えるかが自分の数字で選べます。

建てた年で、倒壊した割合は19.4%と0.7%に分かれました
傾きの話をさかのぼると、建てた年に行き着きます。能登半島地震のあと、日本建築学会が輪島市・珠洲市・穴水町の市街地で悉皆調査を行い、その集計が国土交通省の社会資本整備審議会 建築分科会に資料として出ています。木造4,909棟の内訳です。
| 建築年代 | 調査棟数 | 倒壊・崩壊 | 大破 |
|---|---|---|---|
| 1981年以前 | 3,408棟 | 662棟(19.4%) | 676棟(19.8%) |
| 1981〜2000年 | 893棟 | 48棟(5.4%) | 103棟(11.5%) |
| 2000年以降 | 608棟 | 4棟(0.7%) | 8棟(1.3%) |
| 木造全体 | 4,909棟 | 714棟(14.5%) | 787棟(16.0%) |
1981年以前の家は19.4%が倒壊・崩壊し、2000年以降の家は0.7%でした。同じ資料には、2000年以降に倒壊・崩壊した4棟のうち3棟は壁量不足または壁の配置の釣り合いの規定を満たしていないことを確認した、と注記されています。新しければ安全という話ではありません。
なお、建てた年の数え方には例外があります。1981年に完成した家が新耐震とは限りません。そこは1981年の家が新耐震とは限りませんで、建築確認と完成の日付の違いから整理しています。
私はこう見ています
「家の傾き」で検索すると、上位に並ぶのはほとんどが工事や買取を受ける会社のページです。書いてあるのは修理費用の相場で、結論はたいてい「まずは無料診断を」に着地します。私は、そこへ行く前に読者が自分で持てる数字があると考えています。1/20・1/30・1/100は、どの会社に頼んでも変わらない、国が決めた同じ物差しだからです。しかも構造と原因で3通りに分かれることまでは、ほとんど書かれていません。
令和8年熊本地震(2026年7月28日、マグニチュード7.1、最大震度7)から、約7週間が過ぎました。避難の段階から、住まいをどうするかへ論点が移る時期です。急いで結論を出す前に、まず四隅を測って数字を紙に書く。順番としては、そこからだと考えています。
よくある質問
Q. 自分で測った数字で、罹災証明書の区分は決まりますか。
A. 決まりません。調査と判定を行うのは市区町村です。自分で測る意味は、四隅の数字を控えて、調査のときに示せるようにしておくことにあります。
Q. 液状化で沈んで傾いた場合も、1/20で見るのですか。
A. 指針は、液状化等の地盤被害による住家の損傷も第1編の「地震による被害」に含めたうえで、第4編に定める方法で調査を行うことも可能だとしています。第4編で見ると線は1/100まで下がり、1/100以上1/60未満で「半壊」、1/60以上1/20未満で「大規模半壊」です。
Q. 応急危険度判定で赤い紙が貼られたら、全壊ということですか。
A. 連動しません。赤い紙はその建物へ今入ってよいかの応急の判断です。指針は応急危険度判定の結果を参考にできる場合があるとしつつ、参考にできない場合もあるので留意するように、とも書いています。
生活・仕事にどう効くか
- 調査に立ち会うとき:四隅の数字を4つ控えて出せるかどうかで、伝わる量が変わる。いちばん傾いた1か所を訴えても判定の形にならないので、準備がないまま調査が終わってしまう。
- 下げ振り1.2mで15mmのずれだったとき:揺れの物差しで見ると傾斜の欄は0のまま。液状化等の物差しで見ると「半壊」に届く。どちらで調べるのかを聞かないと、この差に気づかないまま区分が決まる。
- 鉄骨造・鉄筋コンクリート造の家のとき:木造の1/20を自分の家に当てはめると、全壊の線を実際より遠くに見積もることになる。非木造の線は1/30で、下げ振り1.2mなら4cmから。
結局どうすればよいか
- 調査の前に、1階部分の外壁の四隅を下げ振りで測って、4か所の数字と平均を紙に控えておく
- 自分の家が木造なのか非木造なのかで線が違うので、どちらの数字で見るのかを先に確かめる
- 地盤の液状化が疑われるなら、第1編と第4編のどちらの方法で調査するのかを市区町村に聞く
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
公式出典
- 内閣府(防災担当)「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」第1編 地震による被害
- 内閣府(防災担当)「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」第4編 液状化等の地盤被害による被害
- 内閣府(防災担当)「災害に係る住家の被害認定」
- 国土交通省 社会資本整備審議会 建築分科会 資料(能登半島地震における建築物の被害の分析)
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ(不動産取引価格情報)
- 内閣府「令和8年熊本地震による被害状況等について」
- 国土交通省「令和8年熊本地震における被害と対応について」
更新履歴
- 2026年9月19日 初版を公開
※本記事は2026年9月19日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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