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罹災証明書の写真を撮り忘れた もう出ないの?

結論からいうと、写真を撮り忘れても罹災証明書は出ます。写真は申請の必須書類ではなく、市の職員が現地を見に来る代わりに使う材料だからです。この紙1枚で、被災者生活再建支援金は最大300万円まで動きます。

ただし、それは家に被害が残っている間の話です。修理を終えた家、解体した家には、来てもらっても見るものが残っていません。富山市は自分の案内にこう書いています。「すでに修理または解体済みの場合で上記の写真がない場合は、被害の程度が確認できないため罹災証明書の交付はできません」。

この記事でわかること

  •  岐阜県郡上市の申請案内は、被害の写真を「省略可。写真を撮り忘れた際はご相談ください」と書いている
  •  交付できないと書いている市も、条件は「すでに修理または解体済みの場合」。片付けただけの家とは別の話
  •  写真だけで判定が終わるのは軽い被害のときだけ。仙台市は損害割合が20%以上と出たら必ず実地調査に切り替える
目次

同じ制度なのに、市によって書いてあることが正反対です

「罹災証明書 写真 撮り忘れた」で調べると、返ってくる答えが割れます。しかもぼかした書き方ではなく、正面からぶつかっています。

発信元 書いてあること
富山市
(更新 2025年8月18日)
すでに修理または解体済みの場合で上記の写真がない場合は、被害の程度が確認できないため罹災証明書の交付はできません
岐阜県郡上市
(2023年10月2日)
被害の状況がわかる写真(省略可。写真を撮り忘れた際はご相談ください)
大阪府藤井寺市 判断できない場合には、必要に応じて現地調査を行うことがあります。写真による被害区分の判定を希望しない場合は、写真の添付は必須ではありません

分かれ目は「片付けたか」ではなく「直したか、壊したか」です

写真が何のためにあるのかを見ると、割れている理由が分かります。富山市は、交付できないと書いたのと同じページで、写真判定(自己判定)方式をこう説明しています。

写真判定(自己判定)方式とは、申請者が住家の被害の程度を「準半壊に至らない(一部損壊)」の被害であると自己判定して写真判定を希望する場合に、被害を受けた住家の写真から「準半壊に至らない(一部損壊)」と判断できるときに、現地調査を省略して罹災証明書を交付することができる方式です。

写真は、現地調査を省略するための道具です。本来の判定材料は家そのもので、写真はその代わりに使うもの。だから写真が無ければ、家を見に来てもらえばいい。ここまでが普通の流れです。

その普通の流れが崩れるのは、家のほうを先に元へ戻してしまったときです。内閣府が令和2年7月5日に各都道府県の担当部局長へ出した事務連絡には、こう書かれています。

その前に建物の除去や被害箇所がわからないような修理、片付け等をしてしまうと調査が困難となるため、あらかじめ、可能な限り被災者が被害状況について写真撮影を実施し、保存しておいていただくよう広報の徹底をお願いいたします

国の側の言葉は「調査が困難となる」で、「交付できない」ではありません。富山市が交付できないと書いているのも、条件を読めば「すでに修理または解体済みの場合」に限られています。明石市は「調査の前に片付けや修理、汚れの除去等を行ってしまうと被害の確認ができず、証明書を交付できない場合があります」と、できない場合がある、という書き方をしています。

片付けても、壁のひび、床の傾き、瓦の欠け、壁に付いた水の跡は家に残ります。畳を運び出しても水の跡は消えませんが、壁を張り替えたら消えます。

家にした作業 写真が無いとき
ごみを出した・室内を掃除した 現地調査で判定できる
壊れた箇所を修理した 判定の材料が残らない
建物を解体した 判定の材料が残らない

もう1つ、時間の問題があります。茅ヶ崎市が公開している、り災証明書のよくある質問のページは、申請期限をこう書いています。「申請期限は設けていませんが、被災から長期間経過すると、その被害が災害によるものか判別困難となり、り災判定が行えなくなる恐れがあります」。いっぽう愛知県新城市は「申請期間 原則として、災害発生後90日以内に税務課窓口(持込・郵送)で申請を行ってください」と日数で切っています。同じ制度で、期限なしと90日が並びます。ただし期限を設けていない市でも、家のほうが先に元へ戻っていきます。

足場が組まれ、内装をはがして工事中の建物。前に一輪車と資材が置かれている
直したあとの家には、被害の程度を判定する材料が残っていません(写真: Pexels)

\うちが何の想定区域に入っているかは、住所だけで確かめられます/

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写真だけで終わるのは、被害が軽いときだけです

では写真さえあれば全部が早く済むのか、というと、そちらも違います。内閣府の検討会に出された「自己判定方式等について」という資料に、自治体が実際にどう運用したかが載っています。

被害が軽微で明らかに「半壊に至らない」に該当する物件については、自己判定方式を採用して調査を簡素化する、あるいは現地調査そのものを行わないことも考えられます

線の引き方をいちばんはっきり示しているのは仙台市の運用です。

本シートにより損害割合が「20%以上」と判定された場合には、そのまま「半壊」以上と判定することはせずに、必ず実地調査を行って実地調査用の調査票を使用して判定することとした

裏返すと、半壊以上を主張したいなら、写真の有無にかかわらず人が家を見に来ます。写真が無いことが効いてくるのは軽い被害のほうで、重い被害ほど現地調査が本体になる。むしろ急いで写真判定を選ぶと、その場で「準半壊に至らない(一部損壊)」という結果に同意したことになります。

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同意すると、あとで調べ直してもらえなくなる市町村があります。山形県遊佐町は自己判定方式の説明にこう添えています。「※上記の自己判定方式について同意された場合には、再調査は行いませんのでご注意ください」。急いで受け取る前に、自分の市町村の扱いを窓口で確かめてください。

市の調査員は、この内容で撮っています

写真についていちばん材料が多いのは、被災者向けの案内ではなく、国が調査員に宛てた文書のほうです。内閣府政策統括官(防災担当)付 参事官が令和2年7月5日に出した「住家の被害認定調査における写真撮影に係る留意事項について」に、撮る内容と最低限の枚数が並んでいます。

撮る内容 枚数
建物の全景写真は可能な限り周囲4面を撮影 4枚
浸水被害等がある場合、メジャー等をあてて全体を写した遠景と、目盛りが読み取れる近景 2枚
水害における外力が作用することによる一定以上の損傷が発生していると判断した場合、その内容が分かる写真 2枚
建物の傾斜角を撮影する場合、建物4隅の測定結果 4枚
室内を撮影する場合、被災した部屋ごとの全景 複数枚
被害箇所の面積割合が分かるよう、被害箇所も含む見切り範囲 複数枚
被害程度が分かるよう、被害箇所のクローズアップ 複数枚
!
この表は調査員に向けた留意事項です。被災者に同じ枚数を求めるものではありません。「うちはここまで撮れていない」と数える表ではなく、調査に来てもらえば市の側がこの内容で記録を残す、と読んでください。

撮り忘れた人にいちばん効いてくるのは、この文書の最後の一文です。

この写真は、被災者から再調査依頼があった場合、依頼の内容を精査する際の根拠資料にも活用されるため、十分な枚数を撮影するようお願いいたします

自分で撮っていなくても、現地調査を受けた家には市の側の写真が残ります。あとで判定に納得できなくなったときの材料は、そこにもあるということです。

壁にメジャーをあてて長さを測っている両手
国が調査員に示しているのは、メジャーをあてた遠景と、目盛りが読み取れる近景の2枚です(写真: Pexels)

判定に納得できないときは、もう一度調べてもらえます

茅ヶ崎市は不服の申し出を「再調査を依頼することが可能です。再調査を希望される際は、り災証明書をお持ちになり、資産税課で申請してください」の一文で済ませています。

では、実際に頼む人はどれくらいいるのか。内閣府の「災害に係る住家被害認定業務 実施体制の手引き」に、平成24年8月14日の京都府南部地域豪雨で京都府宇治市が出した実績が載っています。

項目 件数
建物被害件数 2,275棟
集中交付(9月10日〜23日の14日間) 1,348件
平成24年度末までの交付件数 1,605件
再調査件数 78件(交付件数の約4.8%)

1,605件のうち78件。証明書を受け取った21人に1人しか、もう一度見てくださいと言っていない計算になります。同じ手引きは、この宇治市の対応をこう記録しています。「再調査には即日対応したところ、被災者の心証がよかった」。窓口の側は、頼まれることを織り込んで動いています。

読者

頼むとしたら、いつまでにでしょうか。もう証明書は受け取ってしまいました。

おかあさん

起点は受け取った日で、長さは自治体ごとに違います。山形県遊佐町は「2次調査の申請は、罹災証明書の交付を受けた日から1か月以内です」、明石市は「交付日から3か月以内に再調査の申請を行うことができます」。同じ手続きで1か月と3か月が並んでいますので、日数は必ず自分の市町村で確かめてください。

遊佐町は持ち物も指定しています。「2次調査を申請される場合は、1次調査で交付された罹災証明書の原本を提出してください」。受け取った紙は、使うまで手元に置いておくものだと考えたほうが安全です。

そのうえで、もう一度調べてもらうことはノーリスクではありません。同じ遊佐町のページは、2次調査についてこう続けています。

2次調査を申請された時点で、1次調査で交付された罹災証明書の効力は失われます。
2次調査の結果、被害の程度が1次調査よりも下がる場合があります。その場合、1次調査の結果に戻ることはできません。

手元の紙より良い判定が出ることを期待して申請する手続きですが、下がったときに元へは戻せません。頼む前に、どこが判定に反映されていないと思うのかを言葉にしておくほうが確実です。

まだ直していない・壊していない人が、今日やること

ここまでを順番にします。

  1. 修理と解体より先に、申請を出す。写真が無いことより、家が無いことのほうが重い。順番を入れ替えるだけで材料が残ります
  2. 写真が無いと言われても、そこで止めない。郡上市のように「写真を撮り忘れた際はご相談ください」と最初から書いている自治体があります
  3. まだ手を付けていない箇所が1つでもあるなら、今から撮る。壁の水の跡、瓦の欠け、建具の建て付け。撮り方は下の記事にまとめてあります
  4. 家電や設備は、罹災証明書の判定を動かしません。茅ヶ崎市は「り災証明書は、家屋等の被害の度合いを証明するもの」と書いたうえで、壁掛け設置エアコン、門扉、自動車、年数の経過による劣化が原因の雨漏りを、発行されない例に挙げています。これらは被災届出証明書という別の証明になります
  5. 保険の請求は、罹災証明書が出るのを待たなくてかまいません

保険との順番は家が壊れたとき、罹災証明と火災保険はどっちが先?——順番はなく同時に動けますに書きました。浸水した家の場合は、床上か床下かだけで区分が決まるわけではありません。境目の位置は浸水の罹災証明は「床上か床下か」だけではありません——千葉の大雨、床から10cmの間に境目が2つありますで整理しています。

わたしはこう考えます

自治体のページが「写真がないと交付できません」と強く書くのは、片付ける前に撮ってほしいという広報の目的があるからだと考えています。発災の当日に読む人には、その強さが要ります。

ただ、同じページを1週間後に開く人がいます。もう片付けてしまった人にとって、その一文は宣告に読めます。実際に手遅れなのは修理や解体まで進んだ場合だけで、片付けただけなら家に材料は残っている。同じ文章が、読む日によって別の意味になるのがこの手続きの厄介なところだと思っています。

だから、撮り忘れたことを悔やむより先に、まだ手を付けていない場所を数えるほうが早い。写真は撮り直せませんが、家はまだそこにあります。

よくある質問

写真を1枚も撮っていません。申請できますか

できます。郡上市の申請案内は被害の写真を「省略可。写真を撮り忘れた際はご相談ください」と書いています。大阪府藤井寺市も「写真による被害区分の判定を希望しない場合は、写真の添付は必須ではありません」と申請案内に明記したうえで、「判断できない場合には、必要に応じて現地調査を行うことがあります」としています。写真が無い場合は、現地調査で判定してもらう流れになります。

写真だけで先に出してもらったほうが早いですか

早くはなります。ただし写真判定(自己判定)方式は、申請者が「準半壊に至らない(一部損壊)」と自己判定し、その結果に同意することが前提の方式です。仙台市は自己判定のシートで損害割合が20%以上と出た場合、必ず実地調査に切り替えると決めています。半壊以上になりそうな被害なら、急がずに現地調査を受けるほうが結果に近づきます。

出典

※ 2026年9月7日時点で公開されている内容にもとづいています。罹災証明書の申請期限、再調査の申し出期限、必要な書類は市区町村ごとに違います。実際の手続きは、お住まいの市区町村の案内でご確認ください。

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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