🗨️「Hatch Out(ハッチアウト)が破産したと聞きましたが、何があったんですか?」
大阪の不動産開発会社Hatch Out(ハッチアウト)と関係会社の八建設が2026年8月31日に破産しました。負債は2社合わせて約108億9,535万円で、帝国データバンクによると大阪の不動産会社としては過去10年で最大規模です。売上高は1年で4.3倍に伸びていましたが、その裏で膨らんだ約90億円の借入を返せなくなりました。
[不動産] この記事の要点
2026年9月14日 発表
- Hatch Outと契約中だった買主・入居予定者
- 八建設など工事代金が未回収の取引先
- 中小の不動産開発会社から物件を買おうとしている人
何が起きたか
大阪市の不動産開発会社「株式会社Hatch Out(ハッチアウト)」と、関係会社で建築工事業の「株式会社八建設」が、2026年8月31日に大阪地裁から破産手続き開始決定を受けました。帝国データバンクによると、負債総額は2社合わせて約108億9,535万円で、大阪の不動産会社としては過去10年間で最大規模です。
| 会社名 | 負債額 | 債権者数 | 設立 |
|---|---|---|---|
| 株式会社Hatch Out | 約107億6,283万円 | 約138名 | 2021年9月 |
| 株式会社八建設 | 約1億3,252万円 | 約4名 | 2024年3月 |
破産管財人には岡田祐輝弁護士が選任されました。両社の代表者はいずれも清宮直樹氏で、八建設はHatch Outが手がける開発案件の施工を担う協力会社でした。
Hatch Outとはどんな会社か
Hatch Outは2021年9月に大阪市内で設立された宅地建物取引業者です(免許番号:国土交通大臣(1)10438号、資本金2,500万円)。事業の柱は2つありました。1つは地主や不動産業者から土地を仕入れ、企画・開発をしたうえでハウスメーカーなどに販売する開発事業。もう1つは、テナントやオフィスビル物件を扱う自社の不動産情報サイト「Hatch Out RENT(ハッチアウトレント)」を通じた賃貸仲介です。首都圏での案件が増えたことを背景に、登記上の本店を大阪に置きながら千葉市中央区に千葉本社を構え、東京にも拠点を置く「3拠点体制」を敷いて、複数の関係会社とともに事業を広げていました。
免許番号の「(1)」ってなんですか?
宅建業の免許は5年ごとに更新され、括弧の数字が更新回数です。(1)は免許を取ってからまだ5年未満という意味で、Hatch Outは2021年設立なので、今回が最初の更新期間中でした。
売上15.7億円→67.2億円、1年で4.3倍に伸びた直後の破産
東京商工リサーチによると、Hatch Outの売上高は2025年1月期が約15億7,600万円、直後の2026年1月期は約67億2,600万円でした。1年で4.3倍という急成長のさなかでの破産です。「売上が伸びているのになぜ潰れたのか」という疑問こそが、この倒産を理解するうえでの核心です。
売上が4倍になっても、手元の現金は同じようには増えません。不動産開発では、土地を仕入れてから販売代金が入るまでに数か月から1年以上かかります。売上高に計上されるのは物件が売れたときで、それより前の仕入れ・造成・建築の段階では、先に借入で資金を立て替える期間が続きます。
「90億円近い借入」はどう膨らんだのか
帝国データバンクの報道によれば、Hatch Outは開発案件を増やすたびに、一般企業や金融機関から借入をして開発資金に充てていました。累計では90億円近くに達していたとされています。どの金融機関から、いつ、いくら借りたかという個別の内訳は、本稿執筆時点で公表されていません。
不動産開発の資金は、次の順で動きます。
- 土地を借入金で仕入れる
- 造成・建築費も借入で立て替える
- 完成した物件を販売し、その代金で借入を返す
このうち最後の「販売」が計画どおりに進まないと、返すはずだった借入だけが残ります。Hatch Outは案件数を増やすほど、この「まだ回収できていない仕入れ」が積み上がる構造になっていました。
なぜ不動産会社はこれほど借入に頼るのか
小売業や飲食業なら、仕入れた商品はその日のうちに現金へ変わります。ところが不動産は1件あたりの仕入れ値が数千万円から数億円と大きいうえ、造成・建築・販売までの期間が長く、自己資金だけでまかなうと扱える件数が極端に限られます。だから多くの不動産会社は、案件ごとに借入(プロジェクトファイナンス)を起こして土地を仕入れ、販売代金で個別に返済する仕組みで事業を回しています。1件ごとに見れば筋の通った仕組みですが、同時に走る案件の数が増えるほど、借入の残高は雪だるま式に膨らみます。Hatch Outが3拠点・複数の関係会社体制を敷いたことは、事業拡大であると同時に、借入残高を増やす方向にも働いていたことになります。不動産会社の倒産がどのような順序で起きるかは、こちらの解説にも整理しています:不動産会社が倒産するルート。
売上があるのに資金繰りが破綻するとはどういうことか
売上が伸びているのに、なぜ倒産するんですか?
売上が伸びるほど、まだ回収できていない仕入れ代金も同時に増えるからです。帳簿上の利益と、手元の現金は別物です。
Hatch Outの場合、売上高そのものは1年で4.3倍に伸びましたが、それは「まだ販売代金として回収しきれていない仕入れ」も同時に増えたことを意味します。不動産販売が計画より遅れると、借入の返済原資である現金が入ってこず、返済を続けながら次の仕入れ資金も必要という板挟みになります。
帝国データバンクの報道では、Hatch Outはこの状態に加えて、滞納していた税金や社会保険料(公租公課)の支払いを求められたことが、資金繰りを最終的に行き詰まらせた要因とされています。具体的な滞納額や滞納期間は公表されていません。税務署や年金事務所は、滞納が一定期間続くと財産の差し押さえに動くため、借入の返済と公租公課の支払いのどちらを優先するか迷っている余裕自体がなくなります。東京商工リサーチによれば、同社は2026年5月18日の時点で事業を停止していたとされ、破産申請の8月31日までの約3か月半は、実質的に活動が止まった状態だったとみられます。
帝国データバンクが「大阪の不動産会社で過去10年最大」とする根拠
帝国データバンクは自社が持つ企業信用調査・倒産データベースをもとに、大阪府に本店を置く不動産会社の倒産案件を過去10年分照合し、今回の負債総額約108億9,535万円が最大だったとしています。個別のランキング表は公表されていませんが、同社は全国の企業倒産を日々収集している信用調査の専門機関で、この種の「過去◯年で最大」という評価は自社データベースとの照合にもとづくものです。
不動産業界全体でも、中小事業者の倒産は増えています。帝国データバンクが2026年9月に発表した集計は次のとおりです。
| 区分 | 件数・割合 |
|---|---|
| 2025年(過去最多) | 133件 |
| 2026年1〜8月 | 86件(前年同期87件) |
| 2026年通年の見込み | 約130件 |
| 負債5,000万円未満の割合 | 69.8% |
※ 帝国データバンク「不動産代理・仲介業の倒産動向(2026年1-8月)」より。Hatch Outが含まれる不動産開発業とは別区分(不動産代理・仲介業)の統計です。
大手仲介業者とのDX投資力の差が、中小事業者の倒産が高止まりする背景にあると分析されています。今回のHatch Outはこの仲介業の統計には含まれない開発業ですが、負債108億円という規模は、この統計に並ぶ中小事業者の倒産とは一桁違う金額です。
この倒産から確認しておくべきこと
私はこの倒産を、急拡大そのものが原因というより、案件ごとの借入を「まだ売れていない土地・建物の将来の売上」で返し続ける自転車操業型の資金繰り設計が、販売の一時的な停滞で一気に破綻した例だと見ています。売上高が4.3倍になったという数字だけを見れば優良企業に映りますが、その裏で借入残高も同じペースで積み上がっていたと考えるのが自然です。
Hatch Outと契約中だった買主・入居予定者、工事代金が未回収の取引先は、破産管財人(岡田祐輝弁護士)の案内に従って債権の届け出などの手続きを進めることになります。これから中小の不動産開発会社から新築一戸建てや土地を買おうとしている人は、契約前に宅建業免許番号の更新回数(括弧内の数字)や、その会社が同時にいくつの案件を抱えているかを確認しておくと、今回のような資金繰り破綻に巻き込まれるリスクを見分けやすくなります。
生活・仕事にどう効くか
- 契約中の買主・入居予定者:手付金や中間金を払っている場合、破産管財人(岡田祐輝弁護士)の案内に従って債権届け出などの手続きが必要になります。
- 取引先・下請け業者:八建設のように元請け1社に依存していた協力会社は、工事代金が回収できないまま連鎖する形で今回のように共倒れすることがあります。
- これから物件を買う人:宅建業免許番号の更新回数((1)なら5年未満)や、その会社が同時にいくつの案件を抱えているかは、契約前に確認できる材料です。
結局どうすればよいか
- Hatch Out・八建設と契約中の人は、破産管財人の案内(大阪地裁の破産事件)を確認する
- 中小の売主から購入する際は宅建業免許番号の更新回数を見る
- 気になる土地の適正価格は、契約前に無料ツールで目安を確認する
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
ほかに使える無料ツール
公式出典
- 帝国データバンク「株式会社Hatch Outなど2社」倒産速報(2026年9月14日発表)
- MBSニュース(毎日放送)「【倒産速報】負債総額『108億9000万円』は大阪の不動産会社で過去10年最大」(2026年9月14日発表)
- 帝国データバンク「不動産代理・仲介業の倒産動向(2026年1-8月)」(2026年9月8日発表)
- 株式会社Hatch Out 公式サイト 会社概要(2026年9月14日発表)
更新履歴
- 2026年9月14日 初版を公開
※本記事は2026年9月14日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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