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実家に勝手に入る兄弟/名義人の子でも住居侵入

「実家なのだから自由に出入りできるはずだ」と言って、家を出た兄が留守のあいだに入ってくる。このとき法律が見ているのは家の名義ではなく、いま誰がそこで暮らしているかのほうです。刑法の全文を機械で当たると、住居侵入を定めた130条に「親族」は0回で、この条文に特例をかける条文も刑法のどこにもありません。

この記事でわかること

  •  住居侵入(刑法130条)に親族の特例は無い。刑を免除する特例があるのは窃盗(244条)と盗品等(257条)の2か条だけ
  •  その窃盗の特例で免除されるのは配偶者・直系血族・同居の親族まで。家を出た兄弟は入らず、告訴がなければ起訴できないという扱いになる
  •  民法197〜201条の占有の訴えに「所有」は0回。名義人でなくても、住んでいる人が妨害の停止を請求できる
目次

回答は3件ついたのに、人が書いたのは1件だけだった

Yahoo!知恵袋に、2026年2月6日の夜に出た質問があります。カテゴリは不動産ではなく「家族関係の悩み」です。

現在、実家での居住をめぐって兄とトラブルになっています。

私は父(家の所有者)の許可を得て、妻と一緒に実家で生活しています。

一方、兄はすでに家を出て数年経っていますが、「実家なのだから自由に出入りできるはずだ」と主張し、我々が不在のときに勝手に入ってきて物を持ち出します。

Yahoo!知恵袋 q11325076726(2026年2月6日)

質問者が聞いているのは1点です。所有者の許可を得て住んでいる側が、訪問を控えてほしいと言うのはおかしいのか。302人が読み、共感が500入りました。

回答は3件。ただし人間が書いた回答は1件だけで、残り2件は生成AIによる回答です。そして3件のどれも、条文を1つも挙げていません。AIのほうは「あなたには一定の居住権があります」と書いていますが、それがどの権利なのかは書いてありません。

人間が書いた1件、ベストアンサーの結論はこうでした。

結局は家の所有者が決めることなんだと思います。お父さんがあなた達を住まわすのを許可したとしても、あなた達がお兄さんの行動をとやかく言うのは違うかも。

同・ベストアンサー(2026年2月6日)

家の名義人が決めること、という整理です。質問者はこれに返信して、前提を1つ足しました。

家の持ち主のお父さんは別の家に引っ越しているので、住んでいるのは我々だけです。

同・質問者からの返信(2026年2月9日)

父はもうそこに住んでいない。つまりこの家で暮らしているのは、名義を持っていない人だけです。

読者

名義が父なら、兄を止める権利は父にしかないのでは?

おかあさん

刑法の条文は、名義ではなく「人の住居」と書いています。そこが分かれ目です。

条文には「所有」と書いていない。「人の住居」と書いてある

住居侵入を定めた刑法130条の全文です。

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。

刑法第130条(住居侵入等)

書いてあるのは「人の住居」です。所有者の住居とも、名義人の許可した住居とも書いていません。実際、この条文に「所有」は0回、「親族」も0回しか出てきません。

刑法の全文から301の条文を取り出して、第130条を引用している条文を探しました。見つかったのは2つだけ、130条そのものと、その未遂を罰する132条です。住居侵入に親族の特例をかける条文は、刑法のどこにもありません。

刑法で「親族」という語を含む条文は6つあります。犯人蔵匿の105条、脅迫の222条、強要の223条、窃盗の244条、盗品等の257条、証人等威迫の105条の2。このうち刑を免除したり告訴を必要としたりする特例は、244条と257条の2か条だけです。

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条文の文言から言えるのはここまでです。実際にその立入りが130条の「正当な理由がないのに」「侵入」に当たるかは、事情ごとに判断が分かれます。この記事では「親族だから当然に外れる」という条文が無いことだけを書いています。

持ち出したほうには特例がある。ただし家を出た兄弟は入らない

入ってきたことと、物を持ち出したことは別に扱われます。持ち出しのほうには、身内向けの特例があります。

配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。

2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

刑法第244条(親族間の犯罪に関する特例)

1項で刑が免除されるのは、配偶者・直系血族・同居の親族の3つです。家を出て数年たった兄は、このどれにも当たりません。当たるのは2項のほう、つまり刑が消えるのではなく、告訴がなければ起訴できないという扱いになります。

住居侵入(刑法130条)には親族の特例が無く、窃盗(235条)には244条の親族の特例があるが、別居の兄弟は刑を免除される範囲に入らず告訴がなければ起訴できない扱いになることを並べた図

同じ日の同じ行動が、入口と出口で別々の条文に乗っている。入ってきたほうには身内の割引が無く、持ち出したほうにはあるけれど、別居の兄弟には効き方が半分しかない。条文を並べると、そういう形になっています。

読者

警察を呼んでも「家族の問題」で終わりませんか?

おかあさん

その可能性はあります。だから民法の側にも、止めるための道が別に用意されています。

民法のほうは、所有者でなくても止められる

民法には、占有の訴えという仕組みがあります。

占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。

民法第198条(占有保持の訴え)

主語は所有者ではなく占有者です。197条はさらに「他人のために占有をする者も、同様とする。」と広げています。この5か条(197条から201条)を機械で数えると、「所有」は0回でした。守っている対象が名義ではないことが、語彙のレベルで確認できます。

父の許可でタダで住んでいる状態には、民法593条の使用貸借という名前がついています。家賃を払っていなくても、借りて住んでいる人は占有者です。

ただし期限があります。201条1項は、占有保持の訴えを「妨害の存する間又はその消滅した後一年以内」に起こすよう定めています。3項の占有回収の訴えも、奪われた時から1年以内です。放っておくと、止める側の手段のほうが先に切れます。

質問者が最後にやったのは、この3つだった

この質問には続きがあります。8日後に書かれたお礼コメントです。

現状、両親に相談して鍵を付け替えました。

警察の相談窓口(#9110)にも電話してアドバイスをもらい、両親と兄と集まって明確に立ち入りをお断りすると伝えました。

両親にも証人になってくださいとお願いして録音もしておきました。

同・質問者からのお礼コメント(2026年2月14日)

鍵を替える、相談する、断ったことを記録に残す。この3つです。順番も理にかなっています。130条の「正当な理由がないのに」を争うとき、立入りを断ったという事実が残っているかどうかで話が変わるからです。

2つ目の窓口について、警察庁のページはこう書いています。

生活の安全に関わる悩みごと・困りごとなど、緊急でない相談の場合は、最寄りの警察署への通報又は「#9110」番をご利用ください。

警察庁「ご意見、各種相談・情報提供等」

同じページの1行上に、事件や事故の緊急通報は110番、とあります。まだ起きていないことを相談する窓口と、いま起きていることを通報する番号が、分けて書かれています。

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鍵の交換は、質問者と同じく所有者(この例では父)に相談してからにしてください。住んでいるのが自分でも、建物は他人のものです。

取り合っている「実家」は、神戸市の中央値で2,700万円

もう1つ、この手の話でほとんど語られないことがあります。もめている家そのものの値段です。

晴れた日の日本の郊外の住宅街。戸建てが並んでいる

国土交通省が公表している実際の成約価格から、神戸市9区の「宅地(土地と建物)」を自分で集計しました。2024年第4四半期から2026年第1四半期までの1,811件です。

件数 成約価格の中央値
中央区 117 5,900万円
東灘区 164 5,500万円
灘区 168 4,400万円
須磨区 187 2,700万円
垂水区 314 2,700万円
西区 193 2,400万円
兵庫区 152 2,150万円
北区 357 1,600万円
長田区 159 1,000万円
神戸市全体 1,811 2,700万円

同じ市のなかで、中央区と長田区では中央値が5.9倍ちがいます。兄弟2人で分ける前提なら、市全体の中央値でも1人あたり1,350万円です。出入りの話をしている相手と、いずれ金額の話をすることになります。

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私はこう見ています

名義の話から入ると、この問題は止まりません。名義人は父で、兄も子で、どちらも「実家」と呼べてしまうからです。ベストアンサーが所有者に判断を戻したのも、その意味では自然な整理でした。

私は、この件で先に動かすべきなのは占有の側だと考えます。理由は2つあります。1つは、刑法130条も民法198条も、主語が名義人ではなく住んでいる人だからです。もう1つは、201条の1年という期限が、住んでいる人の側にだけ走っているからです。名義がどうなるかを待っているあいだに、止める手段のほうが先に期限を迎えます。

そのうえで、金額を先に測っておくことをすすめます。相続が始まってから初めて値段を知ると、感情の話と金額の話が同時に来ます。先に数字を持っている側は、少なくとも片方を先に済ませられます。

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出典

  • 刑法(昭和四十年法律第四十五号)第130条・第235条・第244条・第257条/民法(明治二十九年法律第八十九号)第197条〜第201条・第593条。e-Gov法令APIから全文を取得し、条文を機械抽出(2026年9月20日取得)
  • 警察庁「ご意見、各種相談・情報提供等」(2026年9月20日取得)
  • 国土交通省 不動産取引価格情報(神戸市9区・2024年第4四半期〜2026年第1四半期・宅地(土地と建物)1,811件)を自集計
  • Yahoo!知恵袋 q11325076726(2026年2月6日)

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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