「建売が安いのは、土地が狭いからでしょ」——この説明は、建物の値段だけを取り出すと成り立ちません。
国土交通省の建築着工統計で、一戸建ての「建物だけ」にかかる工事費を並べると、注文住宅が1戸あたり2,929.6万円、建売が1,731.4万円でした。差は1,198万円。建売は注文住宅の59.1%です。ここに土地代は1円も入っていません。
床面積の差は11.7㎡、坪に直して3.5坪しかありません。1㎡あたりに直しても建売は注文住宅の66%です。土地が狭いからでも、家が小さいからでもなく、建物そのものにかけている金額が違います。
ただし、この1,198万円を「建売のほうが1,198万円お得」と読むと間違えます。理由は記事の中ほどで1節を使って書きます。先にそこだけ読んでもらってもかまいません。
この記事でわかること
- 一戸建ての「建物だけ」の工事費は、注文住宅2,929.6万円・建売1,731.4万円。差は1,198万円
- 床面積の差は3.5坪。1㎡あたりで比べても建売は注文住宅の66%
- この1,198万円は「建売のほうが1,198万円お得」という意味ではない。何が含まれていないのか
- 建売の一戸建てが年300戸以上建った43都道府県、そのすべてで同じ向き。差が最大の東京都は1,831万円
- 新しく建つ持ち家系の住まいのうち、分譲が50.8%。東京都は76.8%、秋田県は11.7%
建物だけの工事費は、注文住宅2,929.6万円・建売1,731.4万円
家を建てるときは、着工の前に「この建物にいくらかかる予定か」を届け出ます。国土交通省はそれを全国ぶん集計していて、建築着工統計の第34表に「1戸あたり工事費予定額」として載っています。土地の売買は入りません。純粋に、建物にいくらかける予定かの数字です。
令和6年(2024年)の1年間に着工した一戸建てを、注文住宅(統計では持家)と建売(統計では分譲住宅)に分けて並べたのが次の表です。
| 一戸建て・令和6年計 | 着工戸数 | 1戸あたり床面積 | 1戸あたり工事費 | 1㎡あたり |
|---|---|---|---|---|
| 注文住宅(持家) | 207,331戸 | 113.7㎡(34.4坪) | 2,929.6万円 | 25.8万円 |
| 建売(分譲住宅) | 120,980戸 | 102.0㎡(30.9坪) | 1,731.4万円 | 17.0万円 |

集計の条件です。数字は国土交通省「建築着工統計調査 住宅着工統計」令和6年(2024年)計の第34表で、対象は「一戸建て」のみ。統計上の呼び方が違うだけで、持家=注文住宅(建てる本人が自分で住むために建てる)、分譲住宅=建売(事業者が建てて売る)です。長屋建て・共同住宅は入れていません。
戸数の側も見ておきます。1年間に着工した一戸建ては、注文住宅が207,331戸、建売が120,980戸。棟の数では注文住宅のほうが多く、建てられた棟の6割強が「誰かが自分のために建てた家」です。分譲地に同じ顔の家が並ぶ景色は目に入りやすいのですが、全国の一戸建てはまだ注文住宅のほうが数が多いところにいます。
「建売は家が小さいから安い」も、数字では成り立ちません
1,198万円という差を見ると、まず「建売は小さい家なんだろう」と考えます。ところが床面積は113.7㎡と102.0㎡で、差は11.7㎡です。坪に直して3.5坪、畳に直せばおよそ7畳。6畳の洋室ひとつぶんに、少し足した程度しか違いません。
面積の影響を抜くために1㎡あたりに直すと、注文住宅25.8万円に対して建売17.0万円でした。同じ1㎡を建てるのに、建売は注文住宅の66%の金額しかかけていません。面積を揃えても差は消えません。土地の広さでも、家の大きさでもないところで、1,198万円が生まれています。

それでも「建売のほうが1,198万円お得」とは書けません
ここがこの記事でいちばん大事なところです。工事費予定額は、着工のときに届け出た建築工事の費用であって、店頭に出る販売価格ではありません。しかも注文住宅と建売では、その金額に入っているものが違います。
注文住宅の2,929.6万円は、建てる本人が工務店やハウスメーカーに払う請負金額に近い数字です。工事を請け負う会社の利益は、すでにこの中に入っています。
建売の1,731.4万円は、事業者が「自分が売る建物」を建てるときの工事費です。ここに土地の仕入れ値と、事業者の利益と、販売にかかる費用が乗って、はじめて店頭の販売価格になります。

つまり1,198万円は、買う人が払う金額の差ではありません。比べているのは「1棟の建物に、いくらかけて建てたか」です。そこまでは言えて、そこから先は言えません。建売の販売価格のうち土地がいくらで建物がいくらかは、この統計には入っていないからです。
🔴 この記事は「建売のほうが1,198万円安い」とは書きません。そう書いたほうが読まれるのは分かっています。ただ、注文住宅の側は施工会社の利益を含んだ金額、建売の側は事業者が自社物件を建てるときの工事費で、性格が違うものを引き算しています。差額をそのまま値引き額のように扱うと数字が独り歩きするので、私は「建物にかけている金額の差」までで止めるべきだと考えています。
建売が300戸以上建った43都道府県、そのすべてで同じ向きでした
全国平均だけだと「都会と地方が混ざっただけでは」と思えます。そこで都道府県ごとに同じ計算をしました。建売の一戸建てが年300戸以上着工された43の都道府県は、すべて建売のほうが工事費が低いという同じ向きでした。1つの例外もありません。
| 都道府県 | 注文住宅 | 建売 | 差 | 建売÷注文 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 3,583.2万円 | 1,752.1万円 | 1,831.1万円 | 48.9% |
| 神奈川県 | 3,134.3万円 | 1,648.3万円 | 1,486.0万円 | 52.6% |
| 愛知県 | 3,085.0万円 | 1,694.4万円 | 1,390.6万円 | 54.9% |
| 埼玉県 | 2,774.2万円 | 1,516.6万円 | 1,257.6万円 | 54.7% |
| 兵庫県 | 2,875.2万円 | 1,767.3万円 | 1,107.9万円 | 61.5% |
| 鹿児島県 | 2,430.4万円 | 1,805.0万円 | 625.4万円 | 74.3% |
| 長野県 | 3,346.4万円 | 3,031.8万円 | 314.6万円 | 90.6% |
建売の一戸建てが年300戸以上着工された43都道府県のうち、差の大きい順・小さい順から抜粋。全43件は記事末尾の出どころ欄に記載の統計表から再現できます。
差が最大なのは東京都の1,831.1万円で、建売は注文住宅の48.9%。東京だけ建物の工事費が半分を割ります。なぜそうなるかは、2つの数字を全国平均と並べると見えます。東京都の注文住宅は3,583.2万円で、全国の注文住宅より653.6万円高い。ところが東京都の建売は1,752.1万円で、全国の建売1,731.4万円との差は20.7万円しかありません。建てる本人が施主のときだけ、東京は高くなっています。
反対の端は長野県です。建売でも3,031.8万円あり、注文住宅との差は314.6万円まで縮みます。この3,031.8万円は、全国の注文住宅の平均2,929.6万円より高い金額です。長野県の建売は、全国平均の注文住宅より建物にお金がかかっている、ということになります。「建売=安い建物」が県単位で崩れる場所が、実際にあります。
兵庫県は注文住宅2,875.2万円・建売1,767.3万円で、差は1,107.9万円(61.5%)。全国平均に近い並びです。

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検索して出てくる価格差の数字が、どれも同じ調査から来ている理由
2026年8月26日に「建売 注文住宅 価格差」「建売 注文住宅 どっちが安い」で検索して、上位に並ぶ記事を1本ずつ開きました。価格差を数字で書いている記事は、揃って住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査」を引いていました。全数調査である建築着工統計を使った記事は、上位15本の中に1本もありません。
フラット35利用者調査は、その名前のとおりフラット35で住宅ローンを借りた人を集計した調査です。現金で建てた人、民間の銀行で借りた人は入りません。都市部ほど民間ローンに流れやすいので、地域ごとの構成も実際の着工とはずれます。悪い調査という意味ではなく、数えている母集団が違います。
建築着工統計のほうは、家を建てるときに必ず出す届け出を集計したものです。ローンを借りたかどうかに関係なく、着工した棟が全部入ります。同じ「建売と注文住宅の差」という問いに、母集団の違う2つの答えがあって、検索結果には片方しか並んでいない、という状態です。
もう1つ気づいたことがあります。上位15本のうち12本が、住宅を建てて売る会社が自分のサイトに置いているコラムでした。第三者の立場で書かれた記事は1本だけです。私は、これを誰かの怠慢ではなく、書き手の立場から自然にそうなる構造だと考えています。自社が売っている商品に不利に働きうる全数データを、自社のコラムでわざわざ持ち出す理由がありません。当サイトは家を建てても売ってもいないので、どちらの数字も同じ扱いで並べられます。
新しく建つ家の50.8%が分譲。東京都は76.8%、秋田県は11.7%
「割合」で検索する人が知りたいのは、いま建っているのが建売と注文住宅のどちらなのかです。ここは戸数で見ます。令和6年に新しく着工した住宅のうち、持家(注文住宅)は218,175戸、分譲住宅は225,315戸でした。この2つだけを分母にすると、分譲が50.8%で、ついに持家を上回りました。
⚠️ この節の「分譲住宅」にはマンションが入っています。記事の前半で使った工事費(一戸建てのみ)とは分母が違います。ここの50.8%を「新築の半分が建売の戸建て」とは読めません。一戸建てだけで数えると、前半の表のとおり注文住宅207,331戸に対して建売120,980戸で、注文住宅のほうが多い側です。
都道府県で見ると、この割合は大きく開きます。いちばん高い東京都は76.8%(持家13,259戸に対し分譲43,794戸)。いちばん低い秋田県は11.7%(持家1,926戸に対し分譲255戸)。およそ6.5倍の開きです。神奈川県72.5%、大阪府69.1%、京都府61.9%、埼玉県60.7%、千葉県59.0%と続き、兵庫県は54.4%(持家7,637戸・分譲9,093戸)でした。低いほうは山形県15.8%、山梨県16.0%、新潟県17.4%と並びます。
戸建てとマンションの比べ方そのものが気になった人には、マンションと戸建て、買うならどっち|値段はほぼ同じなのに、広さは1.5倍ちがいましたを用意しています。同じ予算で手に入る広さを、実際の取引価格で並べた記事です。
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「自由に設計できるのだから、建売より良くなるはず」
ここまでは統計の話でした。実際に住んだ人が何を書いているかも見ておきます。Yahoo!知恵袋に、2023年1月に投稿された相談があります。注文住宅を建てた本人の言葉です。
「1階の収納が少なすぎる ※建売より少ないと思います ※リビング収納が欲しかった ※1階にファミクロがほしかった」
タイトルは「新築注文住宅で家を建てましたが、後悔ばかりで毎日もやもやしています。」で、回答が24件付いています。同じ投稿には「LDKと玄関が暗い」「造作やデザイン的なものが全くなくつまらない内装」も並んでいます。建物に多くお金をかけた側の人が、建売と比べて自分の家の収納が少ないと書いているところが、この記事の数字といちばん噛み合いません。1,198万円の差は、住んだあとの満足を保証する数字ではないということです。

建売の側の声も同じ日に読みました。2023年4月の投稿には「建売住宅で、特に地震に強いなどの特徴はなく、最低限の造りだと思います。強い地震が来ると心配です。」「夏は暑いですし特に冬が寒いです。」「サンルームが2階だったり、脱衣所がかなり狭い、台所が狭いなど便利な作りとは言えないです。」とあります。工事費の差が、住み心地の言葉になって出てきている例です。
もう1本、2023年6月の投稿には別の見方がありました。「立地を最優先していたため建売を購入することになりました。これ以上ないって思える立地に物件が出ましたので。」「もっと断熱がしっかりしている家がよかった、とは思います。でも予算的に無理だったので仕方ないです。」そして回答の1つに「建売で後悔するという人は価格で決めた場合です。」とあります。
検索窓に打ち込まれる言葉も同じ方向を向いています。「建売 後悔」に続けて打たれているのは「建売 後悔 売りたい」「建売 後悔ランキング」でした。後悔の次に「売りたい」が来る。買ったあと手放すところまで考えている人が、実際にいます。
売るところまで見据えるなら、戸建ては新築と中古どっちが安い?築30年で半額になる街と、9割の値段のままの街がありますが参考になります。買った家が何年後にいくらで扱われるかは、建売か注文住宅かより街の側で決まっている、という話です。
土地を先に買った人にだけ、増える論点があります
建売は土地と建物を一度に買います。注文住宅は土地を先に押さえ、設計して、着工して、引き渡しを受けます。この時間差から、建売では出てこない論点が生まれます。名前だけ挙げると「入居する年がいつになるか」と「建物ができるまでのつなぎ融資」の2つです。
金額と要件は、この記事では書きません。制度ごとに条件が違い、当サイトはまだ一次情報での確認を終えていないからです。確認できていないことを断定で書くと、読んだ人が損をします。ここでは「建売と注文住宅では、確かめるべき項目の数が違う」というところまでにします。
そのかわり、土地を先に買う人が数字で確かめられることを書いておきます。1つは土地そのものの条件です。同じ地域でも、区画の形と広さで値段は動きます。不整形地が安い理由は、形だけではありません。安さの2割は「広さ」のぶんでしたと、宝塚の土地は尼崎より坪17%安いのに、1区画では340万円高くつきますで、その動き方を実際の数字で並べています。坪単価が安い街でも、1区画に直すと高くつくことがあります。
もう1つは、その土地が水害・土砂災害の区域に入っていないかです。注文住宅は土地を買ってから建物を設計するので、土地の側の条件を先に確かめる順番になります。

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洪水・土砂災害・地震・津波の情報を、住所を入れるだけでまとめて表示します。土地を先に買う人ほど、契約の前に見ておく画面です。
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買うか借りるかから迷っている段階なら、「家賃を払い続けるのはもったいない」が正しい市と、そうでない区。持ち家と賃貸どっちが得かは街で反転しますを先に読むほうが早いです。
よくある質問
Q. 建売と注文住宅で、建物にかけている金額はどれくらい違いますか。
A. 令和6年に着工した一戸建てで、1戸あたり工事費予定額は注文住宅2,929.6万円、建売1,731.4万円。差は1,198万円で、建売は注文住宅の59.1%です。土地代は含みません。
Q. その1,198万円は、そのまま買う値段の差になりますか。
A. なりません。注文住宅の金額は施工会社の利益を含んだ請負金額に近く、建売の金額は事業者が自社物件を建てるときの工事費です。建売はここに土地の仕入れ値と事業者の利益が乗って販売価格になります。比べているのは販売価格ではありません。
Q. 建売が安いのは、土地が狭くて家も小さいからではないのですか。
A. 床面積の差は113.7㎡と102.0㎡で11.7㎡(3.5坪)です。1㎡あたりに直しても建売は17.0万円、注文住宅は25.8万円で、建売は注文住宅の66%でした。面積を揃えても差は残ります。
Q. 建売と注文住宅、いま多いのはどちらですか。
A. 一戸建てだけで数えると、令和6年の着工は注文住宅207,331戸・建売120,980戸で注文住宅が多い側です。マンションを含む「分譲住宅」で数えると分譲が50.8%となり持家を上回ります。どちらで数えるかで答えが変わります。
Q. 住んでいる県によって差は変わりますか。
A. 建売の一戸建てが年300戸以上着工された43都道府県は、すべて建売のほうが工事費が低い同じ向きでした。差が最大なのは東京都の1,831.1万円、最小は長野県の314.6万円です。
この記事の数字の出どころ
- 建物の工事費・床面積・戸数:国土交通省「建築着工統計調査 住宅着工統計」令和6年(2024年)計 第34表(着工新築住宅 利用関係別、構造別、建て方別/住宅の工事費)。統計表ID(アイディー) 000040247049。対象は一戸建てのみ
- 新設住宅の戸数と分譲の割合:同 令和6年計 第15表(着工住宅 都道府県別、工事別、利用関係別)。統計表ID 000040247036。この表の「分譲住宅」にはマンションが含まれます
- 取得元:政府統計の総合窓口(e-Stat(イースタット))。取得日 2026年8月26日
- 用語の対応:統計の「持家」を注文住宅、「分譲住宅」を建売として記載しています
- 工事費予定額は着工時に届け出た建築工事の費用で、販売価格・土地代・購入時の諸費用は含みません
- 都道府県別の比較は、建売の一戸建て着工が年300戸以上の43都道府県を対象にしています
- 読者の声:Yahoo!知恵袋(2023年1月10日投稿・注文住宅)/同(2023年4月2日投稿・建売)/同(2023年6月9日投稿・建売)。引用は投稿本文のままで、要約していません
- 検索結果の顔ぶれと検索候補の語は、2026年8月26日に採取したものです


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