「ハザードマップを気にしすぎでしょうか。今回建売住宅を購入する事になりました。物件は何件か内覧した上これからの新生活にとても向いている好条件の立地、間取りです。」——Yahoo!不動産の知恵袋に、この質問がそのまま残っています。色がついていないことを確かめて契約を進めると、そのあと「地図の外」で濡れる側に回ることがあります。
2026年8月13日の千葉の豪雨で、浸水・冠水の被害報告のうち55.7%は、浸水想定区域にも低い土地にも当たらない場所から届きました。一方、同じ豪雨で亡くなった13人のうち、少なくとも9人は色のついた場所にいました。
地図は命の危険をよく当てています。当てていないのは、家や道が濡れる範囲のほうです。だから答えは「気にしすぎ」でも「気にしなくていい」でもなく、色を見たあとに見るものがもう2つある、になります。
この記事でわかること
- ✓ 亡くなった13人のうち9人は、地図で色のついた場所にいた(読売新聞の調査)
- ✓ それでも被害報告の55.7%は、色のない場所から届いた(ウェザーニューズ)
- ✓ 「着色されていない場所で浸水する場合がある」と書いているのは、地図を作った自治体自身
- ✓ 色のない土地が安いとは限らない(市川市では標高0.1mの土地が、25.0mの土地の8.3倍)
地図は当たっています。亡くなった13人のうち9人は、色のついた場所にいました
2026年8月13日の豪雨で、千葉県では13人が亡くなりました(内閣府・8月20日10時現在)。読売新聞が亡くなった場所を自治体・警察・消防に取材し、それぞれの自治体が作ったハザードマップと照らし合わせたところ、少なくとも9人が浸水想定区域の中でした。内訳は千葉市5人、柏市・市川市・八千代市・佐倉市が各1人です。
柏市八幡町で亡くなったのは70歳代の女性でした。現場は川のそばではなく、住宅街の道路にできたくぼ地です。坂の傾斜に沿って流れた水が、いちばん低いところに集まりました。柏市のハザードマップでは、この場所の想定浸水深は3メートル以上5メートル未満とされていました。
千葉市中央区では、アンダーパス2か所でそれぞれ死亡事故が起きています。この2か所の想定浸水深は、いずれも5メートル以上10メートル未満。今回の事例でもっとも深い想定でした。どちらも、地図の上ではいちばん濃く塗られていた場所です。
亡くなった場所は、地図が「ここは深くなる」と描いていた場所と重なっていました。ハザードマップが現実を外していたわけではありません。
読売新聞の書き方は「少なくとも9人」です。残る4人が区域の外だったという意味ではなく、区域内と確認が取れたのが9人まで、ということです。
市町村別の内訳と、確認が取れなかった4人の扱いは千葉豪雨で亡くなった13人のうち9人は、浸水想定区域の中でしたで図にしています。
読者
じゃあ色がついていない場所なら、命のほうは大丈夫ということですか?
深く浸かる危険は、色の濃いところに寄っています。ただ、家や道が濡れるかどうかは別の話です。次の数字を見てください。
それでも、被害報告の55.7%は色のない場所から届きました
同じ豪雨について、ウェザーニューズが2026年8月14日に分析結果を出しています。千葉県内から寄せられたウェザーリポート9,938件と緊急アンケート10,009件、あわせて約2万件を、浸水想定区域と低位地帯の地図に重ねたものです。
浸水・冠水の被害報告のうち、55.7%が浸水想定区域にも低位地帯にも当たらない場所から届いていました。区域や低い土地の中からは44.3%です。報告が挙がった市区には、千葉市中央区・緑区・美浜区、柏市、八千代市、市川市、松戸市、市原市、茂原市、館山市が並びます。
この55.7%は「浸水した家のうち55.7%」ではありません。数えているのは被害報告の件数で、道路が少し冠水した、庭に水が入った、という報告まで含みます。家が何棟濡れたかの割合ではない、と読んでください。
死者の9人と、被害報告の55.7%。逆のことを言っているように見えて、ぶつかりません。数えているものが違うからです。
| 数えたもの | 母数 | 結果 |
|---|---|---|
| 亡くなった方がいた場所(読売新聞) | 13人 | 少なくとも9人が浸水想定区域の中 |
| 浸水・冠水の被害報告(ウェザーニューズ) | 約2万件 | 55.7%が浸水想定区域・低位地帯の外から |
浅い冠水は色のない場所まで広がり、人が動けなくなるほど深い浸水は色の濃い場所に集まった。地図が描き切れていないのは命の危険ではなく、家や道が濡れる範囲のほうです。
半分以上が「外」になった理由——見ていた地図が1枚足りません
川があふれて街へ水が流れ込むのが外水氾濫、降った雨が下水道や排水路の処理量を超えて地表にあふれるのが内水氾濫です。前者は外から水が来て、後者は水の出どころが空にあります。洪水のハザードマップが描いているのは、前者のほうです。
下水道が流せる雨量は1時間に50mm程度、とウェザーニューズは書いています。2026年8月13日の千葉は、気象庁の観測で最大1時間115.0mm。設計の2倍を超える雨が落ちました。設備が壊れなくても、上限を超えれば水は地上に残ります。
千葉市の雨水施設が受け止める前提は「10年に1回程度」降る大雨です。中央雨水1号貯留幹線は延長約5.1km、内径5,250mm、埋設の深さは約30m。地下30メートルを走る内径5メートルのトンネルでも、想定しているのは10年に1回の雨、という規模感になります。
読者
内水の地図って、どこの市にもあるものですか?
ありません。さいたま市は2026年4月23日に公開したばかりで、その日から契約前の説明の対象になりました。作っていない市では、下水道の部署が出している道路冠水の一覧や、過去の浸水実績図に切り替えて見ることになります。
不動産の契約前に受ける説明(重要事項説明)で示されるのは、水防法にもとづく地図です。国土交通省の質疑応答によれば、その地図は洪水・雨水出水(内水)・高潮の3種類。市町村がまだ作っていなければ「水防法に基づく水害ハザードマップは作成されておりません」と説明されて終わります。市が独自に作った浸水実績図は、説明する義務のある地図に入っていません。
同じ質疑応答には、こうも書かれています。
浸水想定区域の外であるからといって、水害のリスクがないと取引の相手方が誤認することがないよう配慮してください
制度をつくった側が、最初から「外=安全ではない」と書いています。地図を作っている自治体も同じです。千葉市の「地震・風水害ハザードマップ」には、こんな注意書きが載っています。
雨の降り方や土地の状態によっては、着色されていない場所で浸水する場合や、実際の浸水深が地図に表示した深さと異なる場合があります。
「色がついていないから浸水しない」ではありません。そう書いているのは、その地図を作った市そのものです。ここが、検索窓に「ハザードマップ 色なし」と打ち込む人の期待と、いちばんずれているところです。

写真: Pexels(ペクセルズ)
千葉市の地図は洪水・内水・高潮・津波・土砂災害を切り替えて見る形式で、1枚に全部は載っていません。切り替えた先に何が出るかは千葉の内水氾濫と、もう1枚のハザードマップで、公開されたばかりの市の例はさいたま市で道路冠水35件、いちばん沈んだのは見沼区でしたで扱っています。
「◯◯市だから安全」が効かないのは、市の中に29mの高低差があるからです
当サイトでは、国土数値情報「地価公示」2026年のうち用途が住宅の標準地を抜き出し、1地点ずつ国土地理院の標高サービスにかけて高さを測っています。全国では17,612地点(抽出17,613地点のうち取得成功17,612・失敗1)。千葉県の15市区では557地点(取得成功557・失敗0)です。
船橋市は81地点。いちばん低い南本町が標高1.0m、いちばん高い習志野台6丁目が29.7mで、差は28.7mあります。9階建てのビルとほぼ同じ落差が、同じ市の名前の中にあります。15市区のうち12市区で、標高10m未満の地点と20m以上の地点が同居していました。
千葉県の台地には「谷津」と呼ばれる谷が刻まれていて、台地の上は標高20〜30m、谷の底は数メートルしかありません。千葉県の地震被害想定調査は谷津を「丘陵地が長い時間をかけて侵食されて出来た谷状の湿地」と定義し、谷津田での稲作が衰退したあと都市化で宅地の開発が進んだ、とも書いています。市の名前は同じでも、住所によって立っている高さが違います。
市の名前で判断できないことは、埼玉でも出ました。2026年8月21日、さいたま市付近で1時間に約110ミリの雨が降り、市の第1報では道路冠水35件・床上浸水3件・床下浸水2件。国土交通省 関東地方整備局が公表している「関東甲信地域における道路冠水注意箇所マップ」の埼玉県・さいたま市版と突き合わせると、いちばん冠水したのは登録が1か所しかない見沼区(14件)と、2か所の北区(13件)でした。この2区だけで35件のうち27件、77%です。
この一覧は関東甲信の9都県ぶんで、当サイトで数えると合計1,014か所です。全国が同じ形で公表されているわけではありません。ほかの地域は「地方整備局・国道事務所の名前+道路冠水」で探すことになります。
同じ市の中でどれだけ高さが違うかは「うちは高台だから」は、千葉では安全の理由ではありませんに、公表されている道路の一覧の中身は冠水しやすい道は住所まで公表されていますにまとめてあります。
だから見る単位は、市の名前ではなく住所です。住所を入れると、洪水(川があふれる想定・想定最大規模)と津波の浸水想定、土砂災害警戒区域の3種類に色がついているかと、250メートルごとの地盤の区分、30年以内に震度いくつ以上になる確率がまとめて出ます。内水と浸水の深さの数値はここには出ないので、そこは自治体の地図で見ます。
では、色のない土地の人は何を見ればいいのか
色を見たあとに見るものは3つです。調べる手順そのものは別の記事に書いてあるので、ここでは何を見るかだけ並べます。
- 2枚目の地図——洪水の地図が白でも、内水(雨水出水)の地図や過去の浸水実績図に記録が残っていることがある
- 家の前の道と、駅・学校・保育園までの経路——家が濡れなくても、道が沈めば生活は止まる
- 火災保険の証券——補償の欄に「水災」があるか
1つめと2つめの進め方は、買う前の確認なら家を買う前に洪水ハザードマップはどこを見る?、土地の形から読む側なら冠水しやすい場所の見分け方に手順で書いてあります。この記事では繰り返しません。
3つめは書類を1枚開くだけです。火災保険では、暴風で屋根や窓が壊れた損害は「風災」、床上浸水や土砂崩れによる損害は「水災」と扱いが分かれていて、外せるのは水災のほうです。損害保険料率算出機構が公表している水災補償付帯率(年度末に有効な火災保険契約のうち、水災を補償している契約の割合)は、2024年度末の全国計で61.8%。2013年度の76.9%から15.1ポイント下がっています。
この61.8%は住宅物件(専用住宅とその収容家財)の火災保険だけを数えたもので、共済や少額短期保険は含まれていません。実際に自分の契約に水災が付いているかは、保険証券か契約内容のお知らせで確かめてください。

写真: Pexels
読者
火災保険に入っているので、浸水しても出ますよね?
そうとは限りません。水災は外せる補償なので、入っていても付いていない契約があります。10軒に4軒近くが付けていない、という数字です。
実際に水が入ってしまったあとの動き方は、この記事の外です。片付けと手続きの順番は家が浸水したらまず何をするの?、乾かす工程だけを知りたいときは床下浸水は何日で乾くの?にあります。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れると、ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さをまとめて表示します。無料です。
色がついた土地は安いのか——市川市では、標高0.1mの土地が25mの土地の8.3倍でした
「危ない土地は安いはずだから、安いなら理由がある」。この考え方が成り立つかを、同じ標高データで確かめました。比べるのは同じ市の中の2地点だけです。市内でいちばん低い標準地と、いちばん高い標準地を並べます。
| 市区(標準地の数) | 市内でいちばん低い標準地 | 市内でいちばん高い標準地 | 低いほうの値段 |
|---|---|---|---|
| 市川市(62地点) | 0.1m / 438,000円 | 25.0m / 53,000円 | 8.3倍 |
| 千葉市花見川区(33地点) | 2.4m / 190,000円 | 29.5m / 30,700円 | 6.2倍 |
| 船橋市(81地点) | 1.0m / 250,000円 | 29.7m / 185,000円 | 1.4倍 |
市川市では、いちばん低い0.1mの土地が、いちばん高い25.0mの土地の8.3倍でした。千葉市花見川区も船橋市も、低いほうが高い値段です。千葉県の15市区・557地点をまとめて標高と地価の相関係数にすると-0.4461になります。
ただし、15市区が全部この向きだったわけではありません。標高が高いほうが高い値段という逆の並びが5市区で出ています。千葉市美浜区・八千代市・四街道市・八街市はどちらの測り方でも逆で、5つめは市内の相関で見ると我孫子市、いちばん低い地点といちばん高い地点の値段で見ると千葉市緑区でした。3市区に1市区は、高台のほうが高い計算になります。
理由は水ではありません。鉄道と商業が谷の底や埋立地にあるからです。低いから高い、という因果ではないので、そこは分けて読んでください。ただ結果として、こうなります。
安全さのぶんは、値段にほとんど乗っていません。市川市の2地点の差は1m²あたり385,000円。100m²の土地なら3,850万円の差で、高いほうが24.9m低い土地です。
数字は地価公示の標準地の位置での値で、市内すべての土地を表すものではありません。船橋市には標高29.7mの標準地が2つあり、表に載せたのは高いほうの習志野台6丁目(185,000円)です。もう1つの二和東6丁目は119,000円でした。測ったのは地形であって、浸水の想定ではありません。
わたしはこう考えています
「ハザードマップは気にしすぎ?」で検索すると、上位には「気にしすぎなくていい」と答える記事が並びます。読んでみると、実測の数字を出している記事はありませんでした。ここからは事実ではなく、わたしの見方です。
色の有無で候補を切ると、都市部では家が買えなくなります。だから「気にしすぎ」と答える記事が増えるのだと考えています。ただ、その答え方だと、色のない場所で濡れた55.7%の側に何も渡せません。
わたしは、色がついている土地を避けることより、色がついていない土地で油断するほうが損が大きいと考えています。色のある土地を買う人は深さも避難先も調べますが、白い土地を買う人はそこで確認をやめてしまうからです。
それと、値段のほうです。低い土地のほうが高いという並びが実測で出ている以上、「安いから危ない」も「高いから安全」も判断の材料になりません。値段で安全を測るのはやめて、住所で地図を2枚と証券を1枚見るほうが早い、というのがわたしの結論です。
よくある質問
ハザードマップに色がついていない場所は、浸水しないということですか
ちがいます。千葉市は自らの地図に「雨の降り方や土地の状態によっては、着色されていない場所で浸水する場合や、実際の浸水深が地図に表示した深さと異なる場合があります」と書いています。2026年8月13日の千葉では、浸水・冠水の被害報告の55.7%が浸水想定区域と低位地帯の外から届きました。色がないのは「この地図が想定した水では色がつかない」という意味で、「水が来ない」とは別です。
賃貸でもハザードマップの説明はありますか
あります。2020年8月28日に宅地建物取引業法施行規則が改正され、契約前に水防法にもとづく水害ハザードマップ上の物件の位置を示すことになりました。売買だけの決まりではなく、賃貸の契約でも行われます。ただし示されるのは水防法にもとづく地図なので、市町村が内水(雨水出水)の地図を作っていなければ「作成されておりません」と説明されて終わります。その場で「内水のハザードマップはありますか」と自分から聞けます。
色のついた場所の家を契約してしまいました
色の有無より、深さと逃げ方のほうが効きます。想定浸水深が何メートルか、家の前の道と避難先までの経路に低いところがないか、火災保険の証券に水災があるか。この3つは契約後でも確かめられます。順番は家を買う前に洪水ハザードマップはどこを見る?にあります。
出典
- ウェザーニューズ「令和8年8月千葉豪雨、2人に1人が浸水想定区域“外”で被災か」(2026年8月14日発表。55.7%/44.3%・約2万件の内訳・下水道の処理量)
- ITmedia NEWS「千葉水害、半数以上が“ハザードマップの浸水エリア外”で起きていた」(2026年8月17日発表)
- 読売新聞オンライン「千葉豪雨、浸水想定区域内での死者9人…内水氾濫で住宅街にもリスク」(2026年8月21日発表)
- 内閣府「令和8年8月千葉豪雨による被害状況等について」(8月20日10時00分現在)
- 千葉市「地震・風水害ハザードマップ(WEB版)」(着色されていない場所の注意書き)
- 国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の改正(水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明)に関する質疑応答」(3種類の地図・未作成時の説明・区域外の誤認への配慮)
- 国土交通省 関東地方整備局「関東甲信地域における道路冠水注意箇所マップ」(関東甲信9都県ぶん。合計1,014か所は当サイトで一覧の連番を数えた値)
- さいたま市「8月21日の大雨による市内の状況等について(午後7時10分時点)(第1報)」(道路冠水35件ほか)
- 千葉県「地震被害想定調査 第7章」(谷津の定義・谷津田の宅地化)
- 損害保険料率算出機構「火災保険 都道府県別 水災補償付帯率」(2024年度末 全国計61.8%/2013年度76.9%。住宅物件のみで共済・少額短期保険を含まない)
- Yahoo!不動産「ハザードマップを気にしすぎでしょうか。」(冒頭に引用した質問)
- 標高と地価の実測は当サイトの集計です。国土数値情報「地価公示」2026年のうち用途が住宅の標準地を抽出し(全国17,613地点)、各地点の緯度経度を国土地理院の標高サービスにかけて標高を取得しました(成功17,612/失敗1)。千葉県の15市区は557地点(成功557/失敗0)。標準地の位置での値であり、市区内のすべての土地を表すものではありません。
※ 2026年8月26日時点で各公式サイトに掲載されている内容にもとづいています。ハザードマップの種類・更新時期・説明の運用は市区町村ごとに異なります。契約や保険の判断は、住んでいる市区町村の案内と、ご自身の契約内容を確認したうえで行ってください。


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