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家が壊れたとき、罹災証明と火災保険はどっちが先?——順番はなく同時に動けます

「罹災証明書が出るまで、火災保険は請求できない」。そう思って待っている人がいます。待つ必要はありません。罹災証明書を出すのは市区町村、保険金を払うのは保険会社で、認定する主体も基準も別々です。どちらかの結果を、もう一方が待つ関係になっていません。

そして待っている間に減るのは、被害の証拠のほうです。保険金を請求する権利の時効は3年ありますが(保険法第95条第1項)、片付けは3年も待ってくれません。片付けたあとに撮った写真では、片付ける前の被害を示せません。

先に結論

  • 罹災証明書は市区町村が住家の被害の程度を認定するもの(災害対策基本法第90条の2)。使い道は支援金・応急修理・税の減免などの公的支援
  • 火災保険は保険会社が契約の約款にそって査定するもの。順番の決まりはなく、どちらから始めてもよい
  • 区分も基準も別なので、罹災証明書が「半壊」でも保険が同じ判定になるとは限らない
  • 地震・噴火・津波が原因の被害は火災保険では補償されない。地震保険をセットしていたかどうかで変わる
  • 申請サポート業者に頼む前に、写真・証券の確認・保険会社への連絡は自分でできる。3つとも無料
目次

罹災証明書と火災保険は、どちらが先という順番がない

罹災証明書の根拠は災害対策基本法第90条の2です。市町村長は、被災者から申請があったときは遅滞なく被害の状況を調査し、被害の程度を証明する書面を交付しなければならない、と定められています。動くのは市区町村で、申請するのは被災者本人です。

一方、火災保険から保険金が支払われるかどうかは、契約した保険会社が約款にそって判断します。ここに役所は関与しません。

同じ壊れた家を見ていても、判定するところが2つあり、それぞれ別の物差しを持っている。罹災証明書で「半壊」と認定されたからといって、保険がそれに対応した金額を払うわけではありませんし、その逆もありません。片方の結果をもう片方が待つ関係になっていないので、市区町村への申請と保険会社への連絡は、同じ日に両方やって構いません。

💬 Aさん「役所の調査が来るまで、保険会社には連絡しないほうがいいのかと思ってました」
💬 Bさん「逆です。保険会社は自分のところの鑑定で判断するので、市区町村の調査を待つ理由がない。どちらも申請しないと始まらないので、先に両方の受付を済ませるほうが早いです」

原因によって窓口が変わる点だけ、先に確かめてください。罹災証明書は暴風・豪雨・洪水・地震などの自然災害による住家の被害が対象で、火災による罹災証明書は消防が発行します(京都市は各消防署、東大阪市は消防局が窓口)。同じ名前でも、取りに行く先が違います。

住んでいる場所がどの災害を想定されているかは、住所から無料で確認できます。災害リスク診断では洪水・土砂災害・地震などのリスクをまとめて表示します。想定と実際の被害を突き合わせておくと、修理や住み替えを考えるときの材料になります。

何を証明してくれるかが違う

2つの制度の守備範囲を並べます。

罹災証明書 火災保険
出すところ 市区町村(火災は消防) 契約している保険会社
対象 住家。塀・物置・カーポート・太陽光パネルなどの外構と家財は対象外 契約した建物。家財に契約していれば家財も
判定の基準 損害割合で6区分(全壊50%以上/大規模半壊40%以上/中規模半壊30%以上/半壊20%以上/準半壊10%以上/それ未満) 契約の約款にもとづく査定
何に使うか 支援金・応急修理・税の減免など公的支援の入口 保険金の支払い
期限 自治体ごとに設定(東大阪市は災害の日から3か月以内) 3年(保険法第95条第1項)

対象の行が、いちばん誤解されるところです。罹災証明書が証明するのは住家の被害で、京都市は対象外になるものとして塀・物置・カーポート・太陽光パネルなどの外構と家財道具を挙げています。住家以外については、非住家の被害の程度を証明する書面を別に交付する自治体があります。

保険は逆に、契約の対象がどこまでかで決まります。家財に契約していれば家財も対象になり、物置やカーポートが建物の付属として含まれる契約もあります。証券と約款次第で、罹災証明書の対象範囲とは一致しません。片方で対象外だったものが、もう片方では対象になり得る——だから両方を見ます。

罹災証明書側の手続き(写真の撮り方、第2次調査、支援金の額)は別の記事にまとめています。

👉 罹災証明書は「片付ける前の写真」で決まる|撮り方のポイントと、全壊・半壊を分ける損害割合

地震・噴火・津波の被害は、火災保険からは出ない

財務省は、火災保険では地震を原因とする火災による損害や、地震により延焼・拡大した損害は補償されない、と明記しています。地震で建物が倒れた場合も、地震で起きた火事で焼けた場合も、火災保険だけでは対象になりません。

備えになるのは地震保険で、これは単独では契約できず、火災保険に付帯する方式でしか加入できません。保険金額は火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲で設定し、建物5,000万円・家財1,000万円が限度です。支払いは修理見積もりの実費ではなく、損害の程度を4区分して、地震保険金額に決まった割合を掛けた額になります(2017年1月1日以降に始まった契約の区分)。

地震保険の支払割合

全損 … 地震保険金額の100%(時価額が限度)
大半損 … 60%(時価額の60%が限度)
小半損 … 30%(時価額の30%が限度)
一部損 … 5%(時価額の5%が限度)

ここで冒頭の話に戻ります。市区町村の被害認定は6区分、地震保険は4区分。区分の数も名前も基準も違うので、罹災証明書が「大規模半壊」だから地震保険は「大半損」になる、という読み替えはできません。同じ被害を、別の物差しで2回測っていると考えるほうが正確です。

👉 地震保険はいくら出る?全損・大半損・小半損・一部損の認定基準と、請求の流れ5ステップ

保険証券が見つからない・どこの保険会社か分からないとき

証券が流された、焼けた、どこにしまったか思い出せない。連絡を遅らせる理由にはなりません。まず住宅ローンを組んだ金融機関、次に家を買った不動産会社やハウスメーカー、そして通帳やクレジットカードの引き落とし履歴。保険料が引き落とされていれば社名が残っています。

それでも分からないときは、日本損害保険協会の「自然災害等損保契約照会センター」に照会できます。災害救助法が適用された地域などの被災者で、家屋の流失・焼失などによって契約の手掛かりを失った人が対象です。照会できるのは本人と、配偶者・親・子・兄弟姉妹。電話は0120-501331、受付は月〜金の9時15分〜17時(祝日・年末年始を除く)。結果が出そろうまで2週間程度かかります。

被害が出たことの連絡そのものは、契約している保険会社か代理店に直接します。日本損害保険協会のそんぽADRセンターは相談と紛争解決の窓口で、事故の報告は受け付けていません。

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保険証券のコピーを持ち出し袋に一枚入れておくと、次は探さずに済みます。

申請サポート業者に頼む前に、自分でできる4つのこと

1. 片付ける前に写真を撮る

北九州市が案内している撮り方は、家の外はなるべく4方向から、浸水した場合は浸水の深さが分かるように、家の中は被災した部屋ごとの全景と被害箇所の寄り。これを片付けや修理の前に撮ります。罹災証明書の調査でも保険の査定でも、同じ写真が材料になります。

危ない場所には入らないでください。傾いた建物や崩れかけた壁は、外から撮れる範囲で十分です。写真は、あとから増やせない唯一の材料です。

2. 保険証券で、何が付いているかを見る

火災保険は1つの補償ではなく、組み合わせです。風災・水災・破損などのどれが付いているかは契約ごとに違い、地震保険をセットしていない契約もあります。証券の補償内容の欄を見れば、今回の被害が対象になり得るかの当たりが付きます。確定させるのは保険会社の査定なので、ここで自己判断して請求をあきらめないでください。

3. 保険会社か代理店に連絡する

連絡は無料です。査定のために鑑定人を出すのも保険会社の側で、被災者が費用を負担するものではありません。「請求の仕方が分からない」という段階で電話して構いません。

4. 期限を確かめる

保険金を請求する権利の時効は3年(保険法第95条第1項)。罹災証明書の申請期限は自治体ごとで、東大阪市は災害のあった日から3か月以内としています。短いほうから片付けます。

💬 Aさん「写真も証券もそろってないんですけど、それでも電話していいんですか」
💬 Bさん「いいです。証券番号が分からなくても契約は探せますし、何を撮っておけばいいかを先に教えてもらえます」

「自己負担ゼロ」と言われたときに確かめること

災害のあと、「保険金で自己負担なく住宅を修理できます」と勧誘する事業者があります。使われるのは成功報酬型で、保険金が支払われたら、その一定割合を手数料として払う契約です。持ち出しの現金が要らないという意味では自己負担ゼロですが、受け取った保険金から手数料が引かれるので、支払いが無いわけではありません。

この仕組み自体が違法ということではありません。ただ、国民生活センターは、住宅の修理サービスに関する相談が2010年度の111件から2019年度は2,684件に増えたこと、解約するときに違約金を求められるトラブルが起きていることを公表しています。10年で約24倍になっている分野だ、という前提は知っておいて損がありません。

契約する前に、書面で確かめられることが5つあります。

☐ 手数料は保険金の何%か。上限額はあるか
☐ 保険金が支払われなかったとき、費用は発生するか
☐ 解約するときに違約金はかかるか。いくらか
☐ 修理工事の請負とセットの契約か、申請の代行だけか
☐ 保険会社とのやり取りを、自分が把握できる形にしてもらえるか

被害を実際より大きく見せて請求すれば、保険金詐欺になります。作業の内容に納得できないときは、契約する前に消費者ホットライン188(局番なし・通話料無料)に電話すれば、最寄りの消費生活センターを案内してもらえます。保険会社との話し合いがまとまらないときは、日本損害保険協会のそんぽADRセンター(03-4332-5241、月〜金9時15分〜17時)が、保険業法にもとづく紛争解決の支援をしています。

私はこう見ています

事実として、保険会社への連絡は無料で、査定のための鑑定は保険会社の費用で行われ、請求できる期間は3年あります。制度の側に、被災者を急がせる仕組みはありません。

そのうえで私は、申請サポートを使うかどうかは、写真・証券の確認・保険会社への連絡を済ませたあとで決めればいい、と考えています。この3つは誰でも無料でできて、済ませたあとでも依頼はできます。順番を逆にすると、保険会社が何と言っているかを知らないまま、手数料の条件だけを見て契約することになります。

事業者に頼むこと自体を否定しているのではありません。屋根に上れない、書類を書く気力が残っていない、一人で家の中を回れない。そういうときに人手を借りるのは合理的です。判断は、材料をそろえてからで間に合います。

保険金が支払われるかどうかは、契約の内容とその査定によります。この記事は2つの制度の関係を整理するために使い、自分の契約は必ず保険証券と保険会社で確認してください。

出典

・災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第90条の2、保険法(平成20年法律第56号)第95条第1項:e-Gov法令検索

・住家の被害認定の区分と損害割合:内閣府(防災担当)「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」。区分と損害割合の数値は京都市・東大阪市の公表資料で確認

・罹災証明書の対象範囲、火災の場合の窓口、申請期限:京都市/東大阪市の罹災証明書のご案内

・火災保険で地震による損害が補償されないこと、地震保険の付帯方式・保険金額の範囲・損害区分と支払割合:財務省「地震保険制度の概要」

・自然災害等損保契約照会センター、そんぽADRセンター:一般社団法人日本損害保険協会

・住宅修理サービスの相談件数と解約時のトラブル、消費者ホットライン188:独立行政法人国民生活センター(2020年10月1日公表)

・被害写真の撮り方:北九州市「住まいが被害を受けたとき」

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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