「東海林」を“しょうじ”と読む代表的な説明は、荘園を管理する役職「荘司(しょうじ)」に由来するという説です。もとは東海林と名乗った一族が荘司を務めたことから、漢字はそのままに、役職名の「しょうじ」で呼ばれるようになったと説明されています。
ただし、東海林には「とうかいりん」「とうかいばやし」などの読みもあり、すべての家が同じ経緯で「しょうじ」になったとは限りません。この記事では、埼玉県立久喜図書館・宮城県図書館のレファレンス事例を中心に、確かめられる範囲を整理します。

東海林を「しょうじ」と読む理由
埼玉県立久喜図書館が公開するレファレンス事例では、複数の姓氏辞典を調べたうえで、次の説を紹介しています。
荘園の管理をする「庄司・荘司」を務めた東海林氏が、漢字を変えずに、そのまま「しょうじ」を名字の読みとした。
見た目どおりなら「とうかいりん」と読みたくなりますが、名字の読みには、土地の呼び方、役職、周囲からの呼ばれ方が重なることがあります。東海林は、漢字の音訓だけでは説明しにくい「歴史から生まれた読み」の例です。
ここで大切なのは、レファレンス事例も「この説を紹介する」としている点です。古い名字の由来は、一枚の証明書で確定できるとは限りません。複数の辞典に共通して載る有力説として受け止めるのが適切です。
苗字をもっと調べるなら
自分の苗字の由来まで来た人は、たいてい「他の苗字はどうなのか」で止まらなくなります。ネットの断片ではなく通しで読めるものを挙げます。
1つの苗字の由来を調べると、たいてい「なぜ日本人はこんなに苗字が多いのか」に行き着きます。名乗りが身分や土地とどう結びついていたかを通しで読める1冊です。
苗字を調べた流れで家紋まで見ると、同じ名字でも家ごとに違う理由が分かります。文庫なので、気になったときに引ける形で置いておけます。
自分の苗字だけでなく、家族や取引先の名字も引けます。読み方が割れる苗字の扱いが載っているので、難読名字に当たったときに早いです。
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そもそも「荘司」とは何をした人?
宮城県図書館のレファレンス事例は、『国史大辞典』『日本国語大辞典』『荘園史用語辞典』を引き、「荘司」を荘園の管理者の総称、または荘園領主から任命されて現地の雑務を担った役人と説明しています。
荘園は、貴族、寺社、武家などが権利を持った土地です。しかし、遠くにいる領主が毎日の農作業や年貢の収納、境界争いまで直接見ることはできません。そのため、現地で田畑や人、記録を管理する担当者が必要でした。
資料によっては、荘預、荘別当、下司、田所、案主など複数の立場を含む総称として説明されます。現代の一つの職名に置き換えるのは難しいものの、「荘園経営を現場で支える管理役」と考えるとイメージしやすいでしょう。
「東海林」の漢字はどこから来た?
「しょうじ」という音の説明は荘司説で理解できますが、では、なぜ漢字が「東海林」なのでしょうか。
レファレンス資料は、もともと東海林を称した一族が荘司を務めたため、文字を変えず読みだけが「しょうじ」になったという流れを紹介しています。つまり「東・海・林」を一字ずつ「しょう・じ」と読ませたのではなく、役職名が名字全体の読みとして重なったという考え方です。
名字は、漢字より先に呼び名が定着することもあります。後世の記録で別の字が当てられたり、同じ字のまま地域の読みが受け継がれたりするため、一般的な漢字の読み方だけでは説明できない例が残ります。
山形の最上・村山地方とのつながり

埼玉県立久喜図書館の調査過程では、『宮城県姓氏家系大辞典』の「庄子」の項を引き、東海林の一族が山形県の最上・村山地方に分布したと紹介しています。また、ある家が伊達忠宗の黒印状で「庄子」と記されたことから庄子を称した、という事例も挙げています。
ここから、「東海林」「庄司」「庄子」など、同じ“しょうじ”の音を持つ名字が、地域の記録のなかで関係づけられてきたことが見えてきます。ただし、これも全国の東海林家すべてに当てはまる話ではありません。自分の家の出身地が山形・宮城周辺か、別の地域かで、調べる資料は変わります。
「とうかいりん」と読む東海林さんもいる
東海林の読みは「しょうじ」だけではありません。文字に沿った「とうかいりん」や「とうかいばやし」などの読みもあります。
同じ漢字でも、地域や家ごとに読みが違うのは日本の名字では珍しくありません。初対面で読み方がわからないときは、由来を決めつけず、本人に確認するのがいちばん確実です。
逆に、読みが同じ「しょうじ」でも、庄司、庄子、荘司、東海林など表記はさまざまです。音が同じだから同族、字が同じだから同族、という単純な判断はできません。
自分の東海林家のルーツを調べる方法

1. 家で使う正式な読みと字形を確認する
「しょうじ」か「とうかいりん」か、戸籍や古い位牌・墓碑でどの字が使われているかを確認します。庄司や庄子との書き分けが、過去の記録を探す手がかりになることがあります。
2. いちばん古くわかる本籍地・旧村名を控える
名字の由来を全国一律に考えず、家が暮らした地域の市町村史、郷土誌、寺社資料を調べます。山形の最上・村山、宮城などに接点がある場合は、県史・市町村史の姓氏や中世荘園の項目も候補です。
3. 「有力説」と「自家の証拠」を分ける
荘司由来説は、複数の姓氏辞典で紹介される有力な説明です。しかし、自分の家が実際に荘司を務めたことを示すには、系図、古文書、土地の記録など、家と地域をつなぐ資料が必要です。
国立国会図書館のリサーチ・ナビ「姓氏・苗字を調べる」には、姓氏辞典、家系資料、地域別文献の探し方がまとめられています。最初から有名人物の系図へつなげず、確認できる年代から少しずつさかのぼりましょう。
よくある質問
東海林は必ず「しょうじ」と読みますか?
いいえ。「とうかいりん」「とうかいばやし」などの読みもあります。家ごとの正式な読みを確認してください。
東海林さんは全員、荘園の管理者の子孫ですか?
断定できません。荘司を務めたことが「しょうじ」読みにつながったという有力説はありますが、個々の家系には別の経緯も考えられます。
庄司・庄子・東海林は同じ一族ですか?
一部の地域や家の記録で関係が示される例はありますが、全国の同名・同音の家がすべて同族とは限りません。出身地と古い記録の確認が必要です。
まとめ
東海林を「しょうじ」と読む背景には、荘園の管理役だった「荘司」との関係を示す説があります。読みに役職の歴史が残り、文字は「東海林」のまま受け継がれたと考えると、難読の理由が見えてきます。
難読苗字には、季節の行事や土地の言葉が残るものもあります。「八月一日」と書いて“ほずみ”と読む苗字の由来や、「一寸木」と書いて“ちょっき”と読む苗字の諸説もあわせてどうぞ。


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