🗨️「神戸市垂水区の塩屋では、空き家にどう取り組んでいますか」
結論からいうと、「古い家は壊して更地にしないと売れない」は塩屋では当てはまりません。坂と細い路地で建て替えが難しい土地が多く、神戸市と地域は空き家を「直して住み継ぐ」方向で動いています。市は改修費を最大500万円補助する制度の事例をこの町に重ね、2026年2月には空き家の改修物件を見て回る「塩屋くる・リ」を開きました。ただ、土地の値段は区の流れから外れていて、垂水区の地価が3年で平均6.0%上がったのに、塩屋の7地点は平均1.0%下がっています。
[空き家] この記事の要点
2026年10月21日 発表
- 塩屋に空き家や親の家を持っている人
- 塩屋で古い家を買って直したい人
- 斜面地の空き家の隣に住んでいる人
塩屋の空き家は何戸あるか
塩屋だけの空き家の数は、国の統計では出ていません。住宅・土地統計調査が数えるのは区までです。2023年の調査で、塩屋がある垂水区の空き家は13,470戸、住宅全体の12.4%でした。神戸市全体の13.9%より低い数字です。
増え方も市とは逆です。神戸市の空き家は5年前より8.4%増えましたが、垂水区は15,600戸から13.7%減りました。ただし13,470戸のうち4,600戸(34.1%)は、貸すことも売ることも決まっていない「使用目的のない空き家」です。相続したまま置いてある実家は、たいていここに入ります。

| 神戸市 | 垂水区 | |
|---|---|---|
| 空き家の数(2023年) | 118,400戸 | 13,470戸 |
| 空き家率 | 13.9% | 12.4% |
| 5年前からの増減 | +8.4% | −13.7% |
| うち使用目的のない空き家 | ― | 4,600戸(34.1%) |
建て替えにくい町の事情
塩屋は、海と六甲山系の山すそのあいだの狭い土地に家が詰まった町です。神戸市が2026年2月に配ったイベントのチラシは、この町の家を次のように説明しています。
(神戸市建築住宅局政策課「塩屋くる・リ」チラシ、2026年)
再建築不可とは、家を壊すと同じ場所に新しい家を建てられない土地のことです。建築基準法は、幅4m以上の道路に2m以上接していない土地に家を建てることを認めていません。階段や細い路地の奥にある家は、この条件を満たしていないことがあります。壊して更地にすれば売れる、という手が使えないわけです。
2023年5月19日の午前10時50分ごろ、塩屋町の住宅街から「(近くの家の)庭が一部崩れている」と119番が入りました。家と家のあいだの擁壁が高さ約3m・幅約10mにわたって崩れ、下にある空き家の敷地に土砂が流れ込んでいます。けが人はいませんでしたが、下の民家4世帯8人に避難指示が出ました(神戸新聞)。斜面の町では、空き家を置いておくことが、そのまま隣の家の危険になります。
土地の値段にも、この事情が出ています。国の地価公示で、垂水区の同じ58地点を2023年と2026年で比べると、平均で6.0%上がりました。上がったのは47地点、下がったのは7地点です。その下がった7地点のうち4地点が塩屋でした。

駅から500m・前面道路5.5mの塩屋町5丁目は1.6%上がりました。駅から800m・前面道路4mの塩屋町9丁目は5.0%、駅から1.4kmの塩屋台2丁目は4.5%下がっています。駅から300mの塩屋町3丁目は前面道路4mで、2026年の価格は1㎡あたり91,400円です。駅から遠い5丁目の127,000円より3割ほど安くなっています。
駅に近いのに安い土地があるのは、なぜですか。
地価公示の資料が示しているのは、駅からの距離・前面道路の幅・用途地域までです。私は、坂の上り下りと道の狭さで建て替えや車の出入りが難しいことが、値段に出ていると見ています。家の価値は地価公示には映らないので、直して住める家なら、土地の値段より高く売れることもあります。
売る・継ぐ・片付ける、を決めるときに読むもの
値段が分かったあとにやることは、売る・名義を変える・その前に中の物を片付ける、で人によって違います。相続登記は2024年4月から義務になり、相続を知った日から3年以内に申請しないと過料の対象になるので、放っておける手続きではなくなりました。
買い取る側にいた人が、売る側に向けて書いた本です。公示地価や基準地価は「いくらで出すか」の目安にしかならず、手元に残る額は業者の選び方と交渉で変わります。地方ほど売りにくくなる前提で書かれています。
葬儀・年金・保険・相続の届出を、期限つきで並べた図解のムックです。年度版なので税制改正のぶんが毎年入れ替わります。何をいつまでにやるのかが分からない段階なら、ここから入るのがいちばん早いです。
名義変更を司法書士に頼まず自分でやる人向けの手順書です。第2版で義務化・相続人申告登記・戸籍の広域交付に対応しています。登記簿と戸籍の読み方から入るので、書類集めの段階で止まっている人でも進められます。
親が元気なうちに片付ける前提で、家族会議の開き方や「捨てる」と言わない進め方をマンガで扱っています。売るにも貸すにも、中の物が残ったままでは査定も見学も先に進みません。
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神戸市と町の取り組み
壊せない家が多い町で、神戸市と地域が選んだのは「直して住み継ぐ」ほうです。市は2026年2月14日・15日、塩屋の町を会場に「塩屋くる・リ」を開きました。「リ」はリノベーションの「リ」です。
14日の朝10時、明治期の洋館・旧グッゲンハイム邸に参加者が集まり、15人ずつ3つのグループに分かれて塩屋谷川の右岸へ歩き出しました。普段は入れない個人の家を1日に7軒ほど訪ね、古い家をどう直して住んでいるかを見る「お宅探訪ツアー」です。15日は左岸を回りました。午後は空き家の相談会、夕方はリノベーションのトーク(各日定員60名)が開かれています。

もう一つのメイン会場「塩屋的住環境の家」は、昭和初期の民家を改装して2025年末に開いた宿泊施設です。この名前は、地元のまちぐるみの活動「塩屋空き家・古家相談室」から生まれたプロジェクト「塩屋的住環境特集」に由来します。空き家・古家の活用の相談や、解体で出る古材をためて使い回す窓口を担っています。
| いつ | 何をしたか | 主催・運営 |
|---|---|---|
| 2024年10月29日 | 「空き家の活用講座 塩屋編」(塩屋地域福祉センター・定員70名) | すまいるネット(神戸市すまいの総合窓口) |
| 2026年2月14・15日 | 「塩屋くる・リ」お宅探訪ツアー・トーク・相談会 | 神戸市建築住宅局政策課 |
| 常時 | 空き家・古家の相談、古材のストックと活用 | 塩屋空き家・古家相談室(塩屋的住環境特集) |
市がこの町を選んだ理由は、記者資料に書かれています。塩屋には、市の「建築家との協働による空き家活用促進補助」で直した建物が多く、イベントで巡る店や洋館にも補助の事例が含まれていました。制度が始まった2022年度には、塩屋町の「気軽に立ち寄れるまちの東屋」と「塩屋の空き家再生プロジェクトの拠点」が選ばれています。
町の範囲も、市が線で引いています。神戸市は坂の多い6つの地区を「坂のまちエリアリノベーション補助」の指定エリアにしていて、塩屋はその1つです。JR・山陽の塩屋駅の北側から、塩屋小学校や塩屋丸山線のあたりまでが入ります。

私は、塩屋の取り組みを「建て替えられない土地に、建物の使い道で値段を付け直す試み」だと見ています。神戸市自身も、2026年3月の空家空地対策計画の資料で、これまでの支援は「個別点的な支援にとどまって」いたと書き、空き家が集まる地域でエリア単位の取り組みを支える仕組みを課題に挙げました。1軒ずつではなく町ごと見せる塩屋は、その課題にいちばん近い形です。
使える補助と相談先
塩屋の空き家に使える神戸市の制度は、直して使う側に厚くできています。建築家と組んで直す補助は、2022年度から2024年度までに102件の応募があり、70件が採択されました。
| 制度 | 中身 | 数字 |
|---|---|---|
| 建築家との協働による空き家活用促進補助 | 建築家が改修設計から監修し、直した後を社会貢献に使う | 対象経費の1/2・最大500万円 |
| 空き家地域利用補助 | 地域活動・交流拠点などに使うための片付け・改修 | 対象経費の1/2・最大200万円 |
| 維持費用補助 | 地域利用のために無償で貸す所有者へ | 固定資産税などの相当額 |
| 空き家おこし協力隊 | 建築士・宅建士・司法書士・税理士などを無料で派遣 | 2022〜24年度に117物件を支援、29件が活用に |
塩屋が指定エリアに入っていることには、実利があります。建築家と組む500万円の補助は、通常の募集が2026年7月2日で締め切られました。けれども指定エリアで、複数の物件を連携させる計画を出して承認されれば、2026年12月10日まで受け付けてもらえます。空き家の補助をまとめて申請でき、計画をまとめる事業者も、持ち主の同意があれば申請者になれます。
相談だけなら、すまいるネット(神戸市すまいの総合窓口)が無料で受けています。親族が多くて話が進まない、隣と境界でもめている、という段階でも「空き家おこし協力隊」が家まで来てくれます。
売ると決めた場合は、親が一人で住んでいた家なら、売れた利益から最大3,000万円を差し引ける特例があります。対象は1981年5月31日以前に建った家で、売る前に耐震改修か取り壊しをすることが条件です。2024年からは、売った翌年2月15日までに買主が耐震改修をしても使えるようになりました。建て替えにくい塩屋の家なら、壊さずに直す道を残せます。
よくある質問
Q. 塩屋の空き家は何戸ありますか。
A. 塩屋だけの数は公表されていません。塩屋がある垂水区の空き家は2023年に13,470戸、空き家率12.4%で、5年前より13.7%減りました(住宅・土地統計調査)。
Q. 塩屋の古い家は建て替えできますか。
A. 家ごとに違います。幅4m以上の道路に2m以上接していない土地は、壊すと建て直せません。神戸市のチラシも、塩屋には再建築不可の土地が多く、建て替えが難しいと書いています。買う前・壊す前に、市の建築指導課で道路の種類を確かめてください。
Q. 塩屋の空き家を直すと補助は出ますか。
A. 地域や社会のために使うなら、神戸市の空き家地域利用補助(最大200万円)や、建築家と組む空き家活用促進補助(最大500万円)があります。自分で住むだけの改修は対象外で、契約前の申請が必要です。
生活・仕事にどう効くか
- 数:垂水区の空き家13,470戸(12.4%)。5年で13.7%減。使用目的のない空き家4,600戸。
- 地価:垂水区の同一58地点は3年で平均+6.0%。下落7地点のうち4地点が塩屋。
- 補助:建築家協働で最大500万円、地域利用で最大200万円(いずれも1/2)。
結局どうすればよいか
- 壊す前に、家の前の道が建築基準法の道路かを市で確かめる
- 直して使うなら、契約前に神戸市の補助の募集を確かめる
- 迷ったら、すまいるネットに無料で相談する
公式出典
- 神戸市 住宅・土地統計調査(令和5年)の分析(PDF)(2026年10月21日発表)
- 神戸市 空き家活用応援制度(2026年10月21日発表)
- 神戸市 坂のまちエリアリノベーション補助(指定6エリア・塩屋エリア)(2026年10月21日発表)
- 国土交通省 国土数値情報 地価公示データ(2023年・2026年)(2026年10月21日発表)
- 神戸新聞 神戸・垂水の住宅街で土砂崩れ(2023年5月19日)(2026年10月21日発表)
更新履歴
- 2026年10月21日 初版を公開
※本記事は2026年10月21日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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