「目黒区は台地の上だから、水害はあまり気にしなくていい」。その前提は、令和7年9月11日の大雨で崩れました。
この日の15時20分までの1時間に、目黒区緑が丘で134ミリの雨が観測されました。区の浸水履歴には、この1日だけで282件が載っています。記録が残る平成16年度からの22年で、いちばん多い日です。
しかも、浸水した場所は前の大雨と同じではありませんでした。区の記録を番地の手前まで読むと、目黒区の「どこが危ないか」は1つの答えに収まりません。
この記事でわかること
- ✓ 国の「道路冠水注意箇所」に目黒区は2か所。どちらも山手通りのアンダーパスです
- ✓ 区の浸水履歴は889件。令和7年9月11日の282件は、平成25年7月23日の229件を超えて最多でした
- ✓ 浸水が重なった25街区のうち21は標高19〜38メートルの高い場所。止水板は費用の10分の9まで区が出します
箇所の数は国土交通省 関東地方整備局「道路冠水注意箇所」東京都の一覧と説明表、件数は目黒区「浸水履歴」(平成16年度〜令和7年度・36ページ)を自分で数えました。標高は国土地理院の住所検索APIと標高APIで引いています。
国の一覧に、目黒区は2か所あります
国土交通省の関東地方整備局は、大雨のときに水がたまるおそれがある道を「道路冠水注意箇所」として挙げています。東京都の一覧は153か所で、目黒区は2か所。どちらも都道317号、山手通りのアンダーパスです。
A は目黒通りの下をくぐる「目黒通り下アンダーパス」(下目黒3丁目)、B は駒沢通りの下をくぐる「駒沢通り下アンダーパス」(中目黒1丁目)。管理しているのは東京都建設局です。住所の代表点の標高は、Aが17.6メートル、Bが8.3メートルでした。

地図の番号と同じ順です
A 目黒通り下アンダーパス
都道 317号
東京都目黒区下目黒3丁目 / 標高17.6メートル
管理: 東京都建設局道路管理部保全課 / 警察: 目黒警察署 / 消防: 目黒消防署
B 駒沢通り下アンダーパス
都道 317号
東京都目黒区中目黒1丁目 / 標高8.3メートル
管理: 東京都建設局道路管理部保全課 / 警察: 目黒警察署 / 消防: 目黒消防署
Googleマップのリンクは、説明表の住所と構造物の名前から道路地図(OpenStreetMap)で位置を合わせた緯度経度で開きます。合わせられなかった箇所は町丁目の代表点なので、数百メートルずれることがあります。標高は住所を国土地理院の住所検索にかけた代表点の値で、道路の底の高さではありません。
冠水した道で車が動けなくなったときに要るもの
JAFのテストでは、セダンが走れなくなる水深と、ドアが開かなくなる水深がほぼ同じでした。つまり止まった時点で、窓を割る以外に外へ出る方法がなくなります。車に置いておくものから挙げます。
水に浸かった車は、外からの水圧でドアが開かなくなります。割れるのは側面のガラスで、フロントガラスは合わせガラスなので割れません。グローブボックスの奥ではなく、座ったまま手が届く場所に置いてください。
119番も家族への連絡も、スマホが生きていることが前提です。水に落とすと沈んで探しようがなくなるので、浮く型かどうかがそのまま連絡手段の有無になります。入れたまま操作できます。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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区は、番地の手前まで浸水の記録を出しています
目黒区は「浸水履歴」というPDFを公開しています。平成16年度から令和7年度までに区へ報告があった浸水被害を、災害名・町名・丁目・番・被害区分で1件ずつ並べたものです。個人情報に配慮して「号」だけは伏せてあります。
数えると889件。床上浸水567件、床下浸水163件、駐車場や倉庫などの「その他」159件で、330の街区、78の町丁目にまたがっていました。町丁目までの品川区と比べると、番まで出している目黒区の表はかなり細かいものです。

区の広報は、令和7年7月10日と9月11日の大雨について「区内のさまざまな場所が浸水被害に遭いました」と書いています。9月11日だけで約400件の被害調査の依頼があったそうです。浸水履歴に載っている9月11日分は282件です。
読者
1時間134ミリって、どのくらいの雨ですか?
東京都が想定している最大の雨が1時間153ミリです。それにかなり近い雨が、実際に目黒区で降ったことになります。
大雨のたびに、浸水する町が入れ替わります
災害ごとに町名を数え直すと、目黒区の記録はもっと読みにくくなります。平成25年7月23日にいちばん多かったのは八雲で71件。ところが令和7年9月11日の八雲は8件でした。かわりに目黒本町66件、碑文谷64件が上位に来ています。

区自身も広報で「これまで被害がなかった地域でも浸水被害が発生しました」と書いています。いちばんわかりやすいのが碑文谷1丁目28番です。12件の記録がすべて令和7年9月11日の1日分で、それより前には1件もありませんでした。
一方で、同じ番に何度も記録が付く場所もあります。八雲3丁目13番、中根2丁目15番、碑文谷2丁目6番は、災害名の違う6回の記録に出てきます。
浸水が重なるのは、川沿いの低地ではありません
記録が重なった25の街区を地図に落とし、標高を引きました。目黒区は区の説明でも「武蔵野台地の東南部」にあり、目黒川と呑川の谷が「20から30メートルの深さ」で台地を刻んでいる、とされる街です。
25街区のうち、標高13.1メートル以下は4つだけ。残る21街区は19.3〜38.3メートルでした。目黒川沿いの低地にあるのは下目黒3丁目7番(7.5メートル)くらいで、ほかは標高19メートル以上の場所です。
区の広報は「ハザードマップで色付けされていない場所でも、浸水被害が生じる可能性がある」と書いています。
| No. | 街区 | 件数 | 記録の回数 | 令和7年9月11日 | 標高 | 地図 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 八雲三丁目13番 | 18 | 6回 | 1 | 27.8m | 地図で開く |
| 2 | 中根二丁目15番 | 12 | 6回 | 2 | 24.8m | 地図で開く |
| 3 | 碑文谷二丁目6番 | 9 | 6回 | 2 | 26.9m | 地図で開く |
| 4 | 碑文谷五丁目21番 | 10 | 5回 | 3 | 30.2m | 地図で開く |
| 5 | 五本木一丁目34番 | 5 | 5回 | 1 | 27.7m | 地図で開く |
| 6 | 下目黒三丁目7番 | 17 | 4回 | 3 | 7.5m | 地図で開く |
| 7 | 目黒本町二丁目11番 | 12 | 4回 | 9 | 27.7m | 地図で開く |
| 8 | 上目黒二丁目47番 | 10 | 4回 | 0 | 13.1m | 地図で開く |
| 9 | 五本木一丁目33番 | 10 | 4回 | 3 | 26.3m | 地図で開く |
| 10 | 目黒本町一丁目1番 | 9 | 4回 | 2 | 26.3m | 地図で開く |
| 11 | 中根二丁目4番 | 9 | 4回 | 0 | 23.7m | 地図で開く |
| 12 | 目黒三丁目16番 | 7 | 4回 | 1 | 12.9m | 地図で開く |
| 13 | 八雲二丁目25番 | 7 | 4回 | 1 | 26.9m | 地図で開く |
| 14 | 下目黒三丁目20番 | 6 | 4回 | 1 | 19.3m | 地図で開く |
| 15 | 柿の木坂一丁目16番 | 5 | 4回 | 1 | 28.5m | 地図で開く |
| 16 | 中町一丁目6番 | 13 | 3回 | 0 | 26.9m | 地図で開く |
| 17 | 東が丘二丁目15番 | 13 | 3回 | 0 | 38.3m | 地図で開く |
| 18 | 下目黒四丁目23番 | 11 | 3回 | 4 | 13m | 地図で開く |
| 19 | 目黒本町六丁目16番 | 10 | 3回 | 5 | 25m | 地図で開く |
| 20 | 五本木一丁目1番 | 15 | 2回 | 5 | 20.6m | 地図で開く |
| 21 | 碑文谷一丁目3番 | 13 | 2回 | 10 | 25.9m | 地図で開く |
| 22 | 八雲三丁目14番 | 13 | 2回 | 0 | 28.1m | 地図で開く |
| 23 | 目黒本町四丁目20番 | 10 | 2回 | 9 | 26.5m | 地図で開く |
| 24 | 碑文谷一丁目28番 | 12 | 1回 | 12 | 26m | 地図で開く |
| 25 | 下目黒六丁目21番 | 6 | 1回 | 6 | 23.8m | 地図で開く |
選んだのは、災害名の違う4回以上の記録、または合計10件以上、または令和7年9月11日に6件以上の記録がある街区です。1件は区に報告された浸水被害1つで、棟数や世帯数ではありません。区は「区内で発生した全ての浸水被害を示すものではありません」としています。
内水のハザードマップは、一部が水防法にもとづく図になりました
目黒区の水害ハザードマップには、洪水・雨水出水(内水)・高潮の3つが載っています。区の説明では、雨水出水はもともと水防法にもとづく図ではありませんでした。
変わったのは令和8年3月25日です。東京都下水道局が「城南地区河川流域 雨水出水浸水想定区域図」を指定し、区の図の雨水出水の部分は「一部」が水防法にもとづくものになりました。区の表では「一部有」。洪水と重なる範囲は作っていない、という注が付いています。
想定している雨は1時間最大153ミリ、24時間で690ミリです。不動産の重要事項説明では、水防法にもとづく図で物件の位置を示すことになっています。目黒区で家を借りる・買うときは、洪水の図だけでなく内水の図でも位置を確かめてください。
止水板は、費用の10分の9まで区が出します
目黒区は令和7年の2度の大雨を受けて、止水板の工事の助成を引き上げました。区内に住所がある個人なら工事費の10分の9、上限100万円。区は「23区トップの水準」と書いています。拡充は令和10年度までの予定で、令和7年7月10日以降の設置が対象です。
注意点は2つあります。止水板を買うだけでは対象にならず、工事が要ること。そして、工事を始める前に申請しなければならないことです。隣の品川区は個人5分の4・上限100万円なので、目黒区のほうが自己負担は少なくなります。
自分の家の前が危ないかを調べる3つ
- 区の浸水履歴のPDFで、自分の町名・丁目・番を探す。番まで載っているので、同じ番に何回記録があるかまで分かります
- 目黒区水害ハザードマップで、洪水と内水(雨水出水)を分けて見る
- 雨の日に、家の前の道がどちらへ下っているか、集水ますがどこにあるかを見に行く
記録の無い街区で浸水が起きたのが令和7年です。表に載っていなくても、3つ目は必ずやっておく価値があります。
\住所だけ・1分で公的データを確認できます/
土砂災害警戒区域・洪水の浸水想定・地盤の揺れやすさを公的データでまとめて出します
よくある質問
目黒川から離れていれば大丈夫ですか
いいえ。浸水の記録が重なる25街区のうち21は、目黒川沿いの低地ではなく標高19メートル以上の場所にあります。川から離れた場所でも、記録は重なっています。
浸水履歴に自分の番が載っていなければ安全ですか
そうとは言えません。区に報告された被害だけが載る表で、碑文谷1丁目28番のように、令和7年9月11日に初めて記録が付いた場所もあります。
山手通りのアンダーパスは大雨の日に通れますか
冠水すると通れなくなるおそれがあるため、国の一覧に載っています。大雨の日はアンダーパスに入らない道を選ぶのが確実です。
ほかの区はどうなっているか
- 道路冠水マップ どこで見られるの?(全国の一覧と、市区ごとの記事のまとめ)
- 品川区 冠水 どこが危ないの?
- 世田谷区 冠水 どこが危ないの?
- 渋谷区 冠水 どこが危ないの?
- 大田区 冠水 どこが危ないの?
公式出典
- 国土交通省 関東地方整備局「道路冠水注意箇所」東京都(一覧と1か所ごとの説明表。2026年9月23日取得)
- 目黒区「浸水履歴」(平成16年度〜令和7年度・2026年7月28日更新)
- 目黒区「浸水被害対策 激しい雨の日。あなたの居場所は大丈夫?」
- 目黒区「豪雨対策サポートプラン」(令和7年11月26日)
- 目黒区「目黒区水害ハザードマップは、水防法に基づいて作成されたものですか」
- 東京都下水道局「城南地区河川流域 雨水出水浸水想定区域図」(令和8年3月25日指定)
- 目黒区「止水板設置工事助成」
- 東京管区気象台「令和7年9月11日の大雨に関する東京都気象速報」
- 国土地理院 住所検索API・標高API(標高)/地理院タイル(地図)
この記事の数値は公表資料を集計したものです。避難や通行の判断は、必ず区と東京都の最新の発表を確認してください。
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