この坂は1.5キロで130メートル下ります
報道はどれも「急な下り坂」「長い下り坂」と書いていて、数字がありません。国土地理院の標高データで、町の代表点の高さを取ってみました。
| 地点 | 標高 |
|---|---|
| 灘区 鶴甲四丁目 | 215.6 m |
| 灘区 鶴甲二丁目(8月の規制区間の北端) | 183.2 m |
| 灘区 一王山町(8月の現場) | 108.1 m |
| 灘区 高羽町(9月の現場) | 52.8 m |
| 灘区 徳井町(国道2号との交点) | 16.3 m |
8月に規制された鶴甲2丁目から高羽までの約1.5キロで、130.4メートル下っています。平均すると約8.7%の勾配です。
物差しを1つ置きます。道路構造令 第20条が定める縦断勾配の最大値は、設計速度40km/hの一般道で7%です。ただしこれは新しく造るときと造り直すときの基準なので、既存の道が違反しているという意味ではありません。設計速度が30km/hなら8%、20km/hなら9%まで認められます。「基準を超えている道」ではなく「基準の上限あたりを2キロ以上続けて下る道」だと読むのが正しい読み方です。
なお、この数字は町の代表点を直線距離で結んだ参考値です。実際の道は蛇行しているので、道路に沿った勾配はこれよりゆるくなります。
止まれなくなるのは、下りきったところです
兵庫県警は「フェード現象」を、長い下り坂などでフットブレーキを頻繁に使うとブレーキが過熱し、急に利かなくなる現象と説明しています。過熱は下り始めてすぐには起きません。踏み続けた結果として、下りきったあたりで効かなくなります。だから現場が交差点になります。

兵庫県警が挙げている対策は4つです。エンジンブレーキを使う。低めのギアを使う。排気ブレーキを使う。走る前にブレーキとハンドルを点検する。いずれも「フットブレーキに仕事をさせない」方向でそろっています。
ニュートラルに入れるのは逆です
検索窓に「下り坂 ブレーキ効かない ニュートラル」と打つ人が実際にいます。エンジンの負担が減って楽になりそうに思えるからだと思います。
ところがニュートラルに入れると、エンジンブレーキが完全に切れます。速度を落とす仕事が全部フットブレーキに回るので、過熱を早める方向にしか働きません。県警が勧めているのは逆で、低めのギアに入れることです。
この坂で起きてきたこと
| 時期 | 起きたこと |
|---|---|
| 2019年9月 | 高羽町1の急な下り坂で大型トラックが乗用車3台と歩行者に接触、柵を突き破り4mほど下の石屋川に転落。運転手が死亡、計7人が負傷。のちにエアブレーキ部品の約1.5cmの亀裂が判明し、2022年3月に運送会社の元所長へ実刑判決 |
| 2022年7月 | 同じ長い下り坂で車7台がからむ事故、2人軽傷 |
| 2026年8月20日 | 一王山町でレッカー車が単独事故、約420軒が一時停電 |
| 2026年9月16日 | 高羽町で信号待ちの市バスにトラックが追突 |
サンテレビによると、兵庫県警はこの県道灘三田線を2024年に「フェード現象重点対策路線」に指定していて、2020年以降で7件がフェード現象によるものとされています。県警の公式ページには重点対策路線として県道灘三田線と県道奥山精道線の2路線が挙がっていますが、指定年と件数の記載はありません。2025年5月には神戸市道路公社と県警が、六甲山トンネル料金所の手前に検査スペースを設けて合同の啓発をしています。
2019年の報道はこの道を「市道」、2026年の報道は「県道」と書いています。どの区間を指しているかで管理者が変わるので、ここでは「六甲山から続く連続した下り坂」という言い方にとどめます。
生活・仕事にどう効くか
- 鶴甲から国道2号までの約2.4キロで199メートル下る道です。平均で約8.2%、8月に規制された1.5キロ区間なら約8.7%になります。
- 通勤や配送で毎日通るなら、坂の途中ではなく「下りきった信号で止まれる速度」まで先に落とせているかが、そのまま危険度の差になります。
- 大型車を使う仕事では、運行前のブレーキ点検と、排気ブレーキを含めた降坂の手順を決めてあるかが問われる区間です。
結局どうすればよいか
- 長い下り坂に入る前に、低めのギアへ落として排気ブレーキを併用する
- ニュートラルに入れない(エンジンブレーキが切れてフットブレーキの過熱を早める)
- 坂の途中ではなく、下りきった信号で止まれる速度まで先に落としておく
公式出典
- 兵庫県警察「交通安全 フェード現象」(重点対策路線と対策)(2026年9月16日発表)
- 神戸市道路公社「フェード現象対策キャンペーン」(兵庫県警との合同実施)(2025年5月1日発表)
- 国土交通省「道路構造令について」(第20条 縦断勾配)(2026年9月16日発表)
- 神戸新聞NEXT 8月20日のレッカー車単独事故と規制区間(2026年8月21日発表)
- サンテレビ フェード現象重点対策路線と件数(報道)(2026年8月27日発表)
- 日本経済新聞 2019年9月3日 灘区高羽町の転落事故(2019年9月3日発表)
- 国土地理院 標高API・住所検索API(本記事の標高はこれで取得)(2026年9月16日発表)
更新履歴
- 2026年9月16日 初版を公開。9月16日の事故は報道のみを出典とし、負傷者数は報道で割れているため併記した。原因は確定していないため断定していない。標高は国土地理院のAPIで取得した実測値。
※本記事は2026年9月16日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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