🗨️「家屋倒壊等氾濫想定区域に入っている土地に、家を新築することはできるのでしょうか」
この区域に入っていること自体で、建築が禁止されたり許可が要ったりすることはありません。国の決まりでは、洪水のときに家の中にとどまってよいかを判断するための情報という位置づけです。ただし2種類あるうちの「河岸侵食」のほうは、家の構造に関係なく倒れる前提で引かれています。
[災害] この記事の要点
2026年9月23日 発表
- 川沿いの土地を買って家を建てようとしていて、家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていると知った人
- 洪水ハザードマップを見て、自分の家が家屋倒壊等氾濫想定区域の中にあると気づいた人
- 木造かRC造かで迷っていて、区域の中ならどちらが安全なのかを知りたい人
法律にも省令にも、この区域の名前は出てきません
洪水の浸水想定区域は、水防法の第14条にもとづいて国や都道府県が指定します。指定するときに何を示すかは、水防法施行規則の第2条に並んでいます。指定の区域、浸水した場合に想定される水深、長時間浸かる場合の浸水継続時間、それに計画規模の雨での区域と水深。この4つです。
家屋倒壊等氾濫想定区域は、この中に入っていません。では、どこで決まっているのかというと、国土交通省が作った「洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第4版)」です。マニュアルは冒頭で、浸水想定区域図を作るとともに、次のものを提供するための手法を定める、と書いています。
「家屋倒壊等氾濫想定区域」その他洪水時の円滑かつ迅速な避難の確保及び浸水の防止のために必要な情報
洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第4版)1.1 目的
「その他…必要な情報」という並べ方になっています。つまり、法律で指定を義務づけられた区域ではなく、避難のために足された情報です。使い道もマニュアルに書かれていて、市町村長が「屋内での待避等の安全確保措置」を指示するかどうかの判断に役立てるもの、とされています。
建てるのを止める仕組みは、この区域には付いていません
区域の性格がこうなので、入っているからといって建築確認が止まることはありません。建築を止められるのは、別の法律で別に指定された区域です。
1つは建築基準法第39条の災害危険区域で、市町村などが条例で指定し、住宅の建築禁止まで定められます。もう1つは特定都市河川浸水被害対策法の浸水被害防止区域で、都道府県知事が指定し、居室のある建物を建てるのに許可が要ります。家屋倒壊等氾濫想定区域と場所が重なっていても、制限をかけているのはこちらの区域のほうです。
同じ構図は高潮にもあります。水防法の地図には建築の制限が無く、制限は建築基準法の側から来る。その整理は高潮浸水想定区域/建築制限はありませんに条文ごと並べました。
地図で調べたあと、家に置いておくもの
色がついていても、白でも、家に置くものは変わりません。自治体の備蓄は数日分が前提なので、最初の3日をしのぐ分は各家庭で持っておくものとされています。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
飲料水は1人1日3L。4人家族の1週間分で84L=2Lボトル42本なので、6本入りだと7ケースぶんです。5年保存タイプなら入れ替えの手間が減ります。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
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開発許可が厳しくなったときも、物差しは「水深3m」でした
2022年4月から、市街化調整区域での住宅の開発許可が厳しくなりました。都市計画法施行令の第29条の9で、条例で開発を認める区域から、災害の危険が大きい区域を原則として外すことになったためです。
浸水想定区域のどこを外すかは、都市計画法施行規則が勘案事項を決めています。土地利用の動向、浸水した場合の水深と浸水継続時間、過去に浸水した実績。この3つで、家屋倒壊等氾濫想定区域は入っていません。国の開発許可制度運用指針は、その水深について次のように書いています。
一般的な家屋の2階の床面に浸水するおそれがある水深3.0mを目安とすること。
開発許可制度運用指針 Ⅰ-6-10(5)③ロ(国土交通省)
しかもこれは市街化調整区域で条例にもとづいて開発を認める場合の話で、市街化区域の住宅地で普通に家を建てるときには関係しません。国が土地利用の線引きに使ったのは、家が倒れるかどうかではなく、2階の床まで水が来るかどうかでした。
2種類あって、建物の強さの効き方が逆になります
この区域には「氾濫流」と「河岸侵食」の2種類があります。地図では別々に表示されていて、中身がかなり違います。

| 氾濫流 | 河岸侵食 | |
|---|---|---|
| 何が起きる想定か | 堤防が切れて、勢いのある水が家を押し倒す | 川岸が削られて、家の下の地盤が流される |
| 想定している建物 | 木造2階建て | 木造も非木造も |
| 頑丈な建物なら | すぐ立退きが必要とはならない場合もある | 構造によらず倒壊・流出の危険 |
| 出やすい場所 | 高い堤防のすぐ裏 | 川に沿った細い帯 |
氾濫流のほうは、マニュアルが「モデル的な木造2階建て家屋」を置いて計算しています。国土交通省の中部地方整備局は、頑強な高層のビルがある場合には、ただちに立退き避難が必要との判断にはならない場合もある、と説明しています。建物を丈夫にすることで、意味が変わりうる区域です。
河岸侵食のほうは違います。東京都のQ&Aは、侵食範囲にある家屋は「家屋本体の構造によらず倒壊・流出の危険が生じます」と書いています。家の下の土がなくなる想定なので、木造をRC造に変えても帯の中にいることは変わりません。
新築を考えている人がまず見るべきなのは、自分の土地にかかっているのがどちらか、だと思います。同じ色の線に見えても、構造の選び方で答えが変わるのは氾濫流だけです。
区域の外でも、倒れないとは書かれていません
マニュアルは、区域の外についても念を押しています。この区域は、想定最大規模の雨が降って近くの堤防が決壊したときに、現行の建築基準に合った一般的な建物が倒れるかどうかで引かれたものです。そのため、古い木造の建物や、想定より大きな雨の場合は、区域の外でも倒壊が起こりうる、と書いています。境界も「厳密なものでない」とされています。
堤防が切れた現場でどんなことが起きたかは、鬼怒川 氾濫/常総市上三坂で堤防が約200m決壊で2015年の記録と浸水想定を重ねて見られます。線の内側と外側で、起きることが急に切り替わるわけではありません。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
私はこう読みました
家屋倒壊等氾濫想定区域という名前は、響きが強すぎるのだと思います。「倒壊」と書かれていると、建ててはいけない土地に見えます。けれども国の文書をたどると、この区域はずっと「その日にどこへ逃げるか」の材料として扱われていて、土地の使い方を縛る道具にはなっていません。開発許可を厳しくしたときでさえ、国は水深3mのほうを選びました。
だから、買う・建てるの判断でこの区域を見るときは、禁止されているかどうかではなく、住んでからの避難の前提が変わるかどうかで見るのがいいと考えています。区域の中の家は、大雨の日に2階へ上がってやり過ごすのではなく、早めに家を出る前提になります。その暮らし方を受け入れられるかどうかが、本当の判断材料だと思います。
よくある質問
Q. 家屋倒壊等氾濫想定区域は、重要事項説明で説明されますか。
A. 重要事項説明で求められているのは、水害ハザードマップ上で物件がどこにあるかを示すことです。この区域を個別に説明する義務の項目はありません。どこまでが義務なのかは重説 ハザードマップ/中身の説明は義務ではないにまとめています。
Q. 区域に入っていると、住宅ローンは組めませんか。
A. 法律上、この区域の指定が融資を止める仕組みはありません。判断は金融機関ごとなので、気になるなら事前審査の段階で聞くのが確実です。
Q. 立地適正化計画の居住誘導区域から外されることはありますか。
A. 国の都市計画運用指針は、氾濫により家屋倒壊等のおそれがある地区を「特にリスクが大きな地区」の例に挙げ、居住誘導区域に含めるなら防災・減災対策を明らかにすることを求めています。外すかどうかは市町村の判断で、外されても建築が禁止されるわけではありません。
Q. 大雨の日はいつ逃げればいいですか。
A. 区域の中では2階への避難ではなく、家を出る避難が前提です。川の水位が上がっていく段階ごとの動き方は河川氾濫 前兆/逃げるタイミングに書きました。
生活・仕事にどう効くか
- 土地を買う・新築する:区域に入っていることを理由に建築確認が止まることはない。止まるとすれば、市町村の災害危険区域や都道府県の浸水被害防止区域が別に指定されている場合。
- 構造を選ぶ:氾濫流の区域は木造2階建てを想定して引かれているので、頑丈な建物なら扱いが変わりうる。河岸侵食の区域は地盤ごと削られる想定なので、構造では逃げられない。
- 大雨の日:区域の中にいる人は、2階へ上がる垂直避難ではなく、早めに外へ出る立退き避難を考える前提になっている。
結局どうすればよいか
- ハザードマップポータルサイトの洪水の地図で、家屋倒壊等氾濫想定区域の表示を「氾濫流」と「河岸侵食」に分けて見る
- 市町村のサイトで災害危険区域、都道府県のサイトで浸水被害防止区域の指定が無いかを確かめる。建築の制限があるとすればこちら
- 区域の中に住んでいるなら、氾濫の危険が出た段階で家を出る前提で、避難先と出る時刻を先に決めておく
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
公式出典
- 国土交通省 洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第4版)(2026年9月23日発表)
- 水防法施行規則 第二条(e-Gov法令検索)(2026年9月23日発表)
- 国土交通省 中部地方整備局 静岡河川事務所「家屋倒壊等氾濫想定区域図について」(2026年9月23日発表)
- 東京都建設局 洪水浸水想定区域図 Q&A(令和6年2月)(2026年9月23日発表)
- 都市計画法施行令 第二十九条の九(e-Gov法令検索)(2026年9月23日発表)
- 国土交通省 開発許可制度運用指針(最終改正 令和7年3月19日)(2026年9月23日発表)
- 国土交通省 都市計画運用指針(第13版)(2026年9月23日発表)
更新履歴
- 2026年9月23日 初版を公開
※本記事は2026年9月23日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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