「相続した実家を早く売りたいけれど、遺産分割の話し合いが終わっていない」「相続人の一人だけで売却を進められる?」と迷っていませんか。
結論からいうと、遺産分割前の不動産は原則として共同相続人の共有状態になるため、家全体を売るには相続人全員の合意と協力が必要です。一人だけで家全体を売却することはできません。急いでいても、相続人と不動産を確定し、売却条件と代金の分け方を文書で合意してから進めるのが安全です。
先に結論
- 遺産分割前の遺産は、原則として法定相続分の割合で共同相続人が共有します。
- 不動産全体を売るなら、相続人全員の合意と売買手続への協力が必要です。
- 売却前に、相続人調査、遺言の確認、登記、売却条件、費用・税金、代金配分を整理します。
- 自分の共有持分だけを処分する方法はありますが、家族関係や将来の処分を複雑にしやすいため慎重な判断が必要です。
法令・制度は2026年7月26日時点で確認しています。個別の権利関係は司法書士・弁護士・税理士等へ確認してください。

遺産分割前の不動産は誰のもの?
相続が始まると、遺言などで別の定めがない限り、遺産は法定相続分の割合で相続人らが共有するのが原則です。法務省も、遺産分割を「法律で決められた相続人が全員参加して、相続財産の分け方を決定する手続」と案内しています。
たとえば、配偶者と子2人が相続人なら、遺産分割前の不動産について各人が法定相続分に応じた権利を持ちます。実家に住んでいた長男が鍵や権利証を保管していても、それだけで長男が単独所有者になるわけではありません。
| 行為 | 基本的な考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 草刈り・雨漏りの応急措置 | 財産を守る保存行為として進められる場合がある | 費用負担と記録を相続人に共有する |
| 査定を依頼する | 価格を知るための準備として行える | 査定依頼は売却決定ではないと明確にする |
| 不動産全体を売る | 共有者全員の合意・協力が必要 | 価格、媒介契約、契約条件、代金配分を決める |
| 自分の持分だけを売る | 法的には可能な場面がある | 第三者との共有になり紛争を招くおそれがある |
遺産分割前でも査定や売却準備はできる
「全員の合意がないと何もできない」というわけではありません。まずは不動産会社に査定を依頼し、売却した場合の手取り見込みを把握できます。査定額だけでなく、残置物処分、測量、解体、仲介手数料、登記、税金まで含めた概算を出してもらうと、遺産分割の話し合いが具体的になります。

ただし、相続人の一人がほかの人に知らせず媒介契約や売買契約を進めると、後から条件を巡って対立しやすくなります。査定段階から、誰が窓口になるか、情報をどの方法で共有するかを決めておきましょう。
相続不動産を売る2つの進め方
1. 遺産分割で取得者を一人に決めてから売る
遺産分割協議で「不動産はAさんが取得し、売却後の代金を合意した割合で精算する」などと決め、Aさんへ相続登記をした後に売却する方法です。売主が一人になるため手続は整理しやすい一方、売却代金の管理、売れなかった場合、想定外の費用、税負担を協議書で明確にする必要があります。
2. 共同相続登記をして共有者全員で売る
法定相続分などに応じて共有名義にし、全員が売主として契約・決済へ参加する方法です。売却代金を持分に応じて受け取る関係は分かりやすいものの、遠方の相続人や多人数の相続では日程調整と書類準備が増えます。
| 一人が取得後に売却 | 共有登記後に全員で売却 | |
|---|---|---|
| 売主 | 取得した相続人 | 共有者全員 |
| 進行 | 窓口を一本化しやすい | 全員の署名・協力が必要 |
| 代金 | 取得者が受領後に合意どおり精算 | 持分等に応じて受け取る |
| 注意 | 精算方法と税務の確認が重要 | 一人でも反対すると全体売却が難しい |
売却前に相続人全員で決める7項目
- 売却するか:賃貸、居住、解体、国庫帰属などほかの選択肢も比較する
- 価格の決め方:査定額、最低売却価格、値下げできる範囲を決める
- 窓口:不動産会社・司法書士との連絡担当を決める
- 費用:固定資産税、管理、残置物、測量、解体、登記を誰が立て替えるか決める
- 売却条件:契約不適合責任、境界、引渡し時期、残置物の扱いを確認する
- 代金配分:手取り額を誰に何円または何割ずつ分けるか書面化する
- 税務:譲渡所得、取得費、相続税の取得費加算、空き家特例の可能性を税務署・税理士に確認する
実際の売却手順
ステップ1:相続人と遺言を確認する
戸籍を集めて相続人を確定し、公正証書遺言、自筆証書遺言書保管制度、家庭内に保管された遺言がないか確認します。自筆証書遺言は保管状況により家庭裁判所の検認が必要になる場合があります。
ステップ2:不動産と負債を調べる
登記事項証明書、固定資産税の課税明細、名寄帳、住宅ローン・抵当権、賃貸借、境界、未登記建物を確認します。2026年2月2日に始まった所有不動産記録証明制度は、亡くなった方名義の不動産を一覧的に把握する助けになります。
ステップ3:査定と手取りを比較する
査定価格だけで会社を決めず、類似成約、販売期間、必要な整備、仲介手数料、税引前の手取りを比較します。遠方の実家なら、鍵管理や残置物対応の範囲も確認してください。
ステップ4:遺産分割協議書を作る
不動産の取得者、売却代金の精算、費用負担、売れなかった場合を記載します。形式や税務上の扱いで迷う場合は、登記を司法書士、紛争・協議を弁護士、税金を税理士へ相談します。
ステップ5:相続登記後に売却する
亡くなった方の名義のまま買主へ所有権移転登記はできないため、相続登記を済ませてから売却・決済へ進みます。相続登記の期限については相続登記はいつまで?も確認してください。

避けたい4つの進め方
- 「長男だから」と一人で売却条件を決める
- 口約束だけで代金を一人の口座に集める
- 取得費や相続税資料を捨ててから確定申告を考える
- 自分の共有持分だけを第三者へ売ることを急ぐ
相続人の一人が持分を第三者へ譲渡すると、家族以外の人との共有状態になり、利用・管理・売却の調整がさらに難しくなる可能性があります。持分売却を検討する前に、共有物分割やほかの相続人による買取りを含め、弁護士へ相談するのが安全です。
よくある質問
相続人の一人が反対していても家全体を売れますか?
通常の任意売却では難しいです。話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の遺産分割調停・審判や、遺産分割後の共有物分割など法的手続を検討します。
遺産分割前に不動産会社へ査定を頼んでも大丈夫ですか?
価格を知る準備として査定を頼むことは可能です。ただし査定は売却決定ではないことを相続人に共有し、媒介契約や売買契約へ進む前に全員の合意を整えます。
相続登記をせずに売却できますか?
亡くなった方の名義から買主へ直接移転することはできません。誰が相続したかを登記に反映してから買主へ所有権を移します。
売却代金を均等に分ければ問題ありませんか?
必ずしも均等とは限りません。遺言、法定相続分、遺産分割協議、代償金、費用立替などで変わります。税務上の扱いも含め、配分根拠を協議書に残してください。
まとめ
遺産分割前の不動産は、原則として相続人らの共有状態です。家全体を売るには全員の合意と協力が必要で、一人だけで進めることはできません。
まず相続人・遺言・不動産・負債を確定し、査定で手取りを見える化しましょう。そのうえで、取得者、売却条件、費用、代金配分、税務を文書で合意してから相続登記と売却へ進みます。売却・賃貸・解体で迷う方は住まない実家を相続したときの選択肢も参考にしてください。
参考資料
- 不動産を相続した方へ(法務省)(確認日:2026年7月26日)
- 相続・遺産分割(裁判所)(確認日:2026年7月26日)
- 所有不動産記録証明制度について(法務省)(確認日:2026年7月26日)
- 民法(e-Gov法令検索)(確認日:2026年7月26日)
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の権利関係、登記、紛争、税務については、資料を持参のうえ司法書士・弁護士・税理士または所管機関へご相談ください。


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