富士市で、大雨のときに水がたまるおそれがある道として国が挙げているのは2か所です。水戸島元町(みとじまもとまち)の加島地下道と、中柏原新田(なかかしわばらしんでん)の柏原地下道。どちらも、ほかの道の下をくぐる地下道です。
国の一覧には「富士市」の行が3つ並んでいます。ところが1か所ずつの説明表を開くと、3つ目の下稲子(しもいなこ)ガードの住所は「静岡県富士宮市下稲子364-3」。警察署の欄も富士宮警察署でした。
残る2か所は、県道の加島地下道と市道の柏原地下道。標高は13.4メートルと5.9メートルです。
この記事でわかること
- ✓ 市の内水ハザードマップは、令和8年4月から水防法第15条3項に基づく図になりました
- ✓ 想定は1時間147ミリ。市内で実際に起きた最大は1時間112.5ミリで、床上浸水37・床下浸水248です
- ✓ 市が宅地建物取引業者へ書いているのは「情報提供をお願いします」まで。「重要事項説明」という語は使っていません
箇所の数・種別・路線名・住所・管理者は、国土交通省 中部地方整備局「道路冠水注意箇所」の静岡県分(Webマップから開ける一覧の版で140か所・25市町)と、1か所ごとの説明表から取りました。標高は国土地理院の標高データで、位置参照情報(大字・町丁目レベル)の代表点を引いた値です。内水の想定と水防法の扱いは富士市「富士市内水ハザードマップ・内水浸水想定区域図」、過去の被害は市「豪雨について」、沖田(おきた)地区の数値は市「沖田地区浸水対策事業」、水位計は市「浸水常襲地区内設置の水位計について」から取りました。
一覧の3行のうち、1つは富士宮市の道です
国土交通省の中部地方整備局が出している道路冠水注意箇所は、静岡県で140か所、25の市町にあります。いちばん多いのは浜松市の39か所、次が焼津市18か所、静岡市清水区13か所、磐田市12か所。富士市は3か所です。
| 管理番号 | 名称 | 種別 | 路線 | 説明表の住所 | 標高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 静岡県-02-023 | 加島地下道 | 県道 | (一)富士停車場線 | 富士市水戸島元町205 | 13.4m |
| 静岡県-02-024 | 柏原地下道 | 市道 | (市)中柏原新田向畑2号線 | 富士市中柏原新田94番7 | 5.9m |
| 静岡県-02-061 | 下稲子ガード | 国道 | (国)469号 | 富士宮市下稲子364-3 | 193.6m |

下稲子ガードだけが違います。路線は国道469号ですが、説明表の住所は富士宮市下稲子で、近くの警察署も富士宮警察署。一覧の市町村名が「富士市」でも、場所は富士市の中ではありません。
同じ説明表は、消防署の欄が「富士市富士宮市消防」、電話番号が「0545-55-23857」。ほかの2件の「0545-55-2857」より桁が1つ多く書かれています。資料にそう書いてある、という以上のことは分かりません。
残る2か所は、県道の加島地下道(水戸島元町205・静岡県富士土木事務所が管理)と、市道の柏原地下道(中柏原新田94番7・富士市道路維持課が管理)。県の道が1か所、市の道が1か所です。

地図の番号と同じ順です
① 加島地下道
県道 (一)富士停車場線
静岡県富士市水戸島元町205 / 標高13.4メートル
管理: 静岡県富士土木事務所(0545-65-2237) / 警察: 富士警察署 / 消防: 富士市消防本部
② 柏原地下道
市道 (市)中柏原新田向畑2号線
静岡県富士市中柏原新田94番7 / 標高5.9メートル
管理: 富士市道路維持課(0545-51-0123) / 警察: 富士警察署 / 消防: 富士市消防本部
③ 下稲子ガード
国道 (国)469号
静岡県富士宮市下稲子364-3 / 標高193.6メートル
管理: 静岡県富士土木事務所(0545-65-2237) / 警察: 富士宮警察署 / 消防: 富士市富士宮市消防
Googleマップのリンクは、資料に書かれた住所を国土地理院の住所検索にかけた緯度経度で開きます。町丁目や街区の代表点なので、構造物そのものの位置とは数十メートルずれることがあります。現地の名前で検索し直すと、より正確な場所が出ます。
2か所とも、説明表の備考欄は空欄でした。排水ポンプや水位計、電光掲示板があるかどうかは、国の資料からは読み取れません。警察署はどちらも富士警察署です。
冠水した道で車が動けなくなったときに要るもの
JAFのテストでは、セダンが走れなくなる水深と、ドアが開かなくなる水深がほぼ同じでした。つまり止まった時点で、窓を割る以外に外へ出る方法がなくなります。車に置いておくものから挙げます。
水に浸かった車は、外からの水圧でドアが開かなくなります。割れるのは側面のガラスで、フロントガラスは合わせガラスなので割れません。グローブボックスの奥ではなく、座ったまま手が届く場所に置いてください。
119番も家族への連絡も、スマホが生きていることが前提です。水に落とすと沈んで探しようがなくなるので、浮く型かどうかがそのまま連絡手段の有無になります。入れたまま操作できます。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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この2か所は、市内で特別に低い場所ではありません
富士市の町丁目は198あります。標高はいちばん低い川尻の0.8メートルから、いちばん高い大淵の953メートルまで。幅は952.2メートルです。海のそばから富士山の裾野までが、1つの市に入っています。
5メートルに届かない町丁目は45。0メートルを下回る町丁目はありません。低いほうには川尻、西船津南、船津南、江尾南が並び、高いほうは大淵、桑崎の819.7メートル、神谷の459.7メートルと続きます。

この並びに2か所を置きます。柏原地下道のある中柏原新田は5.9メートルで、5メートル未満の45町丁目のすぐ上。加島地下道のある水戸島元町は13.4メートル。どちらも市内の最低でも最高でもありません。
ここでの標高は、町丁目の代表点1点を引いた値です。地下道の底の高さではありません。周りの地面が13メートルあっても、その下に掘り下げた道があれば、水はそこへ集まります。
市の内水の地図は、令和8年4月から水防法第15条3項に基づきます
富士市の内水ハザードマップのページには、注意書きが1行あります。「(注意)富士市内水ハザードマップは、令和8年4月より、水防法第15条3項の規定に基づいております。」
区域図のほうの根拠も、同じページにあります。「(3)指定の根拠法令:水防法(昭和24年法律第193号)第14条の2第2項」。浸水継続時間は「水防法第14条の2第2項及び水防法施行規則第5条第3号により定められた浸水継続時間」です。
2階建てになっています。浸水する区域そのものを指定・公表するのが第14条の2第2項、その区域図をもとに市が住民に見せる図をつくるのが第15条3項。任意でつくられた地図ではありません。
同じページには、不動産の取引についての文も1つあります。「宅地または建物の取引の際には、こちらの内水ハザードマップを提示していただき、水害リスクの把握や日頃からの大雨への備え等に役立てていただけるよう、取引の相手方へ情報提供をお願いします。」
「重要事項説明」という語は、ここには出てきません。市が書いているのは情報提供のお願いまでです。洪水のページにも津波災害警戒区域のページにも、宅地建物取引業者に触れた文はありませんでした。
想定は1時間147ミリ、実際に起きた最大は1時間112.5ミリです
その地図が前提にしている雨を、市はこう書いています。「想定最大規模降雨(1時間雨量147mm)により内水氾濫が発生した場合に想定される浸水の状況を、シミュレーションにより想定したものです。」1時間で147ミリ。1日の総雨量ではありません。

この市で実際に降った最大は、市が別のページに書いています。平成20年7月4日です。「4時30分までの1時間雨量は厚原(あつはら)のアメダス観測点で112.5ミリを記録(史上1位)。市内の雨量観測点9か所すべてで60ミリ以上の時間雨量を記録しました。」
被害は床上浸水37、床下浸水248、その他5。市は続けて「雨の激しかった時間はその1時間だけでしたが、青葉台・伝法・吉原地区を中心に、各所で浸水被害が発生しました」と書いています。
147ミリは、112.5ミリの1.3倍です。想定最大規模という言い方は現実離れして聞こえますが、この市で起きた最大の雨の1.3倍でしかありません。
市の被害の一覧は、平成20年で止まっています
市の「豪雨について」には、過去の大雨が5回分並んでいます。
| 年月日 | 雨の記録(市の表記) | 床上浸水 | 床下浸水 |
|---|---|---|---|
| 平成12年8月17日 | 0時から1時までの時間雨量77ミリ(総雨量78ミリ) | 11 | 56 |
| 平成15年7月4日 | 3日23時からの3時間雨量134ミリ(総雨量157ミリ) | 19 | 176 |
| 平成17年7月9日 | 21時・22時の時間雨量69ミリと40ミリ(総雨量153ミリ) | 6 | 184 |
| 平成19年7月14日 | 厚原で24時間雨量314ミリ(厚原の過去最高) | 14 | 69 |
| 平成20年7月4日 | 厚原で1時間112.5ミリ(史上1位) | 37 | 248 |
平成19年7月14日は台風4号によるもので、市は「江尾江川が氾濫し、須津地区などで浸水被害が出た」と書いています。24時間で314ミリ、厚原の過去最高の雨です。それでも床上浸水は14棟でした。1時間112.5ミリの平成20年のほうが、床上は2.6倍です。少なくともこの市の記録では、長く降る雨より短く強い雨のほうが街にあふれています。
そして、この一覧は平成20年で終わっています。令和に入ってからの記録は1件もありません。この一覧には「道路冠水」「アンダーパス」「地下道」の語も出てきません。並んでいるのは浸水した棟数で、道が浸かった記録ではありません。加島地下道と柏原地下道が過去に冠水したという市の記録は、見つかりませんでした。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
市が「道路が冠水する」と書いている地区は、沖田地区です
市が道路の冠水という言葉で場所を名指ししているページが、1つだけあります。沖田地区浸水対策事業です。
「沖田地区(今泉地区、依田橋地区)では、大雨による地区内の道路が冠水することによる企業活動の停止や、会社敷地や建物への浸水被害が発生しており、早急な対策が求められております。」
沖田地区は事業区域の名前で、範囲は168ヘクタール。市は特徴をこう書いています。「標高が0.5~3.9mと低地であり、平坦な地形となっていることから、地区内を流れる水路の勾配が1%未満と非常に緩やかとなっております。」
排水の先は滝川で、豪雨で滝川の水位が上がったときは毎秒1.1立方メートルの排水ポンプ場で押し出します。令和4年10月に静岡県がポンプ場の増強を了承しました。
沖田地区の0.5〜3.9メートルは、加島地下道のある水戸島元町の13.4メートルより9.5〜12.9メートル低い。ただしこの地区が対策の対象になった理由は「低いから」ではなく、「低くて平らで、水路がほとんど傾いていないから」です。水は、低い場所に集まるのではなく、はけない場所に残ります。
「冠水する道」の一覧は、3種類あります
ここまでで、性格の違う資料が3つ出てきました。同じ「冠水」でも、答えている問いが違います。

1つ目は国の道路冠水注意箇所。市内は2か所です。道路冠水マップ どこで見られるの?にまとめたとおり、全国どの県でも同じ形で公開されています。2つ目は市の内水ハザードマップで、1時間147ミリが降ったらどこが浸かるかの想定。道の一覧ではありません。3つ目は、起きたあとに出る情報です。
市の道路のページに、道路冠水やアンダーパスの項目はありません。水深何センチで通行止めにするのかという基準も、冠水の監視カメラや電光表示板の説明も、市のサイトでは見つけられませんでした。市が出しているのは、起きてからの地図です。防災情報のページに「道路通行止め」のリンクが常設されていて、通行止めの地点を落としたグーグルマップが開きます。
載っていない=安全、ではありません。国の一覧は道路管理者が把握している箇所を挙げたもので、冠水する場所を全部集めたものではありません。市の被害記録は平成20年で止まっています。2か所以外で水がたまらない保証は、どこにもありません。

大雨の夜に見る先はあります。市は浸水常襲地区の水路に水位計を置いていて、「水位情報は5分ごとを目安に表示します」と書いています。太陽光で動かしているため、冬は発電量が足りずに止まることがある、という注記も付いています。
川の水位、ライブカメラ、雨量、ピンポイント予報は、静岡県のサイポスレーダーで見られます。地下道の手前まで来て迷ったときに開くのは、ハザードマップではなくこちらです。
水に入ってしまった車から出るまで

加島地下道も柏原地下道も、ほかの道の下をくぐる側の道です。手前から見ると水面は平らに見えて、いちばん深い底は見えません。進んだ先が急に深いのが、くぐる道の怖いところです。
JAF(ジャフ)のテストでは、セダンが走れなくなる水深と、ドアが開かなくなる水深がほとんど同じでした。止まった時点で、窓を割る以外に外へ出る方法がなくなります。割れるのは横の窓で、フロントガラスは合わせガラスなので脱出用ハンマーでも割れません。
車が動かなくなったら110番と119番へ。ドアの高さの半分を超えると、内側からはほぼ開けられません。外に出られないときは、無理に移動せず高いところで待ってください。
ほかの市はどうなっているか
同じ手順で、ほかの市も1つずつ調べています。同じ資料でも、出てくる答えは場所ごとに変わります。
- 道路冠水マップ どこで見られるの?
- 沼津市 冠水 どこが危ないの?(静岡県) 国が数えたのは3か所だけ、3つとも沼津駅のそばの「ガード」です
- 静岡市 冠水 どこが危ないの?(静岡県) 清水区13か所、葵区4か所、駿河区3か所と、区でばらけます
- 磐田市 冠水 どこが危ないの?(静岡県) 12か所。市内の標高の幅は78.4メートルです
- 浜松市 冠水 どこが危ないの?(静岡県) 39か所で、県内でいちばん多い市です
この記事のまとめ
富士市で道路が冠水しやすい場所として国が挙げているのは、加島地下道(水戸島元町・県道)と柏原地下道(中柏原新田・市道)の2か所です。一覧には「富士市」の行が3つありますが、3つ目の下稲子ガードは説明表の住所が富士宮市下稲子で、警察署も富士宮警察署。標高は13.4メートルと5.9メートルで、市内の最低(川尻0.8メートル)でも最高(大淵953メートル)でもありません。この標高は町丁目の代表点の値で、地下道の底の高さではありません。
市の内水ハザードマップは、令和8年4月から水防法第15条3項に基づく図になりました。想定は1時間147ミリ。市内で実際に起きた最大は平成20年7月4日の1時間112.5ミリで、そのとき床上浸水37・床下浸水248が出ています。想定は実績の1.3倍でしかありません。市の被害一覧は平成20年で止まり、道路冠水の独自の一覧も市にはなく、出てくるのは降りはじめてからの通行止めの地図です。大雨の夜に開くなら、市が水路に置いた水位計(5分ごと更新)と静岡県のサイポスレーダーになります。
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