尼崎市で70㎡の中古マンションを買うとき、築25年なら3,338万円、築35年なら1,801万円です。10年の築年数の差が、1,537万円の値段の差になっています。
「築30年くらいなら安くなっているはず」という感覚そのものは当たっています。ただ下がり方は、なだらかな坂ではありません。国土交通省が公表している尼崎市の中古マンション成約273件を築年数順に並べ直すと、ある場所で段差になっていました。
先に結論
- 尼崎市の中古マンションは1㎡あたり45.5万円(中央値・273件)
- 築21〜30年は47.7万円、築31〜40年は25.7万円。ここで46%落ちます
- 70㎡なら3,338万円と1,801万円。段差の幅は1,537万円です
- 取引はこの段差の両側に集中していて、97件と70件で全体の61%を占めます
- 土地は坪76.0万円、中古戸建ては坪128.1万円。築年でここまで振れるのはマンションだけです
築21〜30年と築31〜40年のあいだに、1㎡あたり22万円の段差がある
2024年10-12月から2025年10-12月までに尼崎市で成約した中古マンション273件を、築年数で5つに分けた数字です。1㎡あたりの成約価格の中央値を並べています。
尼崎市の中古マンション成約価格(1㎡あたりの中央値・2024年4Q〜2025年4Q・273件)
築0〜10年から築11〜20年で27%、そこから築21〜30年で16%。ここまでは順当な下がり方です。ところが築21〜30年の47万6,923円から築31〜40年の25万7,273円へは、1段で46%落ちます。10年ぶんの経年で、それまでの20年ぶんより大きく下がっています。
70㎡に直すと3,338万円と1,801万円。1,537万円の差です。35年・金利1.0%で借りるなら、月々の返済でおよそ4万3,000円の違いになります。
そのうえで見てほしいのが件数です。273件のうち築21〜30年が97件、築31〜40年が70件。合わせて167件で全体の61%。尼崎で売りに出ている中古マンションの中心は、まさにこの段差の両側にあります。
段差の位置は1995年。私はこう見ています
この5区分を建築年に直すと、築31〜40年は1986年から1995年、築21〜30年は1996年から2005年に建った物件です。段差の位置が、1995年1月の阪神・淡路大震災の直後に重なります。
先に事実のほうを書いておきます。この273件はすべて1982年以降に建った新耐震基準の物件です。耐震基準の違いでは、この段差は説明がつきません。
そのうえで私は、これを震災の前に建った建物か後に建った建物かという線が価格に出たものだと考えています。尼崎市も震災で被害を受けた地域で、被災歴や補修の履歴が建物ごとに残ります。買う側がそれを織り込んでいる、という読みです。
これは私の解釈で、データが理由まで語ってくれるわけではありません。持ち帰ってほしいのは解釈ではなく、1995年前後で値段が46%変わるという数字のほうです。築30年前後の物件を見に行くなら、建築年を西暦で確認してください。「築30年くらい」という言い方では、段差のどちら側にいるか分かりません。
部屋の広さは70〜90㎡がいちばん単価が高い
同じ273件を専有面積で分けると、値段のつき方が変わります。
| 専有面積 | 1㎡あたりの成約価格 | 件数 |
|---|---|---|
| 30㎡未満 | 30.7万円 | 23件 |
| 30〜50㎡ | 31.9万円 | 20件 |
| 50〜70㎡ | 43.5万円 | 130件 |
| 70〜90㎡ | 51.8万円 | 86件 |
| 90㎡以上 | 45.2万円 | 14件 |
50〜70㎡が130件、70〜90㎡が86件。この2つで216件、全体の79%です。尼崎の中古マンション市場はファミリー向けの中住戸で回っています。
単価がいちばん高いのは70〜90㎡の51.8万円で、30㎡未満より7割高い水準です。狭い部屋は1㎡あたりが安く、90㎡を超えると逆に単価が下がります。広ければ広いほど1㎡あたりが得になるわけではありません。
土地・戸建てと並べると、築年で振れるのはマンションだけ
同じ期間・同じ尼崎市の成約価格を種別ごとに並べました。
| 種別 | 成約価格(中央値) | 件数 |
|---|---|---|
| 宅地(土地) | 76.0万円/坪 | 212件 |
| 中古戸建て | 128.1万円/坪(延床) | 161件 |
| 新築戸建て | 149.6万円/坪(延床) | 88件 |
| 中古マンション | 45.5万円/㎡ | 273件 |
| 新築マンション | 83.3万円/㎡ | 10件 |
| 賃貸 | 2,070円/㎡ | 91,700件 |
中古戸建ての坪単価は下位25%が102.8万円、上位25%が155.4万円で、幅は1.5倍に収まります。マンションの築年帯が3.6倍に開いているのとは別の世界です。
戸建ては土地の値段が価格の芯になるので、建物が古くなっても下がりきりません。マンションは土地の持ち分が小さく、建物の評価がそのまま価格に出ます。同じ「中古」でも、築年数が効く度合いが違うということです。
築31〜40年の物件を選ぶなら、浮いた1,537万円のうちいくらを部屋に戻すかが次の判断になります。配管や水回りまで手を入れるフルリノベーションは、70㎡なら数百万円の規模です。総額で比べないと、段差の下側を選んだ意味が消えます。
工事費が分かると、築浅を買う案と総額で比べられます
買いに行く前にやる3つのこと
1. 築年数ではなく建築年を西暦で確認する。 段差は1995年と1996年のあいだにあります。「築30年くらい」という表現のままだと、1,537万円の差のどちら側かが分かりません。
2. 段差の下側を選ぶなら、工事費を先に出す。 築31〜40年は70㎡で1,801万円ですが、そのまま住める状態とはかぎりません。物件価格と工事費を足した総額で、築21〜30年の3,338万円と比べてください。
3. 土地の相場も町名で見ておく。 尼崎市の土地は南武庫之荘の坪112.4万円から大島の坪28.8万円まで、町別に3.9倍の開きがあります。マンションの管理費と修繕積立金を30年払う額を足すと、戸建てとの総額差は思ったより小さくなります。
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隣の市の同じ数字は伊丹の土地は公示価格より33%高く成約していますと宝塚の土地は尼崎より坪17%安いのに1区画では340万円高くつきますにまとめています。阪神間で候補地を広げて探している人はあわせてどうぞ。
この記事の数字の出どころ
- 成約価格:国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産取引価格情報。集計期間は2024年第4四半期から2025年第4四半期。中古マンション273件、宅地212件、中古戸建て161件、新築戸建て88件
- 中古マンションは1982年以降に建てられた物件に限定し、取引総額を専有面積で割った1㎡あたりの価格です。築年数は2026年を基準に数えています
- そのため「築41年以上」の区分は1982年から1985年に建った20件だけで、それより古い物件はこの集計に入っていません
- 中古戸建ての坪単価は、取引総額を建物の延床坪数で割った値です。土地の坪単価とは分母が違うので、そのまま引き算はできません
- 新築マンションは10件のみで、1件の影響が大きい数字です
- 賃貸:不動産情報ライブラリの賃貸募集情報から1㎡あたりの募集賃料の中央値
- 耐震基準の改正時期:国土交通省の公表資料


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