🗨️「AIに人事評価をされたら、低い理由を会社に説明してもらえるんですか」
個人情報保護法の開示請求だけでは、人事評価は出してもらえないことがあります。日本IBM(アイビーエム)の例では、労働組合が東京都労働委員会で争い、AIが見ている項目の名前と、疑義があるときのAIの提案内容を開示させる和解にたどり着きました。
[AI] この記事の要点
2026年10月2日 発表
- 人事評価や賃金査定にAIが使われている、または使われ始めた会社で働く人
- 評価が下がった理由を会社に説明してほしいと考えている人
- 人事評価にAIを入れるか検討している会社の人事担当者
理由は開示請求で聞ける?
人事評価にAIを使う会社が出てきました。評価が下がったとき、「AIが何を見てそう判断したのか」を知りたいと思うのは自然なことです。
まず思いつくのは、個人情報保護法第33条の開示請求です。本人は、会社が持っている自分の個人データの開示を求めることができます。ただし同じ条文に、開示することで会社の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合は、全部または一部を出さなくてよいと書かれています。
個人情報保護委員会のFAQ(Q9-11)は、この例外を人事評価にあてはめています。人事評価や選考にかかわる個々人の情報は、非開示とすることが想定される情報だとしたうえで、会社は労働組合などと必要に応じて協議し、非開示にする範囲を決めて社員に知らせておくのが望ましい、としています。
つまり、評価の理由をどこまで聞けるかは、法律だけでは決まりません。会社の規程と、労使の取り決めで決まる部分が大きいのです。
AIを自分の側に置くなら、最初の1冊
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日本IBMで起きたこと
その取り決めを、労働委員会の場で引き出したのが日本IBM(アイビーエム)の例です。組合の公表と報道をもとに、流れを並べます。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2019年8月 | 日本IBMが、グループ社員の賃金査定に自社開発のAI(ワトソン)を導入したと発表 |
| その後 | 労働組合がAIの考慮する項目などの開示を求め、会社が拒否 |
| 2020年4月 | 組合が東京都労働委員会に救済を申し立て |
| 2024年8月1日 | 東京都労働委員会で和解が成立 |
和解で会社が約束したのは、次の4つです。
- 賃金査定でAIに考慮させる項目すべての標題(項目の名前)を開示する
- その項目と、賃金規程にある評価項目との関係を説明する
- 組合が昇給ゼロ・減額・低評価などの具体的な理由を添えて疑義を示したら、疑義を解くのに必要なAIの提案内容を開示する
- AIによる賃金評価に今後疑義が出たら、誠意をもって協議する

ここで大事なのは、AIの中身すべてを出させたわけではない点です。出てくるのは項目の名前と、疑義があるときのAIの提案です。それでも、AIが何を見ているのか、AIの提案と最終の評価がずれていないかを、働く側が確かめる手がかりにはなります。
AIで変わるのは説明の仕事
私は、人事評価にAIが入って増えるのは、評価する仕事よりも説明する仕事だと見ています。人が評価していたころは「上司がそう判断した」で済んでいた場面でも、AIが入ると「AIは何を見たのか」「最後に決めたのは誰か」を言葉にする必要が出てきます。
EU(イーユー=欧州連合)のAI法は、昇進や解雇の判断、仕事の割り当て、働きぶりの監視や評価に使うAIを「高リスク」の一覧に入れています。日本には同じ規制はありませんが、説明を求められる流れは同じ方向です。
職場のAIで、会社が何を記録しているかが気になる人は、Copilotの利用履歴の扱いも確かめておくと安心です。
働く側が聞くべき3つ
AIを使った人事評価に疑問があるとき、日本IBMの和解の中身は、聞くことを整理するのに使えます。
- AIが評価で見ている項目は何か(項目の名前だけでも)
- AIの提案と最終の評価を決めたのは誰か
- 昇給ゼロや減額に疑問があるとき、AIの提案内容を見せてもらえるか
尋ねるときは「納得できない」ではなく、昇給ゼロや減額といった具体的な結果と、疑問に思う理由を添えるのが効きます。日本IBMの和解でも、AIの提案内容を開示する条件は「具体的な理由とともに疑義を指摘した場合」でした。
個人で尋ねて答えが得られないときは、労働組合や、都道府県の労働相談の窓口に相談できます。採用の段階でAIがどこまで使われているかはAI面接 録画/会社に届くのは映像と文字にまとめています。
よくある質問
Q. AIの人事評価は違法ではないのですか。
A. 日本の法律に、人事評価へのAIの利用そのものを禁じる規定はありません。問題になるのは、評価の決め方や説明のしかたです。
Q. 開示請求をすれば、自分の評価の理由は必ずわかりますか。
A. 個人情報保護法第33条は、業務の適正な実施に著しい支障が出るおそれがあれば開示しないことを認めています。人事評価はこの例外にあたると判断されることがあり、必ず出るとは限りません。
Q. 日本IBMの件は裁判ですか。
A. 裁判ではなく、東京都労働委員会での不当労働行為の救済申し立てです。2024年8月1日に和解で終わっています。
Q. 組合がない会社ではどうすればよいですか。
A. まず人事評価の規程を確認し、具体的な結果と理由を添えて人事に尋ねてください。答えが得られないときは、都道府県の労働相談窓口に相談できます。
Q. この記事の内容はいつ時点のものですか。
A. 2026年10月2日に確認した条文と個人情報保護委員会のFAQ、組合が2024年8月に公表した和解内容にもとづきます。
生活・仕事にどう効くか
- 働く人:開示請求をしても、人事評価は「業務に著しい支障」を理由に出されないことがあります。何を聞けるかは、会社の規程と労使の取り決めで変わります。
- 労働組合:日本IBMの和解は、AIの項目名と提案内容の開示を労使の合意で引き出した例です。交渉の材料になります。
- 会社の人事:AIを入れるなら、どこまで説明し、どこを非開示にするかを先に決めて社員に知らせておく必要があります。
結局どうすればよいか
- 就業規則や人事評価の規程で、AIを使っているか、何を開示しないと定めているかを確認する
- 評価に疑問があるときは、昇給ゼロ・減額など具体的な結果と理由を添えて、AIの提案内容と最終判断者を尋ねる
- 個人で通らないときは、労働組合や都道府県の労働相談窓口に相談する
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くわしく知る(保存版の記事)
公式出典
- JMITU日本アイビーエム支部「AI不当労働行為事件勝利和解」(2024年8月1日発表)
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」第33条(2026年10月2日発表)
- 個人情報保護委員会 FAQ Q9-11(人事評価や選考に係る情報の開示)(2026年10月2日発表)
- EU AI Act Annex III(高リスクAIの一覧)(2024年7月12日発表)
更新履歴
- 2026年10月2日 初版を公開
※本記事は2026年10月2日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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