🗨️「隣の木の枝がうちの敷地に入ってきた。もう自分で切っていいの?」
隣の木の枝は、持ち主に切ってほしいと頼んで2週間程度待っても切られなければ、自分で切れます(2023年4月施行の民法233条。2週間程度は法務省が示す目安)。越えてきた枝を切っただけで、隣から被害届を出された人もいます。持ち主が分からないときや急迫の事情があるときは、頼まずに切れます。切れるのは境界線を越えた枝で、切るために隣の土地へ入るなら前もって通知が要り、人が住む家には居住者の承諾がなければ入れません。費用は233条に書かれておらず、持ち主に請求できるというのは法務省の解釈です。
[不動産] この記事の要点
2026年10月2日 発表
- 隣の木の枝が境界線を越えて、自分の敷地に入ってきている人
- 秋になると隣の木の落ち葉が庭や雨どいにたまって困っている人
- 自分の庭木の枝が隣に越えていて、切ってほしいと頼まれた人
自分で切ってよい条件
「民法が変わって、通知さえすれば勝手に切っても良くなったと聞きました」。2026年4月1日、Yahoo!知恵袋にこう書き込んだ人がいます。質問は「私の判断でいつ切っても法的に100%問題ないという解釈で正しいですよね?」と続きます。
答えは半分だけ合っています。2023年4月1日から、隣の木の枝を自分で切れる場合ができたのは本当です。ただし、知らせれば切れるのではありません。原則として、持ち主に切ってほしいと頼み、それでも切ってもらえなかったときに、はじめてこちらの番が来ます。
順番を飛ばすと、こうなることがあります。
この質問には、先に頼んだのか、どれだけ待ったのかが書かれていません。それでも、越えてきた枝を切っただけで、警察から話を聞かれるところまで進んだ実例です。検索窓に「隣の木の枝」と打つと、候補に「警察」が出てきます。
では、どれだけ待てばいいのか。条文は「相当の期間」としか書いていません。目安を示しているのは、改正を担当した法務省の説明資料です。
(中略)
※ ①の「相当の期間」とは、枝を切除するために必要な時間的猶予を与える趣旨であり、事案によるが、基本的には2週間程度と考えられる。法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(資料のページ番号29)
「催告」は、切ってほしいと頼むことです。頼んだ日から2週間程度たっても持ち主が切らなければ、越えている枝を自分で切れる。改正の中身はこれです。
2週間って、条文に書いてあるの?
条文にあるのは「相当の期間」だけです。2週間程度は法務省の考え方で、資料にも「事案によるが」と付いています。枝が多くて相手に業者の手配が要りそうなら、少し長めに日を切っておくと「短すぎた」と言われにくくなります
持ち主に頼まなくても切れる場合は、ほかに2つあります。持ち主が誰か、どこにいるかが分からないときと、急迫の事情があるときです(233条3項2号・3号)。隣が空き家で連絡先が分からないときの調べ方は、台風のあとの片付けを扱った記事にまとめています。
頼んでから切るまでの手順

やることを順番に並べると、次の5つです。
| 順番 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1. 頼む | 越えている枝を切ってほしいと持ち主に伝える。日付の入った紙で渡し、控えを残す | 民法233条3項1号 |
| 2. 待つ | 基本的には2週間程度。そのあいだに切ってもらえれば、ここで終わり | 法務省の説明資料 |
| 3. 切る | 境界線を越えている枝だけ。幹を切る・木を倒すことは条文に無い | 民法233条1項・3項 |
| 4. 隣の土地に入るなら | 目的・日時・場所・方法を前もって通知。人が住む家は居住者の承諾が要る | 民法209条1項・3項 |
| 5. 費用 | 見積書・領収書と写真を残し、持ち主に請求する | 法務省の説明資料(民法703条・709条) |
出典:民法 第209条・第233条、法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(資料のページ番号26・29)
1つ目の頼み方について、233条は形を決めていません。それでも私は、日付の入った紙で渡し、控えを手元に残すべきだと考えています。2週間をいつから数えるのか、後で費用を求めるときに頼んだ事実をどう示すのか。どちらもこの1枚で決まるからです。書く中身は4つで足ります。
- どの枝か(境界線を越えている部分の写真を添える)
- 越えている部分を切ってほしいこと
- いつまでにお願いしたいか(渡した日から2週間後の日付)
- その日までに切られないときは、越えた部分をこちらで切り、費用をお願いすること
3つ目の「切る範囲」は、境界線がどこにあるかで決まります。線そのものがあいまいなら、切る前にそこを確かめます。隣が境界の確認に応じてくれないときの進め方は境界の立会いを拒否された 裁判しかない?にあります。
4つ目は、改正で209条に加わったルールです。越えた枝を切るために隣の土地を使うことは、209条1項3号で認められました。ただし条件が付いています。
(中略)
3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。民法 第209条(e-Gov法令検索)
通知は、相手が準備できるだけの期間を置いて出します。法務省の同じ資料は、事案によるとしたうえで、緊急性がない場合は通常2週間程度と説明しています。使うのを断られたときも、押し入ることはできません。資料は、隣の土地を使う権利がある場合でも、使用を拒まれたら妨害禁止の判決を求めることになる、と書いています。
もっとも、越えている枝はたいてい、自分の敷地の側から脚立や高枝切りばさみで届きます。作業を自分の敷地の中で終えられるなら、隣の土地を使う話にはなりません。
隣の庭に回らないと届かない枝はどうするの?
隣の土地を使うなら、目的・日時・場所・方法を先に知らせます。人が住んでいる家に入る必要があるなら、住んでいる人の承諾がない限り入れません。ここは通知だけでは足りないところです
隣どうしの土地のルールは、民法209条から238条に「相隣関係」としてまとまっています。境界線の上の塀や境界標を2軒の共有と推定する229条も、公道に出るために隣の土地を通る権利を定めた210条から213条も同じ並びです。擁壁の持ち主は擁壁 隣地/持ち主は境界線で決まる、通行の話は「うちの前の私道、通行料を払わないとダメですか?」 分割でできた袋地なら、民法213条は「償金を支払うことを要しない」と書いていますで扱いました。
切った費用は誰が払うか
高い枝を植木屋に頼めば、費用がかかります。それを隣に払ってもらえるかについて、233条には何の文言もありません。請求できるとしているのは、法務省の説明資料のほうです。
根拠に挙がっている2つの条文は、どちらも枝のために作られた条文ではありません。703条は、法律上の原因なく他人の財産や労務で利益を受けた人に、その利益を返させる規定です。709条は、故意または過失で他人の権利を侵害した人に、損害を賠償させる規定です。越えてきた枝がこちらの土地の所有権を侵している(709条)、持ち主が自分で切るはずだった手間を代わりに引き受けた(703条)、という2本立てです。
資料の言い方は「請求できると考えられる」です。払ってもらえなければ、請求の手続きを取るのは切った側になります。だから、切る前から次の3つをそろえておきます。
- 頼んだ紙の控え(渡した日付が分かるもの)
- 切る前と切った後の写真(境界の塀やフェンスが一緒に写るもの)
- 業者の見積書と領収書
私は、費用のことは頼む紙の段階で書いておくべきだと考えています。2週間たってから突然請求書を渡すより、最初から「切られないときは費用をお願いします」と書いてあるほうが、相手が自分で切るかどうかを決める材料になるからです。持ち主にとっても、2週間のうちに自分で切れば、相手が頼んだ業者の代金を求められずに済みます。
落ち葉を掃除させる条文はない
秋になると、枝より困るのが落ち葉です。2016年5月、Yahoo!知恵袋にこんな相談がありました。

233条が扱うのは「枝」と「根」だけで、落ちてきた葉を持ち主に掃除させる条文は民法にありません。
| 越えてきたもの | どうなるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 枝 | 頼んで、相当の期間(基本的には2週間程度)待ってから切れる。持ち主不明・急迫の事情なら頼まずに切れる | 民法233条1項・3項 |
| 根 | 頼まなくても切れる | 民法233条4項 |
| 落ち葉 | 掃除させる条文は無い | — |
出典:民法 第233条、法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(資料のページ番号29)
では打つ手が無いかというと、道は2つあります。1つは壊れたときの損害です。法テラスは「隣家の落ち葉が原因で雨樋(あまどい)が壊れた場合には、損害賠償を求めることができます」と案内しています。ただし、掃除の手間や清掃費だけを求める場合は別です。弁護士ドットコムニュースで山之内桂弁護士は、「受忍限度を超える侵害を及ぼしたかどうかという問題」としたうえで、「最終的には裁判所が判断するので、確たることは言えません」と答えています。受忍限度は、社会の中で我慢すべき範囲のことです。
もう1つは枝です。屋根の上まで張り出した枝は、雨どいに葉を落とす位置にあります。境界線を越えている枝なら、上の手順で切ってもらうか、自分で切れます。落ち葉そのものは条文の外にあっても、葉を落とす枝は条文の中にあります。
毎年のことだから、木ごと切ってほしいんだけど。
233条で求められるのは、境界線を越えている枝を切ることまでです。木そのものを切ってもらう条文はないので、まずは話し合いです。落ち葉や日陰の被害が我慢すべき範囲を超えるかどうかは、最終的には裁判所が判断することになります
よくある質問
Q. 根っこが越えてきて、うちの舗装を持ち上げています。
A. 根は枝と扱いが逆で、頼まなくても切れます。233条4項は「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる」と定めています。ただし、切りすぎて木を枯らすと賠償を求められる可能性があると指摘する弁護士もいます。
Q. 道路にはみ出している枝はどうなりますか。
A. 法務省の資料は、道路を所有する国や地方公共団体も、隣接地の木が道路に越えてきたときは、改正後のルールで枝を切り取れると説明しています。まず道路を管理する役所に連絡します。
Q. 隣が空き家で、持ち主が分かりません。
A. 持ち主を知ることができない、またはその所在を知ることができないときは、頼まずに切れます(233条3項2号)。分からないと言えるのは調べたうえでのことなので、まず法務局で登記事項証明書を取り、名義人の氏名と住所を確かめます。空き家を放置した持ち主の側にどんな負担が来るかは実家を空き家のまま放置するとどうなる?管理不全空家と固定資産税のリスクにあります。
「通知さえすれば」と聞いて枝を見上げている人に要るのは、通知ではありません。日付を書いた1枚の紙と、そこからの2週間です。
生活・仕事にどう効くか
- 越えてきた枝を自分で切りたい人:越えてきた枝を切って、隣から被害届を出された実例があります。日付の入った頼み状の控えと、そこからの2週間程度が、順番を守った証拠になります
- 切った費用を払ってほしい人:233条に費用の文言は無く、法務省は「基本的には、竹木の所有者に請求できると考えられる」としています。払ってもらえなければ、請求の手間は切った側にかかります
結局どうすればよいか
- 越えている枝の写真を撮り、日付を入れた紙で持ち主に切ってほしいと頼む。控えを手元に残す
- 頼んだ日から2週間程度待ち、切られなければ境界線を越えた部分を自分の敷地の側から切る。見積書・領収書と切る前後の写真を残す
- 隣の土地に入らないと届かないなら、目的・日時・場所・方法を前もって通知する。人が住んでいる家には承諾なしに入らない
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
公式出典
- 民法 第209条・第233条・第703条・第709条(e-Gov法令検索)
- 法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(資料のページ番号26・29)
- 法テラス「隣家の落ち葉が雨樋(あまどい)に詰まっています。どうすれば良いですか。」
- 弁護士ドットコムニュース(2017年7月29日・山之内桂弁護士の回答)
- Yahoo!知恵袋(2026年4月1日の質問)
- Yahoo!知恵袋(2025年9月21日の質問)
- Yahoo!知恵袋(2016年5月17日の質問)
更新履歴
- 2026年10月2日 初版を公開(民法の条文と、法務省の改正説明資料を同日に確認したもの)
※本記事は2026年10月2日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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