🗨️「私道の持ち主から通行料を請求されました。相場はいくら払えばいいですか?」
公的な相場はありません。解説サイトが出している目安は「借地料の10%」「土地の時価の年2〜3%」「月数千円〜1万円」とばらばらで、どれにも出典がついていません。先に確認すべきは金額ではなく、自分の土地がどうやって袋地になったかです。分割や一部の売却でできた袋地なら、民法213条が「償金を支払うことを要しない」と定めています。
[不動産] この記事の要点
2026年9月8日 発表
- 他人の私道を通らないと公道に出られない家に住んでいる人
- 私道の持ち主が代わり、急に通行料を請求された人
- 袋地・旗竿地の物件を買おうとしている人
📖 私道VS公道
相場を調べても出てこないのは、相場が無いからです
「私道 通行料 相場」で上位に出てくる解説を、5件とも本文まで開いて金額を書き出しました。
| 示されている目安 | 言い回し | 出典 |
|---|---|---|
| 借地料の10% | 「といわれています」 | なし |
| 土地の時価の年2〜3% | 「ケースが多く見られます」 | なし |
| 月数千円〜1万円 | 仮定の例示 | なし |
| 金額の記載なし | 計算方法の列挙のみ | — |
同じ質問に、3通りの答えが並んでいます。しかも1つも出典がありません。いちばん広まっている「借地料の10%」にいたっては、その前提である「借地料=固定資産税の3倍」自体が出典のない言い伝えで、出所のない数字が二段に重なっています。
法律に書いてあるのは「通行料」ではなく「償金」です
他人の土地を通る権利は、民法210条から213条にまとまっています。このうち支払いを定めているのが212条です。
民法第二百十二条
「第二百十条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。」
読み取れることが2つあります。1つは、払うのは「道を使わせてもらう対価」ではなく相手の土地に生じた損害に対してだということ。もう1つは、1年ごとの支払いでよいと条文が明記していることです。
「月々いくら」で請求されたのですが、そういうものではないのですか。
月払いにしなければならない決まりはありません。条文が想定しているのは年ごとの支払いです。月額で提示されたら、その金額がどの損害に対応するのかを聞くところから始まります。
分割でできた袋地なら、払わなくてよいと書いてあります
ここがこの記事でいちばん大事なところです。
民法第二百十三条
第1項「分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。」
第2項「前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。」
分割によって袋地ができたのなら、償金は要りません。そして第2項によって、土地の一部を売った場合も同じ扱いになります。分譲地の奥の区画、親の土地を分筆して建てた家、敷地の一部だけを売って残った土地。いま袋地になっている土地の多くは、この2つのどちらかで生まれています。
だから請求を受けたときに最初に確認するのは金額ではなく、自分の土地がどうやって袋地になったかです。登記簿の分筆や譲渡の履歴でたどれます。
通行料に消費税はかかるのか
請求書に消費税が乗っていることがあります。国税庁のタックスアンサーには、土地の譲渡や貸付けは消費税の課税の対象とならない、と書かれています。
非課税にならないのは2つの場合だけです。貸付けの期間が1か月に満たない場合と、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使われる場合。「土地の上に存する権利」には地上権や賃借権のほか地役権も含まれ、これらも非課税です。
通行のために毎年払う償金は、このどちらにも当たらないのが通常です。消費税を上乗せされたら、どの取引として課税しているのかを確認してください。
「払わないと通さない」と言われたら
金額の話がこじれると、物理的にふさがれることがあります。ここには最高裁の判断があります。
平成9年12月18日の最高裁判決(事件番号 平成8年(オ)第1361号)は、建築基準法42条1項5号の位置指定道路について、その道を日常生活上不可欠の利益として通行している人は、道路の敷地所有者に対して妨害行為の排除と将来の妨害の禁止を求めることができるとしました。外部との交通が遮断されることの害の大きさを理由に挙げています。この判決は、裁判所ホームページの裁判例情報をもとに不動産適正取引推進機構がまとめた資料でも読めます。
建築基準法42条2項の道路(いわゆる2項道路)については、司法書士事務所の解説で「一般的には通行料を徴収できないと考えられる」とされています。ただしこれは実務解説であって、当サイトで判決原文まで確認できたものではありません。
このエリアの相場はいくらですか?
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実際に請求されている人が、何につまずいているか
九州・沖縄不動産鑑定士協会連合会の相談ページに、こういう質問が載っています。
「自宅は隣地内の私道のみに接していますが、所有者が替わって通行料を請求してきました」
私道がマンション分譲業者に渡り、借地の義務が発生しているとして土地の賃借料の支払いを求められた、という内容です。弁護士ドットコムにも「私道 車の通行料」の相談が47件並んでいて、「他人の私道を通行しないと公道に出ることができない、いわゆる囲繞地に住んでいます」といった書き出しが続きます。
共通しているのは、金額でもめる前に「そもそも払う立場なのか」が誰にも整理されていないことです。持ち主が代わった瞬間に請求が来る、という形も繰り返し出てきます。
相場が無いこと自体は、悪いことではない
ここからは意見です。私は、通行料に相場が無いのは制度の不備ではなく、そもそも金額で決める問題として設計されていないからだと考えています。212条が言っているのは損害の填補で、213条は分割でできた袋地について支払いそのものを外しています。金額表が無いのは、金額の前に決めるべき順番があるからです。
だから交渉に入る前に、登記の経緯と、売買のときに交わした書面を先に見てください。そこで払わなくてよいと分かる土地が、相当数あります。
生活・仕事にどう効くか
- 請求されたとき:支払いの根拠は「道を使う対価」ではなく「相手の土地に生じた損害」。民法212条は、通路の開設で生じた損害を除いて1年ごとの支払いでよいと定めている。毎月払う前提で交渉する必要はない。
- 分譲地・分筆でできた土地の場合:もとは1つだった土地が分割されて袋地になったのなら、民法213条により償金は要らない。まず登記の経緯を確認する。
- 消費税を上乗せされたとき:土地の貸付けは原則として消費税の非課税取引。課税になるのは貸付けの期間が1か月未満の場合と、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使われる場合に限られる。
結局どうすればよいか
- 自分の土地がどうやって袋地になったかを、登記簿の分筆・譲渡の履歴で確認する
- 請求された金額の根拠を、口頭ではなく書面で出してもらう
- 前の持ち主との間に通行の取り決めがあったかを、売買契約書と重要事項説明書で確認する
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
ほかに使える無料ツール
公式出典
- 民法 第212条・第213条(e-Gov法令検索)(2026年9月8日発表)
- 国税庁 タックスアンサー No.6225「地代、家賃や権利金、敷金など」(2026年9月8日発表)
- 不動産適正取引推進機構 RETIO 744号(裁判所ホームページの裁判例情報をもとに作成・平成8(オ)1361)(2026年9月8日発表)
更新履歴
- 2026年9月8日 初版を公開
※本記事は2026年9月8日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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