🗨️「AIが勝手に電話してくる営業なんて、違法じゃないんですか」
日本の法律には、AIの声かどうかで扱いを分ける条文がありません。しかも会社にかかってくる営業電話は、特定商取引法の電話勧誘のルールそのものが適用されません。止められるかどうかは、電話の相手が家か会社かで変わります。
[AI] この記事の要点
2026年9月29日 発表
- 会社・店舗の電話番をしていて、名乗る声に違和感のある営業電話を受けている人
- 自宅や携帯に、自動音声の営業電話がかかってくる人
- 投資用マンションなど不動産の営業電話に困っている人
AIの声だけを止める法律はない
「AIに電話をかけさせる営業は違法だから、通報すれば止まる」。そう考えている人は少なくありません。ところが日本の特定商取引法にも、不動産の営業を縛る宅地建物取引業法の規則にも、AIや合成音声かどうかで扱いを分ける文言は見当たりません。
つまり、AIの声でかけてくる営業電話は、人がかけてくる営業電話と同じルールで判断されます。違法かどうかを分けるのは声の正体ではなく、誰に、どんな名乗り方でかけたかです。
海の向こうでは話が違います。米国の連邦通信委員会FCC(エフシーシー)は2024年2月8日、AIで作った声を電話消費者保護法TCPA(ティーシーピーエー)の「人工的な音声」にあたると全会一致で認めました。
| 日本 | 米国 | |
|---|---|---|
| AIの声の扱い | 条文に区別なし。人の電話と同じルール | 「人工的な音声」と認定(2024年2月8日) |
| かける前に要るもの | 相手の同意は不要。かけたら最初に名乗る義務(個人宛て) | 営業のロボコールは、事前の書面による明示的な同意が必要 |
| 会社宛ての営業電話 | 特定商取引法の電話勧誘ルールは適用外 | (本記事では扱わない) |
日本では「かけてよいか」ではなく「かけたあと何を守るか」を決めている法律しかない、というのが出発点です。
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会社宛ては特商法の対象外
ネット上でAI営業電話の報告が目立つのは、会社や店舗の代表番号にかかってくる例です。そして、ここがいちばん守りの薄い場所です。特定商取引法は第26条で、次のような取引を電話勧誘販売のルールから外しています。
売買契約又は役務提供契約で、(中略)申込みをした者が営業のために若しくは営業として締結するもの(後略)
特定商取引に関する法律 第26条第1項第1号より
会社が仕事のために結ぶ契約は、この「営業のために」にあたります。そのため、勧誘の前に名乗る義務(第16条)も、断った相手に勧誘してはいけない決まり(第17条)も、会社宛ての営業電話には及びません。受付で「結構です」と何度断っても、法律を根拠に止めることは難しいのが実情です。

私は、ここで変わるのは営業する側より、電話を受ける側の仕事だと見ています。自動で何百件もかけられる相手に、1本ずつ丁寧に断っていると、受ける側の手間だけが積み上がります。
だから会社側は、1本ずつ判断するのをやめて、手順で処理するほうが合います。「会社名と用件を名乗らない電話は取り次がない」「営業は代表メールに資料を送ってもらう」と決めてしまえば、相手がAIかどうかを見分ける必要もありません。
電話やメールで会社を狙うのは営業だけではありません。社長を名乗る指示のメールも、同じく受付と経理の手順で止める話です。
自宅宛ては断れば2回目が違法
自宅や個人の携帯にかかってくる営業電話は、話が変わります。特定商取引法の電話勧誘販売のルールがそのままかかり、かけてきたのがAIの声でも守る義務は同じです。
| 条文 | 事業者に求めていること |
|---|---|
| 第16条 | 勧誘の前に、事業者の名前、勧誘する人の名前、商品やサービスの種類、契約の勧誘のための電話であることを告げる |
| 第17条 | 契約しないと意思を示した人に、その契約の勧誘をしない |
第16条は「勧誘を行う者の氏名」を告げる義務まで書いています。AIの声が人の名前を名乗る電話では、その名前が実在の担当者なのか、確かめる手がかりにもなります。
大事なのは第17条の前提で、相手が「契約しない意思を示した」ことが要ることです。「今ちょっと忙しいので」では、また今度かけてよいと受け取られかねません。「契約しません。今後の勧誘もお断りします」と、はっきり言い切るのが確実です。訪問販売で自治体が示している断り方も、同じ考え方です。
具体的な言い方は訪問販売 帰らない 伊勢市が示す断りコトバは「今後の勧誘を一切お断りします」 現金3,000円未満はクーリング・オフの対象外ですにまとめています。断ったあとも同じ会社から電話が続くなら、日時と名乗った会社名を控えて、消費者ホットライン188に相談してください。
なお、宅配業者や銀行を名乗って番号の入力を求める自動音声は、営業ではなく詐欺の手口です。こちらは断る以前に、すぐ切ってください。
不動産の営業は別のルール
「投資用マンションを買いませんか」という電話は、特定商取引法ではなく宅地建物取引業法で扱われます。特定商取引法の第26条が、宅地建物取引業者の取引を適用除外にしているためです。そのかわり、宅地建物取引業法施行規則の第16条の11が、勧誘のしかたを細かく禁じています。
| 号 | 禁止されている勧誘 |
|---|---|
| ハ | 会社名、勧誘する人の名前、契約の勧誘が目的であることを告げずに勧誘する |
| ニ | 契約しない意思や、勧誘をもう受けたくない意思を示したのに勧誘を続ける |
| ホ | 迷惑を覚えさせるような時間に電話する・訪問する |
| ヘ | 深夜や長時間の勧誘など、私生活や業務の平穏を害するやり方で困らせる |
ニ号は「勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思」まで含めています。「もう電話してこないでください」の一言が、そのまま根拠になります。ヘ号には「業務の平穏」という言葉も入っていて、職場への電話も想定した書き方です。
不動産の営業電話がAIの声に置き換わっても、この規則は会社名と担当者名を名乗ることを求めたままです。名乗らない電話、名乗った会社名が調べても出てこない電話は、その時点で相手にしなくてかまいません。
よくある質問
Q. 相手がAIかどうか、見分ける方法はありますか。
A. 法律上の扱いはAIでも人でも同じなので、見分けなくても断り方は変わりません。「会社名と用件を名乗らない電話は取り次がない」と決めておけば足ります。
Q. 会社宛ての営業電話は、何度かかってきても違法にならないのですか。
A. 特定商取引法の電話勧誘販売のルールは、会社が仕事のために結ぶ契約には適用されません。ただし不動産の営業は宅地建物取引業法の規則で、断ったあとの勧誘の継続などが禁じられています。
Q. 「検討します」と答えてしまいました。
A. 契約しない意思を示したことにはなりにくい言い方です。次にかかってきたときに「契約しません。今後の勧誘もお断りします」と伝え直してください。
Q. 番号を着信拒否すれば終わりますか。
A. その番号からは止まりますが、別の番号からかかってくることがあります。自宅宛てなら、断ったのに続く場合は消費者ホットライン188に相談できます。
Q. この記事の内容はいつ時点のものですか。
A. 2026年9月29日にe-Gov法令検索で確認した条文と、米国FCCの2024年2月8日の発表にもとづきます。法令は改正されることがあります。
生活・仕事にどう効くか
- 会社にかかってきた:特定商取引法の「断ったら二度とかけてはいけない」は適用されません。社内で取り次がないルールを決めて、同じ対応を続けるのが現実的です。
- 自宅にかかってきた:AIの声でも、事業者名と勧誘目的を最初に告げる義務があります。はっきり断った相手に同じ勧誘を続けるのは第17条違反です。
- 不動産の営業だった:宅地建物取引業法の規則で、断ったあとの勧誘の継続や、迷惑な時間の電話が禁止されています。
結局どうすればよいか
- 自宅なら「契約しません。今後の勧誘もお断りします」と一度はっきり伝え、日時と名乗った会社名を控える
- 会社なら、名乗った会社名が確認できない営業電話は担当者に取り次がない、と受付の手順を決めておく
- 断ったあとも続くときは、消費者ホットライン188に相談する
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くわしく知る(保存版の記事)
公式出典
- e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律」第2条・第16条・第17条・第26条(2026年9月29日発表)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」第16条の11(2026年9月29日発表)
- FCC「FCC Makes AI-Generated Voices in Robocalls Illegal」(2024年2月8日発表)
更新履歴
- 2026年9月29日 初版を公開
※本記事は2026年9月29日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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