4人兄弟で実家を売って代金を分けるとき、建物の3分の1が末の弟の名義なら、売値のうち建物に何割を振るかで末弟の受け取りが変わります。神戸市で築31年以上の木造の家が売れた値段の中央値1,000万円で計算すると、建物に1割振るごとに末弟の受け取りは25万円増え、ほかの3人は約8万円ずつ減ります。
先に結論
- ✓ 土地は4人で4分の1ずつ。建物は末弟がもともと持つ3分の1に相続分が足されて、末弟が2分の1、ほかの3人が6分の1ずつになる
- ✓ 築30年を過ぎた木造の家は、売値では0と言われても、固定資産税の評価額は建て直す費用の2割で止まり0にならない
- ✓ 法律に売値の内訳の決め方は無い。建物を何割にするかを4人で決めて、遺産分割協議書に書く
「建物は末の弟が三分の一」4人兄弟で実家を売る人の相談
Yahoo!知恵袋に、親の家を売ったお金の分け方を聞く相談が出ています。
相続の分け方で質問です。親の住んでいた家を売り兄弟4人で分けます。土地は亡き親の名義、建物は末の弟が三分の一、名義を持っています。
相談者が知りたいのは、建物の分を固定資産税などの評価額で分けるのか、不動産会社の査定で分けるのか。そして自分で「ちなみに」と前置きして、建物は築30年以上で価値は低いと思う、と添えています。
回答は5件。3件が建物の値段はほぼ0だと答えました。1件は「木造築30年以上の物には価値はありません。あるのは建物の固定資産税最低ラインの評価額のみ。」、別の1件は「30年も経過していると売却時の評価としては「0」という可能性も否めずです。」。売った額で分けるという点では、「売るのなら、売った金額で考えるのが一般的です」という回答もあります。
末弟の3分の1に触れたのは1件だけでした。
→いいえ、現実に売却できた額について、親の名義割合である2/3を分割します。
この回答は正しい方向を指していますが、売れた額のうちどこまでが建物の分なのかは書いていません。建物を0と決めた瞬間に、末弟の3分の1も0になります。
読者
古い家なんだから、建物は0で全部4等分でいいのでは
それで4人が納得すれば構いません。ただ、その決め方でいちばん受け取りが減るのは末弟です。まず持ち主の表から見ていきます。
土地と建物で、分ける人数が違う
親が亡くなると、親の名義だった財産は相続人みんなの共有になります。民法898条1項です。
相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
土地は全部が親の名義なので、4人で4分の1ずつ。ところが建物は、3分の1がもともと末弟の物で、遺産なのは親の3分の2だけです。この3分の2を4人で分けると1人6分の1。末弟は自分の3分の1に6分の1が足されて、建物の2分の1を持つことになります。
1つの建物に、遺産の持分とそうでない持分が同居する形は、2023年4月に加わった民法258条の2がそのまま想定しています。
共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。
遺産の3分の2は遺産分割で、末弟の3分の1はふつうの共有として扱う。建物の中で、ルールが2つに分かれています。

築30年の家も、固定資産税の評価額は0にならない
回答の3件が言うとおり、築30年を過ぎた木造の家は、売るときには建物にほとんど値段が付きません。一方で、固定資産税の評価額のほうは0になりません。
総務省の固定資産評価基準では、家屋の評価額は、いま同じ家を建て直すといくらかかるか(再建築費)に、年数に応じた補正率をかけて出します。木造の専用住宅の補正率は、家の造りの程度によって築15年から35年で0.20まで下がり、そこから先の段がありません。何年たっても、建て直す費用の2割で止まる作りです。
相続税でも、この評価額がそのまま使われます。国税庁のNo.4602は家屋について「固定資産税評価額に1.0を乗じて計算した金額によって評価します。」と書き、続けて「したがって、その評価額は固定資産税評価額と同じです。」としています。
回答の1件は「固定資産税を支払っている証書に土地と建物の評価額がありますので、それが相続上の評価となります。」と書いていました。建物は当たっていますが、土地は違います。神戸市のように路線価が付いている場所では、相続税の土地の評価は路線価で出します(No.4602)。
つまり同じ建物に、売値では0、税金の評価では0より上という2つの値札が付いています。どちらを使うかで、末弟の受け取りが変わります。
神戸市で築31年以上の家は中央値1,000万円
金額の感覚をつかむために、神戸市の実際の取引で計算してみます。国土交通省の不動産取引価格情報(2024年10月〜2026年3月)で、神戸市9区の住宅・木造の家つき土地は1,143件。そのうち建ててから31年以上たった家が554件、48.5%とほぼ半分でした。売れた値段の中央値は1,000万円(土地135㎡・延べ床90㎡)です。
この1,000万円を4人で分けると、建物に振る割合でこう変わります。
- 建物0(更地の値段として扱う): 4人とも250万円
- 建物に1割: 末弟275万円、ほかの3人は約241.7万円ずつ
- 建物に2割: 末弟300万円、ほかの3人は約233.3万円ずつ
- 建物に3割: 末弟325万円、ほかの3人は225万円ずつ

建物に1割振るごとに、末弟の取り分は売値の2.5%動きます。1,000万円なら25万円、2,000万円の家なら50万円です。区によって値段の幅は大きく、同じ条件の中央値は長田区の320万円から中央区の2,000万円まで開いていました。
相談者の地域は書かれていません。神戸の数字は、同じ物差しを当てたときの目安で、この家の査定ではありません。税金や仲介手数料などの諸費用も差し引いていません。
建物に何割を振るか、決める物差しは3つ
民法にも国税庁の案内にも、売値のうち建物をいくらとするかの決まりは書かれていません。相談者が聞いた「法律どおり」の答えは、法律の中には無いということです。使える物差しは、実際には次の3つです。
1つ目は、建物を0とする方法。買い手が建物を壊して建て直すつもりなら、売値はほぼ土地の値段なので筋は通ります。末弟の3分の1は受け取りに反映されません。
2つ目は、固定資産税の課税明細書に載っている土地と建物の評価額の比で割る方法。4人とも同じ紙を見られるので揉めにくく、建物の分は築年数がいくら古くても0より上に残ります。
3つ目は、買い手との売買契約で土地と建物の代金を分けて書き、その金額で割る方法です。

読者
どれが正解なんですか
正解は決まっていません。大事なのは、売る前に4人でどれにするか決めて、紙に残すことです。回答にあった「遺産分割協議書にその旨を書いておくことが大切です」は、この内訳にもそのまま当てはまります。
解体費がかかるなら、その負担も持分で分かれる
建物を0とする話には、裏側があります。古家を壊して更地にしてから売るなら、解体費がかかります。回答の1件は一戸建てで200万〜300万円と見積もっていました。
民法253条1項は、共有物の費用の分け方をこう書いています。
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
条文どおり持分で割ると、建物の2分の1を持つ末弟が解体費の半分を負い、ほかの3人は6分の1ずつです。250万円なら末弟125万円、ほかの3人は約41.7万円ずつ。建物を0として売値を4等分し、解体費は持分で割ると、末弟だけが値段の付かない建物の費用を多く払う形になります。
建物を壊すことは、民法251条1項で共有者全員の同意が要ります。費用の分け方も、同意の話し合いの中で決め直せます。条文の割り方は、話し合いがつかないときの出発点です。
読者
建物は0だけど解体費は持分で、は末弟が損ですね
そうなります。建物を0とするなら、解体費も4等分にそろえるのが釣り合いの取れた決め方です。
共有名義の家から抜ける道そのものは、共有名義の実家から抜ける3つの道に、古家を残すか壊すかの損得は、更地にすると固定資産税が6倍が怖くて残した実家にまとめてあります。
私はこう見ています
回答者の3人は、建物の値段が0かどうかを論じていました。私は、この相談で決まっていないのは建物の値段ではなく、末弟の3分の1をどう数えるかだと見ています。
売値の上では0でも、税金の評価では建て直す費用の2割が残る。解体するなら持分に応じた費用もかかる。建物に値段を付けない決め方は、末弟の持ち物をなかったことにする決め方でもあります。
末弟が建物の名義を持っている理由は相談文に書かれていません。増築やリフォームの費用を出したのかもしれません。そうだとすると、建物を0とした4等分で最も損をするのは、実家にお金を入れた人になります。どの物差しを使うにしても、末弟が納得したうえで決めるのが、売ったあとに揉めない分け方だと考えます。
まとめ
- 土地は4人で4分の1ずつ。建物は末弟が2分の1(もともとの3分の1+相続の6分の1)、ほかの3人は6分の1ずつ
- 築30年を過ぎた木造の家でも、固定資産税の評価額は建て直す費用の2割で止まる。相続税の建物の評価も同じ額
- 神戸市で築31年以上の木造の家の成約中央値は1,000万円。建物に1割振るごとに末弟の取り分は売値の2.5%(25万円)動く
- 内訳の決め方は法律に無い。0・固定資産税評価額の比・売買契約の内訳から選び、遺産分割協議書に書く
- 解体費は条文どおりなら持分で負う。建物を0とするなら、解体費の割り方もそろえて決める
出典
- 民法(明治29年法律第89号)第251条・第253条・第258条の2・第898条(e-Gov法令検索の法令APIで全文を取得。2026年9月26日時点)
- 総務省「固定資産評価基準」第2章 家屋・別表第9 木造家屋経年減点補正率基準表、総務省「固定資産評価のしくみについて(家屋評価)」
- 国税庁「No.4602 土地家屋の評価」「財産評価基本通達 第3章 家屋及び家屋の上に存する権利」
- 国土交通省「不動産取引価格情報」神戸市9区(2024年第4四半期〜2026年第1四半期)。種類が宅地(土地と建物)、用途が住宅、構造が木造の取引のうち、建築年から31年以上の554件を当サイトで集計
- 引用した相談は Yahoo!知恵袋「相続の分け方で質問です。親の住んでいた家を売り兄弟4人で分けます。」(2024年11月17日・回答5件)
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