古河市で大雨のときに水がたまりやすい道は、国の一覧にも茨城県の一覧にも1か所も載っていません。0か所です。
ところが古河市は、自分の地図に線を引いています。しかもその線は「危ないかもしれない場所」ではなく、2015年9月に実際に冠水して通行止めになった場所です。こちらで数えると、およそ80本ぶんありました。
0と、およそ80。同じ市の同じ道の話です。違うのは、誰が何を数えているかだけです。
この記事でわかること
- ✓ 国と県が数えているのはアンダーパス。古河市にその構造が少ないだけです
- ✓ 線を引いているのは防災の部署ではなく都市計画課。防災のページからは着きません
- ✓ その日の1時間雨量は45.5ミリ。24時間で247.0ミリという降り続きの雨でした
箇所の数は、国土交通省 関東地方整備局「道路冠水注意箇所」の茨城県分(地図から開ける一覧31か所と、県ごとのPDF63か所)と、茨城県 土木部道路維持課「道路冠水危険箇所一覧」33か所(2026年9月11日更新)から数えました。線の本数は古河市「古河生活べんりMAP(べんりマップ)道路冠水危険箇所図」の読み取りです。2015年の雨は水戸地方気象台の気象速報、堤防の決壊は茨城県 土木部の資料、住家の被害は茨城県の確定版(令和元年12月9日現在)、災害救助法の適用は内閣府の資料、内水の扱いは古河市内水対策基本方針(令和5年2月)と市のハザードマップのページから取りました。標高は国土地理院の標高データで、町丁目の代表点で引いた値です。
国の一覧にも県の一覧にも、古河市は1か所もありません

大雨のときに水がたまりやすい道は、国と県がそれぞれ一覧にしています。国土交通省 関東地方整備局の「道路冠水注意箇所」は、地図から1か所ずつ説明を開ける茨城県の一覧が31か所。この中に古河市の行はありません。
同じ関東地方整備局が出している茨城県版のPDFは63か所で、表題に「アンダーパス部以外含む」と付いています。範囲を広げたこちらでも、古河市は0でした。
茨城県 土木部道路維持課の「道路冠水危険箇所一覧」は33か所。2026年9月11日の更新分を開いても、古河市の行は出てきません。同じ茨城県でも、取手市には6か所あります。
3つとも0です。ここで「載っていないから浸からない」と読むと外します。0が語っているのは古河市の安全ではなく、この一覧が何を数えているかのほうです。
冠水した道で車が動けなくなったときに要るもの
JAFのテストでは、セダンが走れなくなる水深と、ドアが開かなくなる水深がほぼ同じでした。つまり止まった時点で、窓を割る以外に外へ出る方法がなくなります。車に置いておくものから挙げます。
水に浸かった車は、外からの水圧でドアが開かなくなります。割れるのは側面のガラスで、フロントガラスは合わせガラスなので割れません。グローブボックスの奥ではなく、座ったまま手が届く場所に置いてください。
119番も家族への連絡も、スマホが生きていることが前提です。水に落とすと沈んで探しようがなくなるので、浮く型かどうかがそのまま連絡手段の有無になります。入れたまま操作できます。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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国と県が数えているのは、くぐる道の底です
県の一覧には、定義がそのまま書いてあります。「道路冠水危険箇所とは、主要幹線道路や鉄道などと立体的に交差する道路(アンダーパス部)で、周辺地盤より道路の高さが局部的に低くなっている箇所をいいます。」
線路や大きな道路の下をくぐるために掘り下げた、あの箱の底のことです。周りより低いので、降った雨がそこへ集まって出ていけません。
県の33か所は、県内12の工事事務所から上がってきた表です。古河市・坂東市・五霞町・境町を受け持つ境工事事務所の行は、33か所の中に1つもありませんでした。
古河市の0は「冠水しない」ではなく、「掘り下げてくぐる道が少ない」という意味です。
古河市は利根川と渡良瀬川にはさまれた平らな低地で、道は掘り下げなくてもつながります。水がたまるとしたら、箱の底ではなく面です。そして面で浸かる冠水は、国の一覧にも県の一覧にも入りません。
市の地図には、実際に止まった道がおよそ80本ぶん引かれています

古河市は「古河生活べんりMAP(べんりマップ)」という地図サイトを持っていて、その中に「道路冠水危険箇所」というテーマがあります。公開のお知らせが出たのは2022年7月13日です。
開くと、市じゅうに線が引かれています。そして地図の注記に、こう書かれています。「図示されている箇所は、平成27年9月関東・東北豪雨の際に道路冠水し、通行止めになった場所です。」
予想ではありません。実際に水が乗って、実際に車が通れなくなった道です。
この線を数えました。図は細かいタイルに分けて配信されているので、線の画素をつながりでたどると78本に分かれます。ただしズームの都合で、近い線がつながって1本に見えたり、1本の道が切れて2本に数えられたりします。だからこの記事では「およそ80本ぶん」と書きます。
市はもう1つの資料でも、同じ日に触れています。「古河市内水対策基本方針」(令和5年2月)の一文です。「古河市においても『平成27年9月関東・東北豪雨』等の影響により、床上浸水や床下浸水、道路冠水等の被害が発生しています。」

別の部署が出した2つの資料が、同じ雨を指しています。
2015年9月、西仁連川の堤防が約55メートル切れています
線が引かれた日に、古河市で何が起きていたか。茨城県 土木部の資料に書かれています。平成27年9月10日、古河市東山田(ひがしやまだ)地先で、西仁連川(にしにれがわ)の堤防が約55メートル決壊しました。
県は大型土のうを2,970袋入れ、9月30日に応急復旧を終えました。
住家の被害は、茨城県の確定版(令和元年12月9日現在)で古河市が半壊13棟、床上浸水1棟、床下浸水19棟。内閣府の資料では、古河市は災害救助法の適用市に入っています。
切れた西仁連川は、県が管理する中小河川です。市の洪水ハザードマップも、利根川・渡良瀬川のような大きな川と、「市内中小河川」とで紙が分かれています。
川が切れて外から水が入り、同時に、降った雨が引かない。市じゅうの道に線が引かれたのは、この2つが重なった日のことです。
この雨でいちばん強い1時間雨量は、45.5ミリです
水戸地方気象台の気象速報が、このときの雨を地点ごとに残しています。期間は平成27年9月7日18時から11日12時まで。古河の合計は297.5ミリでした。
1時間の強さを見ます。古河の最大1時間降水量は、9月9日17時18分の45.5ミリ。1時間に100ミリ降るような雨ではありません。
伸びたのは長さのほうです。24時間で247.0ミリ(9月10日5時まで)。これは統計開始以来の1位で、それまでの記録は1986年8月5日の181ミリでした。日降水量も9日に214.5ミリで、9月としての記録を更新しています。

1時間の雨だけを見れば、古河にはもっと強い雨が来ています。市の内水対策基本方針が挙げているのは、2003年8月5日の75ミリ、2022年6月10日の70.5ミリ、2019年9月10日の61.5ミリです。
市じゅうの道が止まったこの雨は、いちばん強い1時間でも45.5ミリ。そのどれよりも弱いということです。
強く降ったから浸かったのではなく、降り続いたから浸かった。1時間の雨量だけで判断すると、古河市では読み違えます。見るのは、何時間降り続くかのほうです。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
市内の標高の幅は、18.4メートルしかありません

古河市の町丁目は104あります。国土地理院の標高データを町丁目の代表点で引くと、いちばん低いのが長左エ門新田(ちょうざえもんしんでん)の8.0メートル、いちばん高いのが北間中橋(きたまなかばし)の26.4メートルでした。
差は18.4メートル。標高0メートル未満の町丁目はなく、5メートル未満もありません。低いほうを並べると、長左エ門新田8.0、釈迦9.5、水海10.7、鳥喰11.1、江口11.9。高いほうも22メートル台から26メートル台に固まっています。
ただしこの標高は町丁目の代表点で引いた値で、道路の底の高さではありません。同じ町の中でも、道が少し下がっていればそこに水は集まります。
平らだということは、水が横に逃げる先がないということでもあります。「どこが低いか」で危ない場所を選び出せないので、古河市では「どこに水が集まったか」でしか語れません。実際に止まった道を線で引いた市の図が、いちばん実用的な資料になります。
冠水の地図を出しているのは、防災の部署ではありません

古河市の水の情報は、3つに分かれています。しかも、出している部署が違います。
1つ目が洪水ハザードマップです。水防法第15条第3項に基づく地図で、令和8年4月に改定されました。
2つ目が内水です。こちらは地図ではありません。市のハザードマップのページを探しても、「雨水出水」「内水」「第14条の2」という語は1つも出てきません。古河市のハザードマップのページに、内水の地図はありません。
代わりにあるのが「古河市内水対策基本方針」(令和5年2月)という16ページの方針書です。内水の定義は「堤内地にたまる雨水」。雨水貯留や透水性舗装、田んぼダムといった対策は並びますが、どこが浸かるかの地図は付いていません。
3つ目が、この記事で数えた道路冠水危険箇所図です。出しているのは防災の部署ではなく都市計画課(古河市仁連(にれ)2065番地)。防災のページから順にたどっても、この図には着きません。
洪水は水防法の地図、内水は方針書、道路冠水は地図サイトの1テーマ。自分の家の前の道が浸かるかを1枚で確かめる方法が、古河市にはありません。
雨が降っている最中に見るなら、茨城県の「道路通行規制情報」が入口になります。災害による通行止めと、工事の通行制限が別々に出ています。
水に入った車は、ドアが開かなくなります

古河市の冠水は、くぐる道の底ではなく、平らな道が面で浸かる形です。手前から見ると水面は平らで、どこが深いのか分かりません。
JAF(ジャフ)のテストでは、セダンが走れなくなる水深と、ドアが開かなくなる水深がほとんど同じでした。止まった時点で、窓を割る以外に外へ出る方法がなくなります。割れるのは横の窓です。フロントガラスは合わせガラスなので、脱出用ハンマーでも割れません。
車が動かなくなったら110番と119番へ。ドアの高さの半分を超えると、内側からはほぼ開けられません。外に出られないときは、無理に移動せず高いところで待ってください。
ほかの市はどうなっているか
同じ手順で、ほかの市も1つずつ調べています。同じ資料を開いても、出てくる答えは市ごとに変わります。
- 道路冠水マップ どこで見られるの?
- 水戸市 冠水 どこが危ないの?(茨城県)
- 日立市 冠水 どこが危ないの?(茨城県) 県が雨の前に閉める9か所のうち、4か所が日立市です
- 取手市 冠水 どこが危ないの?(茨城県) 県の一覧に6か所あります
- 久喜市 冠水 どこが危ないの?(埼玉県)
この記事のまとめ
古河市で道路が冠水しやすい場所は、国の一覧でも、国の茨城県版PDFでも、茨城県の33か所の一覧でも0か所です。3つとも数えているのが掘り下げてくぐる道の底で、平らな低地の古河市にはその構造が少ない、というだけのことです。古河市を受け持つ境工事事務所からは、県の33か所に1つも入っていません。
いっぽう市は、2015年9月の関東・東北豪雨で実際に冠水して通行止めになった道を、自分の地図に線で引いています。数えるとおよそ80本ぶん。そのとき西仁連川は東山田で約55メートル切れ、半壊13棟・床上浸水1棟・床下浸水19棟の被害が出ました。1時間雨量は45.5ミリ、24時間で247.0ミリという降り続きの雨です。自分の家の前の道に線が引かれているかは、古河生活べんりMAPで確かめられます。
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