実家の片付けで売れるものを探しているなら、その家でいちばん高く売れるのは土地です。豊中市で40坪の敷地なら、実際の取引価格から出した相続税評価の目安で約2,962万円。姫路市でも約592万円あります。
だから片付けが無駄だ、という話にはなりません。相続税がかかったのは亡くなった人の10.4%だけで(令和6年分・国税庁)、残る9割の家でもめるのは、税金ではなく家の中のモノのほうだからです。
家財の値段と、その家財が入っている家の値段を、同じ画面に並べます。
先に結論
- ✓ 相続税がかかったのは、亡くなった人の10.4%(令和6年分・国税庁)
- ✓ 土地40坪で基礎控除を超えるのは、全国1,376市区町村のうち65市区町村
- ✓ 暦年贈与の110万円は相続財産に戻される。相続時精算課税の110万円は戻されない
実家の片付けで「売れるもの」を探すと、たいてい数千円で終わります
「まだ使える」「もったいない」。親がそう言って手が止まるところから、実家の片付けは動かなくなります。2020年5月にYahoo!知恵袋へ投稿された質問には、その止まり方がそのまま書かれていました。
ある程度の価格で売れるまで、フリマアプリとかで探してくれと言います
質問者は「無料に近い価格でさばいたほうが早い」と考えていて、親はそう思っていない。売れるものを探す作業は、ここで止まります(出典:Yahoo!知恵袋 2020年5月12日の質問)。
ここは正直に書きます。家財が1点いくらで売れるかを示した公的な統計は、探しても見つかりませんでした。「着物は◯円」「古い食器は◯円」と書いてあるページはたくさんありますが、出どころは全部が業者の自己申告で、母数も集計方法も公開されていません。だからこの記事では、買取価格の相場を書きません。
読者
じゃあ、売れるものを探すのは意味がないんですか?
意味はあります。ただ、探すのに何日もかけていると、桁が2つ大きいほうの判断が後回しになります。順番の問題です。

捨てるほうの値段は、市の表にはっきり出ています
売れる値段と違って、捨てる値段は自治体が公表しています。豊中市の粗大ごみ手数料を、市の一覧表から引くとこうなります。
| 品目 | 大きさ | 手数料 |
|---|---|---|
| たんす・食器棚・書棚などの収納家具 | 幅と高さの合計 1m未満 | 400円 |
| 同 1m以上2m未満 | 900円 | |
| 同 2m以上3m未満 | 1,800円 | |
| 同 3m以上 | 2,700円 | |
| ソファー | 1人掛け・2人掛け | 900円 |
| 3人掛け以上 | 1,800円 | |
| 上記以外のもの | 最大の辺が2m以上 | 1,800円 |
出典:豊中市「ごみと再生資源の分け方・出し方」令和6年度版。手数料は市によって違うので、住んでいる市の一覧表で確認してください
婚礼だんすを1棹出して2,700円。3人掛けのソファで1,800円。家じゅうの家具を並べても、多くの家では総額が数万円の世界に収まります。
業者に頼んだ場合の金額は書きません。こちらも公的な統計がないためです。ただ、頼むときの注意だけは公的な記録があります。国民生活センターに寄せられた不用品回収サービスの相談は、2018年度の1,354件から2021年度は2,231件に増えました。家庭から出た廃棄物を運ぶには市町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が要り、無許可の業者に渡すのは廃棄物処理法の上では違反にあたります。
読者
許可があるかどうかは、どこで分かるんですか?
市の環境部局に業者名を伝えれば確認できます。チラシやトラックの「回収します」という表示だけでは分かりません。

同じ家の土地は、姫路市で740万円、豊中市で3,702万円
家財を1点ずつ調べている間、同じ敷地の値段はこうなっています。国土交通省が公表している実際の取引価格から市ごとの坪単価の中央値を出し、土地40坪をかけたものです。
| 市区 | 坪単価の中央値 | 土地40坪の実勢 | 相続税評価の目安 | 件数 |
|---|---|---|---|---|
| 姫路市 | 185,124円 | 約740万円 | 約592万円 | 438件 |
| 明石市 | 429,751円 | 約1,719万円 | 約1,375万円 | 253件 |
| 豊中市 | 925,618円 | 約3,702万円 | 約2,962万円 | 148件 |
| 西宮市 | 1,123,965円 | 約4,496万円 | 約3,597万円 | 171件 |
| 大田区 | 2,314,046円 | 約9,256万円 | 約7,405万円 | 294件 |
2024年10〜12月期から2025年10〜12月期までの取引。相続税の土地評価は取引価格ではなく路線価で行うため、実勢の8割を目安に置いています。実際の評価は路線価図で確認してください
同じ土地に、公示地価・路線価・基準地価という3つの公的な値段が付いています。どれを見ればいいかは 同じ土地なのに、公的な値段は3つあります にまとめました。
自分の市の坪単価は、住所を入れれば出ます。
相続税がかかったのは、亡くなった人の10.4%です
令和6年に亡くなったのは1,605,378人。そのうち相続税の申告書が出されたのは166,730人で、割合にして10.4%でした(国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」)。前の年の9.9%から0.5ポイント上がり、基礎控除が引き下げられた平成27年分以降で最も高くなっています。
それでも、10人のうち9人は申告すら要りません。分かれ目は基礎控除です。
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数。相続人1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円です。
手元にある全国1,376市区町村の実取引データで、土地40坪の評価の目安が3,600万円を超える市区町村を数えると、65でした。相続人が1人という、いちばん基礎控除が小さい条件でも、土地だけで超えるのは20市区町村に1つほどです。中央値あたりの自治体では、40坪の評価の目安は264万円にしかなりません。

B家のように、はみ出す額が小さい家ほど判断が難しくなります。小規模宅地等の特例が使えれば土地の評価は8割下がり、税額はゼロになります。ただし特例を使うなら、税額がゼロでも申告は必要です。この特例が誰に使えるかは 実家の名義は生前と相続どっちが得? で神戸のデータを使って書きました。自分の家がかかる側かどうかを先に確かめたい人は 芦屋の実家を相続したら土地だけで4,760万円 の計算をなぞってください。

相続税がかかった家の財産を全部足しても、建物は4.8%しかありません。いちばん大きいのは現金・預貯金等の34.9%、次が土地の30.2%です。家の中を1日かけて探すなら、家財より先に通帳です。
毎年110万円ずつ渡しても、亡くなる前の分は戻ります
生前贈与でいちばん知られているのが、年110万円までなら贈与税がかからないという枠です。ここには続きがあります。

届出をせずにふつうに贈与した分(暦年課税)は、亡くなる前の一定期間について相続財産に戻して数え直されます。贈与税は0円だったのに、相続税の計算では財産に足されるということです。この期間が令和6年1月1日以後の贈与から3年→7年へ延び、いまはその途中にあります。3年を超えて戻り始めるのは2027年1月以降の相続から、7年ぶんそろうのは2031年1月以降の相続からです。3年より前の4年ぶんについては、合計100万円だけ差し引けます。毎年100万円ではありません。
一方、先に「相続時精算課税選択届出書」を出してから贈与した場合は、年110万円の基礎控除の分は相続財産に戻されません。2024年に新しくできた枠です。
ただ、ここまで読んだ人には順番が見えているはずです。相続税がかからない9割の家では、そもそも減らす税金がありません。贈与を急ぐ理由は税金の側にはなく、渡したい相手に確実に渡すという、別のところにあります。
住宅の購入資金だけは別枠があります。期限つきなので、家を建てる予定が具体的にあるなら 親から住宅資金をもらう予定なら2026年内に を先に読んでください。生前にもらった実家が兄弟の取り分にどう影響するかは 実家を生前にもらっても、弟の取り分は亡くなった日の値段 にあります。
私は、相続税がかからない9割の家で名義だけを先に子へ移すのは勧めません。所有権の移転登記にかかる登録免許税は相続なら0.4%ですが、贈与だと2.0%です。不動産取得税も相続では課税されず、贈与では課税されます。減らす税金が無い家で名義を動かすと、払わなくてよかった税金だけが増えます。
親が元気なうちに決まるのは、モノと名義です
ここまでの数字を、やることの順番に置き直します。
1. 通帳と保険証券のありかを、紙1枚に書いてもらう
相続財産でいちばん大きいのは現金・預貯金等でした。それなのに、どの銀行に口座があるかは本人しか知らないことが多い。金融機関名と支店名だけでいいので、紙に書いて1か所にまとめてもらってください。残高は書かなくてかまいません。書くのは「どこにあるか」だけです。
2. 売る値段ではなく、行き先を決める
残す・譲る・処分するの3つに分ければ、片付けは進みます。値段を調べるのは、行き先が「譲る」か「処分する」に決まった後です。順番を逆にすると、1点ずつの査定で止まります。手順そのものは 実家じまいの進め方 に書きました。
3. 使っていない土地や空き家があるなら、そちらを先に見る
家財が数千円の世界で動いている間、使っていない土地は数百万円の世界にいます。建物を壊すかどうかで手取りが変わるので、費用は 実家の解体費用 を先に見てください。亡くなった後に売る場合の3,000万円の控除は、空き家にしてから3年で期限が来ます(実家を空き家にした日から、3,000万円の控除は3年で消えます)。
4. 住み替えるなら、片付けと引っ越しは同じ工程にする
親を子の近くへ呼び寄せる、あるいは施設や小さい家へ移る。この決断をするなら、片付けと運び出しは一度で済みます。荷物が減ったあとに見積もりを取れば、金額も下がります。
5. 税金の心配が残るなら、かかる側かどうかだけ先に確かめる
図解のB家のように、基礎控除を少しだけ超える家は判断が難しくなります。特例を使えば税額はゼロでも申告は要る、という形になりやすいためです。ここは1回だけ人に聞いたほうが早く終わります。
最初の話に戻ります。実家の片付けで売れるものを探した時間は、無駄ではありません。ただ、その家で本当に値段がつくものは、家の中ではなく家そのものでした。売れるものを探しているうちは、家の値段を見ないで済みます。片付けが進まない理由は、たぶんそこにもあります。
出典
- 国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(令和7年12月)
- 国税庁タックスアンサー No.4152(相続税の計算)/No.4161(贈与財産の加算と税額控除)/No.4103(相続時精算課税の選択)/No.7191(登録免許税の税額表)
- 国土交通省 不動産情報ライブラリの取引価格情報(2024年10〜12月期〜2025年10〜12月期)を市区町村ごとに集計
- 豊中市「ごみと再生資源の分け方・出し方」令和6年度版の粗大ごみ手数料
- 国民生活センター「不用品回収サービスのトラブルにご注意」2022年11月2日公表
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