🗨️「JALとANAが手を組むって、便が減って運賃が上がるということですか?」
今回決まりつつあるのは出発時間をずらす調整だけです。便数を減らす調整は国の報告書で別扱いになっていて、赤字であることなど3つの条件と、国土交通大臣の認可が要ります。
[交通] この記事の要点
時事通信は2026年8月17日、日本航空と全日本空輸が10月下旬の冬ダイヤから羽田空港と岡山空港を結ぶ路線で両社の便が同じ時間帯に重ならないよう調整していることが分かったと報じた。大手航空2社が国内線でダイヤ調整を行うのは初めて。背景には、国土交通省の「国内航空のあり方に関する有識者会議」が2026年5月29日にまとめた報告書があり、一定の要件を満たせば原則として独占禁止法上問題とならないとの解釈が示されていた。両社の正式発表は出ていない。
2026年8月17日 発表 (2026年8月18日 更新)
- 岡山と東京を飛行機で行き来している人
- 羽田発着の地方路線を使っている人
- 岡山への出張が多いビジネスパーソン
- 地方路線の減便や運賃の値上がりを心配している人
この記事でわかること
- 今回の調整で実際に変わるのは何で、変わらないのは何か
- 「ダイヤ調整」と「便数を減らす調整」で手続きがどう違うか
- 運賃が上がらないかを誰がどう見張ることになっているか
先に結論
- JALとANAが10月下旬の冬ダイヤから、羽田―岡山で便の時間帯が重ならないよう調整しています。国内線では初めてです
- 変わるのは出発時刻の並び方だけ。便数を減らす話は今回の調整に入っていません
- 国の報告書は「ダイヤ調整」と「便数を含む調整」を分けていて、後者には3つの条件と国土交通大臣の認可が要ります
- 便数の調整に使う航空法110条1号は、これまで一度も使われた事例がありません
- 報告書には運賃を監視して動向を公表する仕組みも書かれています
- 両社の正式発表はまだ出ていません
10月下旬から、羽田―岡山で時間帯が重ならなくなる
時事通信は2026年8月17日、日本航空と全日本空輸が10月下旬の冬ダイヤから、羽田空港と岡山空港を結ぶ路線で両社の便が同じ時間帯に重ならないよう調整していると報じました。大手航空2社が国内線でダイヤ調整を行うのは初めてです。
これまでは、同じ路線に2社が飛んでいても、それぞれが独自に時刻を決めていました。その結果として起きていたことを、国土交通省の報告書はこう書いています。複数社が同一時間帯に重複したダイヤとなる路線も多く、利用者の視点からは必ずしも選択肢が広がらない——。朝の同じ時間に2社が並んで飛び、昼過ぎは1本もない、という状態です。
なお、これは取材で分かったという段階で、両社の正式発表ではありません。具体的にどの便が何時になるかも公表されていません。
岡山は新幹線でも東京とつながっている街で、飛行機は競合する選択肢のひとつです。岡山側の暮らしぶりは岡山市で子育て世帯の住まい探しで、4区の交通・学区・災害リスクをまとめています。
なぜ今までできなかったのか
やろうと思えばできそうな話が、なぜ今まで行われなかったのか。理由は独占禁止法です。競争している会社どうしが時刻を打ち合わせると、カルテルと見なされる恐れがありました。報告書も「これまで実施しにくい状況にあった」と書いています。
これが動いたのが、国土交通省の「国内航空のあり方に関する有識者会議」が2026年5月29日にまとめた報告書です。この中で、一定の要件を満たせば、原則として独占禁止法上問題とはならず実施の余地があるという解釈が示されました。
背景には数字があります。報告書は、新型コロナ後の需給構造の変化により2024年度に国内線事業の収支が実質的に赤字に転落したと書いています。競争させ続けるだけでは路線が保たない、という判断です。
「時間をずらす」と「便を減らす」は、まったく別の手続き
ここが今回いちばん誤解されやすいところだと思います。「ライバル2社が組む」と聞くと、「便が減って、運賃が上がるのでは」と身構えたくなりますが、報告書を読むとそうではありません。報告書は2つを完全に分けて扱っています。
| ダイヤ調整(今回のケース) | 便数を含む調整 | |
|---|---|---|
| 独禁法の扱い | 一定の要件を満たせば原則として問題とならない | 原則として問題となる |
| 使う根拠 | 報告書で示された解釈 | 航空法110条1号の適用除外 |
| これまでの実績 | 羽田―岡山が初 | 活用事例なし |
| 必要な手続き | 必要に応じて公正取引委員会へ確認 | 航空法111条1項の認可+公取委への協議 |
便数を減らす調整には、さらに条件が付きます。報告書は、その路線の収支が将来見通しを含めて赤字で「航空輸送需要の減少により事業の継続が困難と見込まれる」ことを前提としたうえで、①飛行機があるから日帰りできる(飛行機がなければ同日中の往復ができない)路線であること、②いわゆる幹線と呼ばれる高需要路線ではないことを挙げています。
つまり減便の調整は、路線が消えかかっているときの最後の手段として設計されています。今回の羽田―岡山で決まりつつあるのは、その手前のダイヤ調整だけです。
運賃が上がらないかは、報告書に見張る仕組みが書いてある
もう1つ、あまり報じられていない部分があります。報告書には運賃のモニタリングが盛り込まれています。
「協調・協業等が進展する路線を中心に、実勢運賃水準の変動を把握するとともに、その動向を公表することにより、競争を制限し利用者利便を損なうような不当な運賃設定が行われていないか監視すべきである」——報告書はこう書き、監視の結果を踏まえて必要な場合には適切な措置を講じることも検討すべきだとしています。
協調を認める代わりに、値段は見張って公表する。セットで設計されている、ということです。羽田―岡山は最初の事例なので、この監視が実際に機能するかどうかを見る最初のケースにもなります。
岡山―東京を使う人が、今の時点でできること
実際に何が変わるのかは、10月下旬の冬ダイヤが出てからでないと分かりません。それまでにできることを整理します。
- いつも使う時間帯を控えておく 冬ダイヤ発表後に、その時刻がどちらの会社の便になるかを見る
- 減便と決めつけない 便数の調整には大臣の認可が必要で、今回はその手続きに入っていない
- 正式発表を待つ 現時点では両社の発表ではなく、便名も時刻も出ていない
報告書は、路線の特性に応じた協調を認める考え方を示しています。羽田―岡山が初めての事例になるので、ここでうまくいけば同じ形が他の地方路線にも広がっていく可能性があります。地方に住んでいて飛行機を足に使っている人にとっては、路線がなくなるかどうかに直結する話だと私は見ています。
本記事は2026年8月18日時点で公表されている情報にもとづいています。ダイヤの内容は変更される場合があります。最新情報は日本航空・全日本空輸・国土交通省の公式発表をご確認ください。
生活・仕事にどう効くか
- 岡山―東京の出張:10月下旬の冬ダイヤから、両社の便が同じ時間帯に固まらなくなる見込み。同じ時刻に2社が並んでいた時間帯が分散すれば、選べる出発時刻は増える方向に働く。
- 便数が減るのが心配な人:便数を含む調整は報告書で原則として独占禁止法上問題とされている。使うには航空法110条1号の適用除外が必要で、この規定はこれまで一度も使われた事例がない。
- 運賃の値上がりが心配な人:報告書は、協調が進む路線を中心に実勢運賃の変動を把握し、その動向を公表して不当な運賃設定がないか監視すべきだとしている。
- 他の地方路線を使っている人:報告書は路線の特性に応じた協調を認める考え方を示しており、羽田―岡山が最初の事例になる。同じ形が他路線に広がる可能性がある。
結局どうすればよいか
- 10月下旬の冬ダイヤが公表されたら、自分がよく使う時間帯の便がどちらの会社になるか確認する
- 「2社が組む=減便」と早合点しない。便数の調整には国土交通大臣の認可と公正取引委員会への協議が必要
- 運賃が気になるなら、国土交通省が公表する実勢運賃の動向を見る仕組みができることを覚えておく
- 現時点では両社の正式発表ではないので、確定情報は各社のダイヤ発表を待つ
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
自分の場合を調べる(無料ツール)
公式出典
- 時事通信「日航と全日空、初のダイヤ調整へ 羽田―岡山間、路線網維持で協調」(2026年8月17日17時09分配信)(2026年8月17日発表)
- 国土交通省「『国内航空のあり方に関する有識者会議』報告書の公表」(令和8年5月29日)(2026年5月29日発表)
- 国土交通省「国内航空のあり方に関する有識者会議 報告書」本体(PDF)(2026年5月29日発表)
更新履歴
- 2026年8月18日 初版を公開。報告書本体を読み、ダイヤ調整と供給量調整の手続きの違いを整理した
※本記事は2026年8月18日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。


コメント