豊岡市で1年間に売れた土地は54件、中古戸建ては14件でした。この件数の市では、ネットに出ている相場の数字だけを見て値段を決めた人から順に、売れ残るか、安く手放すかのどちらかになります。
土地の坪単価の中央値は10.2万円、1区画の面積の中央値は230㎡(69.6坪)です。この2つを掛けた1区画の概算は713.0万円になります。 ただし2つは別々に取った中央値なので、713.0万円という値札の土地が実在するわけではありません。
この記事の数字は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」に載っている豊岡市の成約価格です。町別の坪単価も出しますが、この記事の主題は金額そのものではありません。取引が54件しかない市では、相場は面で決まるのではなく、1件の成約が次の基準を作ります。その読み方を書きます。
先に結論
- 豊岡市の土地の成約は1年で54件、中古戸建ては14件。取引が3件以上あった町は6つで、その6町でも1町あたり3件から5件です
- 坪単価の中央値は10.2万円、1区画は230㎡=69.6坪。掛け合わせた概算は713.0万円です
- 町別は九日市中町の16.2万円(3件)から日高町土居の2.2万円(3件)まで。3件の町の数字は、3件ぶんの重さしかありません
- 地価公示の10.6万円と成約の10.2万円の差は-3.1%。豊岡では公示価格を予算の目安に置いても大きくは外れません
- 新築戸建ては記録が2件しかないため、この記事では金額を出しません
1年で54件。この数だと相場は「面」になりません
豊岡市の土地の成約は、2024年10〜12月から2025年7〜9月までの1年間で54件です。中古戸建ては同じ期間で14件でした。
中央値というのは、54件を値段順に並べたときの真ん中の1件の値段です。 平均のように全体をならした数字ではなく、真ん中に来た1件を指しています。54件なら、真ん中の前後にある数件が入れ替わるだけで、市の中央値そのものが動きます。
実際、この54件の坪単価は0.9万円から21.8万円まで散らばっています(坪単価が極端な6件を除いたあとの幅です)。この幅の真ん中が10.2万円だという以上のことを、この数字は語っていません。
たとえば、道づけも形も条件のいい1区画が、相場より高い値段で秋に決まったとします。次にその近くで土地を売りに出す人は、その金額を頭に置いて値段を付けます。買う側も、断るときの理由にその1件を使います。取引が年に数十件の市では、成約1件が半年ぶんの基準になります。私は、豊岡で相場を調べるときに一番効くのは平均や中央値ではなく、この直近の1件だと考えています。
四半期ごとに集計できるだけの件数がある市なら、期ごとの中央値を並べて動きを追えます(神戸市9区の成約中央値はこちら)。豊岡市の土地は、1年ぶんをまとめてやっと1つの数字になる量です。同じ「中央値」という言葉でも、背負っている件数が違います。
町別の坪単価は九日市中町16.2万円、日高町祢布8.9万円
取引が3件以上あった6つの町を、坪単価の高い順に並べました。棒の横の数字が坪単価、町名の横が件数です。
豊岡市の土地の成約価格(坪単価の中央値・2024年4Q〜2025年3Q・取引3件以上の6町)
自分の町の相場を調べる
この記事の数字は市全体の中央値です。町ごとの相場は住所を入れるとその場で出ます。
このツールは農地や山林が混ざった極端な取引も除かずに集計します。そのため市全体の数字はこの記事より低く出ます。町ごとの傾向を見るのに使ってください。
上と下を単純につなげば、九日市中町の16.2万円と日高町土居の2.2万円になります。ただし日高町土居は、このあとで書くとおり住宅地の相場として同じ土俵に乗せられない数字です。
住宅地とみられる町どうしで比べると、九日市中町(3件)と日高町祢布(5件)で1.8倍です。 豊岡市のなかで住宅地として動いている土地は、町を変えても価格が2倍動くかどうか、というのが実際の姿に近いと私は見ています。
そのうえで、この6町のうち5町は3件です。3件の中央値は、たまたま形のいい1区画が入っただけで上に跳ねますし、道が狭い1区画が入れば下に落ちます。町の順位表として読まないでください。九日市中町が16.2万円で弥栄町が13.2万円という並びも、来年同じ順番になる保証はどこにもありません。ここで読み取れるのは順位ではなく、住宅地として動いている町が坪8.9万円から16.2万円のあいだに収まっている、という帯の位置だけです。
坪2.2万円の町を「一番安い町」として選ばない
6町のうち日高町土居の2.2万円は、豊岡市の中央値10.2万円の4分の1を下回っています。ここには農地や山林、市街化調整区域が混ざっている疑いがあります。
市街化調整区域は、市街化を抑えるために線引きされた区域です。ここで住宅を新しく建てるには許可が要り、誰でも自由に建てられる場所ではありません。農地であれば転用の手続きも別に要ります。土地の値段が住宅地より一桁安く出るのは、そもそも用途が違うからです。
坪2.2万円は住宅地の相場ではなく、別の使い道の土地の値段が混ざった数字だと私は見ています。 不動産のポータルで極端に安い土地を見つけたときは、値段を喜ぶ前に、その土地が市街化調整区域かどうか、地目が何かを先に見てください。売主も仲介会社も隠しているわけではなく、資料の端に小さく書いてあります。
地価公示は坪10.6万円。豊岡では成約と近い数字です
豊岡市の地価公示は、住宅地13地点の中央値が坪10.6万円です。実際の成約54件の中央値は10.2万円で、差は-3.1%でした。
この2つは、そもそも数え方が違います。地価公示は毎年1月1日時点の標準地、つまり住宅地として整った場所を選んで評価した価格です。一方の成約54件には、日高町土居のように住宅地とは言い切れない土地も混ざります。母集団が違うので、この-3.1%を「豊岡の土地が値下がりした」とは読めません。値上がりでも値下がりでもなく、性質の違う2つの数字がたまたま近いところにある、というだけです。
それでも、予算を組む側にとってこの近さには使い道があります。豊岡では、ニュースで見た地価公示の10.6万円を土地の予算の目安に置いても、大きくは外れません。 これは市によって事情がまったく違うところで、公示価格と成約価格が大きく離れる市もあります(伊丹市で同じ比較をした記事)。豊岡は離れていない側でした。
ただし、公示側も13地点しかありません。片方が54件、もう片方が13地点で、その2つが近かった、という話です。私はこの-3.1%を「ぴったり一致した」ではなく「大きくは離れていない」くらいの幅で読んでいます。
中古戸建ては14件。新築戸建ての金額は出しません
豊岡市の他の種別も、同じ期間で並べます。件数とセットで見てください。
| 種別 | 成約価格(中央値) | 件数 |
|---|---|---|
| 宅地(土地) | 10.2万円/坪 | 54件 |
| 中古戸建て | 32.2万円/坪(延床) | 14件 |
| 新築戸建て | 記録が2件のため出しません | 2件 |
| 賃貸 | 1,789円/㎡ | 4,910件 |
中古戸建ての32.2万円は、下位25%が16.4万円、上位25%が89.5万円まで開きます。14件の中央値なので、32.2万円という1つの数字より、16.4万円から89.5万円まで開くという事実の方が実態に近いと私は見ています。 下位25%と上位25%でこれだけ開くということは、この14件のなかに性格の違う家が混ざっているということです。1つの相場としてならすには件数が足りません。
新築戸建ては、集計期間内の記録が2件でした。2件の中央値は、2件の真ん中というより2件の間を取っただけの数字で、坪単価として意味を持ちません。この記事では金額を書きません。豊岡で新築の坪単価を知りたい場合、成約データから出せる答えは今のところありません。
賃貸の4,910件は募集の件数で、売買の54件とは数え方が違います。募集の数と成約の数を並べて比率を出すことはできないので、賃貸は賃貸の数字として見てください。中古戸建ての坪単価も、取引総額を建物の延床坪数で割った値です。土地の坪単価とは分母が違うので、10.2万円と32.2万円を引き算して建物代を出すことはできません。
取引が少ない市で、土地の値段を決める手順
仲介会社の担当者がテーブルに査定書を広げて、相場の推移グラフを見せてくる場面を想像してください。グラフはきれいな線を描いています。そこで聞くべきことは1つです。
「この半年で、この町では何件決まりましたか」 と先に聞いてください。答えが2件や3件なら、そのグラフの線は2件や3件の上に引かれています。線の形ではなく、その2件が今の基準です。何月にいくらで、どんな土地が決まったのかまで聞ければ、市の中央値より正確な材料が手に入ります。
あわせて、売り出し中の価格ではなく「決まった価格」を聞いてください。ポータルサイトに並んでいる価格は売主の希望であって、成約価格ではありません。取引が少ない市では売り出しの物件数も限られるので、売れ残って値段が下がりきっていない1件が、そのまま「相場」として表示されていることがあります。
そして、1社の査定額で決めないことです。土地の成約が年54件という市では、査定額の差は計算方法の差というより、その会社が今この町の買い手を持っているかどうかの差になります。机上の相場を丁寧に説明してくれる会社より、買い手の顔が浮かんでいる会社の方が、実際の金額は先に出ます。相続した土地や実家のように、自分がその町に住んでいない場合はなおさら、複数の会社に当ててから決めた方が早く着地します。
同じ土地でも会社によって金額が変わります。差の理由を聞けば、根拠のある方が分かります
相続した実家をどこから片づけるかで迷っている場合は、実家じまいは誰に相談すればいいかに相談先の順番をまとめています。
豊岡で土地の値段を決める前にやる3つのこと
1. 市の中央値ではなく、町と件数をセットで見る。 豊岡市の10.2万円は54件の真ん中、九日市中町の16.2万円は3件の真ん中です。同じ「中央値」でも背負っている件数が違います。
2. 直近に近所で何件決まったかを聞く。 ネットの相場表示より、この半年の成約が値段を決めます。件数が少ない市ほど、机の上の数字より人が持っている情報の方が新しくなります。
3. 極端に安い坪単価は、区域と地目を先に確かめる。 日高町土居の2.2万円のような数字は、住宅を建てられる土地とは限りません。値段の前に、そこに家が建つかどうかが決まっています。
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この記事の数字の出どころ
- 成約価格:国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産取引価格情報。集計期間は2024年第4四半期から2025年第3四半期。土地54件、中古戸建て14件、新築戸建て2件
- 土地54件のうち6件は、坪単価が極端な値だったため集計から除いています
- 坪単価と1区画の面積は、それぞれ独立に中央値を取った数字です。掛け合わせた713.0万円は概算であって、実在する1件の成約価格ではありません
- 町別の集計は取引3件以上の6町のみ。3件や5件の中央値は1件の影響を受けやすいので、順位ではなく帯の位置として読んでください
- 日高町土居は市の中央値の4分の1を下回っており、農地・山林・市街化調整区域が混ざっている疑いがあります。住宅地の相場としては読まないでください
- 地価公示:国土交通省の地価公示。豊岡市内の住宅地13地点の中央値。毎年1月1日時点の標準地の評価額で、成約価格とは母集団が違います
- 中古戸建ての坪単価は、取引総額を建物の延床坪数で割った値です。土地の坪単価とは分母が違うので、そのまま引き算はできません
- 新築戸建ては集計期間内の成約が2件のみのため、中央値を金額として掲載していません
- 賃貸は募集賃料から算出した1㎡あたりの中央値です(4,910件)。成約件数ではありません
- 中古マンション・新築マンションは、集計期間内の成約データがなかったため扱っていません


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