🗨️「家の片づけも終わっていないのに、8月10日の源泉所得税や消費税の納付期限が来てしまう。延滞税を取られるのでしょうか。」
八代市・宇土市・宇城市・氷川町に納税地があるなら、7月28日以降に来る国税の期限は手続きなしで自動的に延びます。納めなくても延滞税はかかりません。4市町の外で被災した人も、税務署に申請すれば同じ扱いを受けられます。
[災害] この記事の要点
国税庁が2026年8月4日、令和8年熊本地震を受けて、熊本県八代市・宇土市・宇城市・八代郡氷川町に納税地のある人(法人を含む)について、国税の申告・納付等の期限を地域指定により延長すると発表した。対象は全税目で、令和8年7月28日以降に到来する期限が自動的に延びる。
2026年8月7日 発表
- 八代市・宇土市・宇城市・氷川町に納税地がある個人・法人
- 毎月10日に源泉所得税を納めている事業者・不動産オーナー
- 4市町の外に納税地があり、地震で申告や納付ができない人
この記事でわかること
- 自動で延びるのはどの地域の、どの税目か(申請が要るのか要らないのか)
- 4市町の外に納税地がある人が、期限を過ぎてから申請できる理由
- 期限延長と、税額そのものを減らす災害減免法・雑損控除の違い
8月10日の源泉所得税は、いま納めなくていい
従業員や税理士へ払った報酬から源泉徴収した所得税は、原則として翌月10日が納付期限です。7月分は8月10日に来ます。地震から2週間も経っていない時期にこの期限が来ることになりますが、納税地が八代市・宇土市・宇城市・氷川町にあるなら、この納付をしなくても延滞税も不納付加算税もかかりません。国税庁が8月4日に地域指定を行い、令和8年7月28日以降に到来する期限を全税目について自動的に延長したためです。
「自動的に」というのは文字どおりで、申請書も届出も要りません。国税庁の文書には、毎月10日が納付期限の源泉所得税等についても期限が延びるとはっきり書かれています。所得税の予定納税、消費税の中間申告、法人税の確定申告、相続税の申告と納付も同じ扱いです。相続税は「知った日の翌日から10か月」という期限が動かせない税として知られていますが、この地域指定の対象に入ります。
対象は4市町。震度7を観測した宇城市と氷川町が入っている
地域指定の対象は、熊本県八代市、宇土市、宇城市、八代郡氷川町の4市町です。7月28日16時27分の地震で震度7を観測した宇城市と氷川町、断水と住家被害が集中した八代市が含まれます。基準は住所ではなく納税地です。事業所が4市町にあって自宅が熊本市という人でも、納税地が4市町にあるなら対象になります。逆に、4市町に住んでいても納税地を別の場所に置いている場合は自動延長になりません。確定申告書の右上に書いてきた住所を思い出してください。
延長がいつまで続くかは、この時点では決まっていません。国税庁は「今後、被災者の状況に十分配慮しつつ検討してまいります」と書くにとどめており、終期は後日あらためて示されます。今回の地域指定そのものも、近日中に官報で告示される予定と書かれています。いま納付しなかったことが後から不利になる作りにはなっていません。
4市町の外で被災した人は「後から」申請できる
被害を受けたのは4市町だけではありません。熊本県が賃貸型応急住宅(みなし仮設住宅)の供与対象としているのは、災害救助法が適用された20市町村です。自動延長の対象4市町のほかに、水俣市、山鹿市、菊池市、上天草市、天草市、合志市、美里町、大津町、菊陽町、西原村、御船町、嘉島町、益城町、甲佐町、芦北町、津奈木町の16市町村が並びます。これらの地域に納税地がある人は自動延長の対象外ですが、所轄の税務署に申請すれば個別に期限の延長を受けられます(個別指定)。
ここが今回いちばん実用的な部分だと私は見ています。国税庁の文書には、この申請について「当初の期限を経過し、状況が落ち着いた後、申告・納付等と同時に行うことも可能です」と明記されているからです。つまり、期限までに税務署へ駆け込む必要がありません。避難所にいる人、断水で家の片づけが進まない人が、期限を1日過ぎたことで加算税を心配しなくて済むように作られています。制度を知らずに無理をして期限内に出しにいくほうが、むしろ損をする作りです。
期限が延びても税額は減らない。減らすのは別の制度
期限延長は「待ってもらう」制度であって、納める額は1円も変わりません。税額そのものを減らす制度は別にあります。住宅や家財の損害額がその時価の2分の1以上で、その年の合計所得金額が1,000万円以下であれば、災害減免法によって所得税が軽減または免除されます。軽減の幅は所得金額で3段階に分かれます。
| その年の合計所得金額 | 軽減・免除される所得税 |
|---|---|
| 500万円以下 | 全額 |
| 500万円超〜750万円以下 | 2分の1 |
| 750万円超〜1,000万円以下 | 4分の1 |
合計所得金額が1,000万円を超える人や、損害が時価の2分の1に届かない人は、この制度を使えません。その場合は雑損控除で損失額を所得から差し引きます。雑損控除は控除しきれなかった分を翌年以降3年間繰り越せるため、損害が大きいときは災害減免法より有利になることがあります。どちらか有利なほうを選べる仕組みで、確定申告を出した後でも、修正申告書または更正の請求書を出すときに選び直せます。
いま必要なのは、損害額を証明できるものを残しておくことです。壊れた家財を捨てる前に写真を撮り、修理の見積書と領収書をまとめておく。罹災証明書の被害区分(全壊・大規模半壊など)も判断の材料になります。片づけが先に進むと、後から損害額を積み上げられなくなります。
県税・市町村税は国税とは別枠
今回の発表は国税に限った話です。自動車税や不動産取得税などの県税、固定資産税・都市計画税や住民税といった市町村税は、それぞれ熊本県と各市町村が別に判断します。徴収の猶予や減免が用意されている場合も、国税のように地域指定で自動的に処理されるとは限らず、申請が要るものがあります。納税通知書が届いたら、そのまま払う前に県税事務所と市町村の税務担当へ確認してください。
生活・仕事にどう効くか
- 毎月の納付:4市町に納税地があれば、8月10日期限の源泉所得税をはじめ、全税目の期限が自動で延びる。申請書も届出も要らず、納めなくても延滞税・不納付加算税の対象にならない。
- 延長の終わり:いつまで延ばすかは未定。国税庁は「被災者の状況に十分配慮しつつ検討」とだけ示している。終期は後日あらためて示されるため、片づけが落ち着いた時点で国税庁の案内を見直す必要がある。
- 4市町の外:自動では延びないが、所轄の税務署に申請すれば延長できる。しかもこの申請は期限を過ぎたあと、申告・納付と同時に出してもよい。被災直後に税務署へ行けなくても不利にならない。
- 税額そのもの:期限延長は「待ってもらう」制度で、税額は1円も減らない。住宅・家財の損害が時価の2分の1以上なら、災害減免法で所得税の全額〜4分の1が免除される別制度がある。
結局どうすればよいか
- 納税地が八代市・宇土市・宇城市・氷川町なら、目前の納付期限はいったん手を止めてよい。手続きは不要で、あとから終期が示される
- 4市町の外で被災したなら、いま慌てて税務署へ行かず、状況が落ち着いてから申告・納付と同時に期限延長を申請する
- 住宅・家財の損害額と、その年の合計所得金額の見込みを控えておく。1,000万円以下なら災害減免法、超えるなら雑損控除の判断材料になる
- 県税・市町村税(自動車税、固定資産税など)は国税と別枠。熊本県の県税事務所と、市町村の税務担当へ個別に確認する
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公式出典
- 国税庁「令和8年熊本地震に係る国税の申告・納付等の期限の延長について」(2026年8月4日発表)
- 国税庁 タックスアンサー No.1902「災害減免法による所得税の軽減免除」(2026年8月7日発表)
- 日本税理士会連合会「<国税庁からのお知らせ>令和8年熊本地震に係る地域指定による申告・納付等の期限延長について」(2026年8月4日発表)
- 熊本県「令和8年熊本地震に係る賃貸型応急住宅の供与について」(対象20市町村)(2026年7月31日発表)
更新履歴
- 2026年8月7日 初版を公開
※本記事は2026年8月7日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。


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