🗨️「激甚災害に指定されたら、うちの家の修理代も国から出るの?」
激甚災害の指定で補助率が上がるのは、自治体がやる復旧事業のほうです。今回、高市首相が9月4日に表明したのも「農地などについて本激の指定が見込まれる」でした。家の応急修理は激甚災害法ではなく災害救助法の側にあり、富山・石川・福井では8月27日から動いています。指定を待つ必要はありません。
[災害] この記事の要点
2026年9月5日 発表
- 富山・石川・福井で家が浸水した人
- り災証明書をこれから申請する人
- 屋根や床の修理費をどこに頼めばいいか分からない人
- 「激甚災害に指定されるまで待とう」と思っている人
9月4日に決まりかけているのは「農地など」の話
高市首相が4日に表明したのは、8月27日からの北陸の大雨を激甚災害(本激)に指定する見込みになった、という内容でした。梅雨前線から千葉豪雨までの一連の気象現象と一連性があると判断され、そこに合流する形です。補助率が上がる対象として名指しされたのは農地などの復旧事業で、報道されている引き上げ幅は約1割です。
ここで多くの人が引っかかります。「激甚災害」という強い言葉と、自分の家の被害が、頭の中でつながってしまうからです。
激甚災害に指定されたら、うちの修理代も国から出るんですよね?
出ません。激甚災害の指定は、自治体の財政負担を軽くする仕組みです。個人の家を直すお金は、まったく別の法律から出ます。
激甚災害制度に、個人の家を直す章がない
これは解釈ではなく、条文の組み立てがそうなっています。内閣府が公開している激甚災害制度のQ&Aは、次の7章で構成されています。
- Ⅰ 総論関係
- Ⅱ 政令・告示関係
- Ⅲ 公共土木災害復旧事業関係
- Ⅳ 農林水産災害復旧事業関係
- Ⅴ 中小企業に関する特別の助成
- Ⅵ 公営住宅建設等事業関係
- Ⅶ 小災害債関係
公共土木、農林水産、中小企業、公営住宅、小災害債。個人の住宅再建にあたる章が、どこにもありません。相手は市町村と県であって、被災した個人ではないからです。
「住宅」と付く唯一の措置は、100戸から始まる
7章のうち住宅の文字が入っているのはⅥ章の公営住宅ですが、これは自治体が建てる罹災者公営住宅の話です。国土交通省住宅局によると、激甚災害の場合は国庫補助率が3/4に引き上げられます(一般災害では2/3)。ただし対象地域になるには条件があります。
- 滅失住宅の戸数が100戸以上
- または滅失住宅の戸数の割合が、その市町村の住宅戸数の1割以上
今回の被害はこの線に届いていません。内閣府がまとめた9月4日7時時点の住家被害は、7県で合わせて1,514棟。内訳は床上浸水405棟・床下浸水1,098棟・一部破損3棟で、全壊と半壊を足しても8棟です。県別では富山県623棟・石川県505棟・福井県299棟でした。
| 県 | 住家被害の合計 |
|---|---|
| 富山県 | 623棟 |
| 石川県 | 505棟 |
| 福井県 | 299棟 |
| 青森県 | 59棟 |
| 秋田県 | 24棟 |
| 長野県・島根県 | 各2棟 |
| 合計 | 1,514棟(うち全壊・半壊は8棟) |
つまり被害の形が「浸水」に極端に寄っていて、家そのものが失われた例はごく少ない。だからこそ、激甚指定で動く公営住宅の条文には届かず、必要になるのは浸水した家を直す制度のほうになります。
家の応急修理は、8月27日からもう受け付けている
その制度は災害救助法の側にあります。激甚災害の指定より1週間以上早く、8月27日に適用が決まっています。
| 制度 | 根拠 | 北陸での状況 |
|---|---|---|
| 激甚災害の指定 | 激甚災害法 | 9月4日に首相が見込みを表明。対象は農地など |
| 住宅の応急修理 | 災害救助法 | 8月27日に適用。氷見市などで受付中 |
| 賃貸型応急住宅 | 災害救助法 | 氷見市が民間賃貸住宅の提供を案内 |
| り災証明書 | 災害対策基本法 | 氷見市は8月30日から申請受付 |
富山県が災害救助法を適用したのは8月27日で、対象は高岡市・氷見市・小矢部市・射水市の4市です。氷見市が案内している応急修理は2本立てになっていて、内容が違います。
- 住宅の被害の拡大を防止するための緊急の修理=準半壊以上の住家が対象。ブルーシートを張るような、これ以上ひどくしないための工事
- 日常生活に必要な最小限度の部分の修理=準半壊以上で、かつ自らの資力では応急修理ができない人が対象。屋根・床・外壁などが範囲
前者は資力の要件が書かれていない一方、後者には「自らの資力では応急修理ができない人」という条件が付きます。同じ「応急修理」でも、入り口が2つあるということです。屋根に穴が開いたまま次の雨を待つ状況なら、まず前者に当たります。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
いま先にやることは、り災証明書のための1枚の写真
応急修理も賃貸型応急住宅も、被害の程度が確定していないと話が進みません。その入り口がり災証明書で、氷見市は8月30日から申請を受け付けています。
申請に必要だと市が書いているのは浸水等の高さがわかる写真です。ここが実務で一番落としやすい点で、床上まで水が来た家ほど、まず泥をかき出して家財を運び出します。片付いてから写真を撮っても、水がどこまで来たかは写りません。撮るのは片付ける前です。
私は、災害のたびに「激甚災害に指定されるかどうか」が最初のニュースになる報じ方が、被災した人の動き出しを遅らせていると見ています。指定は自治体の財布の話で、住民の手続きはそれと関係なく先に始まっているからです。今回も、指定の表明が9月4日で、応急修理の適用は8月27日でした。8日ぶんの差があります。
関連記事:「災害救助法が出たから、お金がもらえる」ではありません 石川4市町・富山4市で先に変わるのは避難所の運営者です/石川・富山の大雨被害は?672棟に住家被害、30日まで警戒
生活・仕事にどう効くか
- 家の修理:住宅の応急修理は災害救助法の枠組みで、激甚災害の指定とは別ルート。氷見市では準半壊以上を対象に、ブルーシート展張などの緊急の修理と、屋根・床・外壁などの修理の2本を受け付けている。
- 手続きの起点:氷見市のり災証明書の申請受付は8月30日から。申請には浸水等の高さがわかる写真が要る。片付ける前に撮っておかないと出せない。
- 激甚指定で変わるもの:上がるのは農地・林道などの復旧事業に対する国庫補助率で、報道されている引き上げ幅は約1割。個人が受け取る金額ではない。
結局どうすればよいか
- り災証明書を先に申請する。浸水の高さが分かる写真を撮ってから片付ける
- 住んでいる市町村の公式ページで「住宅の応急修理」「緊急の修理」の受付が出ているかを見る
- 応急修理と公費解体は同時には使えないので、直すのか解体するのかを決めてから申し込む
公式出典
- 内閣府 防災情報のページ「激甚災害制度Q&A」(2026年9月5日発表)
- 内閣府「令和8年8月27日からの大雨等による被害状況等について」(9月4日7時時点)(2026年9月4日発表)
- 国土交通省 住宅局「罹災者公営住宅等の整備」(2026年9月5日発表)
- 富山県「令和8年8月26日からの大雨に関する情報」(災害救助法の適用)(2026年9月5日発表)
- 氷見市「令和8年8月大雨に関する情報【まとめ】」(2026年9月5日発表)
- 石川県「大雨に関する情報」(2026年9月5日発表)
- 福井県「令和8年8月29日からの大雨に係る対応について」(2026年9月5日発表)
更新履歴
- 2026年9月5日 初版を公開
※本記事は2026年9月5日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。


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