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軽量鉄骨VS木造 あと何年住めるか

「軽量鉄骨だから、木造より長持ちする」。この言い方は、税金の計算に使う年数ですら成り立たない区分があります。減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一を条文で引くと、住宅用の年数は木造が22年、金属造は骨格材の厚みによって34年・27年・19年の3つに割れます。いちばん薄い区分は19年で、木造の22年より3年短いのです。

値段のほうも見ておきます。国土交通省が公開している成約価格887,381件から、敷地と延床と前面道路の幅をそろえて比べると、築0〜10年の軽量鉄骨造は木造より延床1m²あたり39.5%高い値段で取引されていました。ところが築31〜40年まで来たときに残っていた割合は、集計できた8県のうち6県で軽量鉄骨造のほうが小さくなります。

高く買って、同じか、それ以上に落ちている。少なくともこのデータでは、そう出ました。

先に3つだけ

  • 「あと何年住めるか」を国が決めた資料はありません。19年・22年・27年・34年は、税金を計算するための年数です
  • その家が19年・27年・34年のどれなのかを、買う人が確かめる手立ては用意されていません。分かれ目は骨格材の厚みで、外から見えないところにあります
  • 重量鉄骨(鉄骨造)はこの記事では比べられていません。取引の件数が足りず、都道府県単位でも1つも成立しなかったためです。以下はすべて軽量鉄骨造に限った話です
目次

国が決めた住宅の年数は、木造22年・金属造19〜34年

まず条文のほうから片づけます。減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四十年大蔵省令第十五号)の別表第一に、建物の構造ごとの年数が書かれています。住宅用の行だけを抜き出すと、こうなります。

構造・細目(住宅用) 耐用年数
木造又は合成樹脂造のもの 22年
金属造のもの/骨格材の肉厚が4mmを超えるもの 34年
金属造のもの/骨格材の肉厚が3mmを超え4mm以下のもの 27年
金属造のもの/骨格材の肉厚が3mm以下のもの 19年

解説記事でよく見かける「軽量鉄骨は27年、木造は22年だから鉄骨のほうが長い」という比べ方は、この表の真ん中の行だけを取り出したものです。同じ「金属造」の中に、木造より短い19年の行が並んでいます。

うちが見に行った家は、19年と27年のどっちなんでしょう。
おかあさん
それが、この記事でいちばん答えにくいところです。分かれ目は柱や梁に使っている鋼材の厚みで、壁の中にあります。後ろのほうで、なぜ答えにくいのかを1節使って書きます。
建物の鉄骨の梁と柱が組まれている様子
19年か27年か34年かを分けているのは、この部材の肉厚です(写真: Unsplash)

「あと何年住める」に、国が出した答えはありません

ここを混ぜたまま読むと、この先の数字を全部読み違えます。上の表の年数は、建物の値段を何年かけて経費に落とすかを決めるためのものです。省令の名前そのものが「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で、住んでよい年数を国が定めた条文ではありません。

19年を過ぎた軽量鉄骨の家に住めなくなる、という決まりはどこにもありません。逆に、34年に区分される家が34年もつという保証もありません。税務の年数は、建物の傷み方を測ったものではないからです。

では「あと何年住めるか」に近い数字が手元にあるかというと、あります。実際に売り買いされた記録です。国土交通省の不動産価格情報から、住宅地の戸建て(宅地・土地と建物)で敷地50〜400m²・築年の分かる取引を全国分集めると228,258件あり、そのうち鉄骨系が24,058件、木造が204,200件でした。

さらに敷地140〜200m²・延床90〜130m²・前面道路の幅員4m以上にそろえて数えると、築41年以上の軽量鉄骨造の戸建てが643件取引されています(同じ条件の木造は5,407件)。築40年を超えた軽量鉄骨の家が、いまも値段が付いて動いている、ということです。

この643件は「築41年以上でも住める」の証明ではありません。土地の値段だけで動いた古家付きの取引も、この区分に入ります。ここで言えるのは「築41年を超えた軽量鉄骨の家が売買されている」ところまでです。

中古で買うとき、軽量鉄骨造は木造より1m²あたり39.5%高い

値段の話に移ります。総額のまま構造別に平均すると、土地の広さの差を構造の差と読み違えます。そこで敷地140〜200m²・延床90〜130m²・前面道路の幅員4m以上に条件をそろえ、延床1m²あたりの単価で、同じ市区町村の中の軽量鉄骨造と木造を比べました。

築0〜10年の結果は、こうです。軽量鉄骨造1,739件・木造23,375件。両方が10件以上そろった43市区町村で、軽量鉄骨造の単価は木造の1.395倍でした。43市区町村すべてで軽量鉄骨造のほうが高いという結果です。例外はありません。

築浅の軽量鉄骨が高いこと自体は、業界の解説と一致します。中古の軽量鉄骨を紹介する解説記事には、こう書かれています。

「短期的な評価では、軽量鉄骨造は木造住宅と比較して、建てた後の資産価値が評価されやすく、中古住宅として販売する際に高い価格がつく傾向があります」

「短期的な評価では」というただし書きまで含めて、ここは実際の取引と合っています。合っていないのは2つです。ひとつは、この文に金額が1円も付いていないこと。「高い価格がつく傾向」が何%なのか、それが築何年まで続くのかは書かれていません。

もうひとつは、その理由として続けて書かれている一文のほうです。

「これは、法定耐用年数が木造の22年に対し、軽量鉄骨造が19~27年と長く設定されており、税法上の減価償却が緩やかであるため、課税評価額が下がりにくいことに起因します」

19年は、22年より短いのです。この記事の最初に引いた別表第一のとおりで、「19〜27年」という幅の下端は木造を下回っています。それを「長く設定されており」と書いてある。資産価値が落ちにくい理由として持ち出された数字が、条文を見ると逆になっているということです。次の節が、その続きです。

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築31〜40年まで来たとき、残っていたのは軽量鉄骨造29.0%・木造33.6%

同じ条件で、都道府県ごとに「築31〜40年の単価 ÷ 築0〜10年の単価」を出しました。築浅のときの値段のうち、何割が残っているかを見る計算です。各セルに30件以上あるものだけを対象にしています。

結果は、木造が37県で中央値33.6%。軽量鉄骨造は8県しか成立せず、中央値29.0%でした。8県の内訳は次のとおりです。

都道府県 軽量鉄骨造の残存率 木造の残存率 軽量鉄骨の件数
(築0-10/築31-40)
木造の件数
(築0-10/築31-40)
滋賀県 21.4% 36.9% 30/44 427/107
静岡県 25.1% 32.9% 166/32 919/185
大阪府 28.5% 29.8% 49/39 630/122
兵庫県 28.9% 33.0% 70/36 939/202
埼玉県 29.2% 31.7% 75/33 1,873/319
千葉県 29.4% 28.6% 101/46 2,155/569
愛知県 40.0% 37.9% 265/47 2,385/181
神奈川県 44.3% 48.2% 40/46 1,605/294

色を付けた2行(千葉県・愛知県)だけ、軽量鉄骨造のほうが残存率が高い。残り6県は木造のほうが高い。

並べると、軽量鉄骨造のほうが値落ちが大きかったのが6県、木造のほうが大きかったのが2県です。開きがいちばん大きいのは滋賀県で、木造36.9%に対して軽量鉄骨造21.4%でした。

⚠️ これは8県の話で、全国の話ではありません。軽量鉄骨造は取引の件数がもともと少なく、都道府県まで割って各セル30件以上という条件を満たしたのが8県しかありませんでした。市区町村まで割ると、築11〜20年は該当0市区町村、築21〜30年と築31〜40年は各1市区町村しか成立していません。築0〜10年以外の市区町村単位の比較は、この記事では代表値として使っていません。

⚠️ 省令の3区分(19年・27年・34年)と、取引データの「軽量鉄骨造」は1対1で対応しません。取引データに記録されているのは「軽量鉄骨造」「鉄骨造」という区分までで、骨格材の厚みは入っていません。この表の残存率を「19年の家の値落ち」と読むことはできません。条文の話と価格の話は、別々に読んでください。

青空の下に建つ2階建ての一戸建て住宅
同じ大きさの家でも、新築のときの値段は構造で4割ちがいます(写真: Unsplash)

高く買った側が、同じか、それ以上に落ちている

2つの結果を並べます。築0〜10年では軽量鉄骨造が木造より39.5%高い。築31〜40年まで来ると、残っている割合は8県中6県で軽量鉄骨造のほうが小さい。

ひとつ、この数え方の弱いところを先に書いておきます。条件をそろえた木造の取引は築年数の中央値が2年で、築0〜10年の帯には新築の建売が大量に入っています。つまり木造側の「築浅の値段」は高めに出やすく、木造の残存率は本来より低く出る側に傾いています。それでも、木造のほうが残っていました。

じゃあ軽量鉄骨は、買ってはいけないということですか。
おかあさん
そこまでは言えません。8県ぶんの結果ですし、住み心地や間取りの話も入っていません。言えるのは「鉄骨だから値落ちしにくい」という前提で高いほうを選ぶ理由が、この数字からは出てこないということです。

私は、この記事の数字から言えるのは「構造で値落ちの速さが決まる、とは確かめられなかった」ところまでだと考えています。8県では足りませんし、同じ家を追いかけた記録でもありません。ただ、業界の解説が根拠にしているのは法定耐用年数の長短だけで、成約価格を数えた形跡はどこにもありませんでした。数えていない主張と、8県ぶんでも数えた結果を並べたら、後者のほうがまだ確からしいというのが、私の立場です。

この「築年で交絡する」落とし穴は、構造の話に限りません。前面道路の狭い家が安く見える理由を同じやり方でほどいたのが再建築不可の家は本当に二束三文?です。あちらは道の幅、こちらは構造ですが、値段を動かしていたものの見つけ方は同じです。

骨格材が何mmかを、買う人が確かめる手立ては用意されていません

ここが、この記事でいちばん正直に書かないといけないところです。

19年か、27年か、34年か。分かれ目は柱や梁に使っている鋼材の厚みで、この3mmと4mmの線をまたぐかどうかで15年の差が付きます。ところが、中古を買う人がその厚みを確かめる方法は、確立した手順として存在しません

この記事では、その手順を書きません。「検査済証を見れば分かります」「構造図を取り寄せてください」と書いている解説はありますが、当サイトでは一次情報での裏取りが済んでいないからです。確かめずに手順を書くと、読んだ人が役所や不動産会社で空振りします。

裏が取れている事実だけ書きます。国が公開している不動産の成約価格データにも、骨格材の厚みは入っていません。記録されているのは「軽量鉄骨造」「鉄骨造」という区分までです。国が集めている取引記録ですら、19年・27年・34年のどれかを持っていない、ということになります。

分からないなら、気にしなくていいということですか。
おかあさん
逆です。分からないまま「鉄骨だから27年ぶん長い」と言われたときに、その27年の根拠を売る側が持っているかを聞いてください。答えられないなら、それは条文の中の1行を借りてきただけの説明です。
製図用の鉛筆と定規が置かれた建築の図面
骨格材の厚みは、図面か検査済証まで遡らないと分かりません(写真: Unsplash)

中古の軽量鉄骨を見に行く日に、確かめること

知恵袋に、この記事とちょうど同じ迷いが投稿されています。2013年の投稿です。

「木造住宅と軽量鉄骨住宅では、どちらが家として優れていますか?耐震や湿気等メリット、デメリットを教えて下さい。イメージとしては、長い目で見て増改築しやすい木造かな~と思います。」

ベストアンサーの書き出しは、こうでした。

「木造も鉄骨も、何の社会問題にもならずに、並立している日本なのですから、決定的に劣っている点などなく、際だった違いはないと思います。」

質問した人は「イメージとしては」と書き、答えた人は「際だった違いはない」で締めています。どちらの側にも、数字は1つも出てきません。この記事の役目は、その会話の続きを数字で引き受けることでした。ここから先は、見に行く日に自分で確かめられることだけを書きます。

  1. 築年と、その市区町村の相場。構造より先に、その街で同じ広さの戸建てがいくらで動いているかを見てください。構造の差より街の差のほうが大きく出ます
  2. 「鉄骨だから値が落ちにくい」と言われたら、根拠を聞く。法定耐用年数の話なのか、その地域の成約価格の話なのかで、答えの重さが変わります
  3. 建てられた年と、建築確認を受けた日。耐震の基準は建築確認の日で切り替わるので、登記の年だけでは判断できません
  4. 増築・間取り変更の予定があるなら、先に相談する。軽量鉄骨は工法がメーカーごとに違い、壁を抜けるかどうかがその家の造りで決まります

3番目については、1981年という年の扱いを間違えている説明が今も残っています。詳しくは1981年の家が新耐震とは限りませんにまとめました。築31〜40年の家を見に行くなら、先に読んでおくと質問が変わります。

1番目の「街の差のほうが大きい」は、新築と中古を比べたときにも同じ形で出ています。戸建ては新築と中古どっちが安い?築30年で半額になる街と、9割の値段のままの街がありますで、築30年の戸建てが新築の99%で売れる街と19%の街を並べました。構造を選ぶ前に、街のほうを先に見たほうが金額は動きます。

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よくある質問

Q. 軽量鉄骨の中古住宅は、あと何年住めますか。

A. 国が定めた「住める年数」はありません。木造22年・金属造19〜34年という数字は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令が定めた、税金の計算に使う年数です。実際の取引では、敷地140〜200m²・延床90〜130m²にそろえた条件だけでも、築41年以上の軽量鉄骨造の戸建てが643件動いています。

Q. 軽量鉄骨は木造より耐用年数が長いのではないですか。

A. 区分によります。省令別表第一の住宅用の行は、木造22年、金属造は骨格材の肉厚が4mm超で34年、3mm超4mm以下で27年、3mm以下で19年です。3mm以下の区分は、木造より3年短くなります。

Q. 中古で買うとき、軽量鉄骨は木造よりどれくらい高いですか。

A. 敷地140〜200m²・延床90〜130m²・前面道路の幅員4m以上にそろえて延床1m²あたりで比べると、築0〜10年で軽量鉄骨造は木造の1.395倍でした。両群が10件以上そろった43市区町村すべてで、軽量鉄骨造のほうが高くなっています。

Q. 鉄骨のほうが値落ちしにくい、というのは本当ですか。

A. このデータでは確かめられませんでした。築31〜40年の単価が築0〜10年の何%かを都道府県ごとに出すと、木造は37県で中央値33.6%、軽量鉄骨造は8県で中央値29.0%です。軽量鉄骨造が成立した8県のうち6県で、軽量鉄骨造のほうが値落ちが大きくなっています。ただし8県ぶんの結果で、全国の話ではありません。

Q. 重量鉄骨の家はどうですか。

A. この記事では比べられていません。同じ条件で集計すると、鉄骨造(重量)は市区町村単位でも都道府県単位でも、両群が必要な件数に届いた地域が1つもありませんでした。件数が足りない状態で平均を出しても意味が取れないので、数字を出していません。

この記事の数字の出どころ

  • 法定耐用年数:減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四十年大蔵省令第十五号)別表第一。e-Gov法令検索の条文データから2026年9月2日に取得しました。国税庁の解説ではなく、省令の別表そのものを引いています。省令に「軽量鉄骨」「重量鉄骨」という語はなく、条文の書き方は「金属造のもの/骨格材の肉厚が〇mm」です
  • 成約価格:国土交通省「不動産情報ライブラリ」不動産価格(取引価格・成約価格)情報。2023年1〜3月期〜2026年1〜3月期に公表された全国887,381件を当サイトで集計しました。集計日は2026年9月2日です
  • 抽出条件:種類が「宅地(土地と建物)」で用途に住宅を含むもの、敷地50〜400m²、建築年の分かるもの。該当228,258件(鉄骨系24,058件・木造204,200件)
  • 比較条件:上記からさらに敷地140〜200m²・延床90〜130m²・前面道路の幅員4m以上にそろえ、延床1m²あたりの単価で比較しました。市区町村単位の比較は両群10件以上、都道府県単位の残存率は各セル30件以上のものだけを対象にしています
  • 取引データの構造区分は「軽量鉄骨造」「鉄骨造」までで、骨格材の肉厚は記録されていません。省令の3区分と取引データの区分は対応しません
  • 残存率は、同じ家を追いかけた数字ではありません。2023年から2026年のあいだに売れた「築0〜10年」と「築31〜40年」を、別々の物件として比べたものです
  • 読者の声:Yahoo!知恵袋「木造住宅と軽量鉄骨住宅では、どちらが家として優れていますか?」(2013年10月24日投稿・2026年9月2日に原文を取得して照合)。質問文・回答文とも投稿本文のままで、要約していません
  • 引用した解説記事:あいち市街化調整区域ナビ「軽量鉄骨と木造どっちが得?」(2026年9月2日閲覧・原文を取得して照合)。特定の会社を批判する意図はなく、業界の解説で繰り返し使われている言い回しと、その根拠の立て方の例として引用しました

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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