公立高校と私立高校の学費の差は、3年間で173万6,466円です。文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」で、公立が178万4,895円、私立が352万1,361円でした。
「2026年4月から高校は無償化になったんだから、公立も私立ももう変わらないでしょう」。私立高校の授業料に年45万7,200円まで国が出すようになったので、そう受け取った人は多いと思います。ところが差額を費目まで分解すると、無償化で消えるのは40%だけでした。残りの60%、1年あたり34万8,409円は、制度が変わっても家計に残ります。
この記事でわかること
- ✓ 3年間の差は173万6,466円。公立178万4,895円に対して私立352万1,361円(令和5年度・全日制)
- ✓ 授業料の差は1年あたり23万3,898円で、差全体の40%。残る60%は塾代・学校納付金・入学金・通学費
- ✓ 都道府県の上乗せ支援は要件が別。東京都は都外の高校でも対象、埼玉県は県内の高校だけ
3年間の差は173万6,466円
文部科学省は2年に1度、保護者が実際に支出した額を「子供の学習費調査」として公表しています。最新は令和5年度の調査で、訂正版が令和8年1月16日に出ました。
高等学校(全日制)の3年間の合計は、公立が1,784,895円、私立が3,521,361円。差し引き1,736,466円です。1年あたりに直すと公立596,954円、私立1,179,261円で、私立は公立のちょうど2.0倍になります。
この金額には授業料だけでなく、入学金、制服、定期代、修学旅行の積立、部活動の費用、塾や習い事まで入っています。学校に払ったお金だけではなく、保護者の財布から出ていったお金の合計だと考えてください。
ここに出てくる金額は全国平均です。同じ私立でも学校によって授業料は倍以上ちがいます。

よく見かける「公立154万円・私立316万円」は2年前の数字
高校の学費を調べると、3年間で公立が約154万円、私立が約316万円という数字がよく出てきます。これは令和3年度の調査結果です。
読者
2年くらい古くても、そんなに変わらないのでは?
公立は15.5%、私立は11.5%上がりました。金額でいうと3年間で公立が24万円、私立が36万円ふえています。
令和3年度は公立1,544,900円・私立3,156,929円で、差は161万2,029円でした。令和5年度の差は173万6,466円。2年で12万4,437円ひらいています。
進学先を比べるときに古い数字を使うと、私立の負担を実際より12万円ほど軽く見積もることになります。
無償化で消えるのは、差の40%だけ
2026年4月から、高等学校等就学支援金の所得制限がなくなりました。文部科学省の令和8年度予算資料には、支給上限額が「11万8800円(公立)、45万7200円(私立)」、所得制限は「なし」と書かれています。私立の通信制課程は33万7200円です。予算額も前年度の4,074億円から5,824億円に増えました。
2026年度からは国が4分の3、都道府県が4分の1を負担する形に変わりました。それまでは国が全額を出していました。
では、この45万7,200円で私立の学費はどこまで軽くなるのか。令和5年度の調査で、保護者が実際に払った授業料は私立が279,170円、公立が45,272円でした。差は233,898円です。
1年あたりの差582,307円のうち、授業料の差は233,898円。割合にすると40.2%です。残る348,409円は授業料以外の費目で、就学支援金の対象になりません。

残った34万8,409円でいちばん大きいのは塾代
費目ごとに公立と私立の差を並べると、こうなります。
| 費目(年額) | 公立 | 私立 | 差 |
|---|---|---|---|
| 塾・習い事など | 245,431円 | 346,611円 | +101,180円 |
| 学校納付金等 | 35,630円 | 127,346円 | +91,716円 |
| 入学金等 | 18,027円 | 80,290円 | +62,263円 |
| 通学関係費 | 97,634円 | 136,790円 | +39,156円 |
| 修学旅行費等 | 36,500円 | 62,778円 | +26,278円 |
| 教科外活動費 | 49,499円 | 63,440円 | +13,941円 |
| 図書・学用品・実習材料費等 | 62,284円 | 73,312円 | +11,028円 |
| その他 | 6,677円 | 9,524円 | +2,847円 |
私が見ていていちばん引っかかったのは、2番目の学校納付金等です。施設整備費や教育充実費といった名前で、入学金とは別に毎年かかります。私立は年12万7,346円で、公立の3.6倍。授業料が0円になっても、この欄は請求書に残ります。
大阪府も無償化制度の概要版で「入学金や制服代、修学旅行積立金等は無償化の対象ではありません」と明記しています。授業料以外は、制度の外側にあります。
公立高校でいちばん高い費目は「通学関係費」
私立の学校教育費で最も大きいのは授業料(33.5%)ですが、公立で最も大きいのは通学関係費です。年97,634円で、学校教育費351,523円の27.8%を占めます。定期代と、制服や通学用品の購入費の合計です。
読者
公立を選んだら、いちばんの出費が交通費ということですか。
平均で見るとそうなります。私立はさらに高くて13万6,790円。通学圏が広くなるぶん、定期代が伸びます。
つまり公立を選んだ家庭では、学校に払う費目の最大項目が「家から学校までの距離」で決まっています。高校は小中学校とちがって通学圏が広く、片道1時間の通学もめずらしくありません。住む場所を決める段階でここを見ておくと、3年間で数十万円の差になります。
同じ「無償化」でも、条件は住んでいる都道府県で違う
国の45万7,200円とは別に、都道府県が独自に上乗せしている支援があります。ここが厄介で、同じ制度名でも要件の作りが自治体ごとに違います。
| 都府県 | 住所の要件 | 学校の場所 |
|---|---|---|
| 東京都 授業料軽減助成金 |
保護者等と生徒が令和8年5月1日から申請時まで引き続き都内に住所 | 都外の学校も対象(通信制課程は除く) |
| 大阪府 授業料支援補助金 |
受給する月の1日時点で生徒と保護者全員が府内に在住 | 府教育長が指定する「就学支援推進校」。府が指定する府外の学校も対象 |
| 埼玉県 父母負担軽減事業補助金 |
生徒・保護者がともに県内在住 | 県内の私立高等学校等のみ(世帯収入等の要件あり) |
| 兵庫県 入学金支援 |
保護者等全員が7月1日時点で県内在住 | 7月1日時点で県内の全日制高校・専修学校高等課程に在籍 |
東京都私学財団のページには「★都外の学校も対象になります(通信制課程は除く)。」と書かれています。都民が神奈川や埼玉の私立に通っても、都の授業料軽減助成金(上限 年4万3,800円)は出ます。国の就学支援金と合わせると、最大で年50万1,000円です。
逆向きはそうなりません。埼玉県の父母負担軽減事業補助金は「県内の私立高等学校等に通学する生徒の保護者」が対象なので、埼玉県民が東京の私立に通うと県の補助は出ません。
読者
県境をまたぐと、どっち側に住むかで結論が変わるということですか。
そうです。同じ高校の同じクラスでも、東京側に住んでいる子と埼玉側に住んでいる子で受け取る額が変わります。
Yahoo!知恵袋にも「県境に住んでいるので気になっています」という質問が上がっていました(Yahoo!知恵袋の該当質問)。制度の作りがこうなっている以上、自治体の公式ページを1つずつ読むしかありません。
兵庫県は入学金支援(上限5万円)について「通信制、各種学校(外国人学校含む)、県外の学校にお通いの方、在校生は本支援の対象外です」と案内に書いています。同じ兵庫県でも、授業料以外を支える奨学給付金のほうは県外の私立高校に通う場合も対象で、この場合だけ県に直接オンライン申請する形になります。
引っ越しの時期が、その年の助成を決める
住所の要件には基準日があります。ここを外すと、その年度の1年分が消えます。
東京都は「令和8年5月1日から申請時まで引き続き東京都内に住所を有している方」。5月2日に転入した家庭は、その年度の対象になりません。大阪府は「受給する月の1日時点」で判定するので、月の途中で転入すると翌月分からです。兵庫県の入学金支援と奨学給付金は7月1日時点で見ます。
転勤の内示が3月に出て4月に動く家庭は、たまたま基準日に間に合います。ずれるのは5月以降に動く場合で、同じ引っ越しでも1か月の差で結果が変わります。
基準日も要件も都道府県ごとに違います。ここに書いたのは4都府県の令和8年度の内容なので、他の道県は必ず公式ページで確かめてください。
高校を決める前に確かめる4つ
公立と私立を比べるとき、パンフレットの授業料だけを見ても差は出ません。合格発表の前に、次の4つを学校の募集要項と自治体のページで拾っておくと、3年分の金額が見えます。
- 授業料が年45万7,200円を超えるか。超えた分は自己負担になる
- 授業料とは別の「施設整備費」「教育充実費」が年いくらか。私立の全国平均は12万7,346円
- 自宅から学校までの定期代。全国平均は公立で年9万7,634円、私立で年13万6,790円
- 住んでいる都道府県の上乗せ支援は、県外の学校も対象か。基準日はいつか
4つ目は、志望校が県境の向こう側にある家庭ほど効きます。学校の説明会では聞けないので、都道府県の私学担当か、通う予定の学校の事務室に直接聞くのが早いです。
読者
結局、公立と私立でいくら違うと思っておけばいいですか。
全国平均なら3年間で173万円です。無償化でそのうち授業料の分は軽くなりますが、残りの6割はそのまま残ると考えてください。
まとめ
- 公立と私立の学費の差は3年間で173万6,466円(令和5年度・全日制の全国平均)
- よく引用される「公立154万円・私立316万円」は令和3年度の数字で、差は2年で12万4,437円ひらいた
- 2026年度から所得制限が撤廃され、支給上限は公立11万8,800円・私立45万7,200円
- 無償化で消えるのは差の40.2%。残る1年あたり34万8,409円は塾代・学校納付金・入学金・通学費
- 都道府県の上乗せ支援は、住所の要件も学校の場所の要件も自治体ごとに違う
参考(2026年9月2日確認)
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」調査結果のポイント 訂正版(令和8年1月16日)
文部科学省「高等学校等就学支援金等」令和8年度予算額 事業説明資料
東京都私学財団「私立高等学校等授業料軽減助成金」
大阪府「令和8年度以降の授業料支援制度について」「私立高等学校等の授業料無償化制度について(概要版)」
埼玉県「私立高等学校等父母負担軽減事業補助金」
兵庫県「令和8年就学支援制度のご案内(私立全日制高校向け)」


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