🗨️「「北海道にはゴキブリがいない」と聞いていたけれど、もう違うの?」
札幌の駆除業者への依頼は2021年の年間およそ50件から、2025年は100件を超えました。2026年は9月2日の時点ですでに50件近くです。ただし増えているのは、暖かい家の中で殖える虫だけではありません。屋外で冬を越せるヤマトゴキブリの駆除事例が出ています。
[話題] この記事の要点
2026年9月3日 発表
- 札幌など北海道の都市部で戸建て・マンションに住んでいる人
- これから北海道で家を買う・借りる人
- 本州から北海道へ引っ越す人、通販の荷物を室内に置いている人
北海道でゴキブリ駆除依頼が5年で倍以上に
まず報道に出ている実数です。札幌市厚別区の駆除業者「衛生管理センター駆除屋」が受けた依頼件数を、年で並べます。
| 年 | ゴキブリの駆除依頼 | 2021年との比 |
|---|---|---|
| 2021年 | 年間およそ50件 | — |
| 2025年 | 100件超 | 倍以上 |
| 2026年 | 9月2日時点で50件近く | 1年ぶん残して2021年に並ぶ |
同社の向井孝義社長は、取材にこう答えています。
「北海道でも、みなさんご存じのあの黒い虫の駆除件数が増えていて、2026年に入り、すでに50件近くの駆除依頼が来ています」
売り場の数字も同じ向きを指しています。ホームセンターのジョイフルエーケー屯田店の広地和弘さんは「今年は気候が穏やかで、ハエやアリなどの殺虫剤は売れていないが、ゴキブリ関連だけは前年比で107%に増加している」と話しています。ハエとアリの殺虫剤が売れていない年に、ゴキブリ関連だけが前年を超えている。ここが「今年はたまたま虫が多い」で説明しきれないところです。
報じたのは1社だけではありません。北海道新聞は2026年7月の時点で、札幌市中央区や西区などの住宅でゴキブリが増えているとして、駆除業者が注意を呼びかけていると伝えています。
札幌の住宅でゴキブリ増加?中央区や西区などで 駆除業者ら注意呼び掛け:北海道新聞デジタル
— 北海道新聞🖋️ (@doshinweb) 2026年7月23日
▼記事はこちらhttps://t.co/MBqb7mSU7s
なぜ北海道でゴキブリが増えている?
結局、温暖化ということですか?
取材で駆除業者が挙げた理由は、気温の変化とネット通販の2つです。そこに専門家が「屋内の保温環境の向上」を足しています。3つを分けて見ていきます。
1.北海道の気温が高くなっている
気象庁が札幌で観測してきた気温を、期間ごとの平均にしました。観測は1876年からで、2026年は年の途中なので外してあります。
| 札幌の気温 | 1876〜1900年 | 1961〜1990年 | 2016〜2025年 |
|---|---|---|---|
| 年平均気温 | 7.0℃ | 8.2℃ | 10.1℃ |
| 1月の平均気温 | −6.2℃ | −4.6℃ | −3.0℃ |
| その年いちばん低かった気温 | −21.9℃ | −15.6℃ | −12.0℃ |
年平均気温は150年で3.1℃上がっています。2023年と2025年はどちらも11.0℃で、1876年の観測開始以降で最も高い年でした。冬の底も上がっていて、その年いちばん低かった気温の平均は、明治の−21.9℃から−12.0℃へ約10℃ゆるんでいます。2025年は−8.6℃までしか下がらず、これは観測開始からの150年で最も高い記録です。
ただし、この表はもう1つのことも示しています。10℃ゆるんでも、札幌の1月はまだ平均−3.0℃です。ゴキブリが屋外で普通に冬を越せる気温にはなっていません。「暖かくなったから外で越冬できるようになった」で片づけると、話が1段飛びます。ここが後半の「ヤマトゴキブリ」につながります。

2.高断熱・高気密住宅で冬でも室内が暖かい
北海道の住宅は、寒さに合わせて断熱と気密を上げてきました。札幌市には市独自の「札幌版次世代住宅基準」があり、家全体の熱の逃げやすさを表す数値(外皮平均熱貫流率。小さいほど熱が逃げない)で等級が決まっています。
| 札幌版次世代住宅基準 | 熱の逃げやすさ | 国の断熱等性能等級での位置 |
|---|---|---|
| プラチナ | 0.18以下 | — |
| ゴールド | 0.20以下 | 等級7または等級6・誘導基準に対応 |
| シルバー | 0.28以下 | 等級6に対応 |
| ブロンズ | 0.40以下 | 等級5または誘導基準に対応 |
いちばん下のブロンズでも、国の等級でいえば上から3番目にあたります。外が氷点下でも室内の温度が保てるということで、これは住む人にとって省エネと健康の両面で得しかありません。
問題は、その暖かさが虫にとっても同じだということです。札幌市が住まいの害虫として案内しているチャバネゴキブリのページには、生息場所が「ガス台の下、台所や冷蔵庫、食器棚の裏、引き出しの中など、温度が高く、暗い、狭いすき間」と書かれています。外の寒さは、この場所には届きません。
じゃあ、家の断熱を上げたせいで増えたということ?
そこは断定できません。理由が3つあります。
1つめ。断熱の効いた建物でゴキブリが見られること自体は、新しい話ではありません。害虫対策のブランド担当者は2019年の取材で「1991年の報告ですでに、札幌などの断熱効果が高い建物の一部(飲食店・商業施設など)ではチャバネゴキブリが見られていると報告されています」と述べています。35年前から知られていたことが、2026年に件数が倍になった理由にはなりません。
2つめ。その1991年の報告が指しているのは飲食店や商業施設で、住宅ではありません。
3つめが決定的です。今回の報道で専門家が挙げた対策の1番目は「建物の気密性を高くする」でした。気密は原因の側ではなく、対策の側に置かれています。「高気密だから入られる」と書くと、現場の説明と逆になります。

3.ネット通販の段ボールが「北海道への移動手段」に
向井社長が挙げたもう1つの理由がこれです。「ネット通販の普及で荷物に卵を付けたり、潜んだりして移動しやすくなった」。北海道は本州と陸続きではないので、虫が自分の足で北上してくるには海があります。そこを荷物が越えさせている、という見方です。
特定の通販会社の話ではありません。段ボールは輸送と保管の途中でいくらでも積み替えられますし、波形の中は暗くて狭く、温度も保たれます。札幌市の案内も、まず環境改善と侵入防止を挙げています。届いた箱をその日のうちにたたむだけで、置き場所ごと消えます。
北海道で増えている「ヤマトゴキブリ」とは?
ここが今回のニュースの芯です。向井社長は種類の変化をこう説明しています。「基本はチャバネが多かったが、最近の駆除で、今まで見なかったヤマトが出た」。
北海道大学で昆虫生理学を研究する西野浩史助教は共同通信の取材に、道内で一般的なのはヤマトゴキブリ・クロゴキブリ・チャバネゴキブリの3種で、寒さに強いヤマトゴキブリは100年以上前から一部に定着していたと説明しています。
| 種類 | 見た目 | どこにいるか |
|---|---|---|
| チャバネ | 体が小さく赤茶色 | 台所・冷蔵庫や食器棚の裏など、暖かく暗い屋内のすき間 |
| クロ | 体長3cmを超え、黒光りした羽 | 屋内。ビルや商業施設などで確認されてきた |
| ヤマト | 中くらいの大きさ | 樹木に生息して樹液を餌にする。北海道でも屋外で越冬できる |
北海道ペストコントロール協会の高橋健一学術顧問は、ヤマトゴキブリについて「樹木に生息して樹液を餌とする。寒さに強く、北海道でも屋外で越冬できる」と説明しています。あわせて「ヤマトも明かりに寄って来る」とも述べています。
屋外で越冬できるなら、家の暖かさは関係ないのでは?
そのとおりです。だから北海道の住まいでは、いま2つの系統を分けて考えることになります。
1つは、暖房の効いた屋内で殖える系統(チャバネ)。ここに効くのは、清掃と食品の管理、家電の裏の点検です。もう1つは、屋外で冬を越して外から入ってくる系統(ヤマト)。こちらには清掃が効きません。効くのは、入り口をふさぐことと、夜に明かりをもらさないことだけです。
「北海道は寒いから、いても暖かい建物の中だけ」という説明は、後者にあてはまりません。前提が1段ずれた、というのが今回のニュースの中身です。

「北海道だからゴキブリ対策はいらない」は危険
高橋学術顧問が挙げた対策は「建物の気密性を高くする。網戸と窓枠にすき間をつくらない。ヤマトも明かりに寄って来る。夜間はカーテンなどで明かりをもらさない」でした。札幌市の案内(環境改善・侵入防止)と合わせると、家で見る場所は次の9か所になります。
- 網戸の破れと、網戸と窓枠のすき間
- 窓を開けたときのサッシの重なり部分
- 玄関ドアの下と、郵便受けの内側
- エアコンの配管が壁を抜けている場所のパテ
- 換気口・換気扇のフード
- 台所と洗面台の下、排水管が床を抜けている場所
- 冷蔵庫・食洗機・電子レンジの裏(暖かく暗いすき間になります)
- 生ごみの置き方(ふた付きの容器に入れる)
- 届いた段ボールの置き場所
順番があります。屋外から来る種類には上の5つ、屋内で殖える種類には下の4つが効きます。どちらが出たか分からないうちは、上から順に見ていくのが早いです。
もう1つ。1匹見つけたからといって、家のどこかに大量にいるとはかぎりません。屋外性のヤマトゴキブリは樹木で暮らしていて、明かりに引かれて入ってきます。1匹だけ入ってきて出口が分からなくなっている、という筋のほうがむしろ普通です。慌てて家じゅうに薬剤をまく前に、その1匹がどこから入ったのかを先に探してください。
逆に、台所まわりで小さくて赤茶色の個体を続けて見たときは、屋内で殖えている可能性のほうを先に見ます。札幌市の保健所と各区の保健センターは、虫の対処方法や駆除方法の相談を受け付けています。

住宅性能が上がったからこそ「侵入させない」が重要に
北海道の住宅が高断熱・高気密になったことは、それ自体が大きな成果です。冬の室温が保てて、暖房費が下がり、家の中の温度差による健康リスクも減ります。ここを後戻りさせる理由はどこにもありません。
ただ、私はこの数字の並びを、北海道の住まいの前提が1つ外れた合図だと見ています。これまで北海道の家は、「外が寒いから虫は入ってこない」という無料の防御を借りて建っていました。冬の底が10℃ゆるみ、屋外で越冬できる種類が住宅地で見つかるようになると、その借り物の防御は薄くなります。減った分は、家の側で持つしかありません。
持ち方は難しくありません。網戸の張り替え、サッシの調整、配管まわりのパテの打ち直し、夜のカーテン。どれも数千円から数万円で、断熱や気密の性能とも喧嘩しません。むしろ、すき間をふさぐ作業は気密を上げる作業とほとんど同じです。専門家が対策の1番目に「建物の気密性を高くする」を置いたのは、そういうことだと考えています。
「北海道にはゴキブリがいない」。この言い方は、もともと正確ではありませんでした。西野助教は、絶対数が少なく、夜行性で人目につかず、どういう虫か十分に認知されていなかったためだと分析しています。いなかったのではなく、見えていなかった。その見えなかったものが、住宅地で見えるところまで出てきたのが2026年です。
生活・仕事にどう効くか
- 家の中:これまで札幌市が住まいの害虫として案内してきたのは、台所まわりに群れるチャバネゴキブリでした。今回はそこに、屋外から入ってくる種類が加わっています。見る場所が「冷蔵庫の裏」だけでなく「窓と玄関」に広がります。
- 住まい選び:断熱と気密が上がった家は、冬の室温が保てるぶん、いったん入られると外の寒さでは減りません。内見のときに網戸の有無と窓枠の建て付けを見る意味が出てきます。
- 通販の荷物:駆除業者は増えた理由の1つに、荷物に卵が付いて運ばれることを挙げています。段ボールを玄関や室内にためない運用が、そのまま対策になります。
結局どうすればよいか
- 網戸と窓枠、玄関まわり、エアコンの配管の通り道、換気口を1周見て、すき間が空いていないか確認する
- 夜はカーテンを閉めて、室内の明かりを外へもらさない(屋外から来る種類は明かりに寄ってきます)
- 届いた段ボールはその日のうちにたたんで室内にためない。生ごみはふた付きの容器に入れる
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公式出典
- 北海道文化放送/FNNプライムオンライン「『すでに50件近くの駆除依頼が来ています』北海道で増える“あの虫” 相次ぐ駆除の依頼は過去5年で倍以上に」(2026年9月2日発表)
- 共同通信「北海道にゴキブリいない? 住環境向上で増加指摘」(熊本日日新聞掲載)(2026年9月3日発表)
- 気象庁 過去の気象データ検索「札幌 年ごとの値」(2026年9月3日発表)
- 気象庁 過去の気象データ検索「札幌 月ごとの値」(2026年9月3日発表)
- 札幌市「札幌版次世代住宅基準」(2026年4月10日発表)
- 札幌市保健所「チャバネゴキブリ」(2022年12月22日発表)
- 札幌市保健所「家庭での対処方法・駆除方法」(2025年3月31日発表)
更新履歴
- 2026年9月3日 初版を公開
※本記事は2026年9月3日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。


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