実家の学区の小学校には、住民票を実家に移さなくても通う道があります。ただし神戸市の規則でその道が開くのは放課後にそこで子どもを見てくれる人がいるときで、近いことを理由にすると、神戸で近い小学校がある526町丁のうち324町丁は、その学校を選べません。
そしてどちらの道を通っても、中学に上がる日には自宅の学区の中学校へ戻ります。6年間の友だちと別れる日が、入学の前から決まっているということです。
この記事でわかること
- ✓ 住民票は移さない。神戸市は、下校後に見てくれる人が別の校区にいるという家庭の事情で、卒業まで指定の小学校を変えられる
- ✓ 中学は住所の中学校へ戻る。近い小学校に通うと、6割の町で同級生と別の中学になる
- ✓ 手続きは入学前年の10月以降。指定の小学校の校長、希望する小学校の校長、区役所の市民課の順
実家の学区の小学校に通わせたいという横浜の母親の相談
2020年6月、Yahoo!知恵袋に、幼稚園児を育てる横浜市の母親から相談が出ています。
子供を実家学区の小学校に通わせたいのですが、住民票を移さずにするのは難しいのでしょうか。
実家は自宅から大人の足で5分。学区は違います。実家の学区の小学校は徒歩15分で、自宅の学区の小学校は徒歩30分。いまは在宅で自営の仕事をしていますが、子どもが小学校に上がったら外へ出る仕事を増やしたい。そうなると放課後は実家で過ごすことになります。
自宅学区の小学校から実家は子供の足だと40分くらいになるため、越境入学をしたいのですが、これらの理由での越境は認められないのでしょうか。
回答は5件つきました。いちばん早かった回答は、制度の名前を挙げてこう答えています。
実家に子供が帰宅するなら、留守家庭制度が使えます。
読者
住民票を実家に移してしまえば、話は早いのでは
それは神戸市が「法令違反」とはっきり書いている方法です。入学後に家庭訪問でわかれば、住所の学校へ転校になります。
住民票だけを動かす方法の扱いは、学区外の中学に住民票だけ移して通う話に詳しく書きました。この記事では、住民票を動かさずに正面から通る道を見ていきます。
神戸市の規則にある「監督者がおらず」の1行
神戸市には「神戸市学齢児童及び学齢生徒の就学に関する規則」があり、その別表第2に、指定の学校以外へ通ってよい理由が7つの区分で並んでいます。回答者のいう留守家庭制度にあたるのは、4番目の「家庭の事情による理由」の最初の行です。
児童が、登校前又は下校後に指定学校の区域内に監督者がおらず、他の校区内では十分な保護監督を受けうる場合
期間は「卒業まで」です。相談者の家に当てはめると、下校後に自宅の学区には見てくれる大人がおらず、実家のある校区なら祖父母が見てくれる、という形になります。
この行には、距離の条件がありません。自宅から2km離れていなくても、実家の学区の学校が遠回りの位置にあっても、問われるのは見てくれる人がどこにいるかだけです。
市の案内PDFを見ると、出す書類は保護者の勤務時間などがわかるものです。例として自営の店舗がある校区の小学校に通う場合が挙がっています。そのうえで、児童の状況確認のために指定学校との定期的な面談が必要になる場合がある、と注意書きが付いています。
規則の第9条には、変更の理由に「変動があった場合」は期間などを変えられるという定めもあります。祖父母が入院するなどして見てくれる人がいなくなれば、卒業までという期間が見直される余地があるということです。

「近いから」だと、小学校は同じ中学校区の中だけ
相談者が最初に挙げた理由は距離でした。徒歩15分と徒歩30分。これは規則の中では、5番目の「通学の利便性による理由」にあたります。距離の基準はこうです。
指定学校までの通学距離が、小学校で片道2km以上、中学校で片道3km以上で、指定学校より隣接学校への通学の負担が少ない場合
徒歩30分を不動産広告の換算(1分80m)に直すと2.4kmで、2kmの線は越えそうに見えます。見落とされやすいのは、「隣接学校」に付いている括弧書きのほうです。2026年4月1日施行の規則本文には、こう書かれています。
原則として、住所地に最も近い学校とする。ただし、小学校は同じ中学校区内の学校に限る
距離を理由にしたときに行けるのは、同じ中学に進む小学校だけということです。市が配っている2025年9月版の案内PDFでは、この括弧が「住所地に最も近い学校とする。」で閉じていて、ただし書きが載っていません。案内だけを読んで窓口へ行くと、ここで話が食い違います。
読者
実家の学区の小学校が、うちと違う中学に進む学校だったら
距離の理由では通れません。通れるとしたら、放課後の見守りのほうの理由だけです。
神戸の526町丁で数えた。近い小学校の61.6%は別の中学へ進む
では、その「違う中学に進む学校」はどれくらいあるのか。神戸市の校区一覧と、国が公開している町丁の位置データ、学校の位置データを突き合わせて数えました。
指定の小学校が1校に決まっている神戸市の町丁は2,546。そのうち、指定の小学校より近い別の小学校がある町丁が526ありました。その近い小学校の進学先に、その町の指定中学が入っているかを1つずつ調べています。

526町丁のうち324町丁、61.6%で、近い小学校は別の中学に進む学校でした。区ごとでは兵庫区が57町丁のうち85%、中央区が76%と高く、垂水区・北区・西区は3割台です。
たとえば中央区加納町一丁目は、指定のこうべ小学校まで直線で1,738m、雲中小学校なら431mです。ところが校区一覧で雲中小の進学先は葺合中学校で、加納町一丁目の指定中学は神戸生田中学校です。この町の子が雲中小に通えば、中学に上がる日に6年間の同級生と別の門をくぐることになります。
距離は町丁の代表点からの直線で、通学路の道のりではありません。「近い小学校」は祖父母の家の場所ではなく、自宅から見た近さで数えています。
中学に上がる日、住所の中学に戻る
見守りの理由で実家の学区の小学校に通えても、その変更は中学まで持ち越せません。市の案内PDFは、問3でこう答えています。
指定学校の変更により、他の中学校区の小学校への就学が認められている場合でも、中学校に進学する際には、住所地を校区と定める中学校へ就学していただくことになります。
知恵袋の回答の中にも、ちょうどその道をたどった家の話がありました。学区の小学校の治安が心配で国立の附属小を受けたものの抽選で落ち、越境して別の区の小学校へ通わせた友人の子どもです。
最終的に治安は杞憂だと気づき、中学からは学区中に通っていました。
読者
下の子も同じ小学校に入れますか
兄弟姉妹の特例はあります。ただ神戸の案内では、上の子がその学校に在学しているあいだに限られます。6歳差なら使えません。
上の子が卒業したあとに入学する下の子は、兄弟の特例ではなく、もう一度見守りの理由で申し出ることになります。そのとき祖父母がまだ見てくれる年齢かどうかで、答えが変わります。
手続きは入学前年の10月から。窓口は3か所
相談者は「学校に問い合わせるのか、区役所に問い合わせるのか」で迷っていました。神戸市の場合、答えは両方です。順番が決まっています。
- 住民登録のある住所の指定学校の校長に相談し、承諾を得る
- 通いたい学校の校長に相談し、承諾を得る
- 住民登録のある区役所・支所の市民課で、指定学校変更を申し出る
時期は、翌年4月に1年生になる子なら10月以降です。2025年9月版の案内では、2026年4月の新1年生の受付を「10月下旬~12月」としていました。
断られる場合も規則に書いてあります。通学に支障があるとき、そして受け入れ先の学校の教室や児童数に余裕がないときです。実家の学区の小学校が人気校なら、理由が通っても受け入れで止まることがあります。

横浜市の場合も、もとの回答者が引いた基準が今も同じページにあります。ただ文言は変わっていて、いまはこうです。
保護者の勤務等の関係で帰宅後監護者がいないため、放課後児童クラブ(放課後キッズクラブは除く)、自営店舗など下校後に生活する区域の学校に通学を希望する場合
2020年に回答者が引用したときは「共働き等で」でした。放課後キッズクラブを除く、という括弧も今の版で入っています。横浜市の窓口は区役所の戸籍課登録担当です。
私はこう見ています
私は、この制度を「近い学校を選べる制度」と読むと失敗すると見ています。規則が認めているのは、放課後の見守りを祖父母に頼む家の事情であって、学校までの近さではありません。窓口で「近いから」と切り出すと、同じ中学校区かどうかの話に入ってしまいます。
相談者が本当に言いたかったのも、たぶん距離ではなかったと思います。自宅の学区の学校から実家まで子どもの足で40分、というくだりがそれです。復職したら、下校後の子どもを実家に預けたい。その事情をそのまま書類にすれば、規則の4番目の行にそのまま乗ります。
もう1つ、中学で戻ることは入学前に子どもと共有しておくほうがいいと考えます。6年間を実家の学区で過ごした子にとって、住所の中学は知らない顔ばかりの学校です。小学校の6年と中学の3年を、別々の地図で考えておくこと。そこまで決めてから申し出れば、途中で迷わずに済みます。
まとめ
- 実家の学区の小学校には、住民票を移さずに通う道がある。神戸市では規則の別表第2 4(1)=下校後に見てくれる人が別の校区にいる場合で、期間は卒業まで
- 「近いから」を理由にすると、片道2km以上で、しかも同じ中学校区の小学校に限られる
- 神戸で近い小学校がある526町丁のうち324町丁(61.6%)は、その学校が別の中学に進む
- どの道でも中学は住所の中学校へ戻る。兄弟の特例は上の子が在学中のときだけ
- 手続きは指定の小学校の校長、希望の小学校の校長、区役所の市民課の順で、入学前年の10月以降
出典
- 神戸市「神戸市学齢児童及び学齢生徒の就学に関する規則」(令和8年4月1日施行)第9条・別表第2
- 神戸市教育委員会「指定学校の変更手続きについて(ご案内)」(PDF・2025年9月版)別表・問3・問7
- 神戸市「指定学校の変更・区域外就学」(2026年4月1日更新)
- 横浜市「指定地区外就学制度のご案内」(2021年10月25日更新)
- 当サイト集計:神戸市立小・中学校区一覧(2025年12月時点)、国土交通省「位置参照情報」大字・町丁目レベル(令和7年版)、国土数値情報「学校」(令和5年度)。指定の小学校が1校に決まる2,546町丁のうち、より近い別の小学校がある526町丁を対象に直線距離で比較
- 引用した相談は Yahoo!知恵袋「子供を実家学区の小学校に通わせたいのですが、住民票を移さずにするのは難しいのでしょうか。」(2020年6月5日・回答5件)
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