「2016年に被害が集中した町は、対策をしたから2026年は無事だった」とは、まだ言い切れません。
令和8年熊本地震(2026年7月28日、マグニチュード7.1、最大震度7)で、熊本市南区の近見(ちかみ)は、調査速報に「今回調査した範囲では、液状化は確認されなかった」と書かれました。2016年に被害が集中し、2026年3月に地下水位を下げる対策が終わった町です。砂が噴いた跡は、近見の外でも見つかっています。南区の富合町杉島、嘉島町の鯰(なまず)、八代市の埋立地と旧河道です。
液状化で傾いた家が何軒あったかは、内閣府の被害状況と熊本県・熊本市の会議資料を読んだ範囲では出てきません。熊本県の住家被害は、内閣府の2026年10月5日12時現在で全壊2,408棟、半壊7,802棟で、液状化の分は分けられていません。
この記事の情報は2026年10月9日時点です。住家被害の棟数は速報で、今後も変わります。
2026年に確認された場所
国土地理院の災害対応ページには、液状化の発生地点の地図が見当たりません。地震直後に計算で推定されたのは、起こりうる地域の面積(約630平方キロメートル)で、噴砂(地面から砂が噴き出した跡)が出た場所ではありません。発生地点の総数も、読んだ資料には出ていません。
| 場所 | 確認された内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 熊本市南区 富合町杉島(国道3号 杉島交差点付近) | 河道沿いで噴砂の痕跡。2016年にも2026年にも液状化が確認され、2026年の噴砂量は2016年より少ない。護岸の一部に若干のはらみ出し。市の資料は「埋立地が多いため液状化で泥土が噴出している箇所がある」 | 土木学会速報/熊本市 |
| 熊本市南区 富合町・川尻 | 旧河道(昔の川筋)にある地区。噴砂が確認され、水路にほぼ平行な亀裂が道路・公園・更地・宅地の一部に入った。護岸にも変状。2016年にも液状化 | 福岡大 |
| 熊本市南区 城南中学校周辺 | 噴砂を確認。外観上、建物被害は確認されない。市の資料に「城南中学校グラウンド 液状化」 | 福岡大/熊本市 |
| 熊本市南区 八幡団地周辺 | 団地内と、道路を挟んだ墓地で噴砂。団地内では多量の噴砂の痕跡。2016年にも液状化した場所で、噴砂の量は前回より少ない印象(過去のデータとの照合が必要) | 福岡大 |
| 嘉島町 鯰 | 噴砂を複数個所で確認。外観上、建物被害は確認されない | 福岡大 |
| 甲佐町 芝原(液状化対策区域) | 2016年は砂礫採掘跡地の造成宅地で液状化。2026年は住宅地南側と側溝付近、周辺農地で噴砂の痕跡。団地中央部では確認されず。対策区域内の一部で噴砂があり、目視では建物被害を確認できず | 土木学会速報/福岡大 |
| 熊本市東区 秋津町秋田(対策区域) | 対策区域内の1か所で、埋設管の周りから噴砂。埋め戻し材が液状化した可能性。区域内では建物を含む液状化の被害は確認されず。区域の外では護岸に損傷・変状 | 福岡大 |
| 緑川右岸 8.2〜9.8キロ | 堤内・堤外で噴砂。堤防道路の変状は2016年より軽微 | 土木学会速報 |
| 八代市 新港町 | 1960年代以降に造成された八代港の埋立地。多数の噴砂の痕跡が、主に電柱付近で、30ミリほどの礫が混じる場所も。歩道や側溝に、液状化に伴うとみられる突き上げ | 土木学会速報 |
| 八代市 田中北町〜田中東町 | 旧河道の周辺で噴砂の痕跡。木造住宅の顕著な沈下は確認されず、集合住宅で周辺地盤に対してわずかな抜け上がり | 土木学会速報 |
| 八代市 渡町(球磨川左岸 8.0〜9.0キロ) | 断層変位に伴う堤防の亀裂の延長上で、河床の砂礫に似た噴砂・噴礫 | 土木学会速報 |
| 八代港 | 公共岸壁すべてが被災し、岸壁背後に段差・液状化・陥没。複数の施設で岸壁の直背後などに噴砂、ふ頭用地では大規模な噴砂 | 内閣府/整備局 |
| 水俣港 エコパーク水俣 | 液状化が発生し、立入禁止にして応急対策が完了(8月5日の会議資料)。緑地や臨港道路にも起伏・液状化・亀裂 | 県/整備局 |
表は、手元の速報と会議資料から拾った主な場所です。県・市の会議資料には、ほかにも県営八代運動公園の陸上競技場(液状化)、熊本甲佐総合運動公園の園路(噴砂)、熊本市の御幸地域の農道(噴砂)などの記載があります。載っていない町が無事だった、という意味ではありません。
杉島、八幡団地、川尻、鯰は、2016年にも噴砂が出た町です。繰り返した所と、近見のように確認されなかった所が混じっています。福岡大学の空中写真の判読では、噴砂の跡は旧河道・自然堤防(川沿いの細い高まり)・後背湿地(その背後の低湿地)の一部にあり、加勢川と木山川の周辺から南に多く分布していました。
八代では、地盤工学会九州支部の報告会資料が、「八代市における液状化被害は、1953年~1967年に実施された干拓域において集中していたことが確認された」と書き、年代の浅い干拓地・埋立地で目立ったとまとめています。福岡大の資料は、干拓地には比較的少ない傾向があるかもしれないと書き、見方は揃っていません。
揺れた瞬間に、部屋の中で起きることを減らすもの
地震のけがの3〜5割は、屋内の家具類の転倒・落下・移動によるものです(東京消防庁)。壁にネジを打てない部屋でもできる手から並べます。
東京消防庁の実験では、L型金具で壁に直接ネジ止めするのが最も効果が高いとされています。賃貸で壁に穴を開けられない部屋での代わりがこれです。家具の両端の側板部を、できるだけ奥で突っ張ります。天井側にも強度が要ります。
突っ張り棒だけだと効きが落ちます。同じ資料が、ポール式にはストッパー式や粘着マット式の併用をすすめています。マット単独でも効果は小さいので、上の棒と2つで1組と考えてください。
お湯でも水でも作れて、袋のままおにぎりの形になります。断水すると鍋も食器も洗えません。洗い物の出ない形を先に入れておくと、水の減り方が変わります。
飲料水は1人1日3L。4人家族の1週間分で84L=2Lボトル42本なので、6本入りだと7ケースぶんです。5年保存タイプなら入れ替えの手間が減ります。
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近見の2016年被害と対策後の結果
2016年の熊本地震で、熊本市は液状化とみられる宅地の被害を約2,900戸と推定しています。市自身が、この数は「調査の結果液状化被害と異なる可能性あり」と付けた推定値です。
熊本市南部は、防災科学技術研究所(防災科研)が「多数の水路が網の目状に流れており、低湿な水郷地帯」と書く場所です。市の資料は、近見で液状化被害が出た場所を自然堤防、出なかった場所を氾濫原平野と区分しています。同じ近見の中でも、被害は地盤の成り立ちで分かれました。近見で液状化した範囲は、明治の地形図で街道沿いに水路と並行していました(熊本市の資料)。液状化が起きる条件そのものは液状化とはへ。
噴砂が見えなくても被害は出ます。市の資料には「噴砂が確認できなくても、液状化被害と見られる建物周りの沈下被害が見受けられた」とあります。2026年の南区の白藤団地でも、噴砂は確認されないまま建物周りに沈下がありましたが、福岡大は原因を液状化とは書かず、「構造物の揺れの違いが建物周りの被害の要因が大きいと思われる。」としています。
近見で市が選んだのは、地下水位を下げる工法(一部は地盤改良)です。2018年10月に決め、2026年3月の液状化対策技術検討委員会で完了となりました。市は「全地区において目標水位まで地下水が低下し、対策を完了することができました」と書いています。
その約4か月後に、本震が来ました。土木学会の小委員会に載った速報は、近見〜刈草について「今回調査した範囲では、液状化は確認されなかった」と書きます。福岡大学の報告も、近見の現地踏査で「液状化による建物被害は確認されず」「噴砂もほとんど確認されず」としています。
ただ、「対策が効いた」と言い切れない理由が4つあります。
- 調べた範囲が狭い。土木学会も福岡大も、歩いた範囲の話です。国土技術政策総合研究所(国総研)と建築研究所(建研)の速報(9月7日)は、近見ではなく、八代市と熊本市東区秋津町の対策済みの宅地を見ています。「地盤変状等により宅地に顕著な被害が生じた事例は見られなかった」一方、八代市の対策地域では噴砂が所々で見られました。
- 地震前の地下水位がどうだったかが分からない。福岡大は、地震前の4週間弱はほとんど雨が降らなかったとして「表層の液状化が自然に、抑えられた可能性も考えられる」と書きます。熊本市のパンフレットは、一般論として「夏場は降雨の影響で地下水位が高くなるため、液状化しやすい時期になっています」と書いています。2026年7月28日の地震の前に水位が実際にどうだったかを確かめた資料は、見つかりませんでした。
- 対策区域の中でも砂は出ている。甲佐町の芝原では対策区域内の一部で噴砂があり、土木学会の速報は「対策効果について詳細調査・検証が必要」としています。近見でも福岡大が、マンホールから「噴砂と思われる痕跡」を見つけ、秋津町秋田でも、対策区域内の1か所で埋設管の周りから噴砂がありました。
- 被害の原因が液状化とは限らない。国総研と建研は、東区秋津町の戸建て数棟の被害を「震動による大きな構造被害」としています。
私は、この結果を「対策が効いた証拠」ではなく、「効いたかどうかを調べる最初のデータ」と読んでいます。
読者
近見に住んでいます。対策が終わったなら、もう安心ですか
資料からは、安心とも不安とも決められません。市の通信は、近見の事業が完了したあとも事後調査と施設の維持管理を続けると書いています
熊本県の液状化マップを見る
熊本の液状化の地図は、全国版を入れて4種類あります。重ねるハザードマップの県の図(平成24年度の想定)、熊本市の液状化ハザードマップ(平成26年2月作成)、熊本市の地形区分による発生傾向図(令和3年3月。特定の地震を想定せず、地形だけで5段階)です。4つ目は、重ねるハザードマップに入っている地形だけで塗った全国版で、県の図との読み比べは重ねるハザードマップ 液状化/同じ住所で答えが違うに書きました。
県の図が想定しているのは、布田川・日奈久断層帯の中部と南西部が連動する1ケースです。250メートル四方の区画ごとに、PL値(ピーエルち)という液状化のしやすさの点数で4つに分けています。0は「液状化の可能性はない」、5まで「低い」、15まで「ある」、15を超えると「高い」。平成24年度の想定なので、2016年と2026年の実際の地震は反映されていません。県の注意書きは、こうです。
想定する地震の位置や規模が違えば、本図で示した液状化の可能性がない又は可能性が低いとされている地域においても、液状化が発生する可能性があることに留意してください
重ねるハザードマップ「都道府県液状化危険度分布図 熊本県」の注意書き

各町の代表点で県の図の色を読むと(2026年10月9日確認)、八代市の新港町と甲佐町の芝原は、4区分のうち最も上の「高い」でした。富合町の杉島と川尻、嘉島町の鯰、八代市の田中北町は、上から2番目の「ある」です。
近見は丁目で割れ、1丁目と8丁目は色が付かず、2丁目と6・7丁目は「高い」、3〜5丁目は「ある」でした。公式の凡例は、PL値0(液状化の可能性はない)を色のない白抜きの枠で示しています。色が付いていない場所がPL値0なのかは、凡例と配信タイルだけでは確かめられませんでした。町の代表点で読んだ色で、噴砂の位置そのものではありません。
八代周辺を同じ図に重ねたのが次です。

傾いた家の判定基準
罹災証明は、内閣府の「災害に係る住家の被害認定基準運用指針【令和8年6月】」第4編(液状化等の地盤被害)で決まっています。外壁か柱の傾きが20分の1以上で「全壊」、60分の1以上20分の1未満で「大規模半壊」、100分の1以上60分の1未満で「半壊」です。壁の高さ1.2メートルあたりでは、ずれが12ミリで半壊の入口、20ミリで大規模半壊、60ミリで全壊になります。地面が割れて砂が噴いても、家が傾かなければ傾きでは判定されません。
もう1つの物差しが地震保険です。日本損害保険協会の認定基準(2022年10月1日)では、木造などの戸建てなら液状化による傾きと最大沈下量を見て、高いほうの区分を採ります。「全損」は傾き100分の1.7(約1度)超か、沈下30センチ超です。名前が似た「全壊」と「全損」でも、傾きの線は約3倍ちがいます。罹災証明の全壊は20分の1、つまり100分の5。認定基準の全体は地震保険はいくら出る?全損・大半損・小半損・一部損の認定基準と、請求の流れ5ステップにあります。
2016年の近見では、国総研が戸建住宅の所有者192件の回答をまとめています(2020年11月〜2021年1月の調査)。住宅の被害を答えた168件では、傾斜・沈下が約55%(複数回答)でした。住宅・宅地の復旧工事費の総額は平均で約513万円で、液状化の分だけではありません。1,000万円以上を1,000万円として計算した平均なので、実際はこれより高い可能性があります。被害を受けた170件のうち、地震保険に入っていたのは約39%でした。
自分の家はどう調べるか
2026年の地震向けに、液状化に限った個人向けの窓口や宅地の補助は、熊本市・熊本県・国の公式ページで見つけられませんでした(2026年10月9日時点)。「ない」ではなく、見つけられなかった、までです。
2016年の復興基金「被災宅地復旧支援」は、支援が(工事費−50万円)の3分の2、上限633.3万円でした。熊本市の「ちかみらい通信」第18号(2019年10月)は、宅地復旧の支援の申請期限を2020年3月31日と案内しています。街ぐるみの宅地液状化防止事業は、家屋10戸以上・3,000平方メートル以上の一団の土地などが要件で、熊本県のガイドは「個別宅地の復旧は含まない」と注記しています。
調べる順番は、重ねるハザードマップの県の図と全国版、熊本市の液状化ハザードマップ、そして地名と古い地形図です。
相談先は、熊本市の総合相談窓口(城南まちづくりセンター)。緊急の修理や応急修理は住宅政策課(096-328-2449)、近見の液状化事業は都市安全課(096-328-2900)です。業者の訪問を受けたときは、「リフォーム業者が訪問してきたけど契約して大丈夫?」国が用意した無料ダイヤルが8月25日に開きましたも読んでください。
出典
表の出典の略称は、「土木学会速報」=土木学会 地震被害調査小委員会に載った東京電機大学・熊本高専の速報、「福岡大」=地盤工学会九州支部の報告会(9月17日)の福岡大学の資料、「整備局」=国土交通省 九州地方整備局、「県」=熊本県、「熊本市」=熊本市の災害対策本部会議資料です。確認日はすべて2026年10月9日。
- 気象庁 報道発表 地震の速報(2026年7月28日)
- 気象庁「令和8年7月の地震活動及び火山活動について」(2026年8月10日)
- 内閣府 令和8年熊本地震 被害状況(2026年10月5日12時現在)
- 国土地理院「令和8年(2026年)熊本地震に関する情報」/同 概要(2026年9月25日時点)
- 土木学会 地震被害調査小委員会 掲載「令和8年熊本地震 地震被害調査ー速報ー」(東京電機大学 石川敬祐・熊本高等専門学校 脇中康太。調査日 2026年8月5日・6日)
- 地盤工学会「令和8年(2026年)熊本地震に関する情報」(九州支部の報告会 2026年9月17日。資料「令和8年熊本地震による液状化」福岡大学 村上 哲ほか/「八代市郡全体的な被害」水野建設コンサルタント 今薗淳司・熊本高等専門学校 脇中康太)
- 国土技術政策総合研究所・建築研究所「令和8年熊本地震による建築物の基礎・地盤の被害調査報告(速報)」(2026年9月7日)
- 国土交通省 九州地方整備局「熊本県を震源とする地震の対応状況(第46報)」(2026年10月1日17時現在)/同「第1回 八代港被災施設復旧技術検討委員会 資料-2 施設の被害調査」(2026年8月12日)
- 熊本県 令和8年熊本地震に係る災害対策本部会議 資料
- 熊本市 災害対策本部会議資料
- 熊本市「第1回 熊本市液状化対策技術検討委員会」議事資料(2017年6月27日)
- 熊本市パンフレット「熊本地震から学んだ液状化」/熊本市「液状化に関する情報」
- 熊本市「ちかみらい通信」:第6号(2018年10月)/第18号(2019年10月)/第95号(2026年3月号)
- 国土技術政策総合研究所「H28年熊本地震による戸建住宅の液状化被害に関するアンケート調査 結果報告」(令和4年10月)
- 防災科学技術研究所「平成28年(2016年)熊本地震 液状化調査報告(第1報)」
- 熊本市 液状化ハザードマップ(平成26年2月作成)
- 国土地理院 重ねるハザードマップ 表示レイヤ定義(都道府県液状化危険度分布図 熊本県)/国土交通省「地形区分に基づく液状化の発生傾向図等」
- 内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針【令和8年6月】」第4編 液状化等の地盤被害による被害
- 日本損害保険協会「地震保険 損害の認定基準について」(2022年10月1日)
- 熊本県「宅地復旧のガイド」
- 熊本市「総合相談窓口」(2026年9月17日更新)
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