隣の空き家が崩れそうなとき、通報する先は市区町村の空き家の相談窓口です。ただし「市に言えばすぐ壊してくれる」とは限りません。空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)で市が最初にするのは持ち主への助言・指導で、市が自分で壊す「代執行」まで進んだのは、この10年で約50件に1件です。その間も、崩れそうな家は隣に立ったままです。
2026年10月4日の11時ごろ、大阪市生野区中川西1丁目6番付近で家屋の一部が崩れ落ちました。けが人はいませんでしたが、前の私道は通行が制限されています(大阪市の10月5日の発表)。報道によると、市は倒れた部分を別の建物として扱って空家法の空き家と判断し、強制撤去を含めて検討しています。一方で、元の所有者が所有権を放棄したと主張していて、持ち主ははっきりしていません(生野区 空き家 倒壊/中川西1丁目で通行制限)。
先に結論
- ✓ 大阪市の窓口は各区役所。課の名前は区ごとに違い、生野区は地域まちづくり課
- ✓ 市が代わりに壊すまでには助言・指導→勧告→命令→代執行の段階がある。急ぎの「緊急代執行」でも、勧告までは済んでいる必要がある
- ✓ 持ち主が分からない家は「略式代執行」で壊せる。行政が壊した878件の67%がこれ
通報先は市区町村の空き家窓口
国の基本指針は、空き家について近所の人から寄せられる相談には、市町村が中心になって対応するとしています。電話する先は、その家がある市区町村です。課の名前が分からなければ、代表番号で「近所の空き家が崩れそう」と伝えれば担当につないでもらえます。
大阪市は2016年4月から、各区役所に相談窓口を置いています。ただ、担当の課は区ごとに名前がばらばらで、北区は地域課(防災防犯)、西成区は市民協働課、生野区は地域まちづくり課です。24区の一覧は大阪市の空家相談のページに載っています。
電話の前に、窓口の立場を知っておくと話が早く進みます。生野区のページには、区役所は「所有者等が自ら状況の改善を行うことを促す立場であり、特定空家等の解体や修繕等を行うものではありません」と書かれています。区役所の仕事は、持ち主を調べて、直すよう働きかけることです。
読者
通報したのがうちだと、持ち主に知られない?
名前を伏せたまま相談できるかどうかは、電話の最初に窓口で確かめてください。伝えるのは、家の場所、どこが崩れそうか、道路や通学路に面しているか。この3つがあれば、市が現地を見に行く手がかりになります。
売る・継ぐ・片付ける、を決めるときに読むもの
値段が分かったあとにやることは、売る・名義を変える・その前に中の物を片付ける、で人によって違います。相続登記は2024年4月から義務になり、相続を知った日から3年以内に申請しないと過料の対象になるので、放っておける手続きではなくなりました。
買い取る側にいた人が、売る側に向けて書いた本です。公示地価や基準地価は「いくらで出すか」の目安にしかならず、手元に残る額は業者の選び方と交渉で変わります。地方ほど売りにくくなる前提で書かれています。
葬儀・年金・保険・相続の届出を、期限つきで並べた図解のムックです。年度版なので税制改正のぶんが毎年入れ替わります。何をいつまでにやるのかが分からない段階なら、ここから入るのがいちばん早いです。
名義変更を司法書士に頼まず自分でやる人向けの手順書です。第2版で義務化・相続人申告登記・戸籍の広域交付に対応しています。登記簿と戸籍の読み方から入るので、書類集めの段階で止まっている人でも進められます。
親が元気なうちに片付ける前提で、家族会議の開き方や「捨てる」と言わない進め方をマンガで扱っています。売るにも貸すにも、中の物が残ったままでは査定も見学も先に進みません。
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通報から撤去までの5段階
空家法の手続きは階段になっています。倒れるおそれが大きいなど、放っておけないと市が判断した空き家を「特定空家」と呼び、そこから1段ずつ進みます。国土交通省と総務省が2025年12月に公表した調査で、2015年度から2024年度までの10年分を並べるとこうなります。
| 段階 | 市がすること | 10年の件数 |
|---|---|---|
| 1 現地確認 | 外から状態を見て持ち主を調べ、特定空家にあたるかを判断 | ― |
| 2 助言・指導 | 持ち主に直すよう伝える | 42,768件 |
| 3 勧告 | 期限を決めて直すよう求める | 4,153件 |
| 4 命令 | 従わなければ50万円以下の過料 | 551件 |
| 5 代執行 | 市が代わりに壊す・直す。費用は持ち主の負担 | 878件 |
件数は段を上るほど減ります。ただ、途中で止まった家がそのまま残っているわけではありません。空家法の措置をきっかけに壊されたり直されたりした特定空家は、同じ調査で27,244件あります。勧告まで進むと土地の固定資産税の軽減が外れるので、持ち主にとってはそこが大きな分かれ目です。勧告の件数は空き家の勧告は全国978件の記事で詳しく見ています。
2023年12月には、命令を飛ばして壊せる「緊急代執行」ができました。国のガイドラインが想定しているのは、特定空家が通学路などに倒れるおそれがあるときや、台風が来ると予見されるときです。ただし助言・指導と勧告は済ませておく必要があります。使われたのは、10の市区町村で12件です。
私は、崩れそうだと思ったら、まだ倒れていない段階で電話していいと考えています。急ぎの手段が使えるのは、勧告まで進んでいる家だけだからです。
読者
台風が来る前に何とかしてほしいのに、今から指導なの?
勧告がまだの家に、空家法の緊急代執行は使えません。ただ、国の基本指針は、災害のときには災害対策基本法など別の法律で措置できる場合があると書いています。急ぐ事情があるなら、それもそのまま窓口に伝えてください。

持ち主不明なら略式代執行
「持ち主が分からない家は、誰も手を出せない」と思われがちですが、数字は反対を向いています。行政が壊した878件のうち、持ち主が分かっている家の行政代執行は286件。持ち主が分からない家の略式代執行は592件で、全体の67%を占めます。
近所の人が法務局で持ち主を調べて手紙を出したのに、宛先不明で戻ってきた。Yahoo!知恵袋には2024年10月、そんな相談が残っています。個人で調べられるのは、たいていここまでです。市は登記に加えて、固定資産税の記録も持ち主探しに使えます(空家法10条)。
それでも分からなければ、市は事前に公告をしてから代わりに壊します。ガイドラインでは、公告は掲示と官報などへの掲載で行い、2週間たつと相手に届いたものとして扱います。なお、持ち主が分からない家には、命令を飛ばせる緊急代執行は使えず、この略式代執行の段取りで進めます。相続する人がいないなどの家では、市町村長が裁判所に財産の管理人を選ぶよう求める道もあります(空家法14条)。
長屋の1戸だけが空いているとき
空家法の「空家等」は、人が住むなどの使い方がされていない状態が続いている建物です(空家法2条)。ここで迷うのが、壁でつながった長屋です。
ガイドラインは、外から見ると長屋でも、隣の住戸との境の壁(界壁)が二重になっているなど、住戸ごとに別の建物になっている場合は、1戸だけでも空家法の建物にあたるとしています。反対に、1棟としてつながっている長屋は、どこか1戸に人が住んでいれば棟全体が「使われている建物」になり、空家法の対象から外れることがあります。生野区で、市が倒れた部分を別の建物として扱ったと報じられているのも、この区切り方の話です。
空家法で動けなくても、手がなくなるわけではありません。ガイドラインは、建築基準法や道路法など別の法律なら、一部の住戸だけが空いている長屋にも対応できる可能性があると書いています。長屋の1戸が崩れそうなら、窓口には最初に「長屋の一部で、ほかの部屋には人が住んでいる」と伝えてください。
待つ間に自分でできること
窓口に電話したあとも、市の手続きには時間がかかります。その間に隣に住む側ができることは、次の4つです。
- 日付が残る形で写真を撮る。家の傾き、外壁や塀のひび、屋根材の浮き、道にはみ出した部分
- 崩れそうな側に車や自転車を置かない。子どもには近づかないよう伝える
- 窓口に電話した日、相手の課、言われたことをメモに残す
- 持ち主を知りたいときは、法務局で登記事項証明書を取る(誰でも請求できる)
写真を撮るときの目安になる数字があります。ガイドラインが特定空家の判断の参考に挙げている、建物の傾きが20分の1を超えるかどうかです。高さ3mの柱なら、上の端が15cmずれている計算になります(当サイトで計算)。電柱など、まっすぐ立っているものと一緒に写しておくと、あとで傾きを比べられます。
もし崩れて自分の家や車が壊れたら、民法717条で持ち主に修理代を求められる場合があります。ただし、相手の家がもともと傷んでいたこと(条文では「設置又は保存に瑕疵」)を示せることが前提で、先に撮った写真がその材料になります。請求できる条件と、自分の火災保険で直す順番は、隣の空き家から屋根が飛んできたときの記事にまとめています。
「市に言えばすぐ壊してくれる」わけではありません。それでも、市が持ち主を探し、助言・指導から階段を上り始めるきっかけは、近所からの1本の電話です。崩れそうだと思ったその日の写真と電話が、あとになって効いてきます。
件数は国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(2025年3月31日時点、1,741市区町村、2025年12月25日公表)にもとづきます。緊急代執行・略式代執行・長屋の扱い・傾きの目安は国のガイドライン(2026年9月3日改正)、窓口は大阪市と生野区のページ、生野区の倒壊は大阪市の10月5日の発表と、朝日放送テレビ・読売テレビ(10月6日)の報道によります。法律の当てはめは市が判断します。
出典:国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」/国土交通省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」/国土交通省・総務省「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」/大阪市「空家相談」/大阪市生野区「空家等の相談・通報窓口」/e-Gov法令検索 空家等対策の推進に関する特別措置法
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