国の想定では、球磨川があふれると、人吉市の九日町・駒井田町・鍛冶屋町など16か所は、町・字の中心が2階も水没する5〜10mの区域に入ります。
ただし2020年7月の豪雨では、この想定より少ない雨でも、人吉市街部の約518ha・4,681戸が浸水しました。
先に結論
- ✓ 0.5m以上の浸水が3日〜1週間続く町・字の中心は、八代市の10か所だけ。人吉市の31か所には、中心が1日を超える区域に入る所がない
- ✓ 2020年7月は、国が「戦後最大の洪水被害をもたらした」とする1965年7月洪水を上回る水位を人吉で記録。球磨川流域の犠牲者は50名と推測されている(2021年7月の国の資料)
- ✓ 従来の川辺川ダムが仮にあっても、2020年の人吉地点の流量は計画高水流量を上回ると国が検証。新たな流水型ダムは2035年度の完成予定
球磨川が氾濫したら浸水する町

色が付いていない場所でも、浸水しないとは限りません。この地図は球磨川があふれた場合だけの想定で、支川の決壊、高潮、下水があふれる内水、ほかの川の氾濫は入っていません。
国の想定の雨は、人吉上流域の12時間総雨量502mmです。
町・字の中心が10〜20mに入るのは、人吉市の温泉町と芦北町の1か所です。

拡大図では、人吉観測所に近い九日町の周りが5〜10m、西の温泉町の周りが10〜20mの色です。

町・字の数は、町・字の中心1点が区域に入るかで数えています。中心が区域の外にある町・字でも端は浸かることがあり、同じ丁目の中でも深さは場所で違います。面積や世帯数ではありません。
町・字の中心が区域に入るのは、八代市125か所、人吉市31か所、湯前町2か所、芦北町・錦町・あさぎり町が各1か所です。
人吉市は77か所のうち31か所が入り、3〜5mが9か所、5〜10mが16か所です。
八代市は0.5〜3mが96か所で、水島町・催合町・日奈久栄町・日奈久新開町の4か所が5〜10mです。

3日〜1週間続くのは八代市の水島町・催合町・日奈久栄町・日奈久新開町・鏡町北新地などです。
台風シーズンが始まる前に、家へ置いておくもの
風で割れるのは窓、家に入ってくるのは水です。この2つは、進路が決まってから買いに走っても店の棚から消えています。
窓が割れるのを防ぐ道具ではありません。割れたあとの破片を膜で押さえるものです。飛散率を約1%まで落とせるのは防災安全合わせガラスですが、そちらは発注から施工まで日数がかかって台風の前には間に合いません。今日のうちに手を動かせるのはこちらです。貼るのは室内側です。
土のうは砂を詰める前提の道具ですが、住宅街ではその砂が手に入りません。水で膨らむ型なら平たいまま棚にしまえて、玄関の段差にも、下水が逆流してくる風呂・トイレの排水口の上にも置けます。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
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球磨川の過去の水害と2020年7月豪雨

2020年7月に決壊した国の堤防は、右岸が約30m、左岸が約10mでした。
人吉市の記録では、犠牲者は21人(災害関連死を含む)で、関連死を除くと球磨川右岸の市街部で17人、左岸部で3人です。住家被害は3,398世帯(市全体の約2割)でした。
防災科学技術研究所の現地調査では、人吉市九日町で4m、温泉町で約4mの浸水深が実測されています。

今の水位を見る場所

川の防災情報では、人吉・渡・萩原などが、八代河川国道事務所と熊本地方気象台が出す洪水予報の観測所です。
2020年7月4日、人吉観測所と渡観測所は、計画高水位を超えたあとに欠測しました(国の説明資料)。
人吉市は人吉、球磨村は渡、八代市は萩原の水位が、避難判断水位を超えるかを見ます。
観測所ごとの水位は国土交通省の川の防災情報、雨による川の危険度は気象庁の洪水キキクルで見られます。
2020年の球磨川氾濫の原因と川辺川ダム
2020年7月4日は、大型の線状降水帯が流域の大部分にかかり、およそ13時間停滞しました。
人吉上流域の雨は12時間で322mmと、国の基本方針の計画降雨量262mmを超えました。
狭窄部の上流から川辺川の合流点付近では、洪水の水位が堤防の高さを大きく上回り、あふれた水が川の流れと一体になって流れ下りました。
支川では、本川の水位が上がって流れにくくなるバックウォーター現象で氾濫しました(八代河川国道事務所)。
「川辺川にダムがあれば2020年の氾濫は防げた」とは言い切れません。
従来の貯留型の川辺川ダムがあったと仮定した国の検証でも、人吉地点の流量は約4,800m³/sで、計画高水流量の約4,000m³/sを上回ります。
同じ検証で、人吉市街部の水位は約1.9m程度下がると推定され、浸水面積は約6割減ると推計されています。
川辺川ダムは1969年4月に建設事業に着手しました。
2008年9月に熊本県知事が「現行の川辺川ダム計画を白紙撤回し、ダムによらない治水対策を追求するべき」と表明し、2009年9月に国土交通大臣が中止を表明しました。
国は2021年1月に「球磨川水系緊急治水対策プロジェクト」を公表し、川辺川の新たな流水型ダムの調査・検討に2021年度から本格的に着手しました。
国のチラシは、2020年のような大雨のとき、流水型ダムの洪水調節で「ダム下流から球磨川中流部までピーク水位を概ね1〜3m低下させる効果があります」としています。
ダムが完成する2035年度時点の川の整備の効果も含んだ数字です。

流域の町のページ
道路の冠水(下水があふれる内水)は、この記事の地図に入っていません。流域の市区町村ごとの冠水・河川氾濫のページは次のとおりです。
ここで扱った浸水想定は、国が球磨川について作った想定最大規模の想定です。今の状況は、市区町村の避難情報と川の防災情報を優先してください。
出典
2026年9月23日に確認
- 国土交通省「日本の川 球磨川」主な災害
- 八代河川国道事務所「過去の洪水」
- 国土交通省 水管理・国土保全局「令和2年7月豪雨について<説明資料>」(令和3年7月8日)
- 国土交通省「令和2年7月豪雨による被害と対応」(水害・土砂災害ハザード・リスク情報共有プロジェクト第5回 参考資料2)
- 八代河川国道事務所「球磨川水系河川整備計画[国管理区間]」(令和4年8月)
- 人吉市「令和2年7月豪雨 人吉市災害記録・検証誌」
- 防災科学技術研究所「令和2年7月豪雨による熊本県人吉市および球磨村渡地区の洪水被害の特徴」(調査速報 2020年7月14日 Ver.1.1)
- 川辺川ダム砂防事務所「川辺川ダム建設事業の経緯」
- 川辺川ダム砂防事務所「「命」と「清流」を守る川辺川の新たな流水型ダム」(2024年10月)
- 八代河川国道事務所「球磨川水系洪水浸水想定区域図」
- 国土交通省「国土数値情報 洪水浸水想定区域データ(河川単位)」令和7年度
- 国土交通省「位置参照情報」(町・字の代表点)
- 国土地理院「地理院タイル」(淡色地図・全国最新写真)
- 国土交通省「川の防災情報」
- アイキャッチ:国土地理院「地理院タイル(全国最新写真)」を加工して作成
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