宮城県多賀城市は、国が出している「道路冠水注意箇所」に1か所も載っていません。それでも令和元年の台風19号では、市内で161路線の道路が冠水しました。床上浸水した16棟のうち14棟は、八幡・南宮・山王の3地区に集まっていました。
この台風で決壊した砂押川の堤防は、上流の利府町沢乙の1か所です。多賀城の市内で砂押川の堤防が切れたわけではありません。市は、降った雨が下水道や水路から抜けきれずにたまる「内水」が原因だったと検証しています。
多賀城市で「どこが危ないか」を知るには、国の一覧ではなく、市がまとめた台風19号の記録と内水ハザードマップを読むのが近道です。
この記事でわかること
- ✓ 国の道路冠水注意箇所は宮城県に32か所。多賀城市の近くでは利府町4・七ヶ浜町1・松島町1です
- ✓ 市役所屋上の総雨量は253ミリで、利府町の惣の関ダム308ミリより少なく、上流の雨が市内の低い土地へ流れ込みました
- ✓ 市の検証では、第二中学校と多賀城八幡小学校のまわりの低い土地に雨水が集まり、線路の下をくぐる水路が詰まりどころになりました
雨の日に「今通れない道」を見る公式ページ
大雨の最中に知りたいのは、過去の記録より「今どこが通れないか」です。次の公式ページを組み合わせて見ます。
- 宮城県「交通規制情報(道路管理GIS)」(県が案内している道路規制情報とライブカメラの入口)
- 仙台河川国道事務所 道路通行規制情報(国道45号など国の道路)
- 宮城県 河川流域情報システム(砂押川遊水地・勿来川遊水地・八幡橋などの河川カメラと水位)
- 気象庁 キキクル(浸水害・洪水の危険度)
- 多賀城市 防災情報アプリ「多賀城防災」(市の避難情報)
県と国のページが扱うのは、県道や国道の規制が中心です。雨が強くなったら、この記事の地区の低い道には入らない、と先に決めておくほうが確実です。
国の一覧に、多賀城市は1か所もありません
国土交通省の東北地方整備局は、大雨で水がたまるおそれがある道を「道路冠水注意箇所」として一覧にしています。宮城県は32か所で、多いのは大崎市7・岩沼市5・利府町4。多賀城市と塩竈市、仙台市は0です。
多賀城市のすぐ近くでは、利府町の県道 加瀬沼公園線(JR東北本線の下)、七ヶ浜町の町道 浜辺線、松島町の県道 赤沼松島線(JR仙石線の下)が載っています。通勤や買い物で市の外へ出る人は、この3町の箇所も頭に入れておいてください。
一覧に載っていないのは、冠水しないという意味ではありません。次の台風19号の記録が、それを示しています。
冠水した道で車が動けなくなったときに要るもの
JAFのテストでは、セダンが走れなくなる水深と、ドアが開かなくなる水深がほぼ同じでした。つまり止まった時点で、窓を割る以外に外へ出る方法がなくなります。車に置いておくものから挙げます。
水に浸かった車は、外からの水圧でドアが開かなくなります。割れるのは側面のガラスで、フロントガラスは合わせガラスなので割れません。グローブボックスの奥ではなく、座ったまま手が届く場所に置いてください。
119番も家族への連絡も、スマホが生きていることが前提です。水に落とすと沈んで探しようがなくなるので、浮く型かどうかがそのまま連絡手段の有無になります。入れたまま操作できます。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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令和元年台風19号では161路線が冠水しました
市は、2019年10月12日から13日の台風19号で冠水した道と水があふれた場所を「道路冠水&溢水箇所図」にまとめています。冠水した道路は161路線。水があふれた「溢水箇所」は13日午前5時30分の確認で66か所ありました。

冠水の線は、市の西側の山王・南宮・新田の田畑と、八幡のまわりに密集しています。溢水箇所がいちばん多いのは浮島の15か所で、留ケ谷11・東田中10・鶴ケ谷10が続きます。
| No. | 地区 | 台風19号の記録 | 標高 | 地図 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 八幡(多賀城八幡小学校) | 床上7棟・床下39棟(市内最多) | 3.7m | 地図で開く |
| 2 | 八幡二丁目 | 雨の翌日も道路が冠水 | 12.6m | 地図で開く |
| 3 | 南宮(第二中学校) | 床上4棟・床下16棟 | 5.5m | 地図で開く |
| 4 | 山王 | 床上3棟・床下16棟 | 3.9m | 地図で開く |
| 5 | 浮島 | 溢水15か所(最多)・床上1棟・床下15棟 | 4.1m | 地図で開く |
| 6 | 高崎 | 床下14棟 | 2.7m | 地図で開く |
| 7 | 留ケ谷 | 溢水11か所 | 19.3m | 地図で開く |
| 8 | 東田中 | 溢水10か所 | 2.8m | 地図で開く |
| 9 | 鶴ケ谷 | 溢水10か所 | 2.3m | 地図で開く |
棟数は令和元年12月20日時点の被災区分別集計表、溢水の数は箇所図の凡例です。標高は住所を国土地理院の住所検索にかけた代表点1点の値で、地区全体の高さではありません。
床上浸水16棟のうち14棟が、八幡・南宮・山王
市の集計では、台風19号の住家の被害は床上浸水16棟、床下浸水107棟でした。床上浸水の内訳は八幡7棟、南宮4棟、山王3棟。浮島と大代が1棟ずつです。

市の検証資料は、第二中学校のまわりと多賀城八幡小学校のまわりを「地形特性上低地部となっている地域」と書き、そこに床上浸水が集中したとしています。第二中学校は南宮、八幡小学校は八幡にあります。
もう一つの理由として挙げているのが、線路です。鉄道と交差する水路は、鉄道を造ったときに通した管がボトルネックになっていました。市は、JR仙石線をくぐる部分の上流と下流で、八幡地区の一部に雨水が集中したと書いています。
読者
雨がやめば、道路の水もすぐ引くんですよね?
八幡二丁目のあたりは、そうではありませんでした。水路の底にたまった土砂などで排水がうまく働かず、雨の翌日も道路が冠水していたと市の資料にあります。
西側の山王・南宮では、大量の稲わらが水路をふさいだことも挙げられています。市内に流れ着いた稲わらは、集めると1,848トンになりました。
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砂押川は、多賀城では決壊していません
宮城県の堤防決壊箇所一覧で、台風19号の砂押川の決壊は「利府町沢乙地先」の1か所です。多賀城市の検証も、砂押川の遊水地と上流の惣の関ダムは「有効に機能した」としています。

では、なぜ浸水したのか。多賀城市役所の屋上で測った総雨量は253ミリで、利府町の惣の関ダムは308ミリ、仙台市宮城野区は378ミリでした。市の中より、砂押川の上流に多く降った雨が、多賀城の低い土地に流れ込みました。
砂押川は24時間253ミリの雨を前提に整えられていて、上流ではそれを超えました。さらに、降った雨の合計が最大になった時刻と13日午前3時12分の満潮がほぼ重なり、河口近くでは川の水位が高かった可能性があります。中流では、川へ合流する水路の水が押し戻される「バックウォーター」が起きていたと市は見ています。
「川の近くでなければ大丈夫」ではなく、「川の水位が高いと、町の水が川へ抜けない」という形の浸水です。
内水ハザードマップと、2階からしか使えない避難所
多賀城市は水防法にもとづく「多賀城市内水ハザードマップ」を作り、令和6年4月に住民説明会を開いています。想定する雨は1時間に120ミリ、総雨量325ミリ。令和元年東日本台風の雨の降り方を、この強さまで引き伸ばしたものです。
地図は国土地理院の承認を受けた地図の上に描かれているため、この記事では写さず見方だけを案内します。浸水の深さは4段階で、いちばん濃い色が1.0〜3.0メートルです。自分の家の位置と、そこから避難所までの道の色を見てください。
避難所の表を見ると、第二中学校・多賀城八幡小学校・城南小学校には「2階以上」と注記があります。床上浸水が集中した地区にある2校は、避難所として使えるのが2階から上だけです。市の防災ハザードマップの表では、第二中学校は「洪水時は開設しない」、多賀城八幡小学校と城南小学校は「洪水・津波時は開設しない」指定避難所です。夜に大雨が強まりそうなら、明るいうちに動くか、家の2階に上がるかを先に決めておきます。
大雨の前にできる3つのこと
- 車を移す:市は「大雨による冠水などが事前に予測できる場合」に、文化センター・旧市立図書館・市民プール・総合体育館・多賀城高校を車両一時避難場所にしています(多賀城高校だけは平日7〜20時、土日祝8〜18時。12月29日〜1月2日は除く)
- 土のうを取りに行く:市役所西側駐車場・山王地区公民館・大代地区公民館・さんみらい多賀城イベントプラザの4か所。連絡不要で1回10袋まで
- 家の前の側溝と雨水ますを見る:落ち葉が詰まっていたら取り除く。市のハザードマップにも書かれています
台風19号では、稲わらと土砂が水路をふさいで浸水を広げました。家の前の雨水ますひとつでも、流れを止めることがあります。
\土のうを取りに行く前に、家の場所の浸水想定を確認/
土砂災害警戒区域・洪水の浸水想定・地盤の揺れやすさを公的データでまとめて出します
よくある質問
東日本大震災の津波で浸水した場所と同じですか
別のものです。この記事は大雨による道路の冠水と内水を扱っています。津波の浸水区域と深さは、市の「東日本大震災の津波浸水区域と浸水深」のページで確認してください。
対策は進んでいないのですか
進んでいます。昭和61年の「8.5水害」のとき6%だった雨水ポンプ場の整備率は、令和元年12月末で83%になりました。それでも、台風19号の1時間の雨は市の下水道の目標(1時間52.2ミリ)を下回っていたのに、長く降り続いて浸水しました。
ほかの市の冠水記事
- 道路冠水マップ どこで見られるの?(全国の一覧と、市区ごとの記事のまとめ)
- 大崎市 冠水 どこが危ないの?(宮城県でいちばん多い7か所)
- 仙台 冠水 どこが危ないの?(市が名前を出している地下道22か所)
- 石巻 冠水 なぜ避難指示が市内全域になるのか
公式出典
- 国土交通省 東北地方整備局「道路冠水注意箇所」宮城県(2026年9月23日取得)
- 多賀城市「令和元年台風第19号に対する災害対応」(これまでの対応について・被害発生の原因について・道路冠水&溢水箇所図・家屋被害状況図)
- 宮城県「台風19号による被災状況箇所図」「台風19号による河川施設等の状況」
- 多賀城市「内水ハザードマップ」/「内水浸水想定区域図を公表します」
- 多賀城市「多賀城市防災ハザードマップ(指定避難所・一時避難場所)」
- 多賀城市「土のうの提供・水のうの作成について」
- 多賀城市「東日本大震災の津波浸水区域と浸水深」
- 国土地理院 住所検索API・標高API(標高)/地理院タイル(地図)
この記事の数値は公表資料を集計したものです(2026年9月23日取得)。避難や通行の判断は、必ず多賀城市と宮城県の最新の発表を確認してください。
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