府中市で、大雨のときに水がたまるおそれがある道は7か所です。都道が2か所、市道が5か所。7か所とも、標高39メートルより高いところにあります。
いっぽう、市が公開している浸水の記録は1990年以降で2件しかありません。どちらも1時間40ミリ台の雨で起きています。市の内水氾濫マップが前提にしている雨は、1時間153ミリです。
この記事でわかること
- ✓ 国が出している県ごとのPDFには府中市が9か所。地図から開ける一覧には7か所しか載っていません
- ✓ 差の2か所は、どちらも矢崎町一丁目の市道です
- ✓ 市の内水氾濫マップは水防法に基づかず、宅建業者向けのページでも内水は「なし」と書かれています
箇所の数・種別・路線名・所在地は、国土交通省 関東地方整備局「道路冠水注意箇所」の東京都分から数えました。地図から開ける一覧が135か所、令和8年6月15日更新の県ごとのPDFが153か所です。浸水の記録・ハザードマップ・重要事項説明の扱いは府中市の公表ページ、令和元年東日本台風の被害数は東京都の第142報、地形と海抜は府中市環境審議会の資料から取りました。標高は国土地理院の標高データで、住所の代表点で引いた値です。
7か所は都道が2つ、市道が5つです
地図から開ける一覧に載っている東京都の道路冠水注意箇所は135か所です。市区別に数えると、府中市は7か所。八王子市の10か所に次ぐ、都内で6番目の多さでした。
| 管理番号 | 名称 | 種別 | 路線 | 所在地 | 標高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 02-095 | 小柳立体 | 都道 | 主要地方道9号 | 小柳町四丁目 | 39.3m |
| 02-096 | 府中栄町立体 | 都道 | 主要地方道14号 | 栄町三丁目 | 64.0m |
| 02-097 | 武蔵台1丁目 | 市道 | 武蔵台通り | 武蔵台一丁目 | 66.4m |
| 02-098 | 武蔵台1丁目 | 市道 | 横街道 | 武蔵台一丁目 | 66.4m |
| 02-099 | 矢崎町1丁目 | 市道 | 市道4-138号 | 矢崎町一丁目 | 46.7m |
| 02-100 | 是政3丁目 | 市道 | 中央道側道 | 是政三丁目 | 43.3m |
| 02-101 | 是政6丁目 | 市道 | 市道4-280号 | 是政六丁目 | 43.5m |
都道は小柳立体と府中栄町立体の2か所で、管理者は東京都建設局道路管理部保全課。残る5か所は市道で、管理者は府中市です。
標高でいちばん低いのが小柳立体の39.3メートル、いちばん高いのが武蔵台一丁目の66.4メートル。差は27.1メートルで、7か所とも標高39メートルより上にあります。多摩川に近い是政の2か所でも43メートル台でした。

冠水した道で車が動けなくなったときに要るもの
JAFのテストでは、セダンが走れなくなる水深と、ドアが開かなくなる水深がほぼ同じでした。つまり止まった時点で、窓を割る以外に外へ出る方法がなくなります。車に置いておくものから挙げます。
水に浸かった車は、外からの水圧でドアが開かなくなります。割れるのは側面のガラスで、フロントガラスは合わせガラスなので割れません。グローブボックスの奥ではなく、座ったまま手が届く場所に置いてください。
119番も家族への連絡も、スマホが生きていることが前提です。水に落とすと沈んで探しようがなくなるので、浮く型かどうかがそのまま連絡手段の有無になります。入れたまま操作できます。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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地図の一覧に出てこない2か所があります
同じ国土交通省が、同じ調査を2つの形で出しています。地図から箇所ごとの説明表を開ける一覧と、県ごとのPDFです。
東京都で数えると、一覧は135か所、令和8年6月15日更新のPDFは153か所。府中市は一覧で7か所、PDFで9か所です。
差の2か所は、市道4-507号と市道4-198号。所在地はどちらも矢崎町一丁目です。一覧に載っている市道4-138号と合わせると、矢崎町一丁目には3か所あることになります。地図で見えるのは、そのうち1か所だけです。

地図側の一覧に無い箇所は、説明表も開けません。管理者も近くの警察署も、地図からはたどれないということです。

実際に浸かった雨は、1時間40ミリでした
府中市には「浸水履歴(浸水実績)」というページがあります。置かれている場所は、宅地建物取引業者向けのページの下です。
記録の範囲は「1990年(平成2年)以降から現在までの、台風や大雨により発生した床下浸水や地下施設への浸水」。市や消防署が確認した箇所と、市民からの通報を受けた箇所をまとめたものだと書かれています。
そのPDFに載っているのは2件だけです。1件目が平成15年6月25日、最大1時間40ミリの雨で、小柳町4丁目先の半地下駐車場が浸水。2件目が平成17年9月4日、最大1時間42ミリの雨で、紅葉丘2丁目先の床下浸水2棟でした。
市の内水氾濫マップが前提にしているのは、1時間最大153ミリ・総雨量690ミリの雨です。実際に記録された浸水は、その4分の1ほどの雨で起きています。そして1件目の小柳町は、冠水注意箇所「小柳立体」と同じ町です。

市は「市内で発生した全ての浸水箇所を記録しているわけではありません」とも添えています。記録は平成17年で止まっていて、そのあとに来た令和元年東日本台風では、東京都の被害報(令和元年11月8日・第142報)で府中市に付いた数字が床上浸水1、床下浸水1でした。
市はこのとき37か所の避難所を開き、8,280人が避難しています。避難勧告は市政史上初めてで、災害対策本部が置かれたのも東日本大震災以来でした。市は「浸水想定区域には約9万5千人(府中市の3分の1以上の人口)の方が住んでおります」と書いています。
浸水した2つの町は、どちらも崖の下です
記録に残った2つの町には、もう1つ共通点があります。小柳町も紅葉丘も、市の土砂災害ハザードマップに載っている町です。東京都が令和元年9月に指定した土砂災害警戒区域は府中市で23か所、特別警戒区域は15か所あります。
府中市の地形は、南から順に多摩川低地、立川段丘、武蔵野段丘の3つ。その段差をつくっているのが府中崖線と国分寺崖線で、市の資料は「北から国分寺崖線、府中崖線、多摩川が東西に走り、府中の地形の骨格を形成しています」と書いています。そして「市内で最も高いところは武蔵台3丁目で海抜82mです」。

その武蔵台の一丁目に、冠水注意箇所が2か所あります。市内でいちばん高い町と、多摩川沿いの是政が、同じ一覧に並んでいます。武蔵台の2か所がなぜ水のたまる形になっているのかは、公表されている資料では確かめられませんでした。

崖の近くには、もう1つ条件があります。市は雨水浸透施設の設置を呼びかけていますが、「土砂災害警戒区域等、土壌汚染の恐れがある土地、法面又は擁壁の安全性が損なわれる傾斜地近傍個所等」には設置できないとしています。崖のそばは、雨を地面に逃がすこと自体ができません。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
冠水の地図は、水防法の外にあります
府中市は内水氾濫マップを公開しています。ただし、そのページには1行こう書かれています。「なお、このハザードマップは水防法に基づきません。」
成り立ちを見ると理由が分かります。東京都下水道局の「北多摩一号処理区、北多摩二号処理区流域浸水予想区域図」と、東京都建設局の「野川、仙川、入間川、谷沢川及び丸子川流域の浸水予想区域図」を合成した図です。市が自分で計算した図ではありません。
いっぽう東京都は、令和8年3月25日に水防法第14条の2に基づく雨水出水浸水想定区域を指定しました。公表された図は神田川流域や石神井川及び白子川流域など7つで、すべて区部の流域です。府中市が入る北多摩一号・二号処理区は、この7つに入っていません。
結果、市の宅地建物取引業者向けのページでは、水害ハザードマップの欄が洪水は「あり」、内水は「なし」、高潮は「なし」となっています。家を買うときや借りるときの説明に出てくるのは、多摩川の洪水ハザードマップだけです。冠水の図は、自分で見に行くことになります。

大雨のとき、市の知らせに道路の項目がありません
雨が強くなったとき、府中市はどこで知らせているのか。市が案内している経路は3つあります。
1つ目が市のメール配信サービスで、カテゴリは安全・安心情報、出産・子育て情報、健康、催し・講座情報、行政情報、市長コラム、休館・休止の7つ。2つ目が防災の知らせで、市の公式X(エックス)とLINE公式アカウント、Yahoo!防災速報アプリが案内されています。
3つ目が「府中の気象・多摩川の状況」のページです。多摩川ライブカメラ画像、多摩川の水位、警報・注意報、ナウキャスト、今後の雨、台風情報、キキクルの7つが並びます。
3つのどこにも、道路の冠水や通行止めの項目はありません。全部が雨と川の情報です。
7か所に排水ポンプや冠水を測るセンサー、電光掲示板があるかどうかも、市・東京都・国土交通省のどのページにも公表されていません。道路のことを聞く先は、市道なら府中市道路管理センター(042-340-0160)、都道なら東京都です。その東京都も、アンダーパスの冠水については自前の図を持たず、国土交通省のマップにリンクしています。
水に入ってしまった車から出るまで

小柳立体と府中栄町立体は、名前のとおり道が立体で交わる場所です。国土交通省は、道路や鉄道の下をくぐる道について「路面の高さが前後と比べて低くなっている(アンダーパス構造)ことから、急激に雨水が集まり、排水処理能力を超えた場合、道路冠水の危険性が高まります」と説明しています。
手前から見ると水面は平らに見えて、いちばん深い底は見えません。進んだ先が急に深いのが、くぐる道の怖いところです。
JAF(ジャフ)のテストでは、セダンが走れなくなる水深と、ドアが開かなくなる水深がほとんど同じでした。止まった時点で、窓を割る以外に外へ出る方法がなくなります。割れるのは横の窓です。フロントガラスは合わせガラスなので、脱出用ハンマーでも割れません。
車が動かなくなったら110番と119番へ。ドアの高さの半分を超えると、内側からはほぼ開けられません。外に出られないときは、無理に移動せず高いところで待ってください。
ほかの市はどうなっているか
同じ手順で、ほかの市区も1つずつ調べています。同じ資料でも、出てくる答えは場所ごとに変わります。
- 道路冠水マップ どこで見られるの?
- 八王子市 冠水 どこが危ないの?(東京都) 12か所で都内最多。標高95メートルから360メートルの山の市です
- 練馬区 冠水 どこが危ないの?(東京都) 10か所とも標高28メートルより高い、武蔵野台地の上にあります
- 世田谷区 冠水 どこが危ないの?(東京都) 7か所とも標高31メートルより高い台地の上にあります
- 足立区 冠水 どこが危ないの?(東京都) 7か所とも標高2メートル未満、千住旭町は海面より下です
- 相模原市 冠水 どこが危ないの?(神奈川県) 11か所とも標高57.5メートル以上。市は別に41か所を公表しています
この記事のまとめ
府中市で道路が冠水しやすい場所は7か所。都道2か所と市道5か所で、標高は39.3メートルから66.4メートルまで。国が出している県ごとのPDFでは9か所あり、地図から開ける一覧との差2か所は、どちらも矢崎町一丁目の市道でした。
市が公開している浸水の記録は1990年以降で2件だけ。どちらも1時間40ミリ台の雨です。内水氾濫マップが前提にしている153ミリの、4分の1ほどの雨で起きています。そのマップは水防法に基づかず、宅建業者向けのページでも内水は「なし」。大雨のときに市が知らせる情報にも、道路の項目はありません。
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