🗨️「「緊急安全確保」が出たら、避難所へ行けばいいのでしょうか」
行きません。避難所まで歩くほうが危ない、と市町村が判断したときに出るのが緊急安全確保です。内閣府のガイドラインはこれを「避難し遅れた居住者等がとる次善の行動」と書き、続けて「本行動をとったとしても身の安全を確保できるとは限らない」と明記しています。助かる方法ではなく、助かる見込みを少しでも上げるための最後の手段です。
[災害] この記事の要点
2026年9月21日 発表
- 大雨や台風のとき、避難するかどうかを自分で決めている人
- 川のそば・崖のそば・低い土地に住んでいる人
- 高齢の家族と暮らしていて、動き出すタイミングを迷いやすい人
先に結論
- ✓ 緊急安全確保は「避難所へ行け」ではなく「その場で、上か、崖と反対側へ」という指示
- ✓ 国のガイドラインに「必ず発令される情報ではない」と書いてある。待つ前提の情報ではない
- ✓ 同じ住民に二度は出ない。洪水で出たあとに土砂災害が迫っても、発令は繰り返されない
緊急安全確保でやることは「上へ」と「崖から離れる」の2つ
内閣府の「避難情報に関するガイドライン」(令和8年3月改定)は、緊急安全確保でとる行動の例を2つだけ挙げています。
1) 洪水等、高潮及び津波のリスクがある区域等においては、自宅・施設等の少しでも浸水しにくい高い場所に緊急的に移動したり、近隣の相対的に高く堅牢な建物等に緊急的に移動する。
2) 土砂災害のリスクがある区域等においては、自宅・施設等の崖から少しでも離れた部屋で待避したり、近隣の堅牢な建物に緊急的に移動する。
「指定緊急避難場所へ行く」という選択肢が、ここには書かれていません。緊急安全確保が出る場面は、学校や公民館へ向かう道そのものが危ない状態だからです。
法律の側も同じ書き方をしています。災害対策基本法第60条第3項は、市町村長が指示できる中身を「高所への移動、近傍の堅固な建物への退避、屋内の屋外に面する開口部から離れた場所での待避その他の緊急に安全を確保するための措置」と列挙しています。移動距離の長い行動が1つも入っていません。
避難所に行かなくていいなら、家にいれば安全ということですか?
そうではありません。ガイドラインは「移動した上階まで浸水したり、崖から離れた部屋まで土石流が流れ込むことがありえ」ると書いています。安全な行動ではなく、残っているなかで一番ましな行動という位置づけです。
住まいのリスクに対する備え
土地の履歴やリスクを知ったら、次は「起きたときにどうするか」です。最低限そろえておくと動けるものを挙げます。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
停電時は懐中電灯より、部屋全体を照らせるランタンの方が使えます。電池でも充電でも点くものだと、どちらが尽きても止まりません。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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警戒レベルの一覧と、それぞれを出す人
警戒レベルは5段階ですが、出す主体が途中で入れ替わります。レベル5・4・3は市町村長が出す避難情報、レベル2・1は気象庁が出す情報です。
| 警戒レベル | 情報の名前 | 状況 | 住民がとる行動 |
|---|---|---|---|
| 5(黒) | 緊急安全確保 (市町村長) | 災害発生または切迫 ※必ず発令される情報ではない | 命の危険。直ちに安全確保 |
| 4(紫) | 避難指示 (市町村長) | 災害のおそれ高い | 危険な場所から全員避難 |
| 3(赤) | 高齢者等避難 (市町村長) | 災害のおそれあり | 危険な場所から高齢者等は避難 |
| 2(黄) | 大雨・洪水・高潮注意報 (気象庁) | 気象状況悪化 | 自らの避難行動を確認 |
| 1(白) | 早期注意情報 (気象庁) | 今後気象状況悪化のおそれ | 災害への心構えを高める |
名前に「避難」が入っていないのは、レベル5待ちを防ぐため
レベル3は高齢者等「避難」、レベル4は「避難」指示。ところがレベル5だけ「避難」という語が消えます。ガイドラインは、その理由を正面から説明しています。
もし仮に警戒レベル5の情報名称に「避難」という表現を用いた場合、警戒レベル4避難指示との差異がわかりにくくなり、居住者等が、警戒レベル5になるまで行動しなくなる(警戒レベル5待ちになる)おそれがあるためである。
情報の名前そのものが、レベル5を待たせないために選ばれているということです。
検討の過程では「緊急危険回避」という案も出ました。これは退けられています。理由は「回避」という語が屋外へ出ることを想像させ、かえって危ないから。名前を決める段階で、読み手が外へ出てしまう可能性まで潰しにいっています。
「必ず発令される情報ではない」と国が書いている
ガイドラインの警戒レベル一覧表には、レベル5の欄にだけ但し書きが付いています。「発令される状況:災害発生又は切迫(必ず発令される情報ではない)」。本文はもう少し踏み込みます。
災害が発生・切迫している状況において、その状況を市町村が必ず把握することができるとは限らないこと等から、本情報は市町村長から必ず発令される情報ではない。
夜中に川が溢れはじめたことを、市役所がその瞬間に把握できるとは限りません。把握できなければ発令もされません。つまりレベル5が出ていないことは、危なくない証拠にならないという関係になっています。
実例を1つ。2026年9月21日6時の時点で、台風第25号が近づいていた千葉県では29市町村に警戒レベル4相当の危険度が出て、21市町村が避難指示を出していました。同じ時刻、緊急安全確保を出していた市町村は関東・東北のどこにもありません。レベル4がこれだけ広がっても、レベル5は出ていない。これが普通の状態です。
一度出たら、同じ人に二度は出ない
ここはほとんど知られていません。ガイドラインには、こう注記されています。
災害切迫時に既に警戒レベル5緊急安全確保を発令済みである場合は、災害発生を確認した場合や、異なる災害種別の複数の災害が切迫した場合(洪水が切迫し発令した後、土砂災害も切迫した場合等)でも、直ちに身の安全を確保するよう既に求めているため、同一の居住者等に対し警戒レベル5緊急安全確保を再度発令することがないよう注意する
洪水で緊急安全確保が出たあとに土砂災害が迫っても、2回目の発令はありません。「まだ次の情報が来ていないから、今は大丈夫」という読み方が成り立たない作りです。
じゃあ、もっと危なくなったことはどうやって分かるんですか?
分かりません。だからガイドラインは、市町村に対して「最終的には居住者等自らの判断に委ねざるを得ない」と書いています。判断を渡される前提で、先に決めておくほうが現実的です。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
レベル5と4のあいだに線を引くのが、国の決めた書き方
警戒レベルの一覧表を自治体が作るとき、表記の作法まで決まっています。5と4以下のあいだに区切りを入れ、そこに「警戒レベル4までに必ず避難!」と書き、その一文を波線で挟む、というものです。
理由はガイドラインに書かれています。「警戒レベル5の『緊急安全確保』は、警戒レベル3の高齢者等避難、警戒レベル4の避難指示に続き行動に関する表現であるため、警戒レベル5で行動すればよいと誤解されるおそれがある」。
レベル5は、1から5へ続く階段の一番上ではなく、階段から落ちたあとの話です。自治体のチラシで5の上に線が引かれていたら、その線は飾りではありません。
津波だけは、レベル5でも「避難指示」
ここだけ例外があります。津波は切迫度が段階的に上がる災害ではないため、津波の避難指示には警戒レベルを付けません。津波が発生・切迫した状況でも、市町村長から出るのは緊急安全確保ではなく避難指示です。
大雨のときの感覚で「まだレベル5じゃないから」と考えると、津波では最初から最後まで何も上がりません。災害の種類で情報の組み立てが違う、と割り切っておくほうが安全です。
雨が降ってから調べることと、今日のうちに決めておくこと
緊急安全確保まで来ると、残された行動は「上へ」と「崖から離れる」の2つだけになります。裏を返せば、この2つは雨の前に決めておける内容でもあります。
自宅の2階が浸水想定より上にあるのか、崖と反対側に窓のない部屋があるのか、近所に頑丈で背の高い建物があるのか。どれも住所と地図があれば、晴れている日に確かめられます。
私は、この制度でいちばん誤解されているのは「5が最上位だから、5で動けばよい」という読み方だと考えています。ガイドラインを読むと、国もそこを恐れていて、名前・表の作り方・区切り線まで使って「4までに動け」と言い続けています。レベル5は、間に合わなかった人のための欄です。
生活・仕事にどう効くか
- レベル5が出るのを待っているとき:ガイドラインは「災害が発生・切迫している状況下で市町村長から警戒レベル5緊急安全確保が発令されるとは限らない」と書いています。待っても来ないことがある情報なので、待つという選択そのものが成立しません。
- 暗くなってから外へ出ようとしたとき:ガイドラインが挙げる「避難を安全にできない可能性がある状況」には、道路の側溝や蓋が外れたマンホールへの落下、暴風による飛散物、アンダーパスでの立ち往生が並びます。レベル5はこの状態を指しています。
- 洪水で出たあと、土砂災害も迫ったとき:同じ住民に対して緊急安全確保を二度発令しないことになっています。呼びかけは繰り返されますが、「発令」は1回きりです。次の合図を待つ形で構えていると、何も来ないまま時間が過ぎます。
結局どうすればよいか
- 自宅が洪水・土砂災害・高潮のどの区域に入っているかを、住所を入れて雨が降る前に確かめる
- 寝る部屋を、浸水しにくい上の階か、崖と反対側の部屋へ移しておく
- 住んでいる市町村の防災メールやアプリに登録して、避難情報が自分の端末に届く状態にしておく
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
公式出典
- 内閣府「避難情報に関するガイドライン」(令和8年3月改定)(2026-03発表)
- 内閣府 避難情報に関するガイドラインの改定(令和8年3月)(2026年9月21日発表)
- 災害対策基本法(e-Gov法令検索)(2026年9月21日発表)
- 気象庁「2026年5月から防災気象情報が変わりました」(2026年9月21日発表)
- 気象庁 警報・注意報(2026年9月21日発表)
更新履歴
- 2026年9月21日 内閣府ガイドライン(令和8年3月改定)の本文を確認して初版を公開
※本記事は2026年9月21日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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