🗨️「3メートルの高さから落ちて亡くなったと聞くと、低いように思えます。」
法令の線は2メートルです。高さ2メートル以上で墜落の危険がある場所では、まず作業床を設けることが義務で、それが難しいときに防網と墜落制止用器具を使う、という順番になっています。3メートルは「対策が要る高さ」の側にはっきり入ります。
[事件・事故] この記事の要点
2026年9月19日 発表
- 高所で作業をする現場の管理者と作業者
- 屋根や脚立の上で自分で作業する人
- 農業・畜産の施設で作業をする人
線は「2メートル」に引かれている
労働安全衛生規則の第518条は、高さ2メートル以上で墜落の危険があるときに何をするかを定めています。読むと、順番が決まっていることが分かります。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第518条 第1項 | 高さ2メートル以上で墜落の危険があるときは、足場を組むなどして作業床を設ける |
| 第518条 第2項 | 作業床を設けることが困難なときは、防網を張り、要求性能墜落制止用器具を使わせる |
| 第521条 第1項 | 器具を使わせるときは、取付設備を設ける(事業者の義務) |
ここで見落としやすいのは、命綱が第1項ではなく第2項に書かれていることです。器具は作業床の代わりにいつでも選べるものとしては書かれていません。「床を置けないとき」の次の手という位置づけになっています。
3メートルは低くない
建物でいえば1階の屋根くらいの高さです。頭の高さの倍ほどなので、感覚としては「落ちても何とかなりそう」に見えます。しかし人は自分の体重で落ちるので、3メートルでも頭から落ちれば助かりません。法令が2メートルで線を引いているのは、そこから先は「運に任せる高さではない」という判断です。
令和6年の労働災害の死亡は全産業で746人でした。前年の755人より減って過去最少ですが、事故の型で最も多いのは今も墜落・転落で188人、全体の25.2%を占めます。業種でいちばん多いのは建設業の232人(31.1%)です。
器具の種類は高さで変わる
厚生労働省のガイドラインは、墜落制止用器具はフルハーネス型を原則としています。そのうえで、高さに応じた線が2つあります。
| 高さ | 扱い |
|---|---|
| 6.75メートル超 | 必ずフルハーネス型。胴ベルト型は使えない |
| 5メートル以下(建設作業等の一般的な使用条件) | 胴ベルト型が使える目安の上限 |
6.75メートルという半端な数字は、落ちたときに体が動く距離から出ています。自由落下の最大4メートル、ショックアブソーバが伸びる最大1.75メートル、それに1メートルを足した数です。これより低いところでフルハーネスを使うと、伸びきる前に地面に届いてしまう可能性があるため、低い場所では胴ベルト型が残されています。
器具が効かないのは「移動の瞬間」
屋根の上の作業について、厚生労働省は別のパンフレットで具体的な手順を出しています。効くのは道具そのものより、掛け方の順番のほうです。
- 作業を始める前に、垂直親綱(主綱)を1本張る。これを「墜落防止対策の要」と位置づけている
- 地上から操作棒で綱を通す方法なら、はしごを昇る前から作業が終わるまで切れ目なく止められる
- 掛け替えるときは、次の安全ブロックをつないでから、前を外す。逆にすると無防備な一瞬ができる
- 屋根の勾配が6/10以上など、屋根面を作業床とみなすのが不適切な場合は、屋根用足場などの作業床が必要
「着けていたのに落ちた」という事故の多くは、この掛け替えの一瞬で起きます。装備をそろえるだけでは足りず、どの順番で外すかまで決めておく必要がある、という話です。
家の作業でも同じ高さが出てくる
2メートルという高さは、仕事の現場だけの話ではありません。家庭の脚立の上、物置の屋根、カーポートの雪下ろし。どれも2メートルを超えます。法令は事業者に向けたものなので個人の作業には及びませんが、体が落ちる距離は同じです。
台風や大雪のあとに屋根へ上がる人が増えますが、そのときに足場も命綱もないのが普通です。上がらずに済ませる方法があるなら、それがいちばん確実な対策になります。
生活・仕事にどう効くか
- 現場の段取り:2メートル以上の作業では、まず作業床が置けないかを検討するのが順番。墜落制止用器具は「作業床を置けないとき」の次の手として規則に書かれている。
- 器具の選び方:原則はフルハーネス型。6.75メートルを超える高さでは必ずフルハーネス型になる。建設作業などの一般的な条件では、胴ベルト型が使えるのは5メートル以下が目安とされている。
- 統計:令和6年の労働災害の死亡は746人。事故の型で最も多いのが墜落・転落の188人で、全体の25.2%を占める。
結局どうすればよいか
- 2メートル以上の作業をする前に、作業床を置けないかをまず確かめる
- 器具を使うなら、取付設備がその場にあるかを先に見る(規則では設置が事業者の義務)
- 屋根の上では、昇る前に垂直親綱を張る。掛け替えは次をつないでから前を外す
公式出典
- 労働安全衛生規則 第518条・第521条(e-Gov法令検索)(2026年9月19日発表)
- 厚生労働省「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(平成30年6月22日 基発0622第2号)(2018年6月22日発表)
- 厚生労働省「令和6年 労働災害発生状況について」(2025年5月30日発表)
- 厚生労働省「足場の設置が困難な屋根上作業での墜落防止対策のポイント」(2026年9月19日発表)
更新履歴
- 2026年9月19日 初版を公開
※本記事は2026年9月19日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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