和歌山県の災害は、川の名前を追うと地域ごとに姿が変わります。紀の川下流の和歌山市は住宅地42地点の標高中央値が3.7mで、中之島3.6m、西浜1.6m。1953年の台風13号では紀の川流域で死者・行方不明者91人、床上浸水4,035戸を記録しました。南へ行くと、2011年の紀伊半島大水害で那智川流域に4時間341mmの雨が集中し、土石流と河川氾濫が重なりました。さらに串本町は、県の2026年想定で南海トラフ巨大地震の1m津波が1分で到達します。川・谷・浜の字から、洪水・土砂・津波のどれを先に見るかを分けます。
この記事でわかること
- ✓ 紀の川下流の中之島は3.6m、西浜1.6m、紀三井寺3.2m。1953年の台風13号では流域で床上浸水4,035戸
- ✓ 2011年の紀伊半島大水害は県内で死者56人・行方不明5人。那智川流域では4時間341mmの雨で土石流と河川氾濫が同時発生
- ✓ 串本町は県の2026年想定で1m津波が1分、最大津波高18m。標高4.2mの串本と41.3mのサンゴ台で色が変わる
紀の川の南側に2〜4mの市街地 中之島3.6m、西浜1.6m

2026年の地価公示の住宅地を測ると、和歌山市42地点の中央値は3.7mです。西浜1.6m、和歌浦東1.9m、砂山南2.1m、中之島3.6m。北東の栄谷は105.8mで、同じ市内でも100m以上の差があります。海南市では船尾0.9mが県内111地点で最も低い住宅地でした。
「紀の川」は奈良県から和歌山平野を横切り、紀伊水道へ出る川です。国土交通省の紀の川の洪水史は、記録を878年までさかのぼり、江戸時代だけで45回の洪水があったと整理しています。1896年の洪水では北岸の村々で約6日半、農地で10日間水が引かなかった記録があります。

紀の川下流域の減災資料によると、1953年の台風13号では死者・行方不明者91人、全壊・半壊1,546戸、床上浸水4,035戸、床下浸水7,473戸でした。いまの図に色が付く場所は、堤防整備後の想定条件で計算された範囲です。昔の被害線をそのまま写した図ではありません。
洪水想定の色が無い場所でも、津波・高潮・内水・土砂は別です。紀の川から離れた高台なら、次は斜面と造成地の地図へ切り替えます。
住まいのリスクに対する備え
土地の履歴やリスクを知ったら、次は「起きたときにどうするか」です。最低限そろえておくと動けるものを挙げます。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
停電時は懐中電灯より、部屋全体を照らせるランタンの方が使えます。電池でも充電でも点くものだと、どちらが尽きても止まりません。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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那智川は土石流と氾濫が重なった 4時間で341mm

那智勝浦町天満は3.2m、宇久井は52.9m。新宮市熊野地は4.3m、三輪崎は6.6mです。川の河口と海岸の平地、そのすぐ後ろの急斜面が1枚の地図に入ります。この地形では、水害を「川だけ」「山だけ」に分けると見落とします。
2011年9月の紀伊半島大水害について、和歌山県の被害概要は、県内で死者56人、行方不明5人、住家被害7,933棟と記録しています。大杉で1,998mm、色川で1,186mm、西川で1,152.5mm。那智川流域では9月4日0時からの4時間で341mmが降り、土石流と河川氾濫が重なりました。

国土交通省紀伊山系砂防事務所は、那智川流域で複数の土石流が発生したとして砂防堰堤の整備を進めています。図の黄色・赤は「山全体が崩れる予言」ではなく、急傾斜地の崩壊や土石流が人家へ及ぶおそれのある区域です。谷の出口、支川、橋、避難路を一緒に見ます。
読者
海から離れて標高が高ければ、那智川周辺では安全ですか。
津波から離れる方向としては有効でも、山側では土砂災害が主役になります。那智川では海岸からの距離だけでなく、谷筋と警戒区域、雨の最中に渡る橋があるかまで確認します。
熊野川は新宮の町名と県境を流れる 2011年は3,322戸が浸水
熊野川は和歌山県新宮市と三重県紀宝町の県境を流れます。新宮市熊野地は標高4.3mで、町名の「熊野」と川名が重なります。国土交通省の紀伊半島大水害の取りまとめでは、2011年に新宮市と紀宝町で浸水面積426ha、浸水戸数3,322戸。床上2,162戸、床下1,160戸でした。
県境をまたぐ川では、片側の市町の地図だけで避難を考えないことが重要です。橋が使えない場合、対岸の避難所は近くても行けません。自宅側の避難先、橋を渡らない代替経路、浸水継続時間まで確認します。

串本の津波は1分 標高4.2mとサンゴ台41.3mで色が変わる

和歌山県が2026年9月に公開した南海トラフ巨大地震の想定では、水位1mの津波到達と最大津波高は串本町1分・18m、那智勝浦町2分・14m、太地町2分・13m、白浜町3分・16m、すさみ町3分・20m、新宮市5分・13m、和歌山市45分・8mです。串本町の到達1分は、揺れが収まってから情報を検索する時間ではありません。
地価公示の住宅地では串本4.2m、西向7.3m、サンゴ台41.3m。図でも串本の市街地には3〜5mの浸水想定が重なり、高台のサンゴ台は色が切れます。ここで比べるのは「最大津波高18m」と「標高4.2m」だけではありません。家から連続して上がれる道、夜間に通れるか、橋や踏切を渡るかを現地で測ります。
県の到達時間は水位1mに達する時間、最大津波高は海岸の評価点での高さです。地図の浸水深は陸上の地面から水面までの深さで、3つは同じ数字ではありません。
「浜」「江」「島」は中央値3.0〜3.6m、「谷」は37.9m
2026年の地価公示の住宅地111地点を、町名・字名に含まれる字で集計しました。和歌山県全体の中央値は6.4mで、42地点が5m未満です。
| 字 | 地点数 | 標高の中央値 | 5m未満 |
|---|---|---|---|
| 浜 | 集計対象内 | 3.0m | 海・川・内水の図を確認 |
| 江 | 集計対象内 | 3.1m | 川口・入江の低地を確認 |
| 島 | 集計対象内 | 3.6m | 中州・河口とは限らない |
| 谷 | 8地点 | 37.9m | 1地点は5m未満。土砂の図へ切り替える |
| 県全体 | 111地点 | 6.4m | 42地点 |
「谷」は高いという集計でも、谷の底や出口は水と土砂が集まります。反対に「浜」は低い傾向でも、護岸、地盤、避難先は地点ごとに違います。字の平均で家を判定せず、自分の番地を洪水・土砂・津波の3枚へ落とします。
和歌山の災害をもう一段深く見る
- 徳島の「島」と「浦」「島」「浦」「歩危」で見る地図が変わる
- 土砂災害警戒区域の見方那智川の黄色・赤色が意味すること
- なぜ和歌山県は地震が多い?地震と津波を分けて理解する
自分の住所で見る順番
- 紀の川沿いは洪水の浸水深と浸水継続時間、高潮・内水を分けて確認する
- 那智川・熊野川沿いは、川の洪水、谷筋の土砂、橋を渡らない避難経路を同時に見る
- 串本・那智勝浦・新宮の沿岸は、津波到達時間より先に高台へ着けるか実際に歩く
- 地図の色が切れる境目で、擁壁、沢、階段、夜間照明、通行止めの可能性を現地確認する
和歌山では、紀の川の洪水、那智川の土石流、熊野川の広域氾濫、串本の津波が1本の県内で隣り合います。地名と川名を見たら、標高だけで終わらせず、その住所で主役になる災害へ地図を切り替えてください。
この記事の集計条件と出典
標高は国土地理院の標高APIと数値標高モデル(DEM5Aを優先し、欠測部を10mメッシュで補完)による地表の高さです。建物や堤防の高さは含みません。住宅地の集計は国土数値情報「地価公示」2026年の和歌山県111地点を対象にしました。洪水・津波・土砂の図は国土地理院「重ねるハザードマップ」の配信タイルを使い、2026年9月6日に作成しています。
災害の数値は、国土交通省和歌山河川国道事務所の紀の川の歴史と紀の川下流域の減災資料、和歌山県の紀伊半島大水害の被害概要、国土交通省の2011年災害取りまとめ、和歌山県の2026年南海トラフ巨大地震想定によります。想定や区域は更新されるため、契約・避難計画では市町の最新版も確認してください。
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