和歌山県で地震が多いのは本当です。県内で震度1以上を観測する地震は1年に100回前後、和歌山市の有感地震は最近10年間で年平均19回程度にのぼり、日本で最も有感地震回数の多い地域の一つだと国の資料に書かれています。
ただし、その揺れは南海トラフの地震ではありません。深さ数kmより浅いところで起きている、別の地震です。
この記事でわかること
- ✓ 国が原因に挙げているのは2つ。プレートの沈み込む角度の違いと、「堅いけれども脆い」古い時代の岩石
- ✓ 中央構造線との関係は「まだはっきりとは分かっていません」と国の資料が明言している
- ✓ 揺れの確率は同じ市の中で10倍ちがう。和歌山市の小雑賀は71.7%、加太は5.7%
「南海トラフの前兆ですか?」に、国はどう答えているか
和歌山県北部で地震が続いた2024年10月、Yahoo!知恵袋にこんな質問が投稿されています。「南海トラフの前兆ですか?」「超怖いです」。地震そのものより、これが何かの始まりなのかを知りたくて検索している人が多い、ということです。
結論を先に書きます。気象庁も地震調査研究推進本部(地震本部)も、和歌山市付近で毎日のように起きている地震と、南海トラフの巨大地震を、同じものとして扱っていません。起きている場所も深さも違うからです。
気象庁 和歌山地方気象台は、和歌山県とその周辺で起きる地震を3つのパターンに分けて説明しています。

毎日のように揺れているのは①です。深さは数kmより浅く、規模は最大でもM5程度。南海トラフの巨大地震は③で、プレート境界がずれる別の現象です。
読者
地震が続くと、大きいのが近いということではないんですか?
地震本部の資料はそう書いていません。近年この地域に大規模な地震は知られていないので、この地震活動は特定の大地震の余震ではありませんと明記されています。
年100回・年19回・年1回は、それぞれ別の数字
「和歌山は年100回も地震がある」という言い方をよく見ます。ただ、この100という数字は和歌山市の数字ではありません。3つの数字が混ざりやすいので、先に分けておきます。
| 数字 | 何の回数か | 出典 |
|---|---|---|
| 年100回前後 | 和歌山県内で震度1以上を観測する地震。そのほとんどが震度1か震度2 | 気象庁 和歌山地方気象台 |
| 年平均19回程度 | 和歌山市における有感地震回数(最近の10年間) | 地震調査研究推進本部 |
| 年1回程度 | 和歌山県内で震度4以上を観測する地震 | 気象庁 和歌山地方気象台 |
体で感じるのは月1回以上、家具が動くような震度4になるのは年に1回。これが和歌山の地震活動の実際の姿です。回数の多さは震度1と震度2が作っています。
国が挙げている原因は2つ プレートの角度と、「堅いけれども脆い」岩石
では、なぜ和歌山市付近だけこれほど地震が起きるのか。地震本部の「和歌山県の地震活動の特徴」は、原因として考えられているものを2つ挙げています。
1つめは地下の形です。この付近の東側と西側では、フィリピン海プレートの沈み込む角度が違っていて、地下構造が複雑になっています。
2つめは岩石の性質です。この付近の深さ数kmまでの浅いところには、堅いけれども脆い性質を持つ、古い時代の岩石が分布しています。堅いのに脆い、という組み合わせが効いています。力が加わったときに、粘って変形するのではなく、割れてずれる岩石だということです。
この2つが、和歌山市付近の定常的な地震活動の原因と考えられています。実際、地震が発生する深さは数kmよりも浅いところに限られていて、この岩石が分布する深さと一致します。
震源が浅いことは、感じる回数にも直結します。同じM3でも、深さ50kmで起きれば地表はほとんど揺れませんが、深さ5kmなら真上の人は揺れを感じます。和歌山市の年19回は、地震が多いことに加えて、浅いから届いている回数でもあります。
読者
最近になって増えたということですか?
同じ資料に「特に1920年以降報告回数が増えたことが知られています」とあります。100年前から続いている活動で、ここ数年の変化ではありません。
揺れた瞬間に、部屋の中で起きることを減らすもの
地震のけがの3〜5割は、屋内の家具類の転倒・落下・移動によるものです(東京消防庁)。壁にネジを打てない部屋でもできる手から並べます。
東京消防庁の実験では、L型金具で壁に直接ネジ止めするのが最も効果が高いとされています。賃貸で壁に穴を開けられない部屋での代わりがこれです。家具の両端の側板部を、できるだけ奥で突っ張ります。天井側にも強度が要ります。
突っ張り棒だけだと効きが落ちます。同じ資料が、ポール式にはストッパー式や粘着マット式の併用をすすめています。マット単独でも効果は小さいので、上の棒と2つで1組と考えてください。
お湯でも水でも作れて、袋のままおにぎりの形になります。断水すると鍋も食器も洗えません。洗い物の出ない形を先に入れておくと、水の減り方が変わります。
飲料水は1人1日3L。4人家族の1週間分で84L=2Lボトル42本なので、6本入りだと7ケースぶんです。5年保存タイプなら入れ替えの手間が減ります。
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中央構造線との関係は「まだはっきりとは分かっていません」
和歌山市付近の地震活動が起きている地域の北部には、中央構造線断層帯があります。日本を横断する巨大な断層帯なので、これが原因だと考える人が多い場所です。
ところが地震本部は、両者を結びつけていません。理由は力の向きです。和歌山市付近の地震活動を起こす力は東西方向の圧縮力、中央構造線断層帯の活動を起こす力は北西−南東方向の圧縮力で、向きが違います。そのうえで「両者の関係についてまだはっきりとは分かっていません」と書かれています。
和歌山で毎日起きている地震は、国の資料の中でもまだ全部の説明がついていません。
県内の主要な活断層と海溝型地震の評価は、次のとおりです。
| 地震 | 想定規模 | 30年以内の発生確率 |
|---|---|---|
| 中央構造線断層帯 根来区間 | M7.2程度 | 0.008%〜0.3%(Aランク) |
| 中央構造線断層帯 紀淡海峡−鳴門海峡区間 | M7.5程度 | 0.005%〜1%(A*ランク) |
| 中央構造線断層帯 五条谷区間 | M7.3程度 | 不明(Xランク) |
| 南海トラフで発生する地震 | M8〜9クラス | 60%〜90%程度以上(Ⅲランク) |
「Xランク=不明」は、確率が低いという意味ではありません。前回の活動時期などのデータが足りず、確率を出せていないという意味です。算定基準日は2026年1月1日。
M5程度でも、和歌山市ではブロック塀が倒れて1人が重傷を負っている
①の地震は最大でもM5程度です。ただ、小さいから何も起きない、という話にはなっていません。
気象庁 和歌山地方気象台は、平成18年5月15日の和歌山県北部の地震で、和歌山市に重傷者1名、ブロック塀の倒壊1件、ガラスの破損2件の被害が出たと記録しています。
震度も、いつも1や2で収まるわけではありません。2011年7月5日の和歌山県北部の地震はM5.5・深さ7kmで最大震度5強、2021年3月5日の地震はM4.6・深さ4kmで最大震度5弱でした。規模が小さくても、震源が数kmと浅いために、真上では強く揺れます。
地震本部も「その規模は最大でもM5程度ですが、震源がごく浅いために、局所的に被害が生じたこともあります」と書いています。
県内に大きな被害を出してきたのは、③の南海トラフ
回数を作っているのは①ですが、被害を作ってきたのは③です。
南海トラフ沿いではM8クラスの巨大地震がほぼ100〜200年間隔で繰り返し発生してきました。和歌山県では、これらの地震の震源域が内陸の一部まで達するため、強い揺れになります。1946年の南海地震(M8.0)では県内のほぼ全域で震度5相当の揺れが観測され、和歌山県では死者・行方不明者269人、住家全壊969棟という記録が残っています。津波の高さは、高いところでは10m以上になることがあります。
震度5相当で269人が亡くなっている、という並びを見落とさないでください。①の年19回と③は、同じ「地震」でも桁が違います。
南海トラフで発生する地震の30年以内の発生確率は、地震本部の最新の評価(令和7年9月26日改訂)で60%〜90%程度以上(すべり量依存BPT(ブラウン運動通過時間)モデル)と20%〜50%(BPTモデル)の併記です。和歌山県のホームページの「よくある質問」には80%程度と書かれています。
確率は評価の方法と評価日で変わります。ここでは地震本部の最新の改訂と、和歌山県の「よくある質問」の表記を両方そのまま並べました(どちらも2026年9月2日時点の表示)。
県内全域が「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定され、沿岸部の19市町は「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」にも指定されています。
同じ市の中で、揺れの確率は10倍ちがう
ここまでは県の話でした。ただ、住む場所を決めるときに効いてくるのは、県よりずっと細かい単位です。
防災科学技術研究所のJ-SHIS(ジェイシス・地震ハザードステーション)2024年版で、和歌山県内の地点を約250m四方の区画ごとに引くと、同じ市の中で数字が割れます。

和歌山市の小雑賀は71.7%、同じ和歌山市の加太は5.7%。海南市の日方は72.6%、同じ海南市の大野中は7.3%です。
差は地面にあります。71%台の2地点はどちらも微地形区分が「三角州・海岸低地」で、地盤の固さを表す値(表層30mの平均速度)は毎秒207.5m、揺れの増幅率は1.75倍。6〜7%台の2地点は「山地」で、毎秒775.5m、増幅率0.57倍でした。同じ市の中で、地面の固さが3倍以上ちがいます。
これは当サイトだけの見立てではありません。地震本部の同じページにも、県北部の紀ノ川河口部や御坊など地盤がやや軟弱な場所では、周辺より揺れが強くなる可能性があると書かれています。
この確率は約250m四方の区画1つの値で、市区町村の平均ではありません。数百m動くだけで数字は変わります。版によっても変わる(2020年版と2024年版で値が違う)ため、比べるときは版と取得日をそろえてください。
読者
県庁所在地どうしで比べると、和歌山はどのあたりですか?
同じJ-SHIS 2024年版で47都道府県庁所在地の代表点を並べると、和歌山市は震度6弱以上70.8%で5位でした。上は水戸80.6%、高知77.7%、徳島77.4%、静岡72.8%です。
「地震が多い」で和歌山を外すかどうか
ここからは私の見方です。和歌山を住まいの候補から外す理由として「地震が多いから」を使うのは、筋がよくないと考えています。理由は2つあります。
ひとつは、年100回の中身がほとんど震度1と震度2で、震度4以上は年に1回程度だからです。感じる回数の多さと、家が壊れる揺れの確率は別の話です。
もうひとつは、外したところで同じ問題が残るからです。南海トラフの揺れは県境で止まりません。1946年には県内のほぼ全域が震度5相当でした。県を変えるより、敷地の地面と、その家が建った年を見るほうが実際的だと考えます。
年に19回揺れる土地に住むというのは、その19回で自分の家が何回どれくらい揺れるかを知っておく、ということでもあります。その答えは県ではなく、250m四方の地面のほうにあります。
よくある質問
和歌山県はなぜ地震が多いのですか
和歌山市付近で定常的に地震活動が活発なためです。地震調査研究推進本部は原因として、この付近の東側と西側でフィリピン海プレートの沈み込む角度が違い地下構造が複雑になっていること、深さ数kmまでの浅いところに堅いけれども脆い性質を持つ古い時代の岩石が分布していることの2つを挙げています。
和歌山の地震は南海トラフの前兆ですか
地震本部の資料には、近年この地域に大規模な地震の発生は知られていないため、この地震活動は特定の大地震の余震ではないと書かれています。和歌山市付近の浅い地震はプレートの内側で、南海トラフの巨大地震はプレート境界で起きるもので、深さも規模も違います。
和歌山県では地震が年に何回くらいありますか
和歌山県内で震度1以上を観測する地震は1年に100回前後で、そのほとんどが震度1か震度2です。震度4以上は平均すると年に1回程度。和歌山市に限った有感地震回数は、最近の10年間で年平均19回程度です。
和歌山市はどれくらい揺れる場所ですか
J-SHIS 2024年版で47都道府県庁所在地の代表点を比べると、和歌山市は今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が70.8%で、47市のうち高いほうから5位でした(2026年9月2日取得)。ただし市内でも地点によって5.7%から71.7%まで割れます。
和歌山県で家を探すとき、何を確認すればいいですか
県単位の確率ではなく、敷地の地盤と揺れの確率、それに津波・浸水・土砂の想定を住所単位で確認してください。紀ノ川河口部や御坊のように地盤がやや軟弱な場所は、同じ地震でも周辺より強く揺れる可能性があると国が指摘しています。
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出典
地震調査研究推進本部「和歌山県の地震活動の特徴」(有感地震回数、地震活動の原因、中央構造線断層帯との関係、南海地震の被害、活断層と海溝型地震の30年確率。算定基準日2026年1月1日) https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_kinki/p30_wakayama/
気象庁 和歌山地方気象台「和歌山県及び周辺で発生する地震」(3つのパターン、震度1以上は年100回前後、震度4以上は年1回程度、2011年と2021年の地震) https://www.data.jma.go.jp/wakayama/bousai/phenomenon/wakayamanojishin.html
気象庁 和歌山地方気象台「和歌山県及び周辺の特徴的な地震」(平成18年5月15日の地震の被害) https://www.data.jma.go.jp/wakayama/bousai/phenomenon/tokuchoutekinajishin.html
地震調査研究推進本部「『南海トラフの地震活動の長期評価』を一部改訂しました」(令和7年9月26日公表・30年確率) https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/subduction_fault/summary_nankai/
和歌山県「南海トラフで発生する地震とは?」(80%程度の表記) https://www.pref.wakayama.lg.jp/faq/answer/faq_i30118.html
防災科学技術研究所 J-SHIS「確率論的地震動予測地図」2024年版・平均ケース・全地震、および表層地盤データ(微地形区分・表層30mの平均速度・増幅率) https://www.j-shis.bosai.go.jp/
国土地理院 住所検索API(各地点の緯度経度) https://www.gsi.go.jp/
地点ごとの確率と地盤の値は、当サイトが2026年9月2日にJ-SHISから1地点ずつ取得したものです。約250m四方の区画の値で、市区町村の平均値ではありません。
本記事の確率は特定の建物の安全性を保証するものではありません。売買や建築の判断では、自治体の窓口と最新の指定図面を必ず確認してください。


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