三重県には、同じ「長島」でも災害の読み方が違う2つの町があります。木曽三川の河口にある桑名市長島町出口は標高−1.2m。高潮・洪水・内水を分けて見る輪中の町です。熊野灘に面する紀北町東長島は3.1mで、県の想定では紀伊長島港の名倉地区に津波が11分で到達し、最大津波高は10.1mです。その間の津市には雲出川が流れ、1959年の伊勢湾台風で3,053戸、1982年8月の台風10号で1,426戸が浸水しました。地名は災害の答えではありませんが、どの川・海・斜面の地図を先に開くかを教える入口になります。
この記事でわかること
- ✓ 桑名市長島町出口と木曽岬町栄はともに標高−1.2m。木曽三川の堤防と排水機場に守られ、洪水・高潮・内水の3枚を分けて見る土地
- ✓ 雲出川下流の雲出本郷町は1.6m。1959年は3,053戸、1982年は1,426戸が浸水し、いまも河口の市街地に洪水想定の色が付く
- ✓ 紀北町東長島は3.1m。紀伊長島港の名倉地区には県想定で津波が11分、尾鷲は年平均約4,000mmの多雨地帯で、津波と土砂を同時に見る
木曽三川の「長島」は堤防の内側 出口−1.2m、又木−1.0m

長島町は、木曽川と長良川の間に細長く伸びる土地です。2026年の地価公示の住宅地を国土地理院の標高APIで測ると、長島町出口−1.2m、又木−1.0m、葭ケ須−0.1m。隣の木曽岬町も栄−1.2m、白鷺−0.2m、見入流作0.9mで、住宅地7地点の中央値は−0.2mでした。川越町高松は0.0m、豊田一色0.1m、北福崎0.6mです。
国土交通省の長島排水機場の説明は、長島輪中では地盤沈下が進み、堤防が無ければ満潮時にほとんど全域が海面より低くなると説明しています。川の堤防で外水を止めても、輪中内に降った雨は自然には流れにくいため、排水機場で木曽川へ出します。「長島」は水に囲まれた形を示し、暮らしを支えるのは堤防とポンプです。

1959年9月26日の伊勢湾台風では、高潮が木曽三川河口から伊勢湾沿岸を襲いました。三重県議会の被害検証にある現在の行政区分別集計は、桑名市460人、木曽岬町314人、川越町170人、四日市市113人の死者です。これは「川の洪水」と一括りにせず、高潮の想定図も開く理由です。
色が付いていることは、毎回その深さまで浸かるという意味ではありません。最大クラスの想定条件での範囲と深さです。堤防・水門・排水機場の整備状況、洪水・高潮・内水の別を自治体の最新地図で確かめてください。
住まいのリスクに対する備え
土地の履歴やリスクを知ったら、次は「起きたときにどうするか」です。最低限そろえておくと動けるものを挙げます。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
停電時は懐中電灯より、部屋全体を照らせるランタンの方が使えます。電池でも充電でも点くものだと、どちらが尽きても止まりません。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
※ 本記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。紹介している商品は、記事の内容に関連するものを編集方針にもとづいて選んでいます。Amazonのアソシエイトとして、おかあさんのおうちは適格販売により収入を得ています。
雲出川は津市南部を流れる 雲出本郷町1.6mに洪水の色

「雲出」は川の名前と町名の両方に残っています。津市雲出本郷町の住宅地は標高1.6m、海岸町0.9m。対して南が丘は40.8mです。図では雲出川沿いと伊勢湾側の低地に洪水想定の色が付き、丘へ上がると色が切れます。
国土交通省の雲出川流域の資料で、主要な浸水実績は次のとおりです。
| 年・原因 | 浸水面積 | 浸水戸数 |
|---|---|---|
| 1959年・伊勢湾台風 | 2,531ha | 3,053戸 |
| 1982年・台風10号 | 977ha | 1,426戸 |
| 2004年・台風21号 | 786ha | 120戸 |
| 2014年・台風11号 | 454ha | 3戸 |
| 2017年・台風21号 | 419ha | 記載なし |
浸水面積と戸数が同じ動きをしないのは、降り方、破堤・越水の場所、土地利用、河川改修が毎回違うからです。「雲出川」という名前を見たら、川からの洪水だけでなく、海岸側の高潮と雨水が排水しにくい内水も別に確認します。
読者
長島町も紀伊長島も「長島」です。同じような土地なのでしょうか。
同じ字でも別物です。北の長島町は木曽三川の輪中で、洪水・高潮・内水が中心。南の紀伊長島は山が海まで迫る港町で、津波と土砂が中心です。地名だけで安全・危険を決めず、地形と災害の種類まで開きます。
紀伊長島は津波11分 尾鷲は年平均約4,000mmの雨

紀北町東長島は3.1m、海野5.1m。尾鷲市小川東町は7.8m、瀬木山町6.7mです。北勢の長島より高くても、海岸の平地が狭く、背後には急な山があります。三重県の2014年津波浸水想定の地点別表では、過去最大クラスの地震で水位20cmの津波が紀伊長島港の名倉・長島・道瀬にいずれも11分で到達し、最大津波高は名倉10.1m、長島8.8m、道瀬10.4mです。

ここで「最大津波高」と「浸水深」を混ぜないことが大切です。最大津波高は海岸評価点での海面の高さ、浸水深は陸上の地面から水面までの深さです。図では東長島の海岸低地に5〜10m、小川東町周辺に3〜5mの浸水想定が重なります。

尾鷲は津波だけの町ではありません。津地方気象台の三重県の気候特性は、尾鷲の年平均降水量を約4,000mmとし、全国のアメダスで4番目に多いと説明しています。2004年9月の台風21号では、尾鷲で1時間133.5mm、期間雨量863mm、紀北町海山の三戸で1,180mmを観測しました。尾鷲市には土砂災害警戒区域324か所、特別警戒区域299か所があります(三重県の指定状況、閲覧時点)。「海から遠い」「標高が高い」だけでは、斜面側の土砂リスクを消せません。
「浦」「浜」「津」「島」を集計すると中央値は2.6〜4.4m
2026年の地価公示のうち、三重県の住宅地286地点を町名・字名に含まれる字で集計しました。地名の字は防災判定ではありませんが、海・川・高台のどの地図から見るかを決める手掛かりになります。
| 字 | 地点数 | 標高の中央値 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 浦 | 集計対象内 | 2.6m | 港・入江。津波と高潮を先に確認 |
| 浜 | 集計対象内 | 2.6m | 海岸低地。高潮・津波・液状化を確認 |
| 津 | 集計対象内 | 2.8m | 港や渡し場。川・海・内水を分ける |
| 島 | 集計対象内 | 4.4m | 輪中・中州とは限らない。周囲の川を確認 |
| 丘 | 集計対象内 | 48.8m | 高くても斜面・造成地・避難路を確認 |
| 県全体 | 286地点 | 15.4m | 80地点が5m未満 |
長島町と紀伊長島の比較が示すように、同じ「島」でも災害は同じではありません。地名は入口、標高は地面の高さ、ハザードマップは想定条件下の災害の広がりです。この3つを重ねたときに初めて、住所ごとの避難方向が見えます。
三重の災害をもう一段深く見る
- 「輪中」ってなに?木曽三川と水屋長島町の堤防と暮らしを、輪中の仕組みから読む
- 徳島の「島」と「浦」川の中州、海辺、山の地名で見る災害が変わる
- 土砂災害警戒区域の見方イエローゾーン・レッドゾーンと建築時の注意
自分の住所で見る順番
- 北勢の輪中は、洪水・高潮・内水を1枚ずつ開く。色が無い災害を「安全」と読み替えない
- 雲出川沿いは、洪水の浸水深と浸水継続時間、指定避難所までの経路を確認する
- 紀伊長島・尾鷲は、津波の到達時間と浸水深、土砂災害警戒区域、高台までの徒歩時間を同時に見る
- 現地では堤防・水門・排水機場・擁壁・沢・避難階段を歩いて確かめる
三重の「長島」は、名前が同じでも片方は川と高潮、片方は津波と土砂です。住所を1点まで絞り、災害ごとに地図を切り替えることが、地名のヒントを防災に変える手順です。
この記事の集計条件と出典
標高は国土地理院の標高APIと数値標高モデル(DEM5Aを優先し、欠測部を10mメッシュで補完)による地表の高さです。建物や堤防の高さは含みません。住宅地の集計は国土数値情報「地価公示」2026年の三重県286地点を対象にしました。高潮・洪水・津波・土砂の図は国土地理院「重ねるハザードマップ」の配信タイルを使い、2026年9月6日に作成しています。
災害の数値は、国土交通省中部地方整備局の長島排水機場、雲出川水系流域委員会資料、三重県の津波浸水想定調査報告書、津地方気象台の2004年台風21号の大雨によります。想定や区域は更新されるため、契約・避難計画では市町の最新版も確認してください。
Googleで「おかあさんのおうち」の新着を優先表示する
災害・道路・住まいの新しい記事がGoogleのトップニュースに出やすくなります。ボタン1回で登録できます。


コメント