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準工業地域VS住居地域

結論から書きます。同じ市区町村の中で、専有面積と築年をそろえて中古マンションをくらべると、準工業地域の値段は住居地域の100.1でした。国が公開している取引記録167,037件のうち、条件に合う83市区町村で数えた結果です。差額は60m²の部屋に直して2万5,000円。

中古戸建ても100.6で、ほぼ同じ。土地だけが95.2で、準工業地域のほうが安く売れています。安いのは土地までで、その上に家が建つと差は消えます。

この記事でわかること

  •  商業地域122.8・近隣商業108.3・工業地域107.2と用途地域は値段に出るのに、準工業地域だけが100.1(住居系=100)
  •  土地は95.2でも、準工業地域の88.2%は容積率200%で建てられる床が2倍以上。戸建てになると100.6で並ぶ
  •  住居地域と準工業地域を分けている線は「工場の可否」ではなく「作業場の床面積50m²」(建築基準法 別表第二)
目次

生の数字だと、準工業地域のマンションのほうが高い

使ったのは国土交通省が四半期ごとに公開している不動産取引価格情報です。2023年1〜3月期から2026年1〜3月期までの取引から、用途地域の記載があるものを取り出しました。

中古マンションは167,037件。そのうち準工業地域が19,730件で、11.8%を占めます。商業地域が31.7%、近隣商業地域が11.0%、第1種住居地域が14.6%、第1種低層住居専用地域は2.6%でした。

中古マンションの半分以上は、住居系ではない用途地域に建っています。「準工業地域のマンション」は珍しいものではなく、およそ9戸に1戸がそうです。

専有30〜120m²にしぼって、m²単価の中央値を用途地域ごとに出すとこうなります。

用途地域 m²単価の中央値 築年数の中央値 専有面積の中央値
商業地域 628,571円 21年 60m²
準工業地域 514,286円 25年 65m²
近隣商業地域 500,000円 24年 65m²
工業地域 436,364円 22年 65m²
住居系(7地域) 366,667円 28年 70m²

準工業地域は1m²あたり514,286円、住居系は366,667円。準工業地域のほうが15万円近く高い。

同じ市区町村の中で比べても向きは変わりません。両方に15件以上ある187市区町村で比の中央値を取ると1.059で、準工業地域のほうが高い市区町村が112、全体の59.9%でした。

読者

準工業地域は安いと聞いていたのに、高いほうに出るんですか。

おかあさん

建っているマンションが違うんです。準工業地域のマンションは築年が新しく、住居系のマンションは古いものが多い。その差を見ているだけで、用途地域の差ではありません。

築年の分布を並べると、準工業地域は築10年以内が15.7%、築31年超が34.8%。住居系は築10年以内が10.9%、築31年超が42.8%です。容積率300%の物件は準工業地域で24.2%、住居系では8.7%でした。

工場や倉庫が退いた跡にまとまった敷地が出て、そこに新しい大きなマンションが建つ。これは私の読みですが、築年と容積率の分布はそれと合っています。

だから、条件をそろえないと何も分かりません。

住宅の屋根が続く先に工場の煙突と設備が見える日本の街並み
中古マンションの11.8%、中古戸建ての5.8%が準工業地域で取引されています(写真: Pexels)

築年と広さをそろえると、差は0.1%になる

専有50〜80m²・築2000年以降にそろえ、市区町村ごとに準工業地域と住居系それぞれの中央値を出して比を取り、比の中央値を見ました。両方に15件以上ある83市区町村が対象です。

結果は1.001。住居系を100とすると準工業地域は100.1で、差はほぼゼロです。

同じ数え方を他の用途地域にも当てると、準工業地域だけが特別だと分かります。

用途地域(住居系=100) 対象市区町村 値段
商業地域 150 122.8
近隣商業地域 97 108.3
工業地域 32 107.2
準工業地域 83 100.1
同じ市区町村で住居系用途地域と比べたマンションの1m²単価。住居系を100として準工業100.1、工業107.2、近隣商業108.3、商業122.8

商業地域は22.8%高く、近隣商業は8.3%、工業地域でさえ7.2%高い。用途地域が値段に出ないわけではありません。商業地域は88.0%の市区町村で住居系より高く、差額の中央値は1m²あたり110,476円、60m²の部屋で約663万円になります。

準工業地域だけが、住居系とぴったり同じ値段でした。差額の中央値は1m²あたり417円、60m²で2万5,000円。中古マンション1戸の値段からすれば、消えてしまう額です。

築年帯で分けても動きません。

築年帯(専有50〜80m²) 対象市区町村 準工業地域(住居系=100)
築0〜10年 19 99.2
築11〜20年 31 99.0
築21〜30年 52 100.0
築31〜45年 44 99.3

新しくても古くても99〜100。市区町村より細かく、同じ町名の中だけで比べた29町でも98.3でした。立地をそろえても差は出ません。

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「住居系」は第1種・第2種低層住居専用地域、第1種・第2種中高層住居専用地域、第1種・第2種住居地域、準住居地域の7つをまとめたものです。準工業地域を第1種住居地域だけと比べても、中古戸建てで97.7と、差は数%の中に収まりました。

ただし全国の中央値が100.1というだけで、市区町村ごとに見れば割れます。83市区町村のうち準工業地域のほうが高いのが42(50.6%)、10%超安いのが22(26.5%)、20%超安いのが10(12.0%)。

準工業地域のほうが高い 準工業地域のほうが安い
神奈川県相模原市南区 +56.1% 埼玉県草加市 −28.2%
神奈川県大和市 +38.9% 兵庫県神戸市東灘区 −27.6%
大阪府和泉市 +38.8% 香川県高松市 −26.4%
神奈川県鎌倉市 +38.1% 東京都豊島区 −26.2%
埼玉県川口市 +36.5% 大阪府茨木市 −23.9%

大阪府の中でも、和泉市では準工業地域のマンションが38.8%高く、茨木市では23.9%安い。同じ府で向きが逆です。「準工業地域のマンションは価値が下がる」と一言で言えるものではなく、その市で実際にどうなっているかを見るしかありません。

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同じ取引データ・同じ集計条件

戸建ては100.6、土地だけが95.2

中古戸建て(宅地(土地と建物))は347,076件で、準工業地域は20,038件、5.8%です。マンションの11.8%より低く、第1種低層住居専用地域が22.3%、第1種住居地域が20.6%と、こちらは住居系が主役になります。

住宅地・敷地50〜400m²で生の中央値を出すと、準工業地域は2,800万円、住居系も2,800万円。築年数の中央値はどちらも18年でした。敷地は準工業地域が130m²、住居系が150m²で、準工業地域のほうが20m²狭い。

敷地100〜200m²・築2000年以降にそろえた62市区町村で、比の中央値は1.006。住居系を100とすると100.6です。準工業地域のほうが高いのが31(50.0%)、10%超安いのが16(25.8%)でした。

土地(宅地(土地))は260,633件で準工業地域が15,194件、5.8%。住宅地・面積50〜400m²の生の中央値は準工業地域が1m²あたり76,923円、住居系が83,333円。面積100〜200m²にそろえた53市区町村で比の中央値は0.952、住居系を100とすると95.2でした。10%超安い市区町村が24で45.3%を占め、土地だけは「準工業地域は安い」がある程度当たっています。

読者

土地は安いのに、家になると同じ値段。おかしくないですか。

おかあさん

同じ広さの土地で、建てられる床の広さが違うんです。安い土地に大きい家が建つので、できあがりの値段が並びます。

第1種低層住居専用地域と直接くらべると、はっきり出ます。土地(面積100〜200m²)は準工業地域が94.0で6%安い。ところが中古戸建て(敷地100〜200m²・築2000年以降)は106.0で、準工業地域のほうが6%高い。

理由は建蔽率と容積率です。準工業地域の取引の88.2%は建蔽率60%・容積率200%の土地でした。第1種低層住居専用地域は50%・100%が34.5%、50%・80%が25.1%、40%・80%が19.1%で、容積率80〜100%が8割近くを占めます。

敷地150m²なら、容積率200%で延べ床300m²まで、80%なら120m²までです。同じ敷地で建てられる床が2倍以上違う。土地の単価が6%安くても、上に乗る家が大きいので、戸建てとして売られる値段は逆転します。

「準工業地域の土地は安い」と「準工業地域の家は安い」は、同じことを言っていません。土地を買って建てる人が得をしているのは、単価ではなく、建てられる床の広さのほうです。

市区町村ごとの実例です。敷地100〜200m²・築2000年以降の中古戸建てで、住居系を100としたときの準工業地域の値段を並べます。

準工業地域のほうが高い 準工業地域のほうが安い
東京都足立区 +73.9% 神奈川県藤沢市 −28.3%
東京都板橋区 +55.4% 大阪府泉大津市 −27.7%
東京都葛飾区 +50.9% 大阪府和泉市 −26.5%
愛知県豊川市 +32.1% 岡山県倉敷市 −23.5%
愛知県名古屋市西区 +26.1% 埼玉県上尾市 −22.4%

和泉市がもう一度出てきます。マンションでは準工業地域が38.8%高く、戸建てでは26.5%安い。同じ市で、建物の種類が変わると向きが逆になります。足立区も同じで、戸建ては73.9%高いのにマンションは4.4%安い。

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市区町村の中でも町ごとの地価差は残ります。足立区の+73.9%は準工業地域57件と住居系236件の中央値の比で、区内のどの町の取引が混じったかで動く数字です。「準工業地域だからこれだけ高い」と読まずに、その町の実際の取引を見てください。

同じ市区町村の中でそろえて比べる、という数え方は私道VS公道南向きVS北向きでも使っています。私道は2.2%、方位は約7%。用途地域の準工業は0.1%で、この3つの中でいちばん小さい差でした。

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住居地域と準工業地域の線は「工場の可否」ではなく「作業場50m²」

値段が同じなら、何が違うのか。建築基準法の別表第二を読みます。

第2種住居地域で建ててはならない建築物は(へ)の欄にあり、その二号がこれです。

> 原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計が五十平方メートルを超えるもの

第1種住居地域(ほ)は一号で「(へ)項第一号から第五号までに掲げるもの」を引き継いでいるので、同じ線が効きます。準住居地域(と)も二号で50m²の線を引き、作業場150m²以下の自動車修理工場だけを除いています。

つまり住居地域でも、作業場が50m²以下の工場は建ちます。住居地域は工場ゼロの地域ではありません。

準工業地域(る)で建ててはならないのは3つだけです。一号が「次に掲げる事業(略)を営む工場」で、(一)火薬類の製造、(二)消防法の危険物の製造、(三)マッチの製造、(四)ニトロセルロース製品の製造と続き、(三十一)まで列挙されています。製紙・パルプ、製革、セメント、金属の溶融・精練、石綿製品などが並びます。二号が「危険物の貯蔵又は処理に供するもので政令で定めるもの」、三号が「個室付浴場業に係る公衆浴場」。

列挙された危険な工場と危険物の貯蔵、個室付浴場。それ以外はすべて建ちます。作業場が50m²を超える工場も、150m²の工場も、住宅も学校も病院もホテルも、準工業地域には建ちます。

読者

準工業地域には学校や病院が建てられない、と読んだことがあります。

おかあさん

それは工業地域の話です。別表第二の(を)工業地域の欄に「五 学校(幼保連携型認定こども園を除く。)」「六 病院」「二 ホテル又は旅館」が禁止として並んでいます。準工業地域(る)には学校も病院も出てきません。

用途地域ごとに建てられる建物の対応表。第1種低層・第1種住居・準工業・工業の4列で、住宅・学校・病院・ホテル・パチンコ店・工場・危険物の製造の可否

条文の頭にある目的の書き方も、住居地域と準工業地域で違います。都市計画法9条です。

> 第一種住居地域は、住居の環境を保護するため定める地域とする。(5項)

> 準工業地域は、主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域とする。(11項)

住居地域は「住居の環境を保護する」地域。準工業地域は「工業の利便を増進する」地域で、住居を守る文言は1文字もありません。建っている家の数がどれだけ多くても、法律上そこは工場のために定めた地域です。

シャッターを閉めた平屋の建物が道路に面している日本の街角
準工業地域では、作業場50m²を超える工場が隣に建っても用途地域の制限では止められません(写真: Pexels)

「知らないうちに工業地帯に上がっていました」

準工業地域の家を買った人の言葉を、投稿年つきで並べます。

2004年12月、Yahoo!不動産の知恵袋に、準工業地域の分譲地を勧められている人が相談を出しました。「30世帯ぐらいの分譲地になっていて、周りもマンションや住宅が多く工場はほとんどありません」。それに付いたベストアンサーの書き出しがこれです。

> 私の家は買った当初は準工業地帯でした。今、家の建て替えをしているのですが、知らないうちに工業地帯に上がっていました・・・!

用途地域は、買った後に変わります。市区町村が都市計画を見直せば、準工業地域が工業地域になることも、その逆もあります。この人は建て替えの手続きで初めてそれを知りました。

同じ回答は、こう締めています。

> 慣れてしまえば気にならないです。そんなに普通の土地と変わらない気がしますよ・・・(鈍感なだけ?)

空気が悪い気がする、トラックで道路が揺れる、日中は工場の音がうるさいかも、と並べたあとで「慣れてしまえば気にならない」。1人の中に両方あります。

2009年1月、Yahoo!知恵袋の「新築の分譲地で気に入った場所が、準工業地域です。何か覚悟や注意しておくことありますか」という質問には、2つの向きの回答が付きました。

ベストアンサーは、「今は良くても将来はわかりませんよ。やはり住宅を建てるなら、第一種低層住居専用地域を選ぶのがいいと思いますよ」。

別の回答者はこう書いています。

> 私も30年近く、準工業地域に住んでいました。(中略)それでも自治会を活用すれば対処の仕方はあるので、準工業地域だからといってほとんど気にはなりませんでしたね。

30年住んで気にならなかった人と、第1種低層住居専用地域を勧める人。どちらも本当で、分かれ目は「今そこに何があるか」ではなく「これから隣に何が建ちうるか」をどう見るかです。

シャッター付きの作業場と住宅が隣り合う日本の住宅街の道路
工場の人は「自分ならこんなところ買わない」、売る側は「問題ないレベル」。立場で答えが割れます(写真: Pexels)

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目の前がプレス工場、売る側は「問題ないレベル」

2008年11月、マンション掲示板の e-mansion(イーマンション)に、23区内の新築マンションを検討している人のスレッドが立ちました。

> あるマンションを検討中です。23区内で新築で3000万円の3f、徒歩16分です。価格は安いのですが、目の前がプレス工場です。鉄粉や騒音が心配ですが、どうでしょうか?工場の方は、自分ならこんなところ買わないよと言いますし、デベは騒音も鉄粉も問題ないレベルとの事でした。

工場の人は「自分ならこんなところ買わない」と言い、売る側は「問題ないレベル」と言う。同じ物件について、立場で答えが割れています。この投稿は「価格は安いのですが」から始まっていますが、ここまで見てきたとおり、準工業地域のマンションが同じ市区町村の住居系より10%以上安いのは、4つに1つの市区町村です。安さは用途地域ではなく、目の前のプレス工場に付いた個別の値引きだと私は読んでいます。

逆の立場の声もあります。2021年12月のYahoo!知恵袋です。

> 工場の近くに住民が立って、住み始めたのですが、工場作業音が最近土日問わずします。喜ばしいことだと思っていたのですが近所の住民は迷惑と思っているらしく皆で申し立てしようと言い始めました。

住民が増えたことを喜んでいた側からの相談です。ベストアンサーは「準工業地域でしょうか?」と切り出し、騒音や異臭や深夜の出入りが頻繁なら工業地域への移転が妥当だと個人の意見として書いています。

ここで都市計画法9条11項に戻ります。準工業地域は「工業の利便を増進するため定める地域」で、住居を守る文言がありません。後から住宅が建ち、住民が工場に申し立てをするとき、その住民が立っている地面は法律上、工場のために定められた土地です。工場側が動いてくれるかどうかは、法律ではなく話し合いの問題になります。

騒音そのものには騒音規制法の基準があり、区域ごとに自治体が指定します。基準の数値はこの記事では扱いません。数値を確かめるなら、市区町村の環境課で「その住所の区域区分」を聞いてください。

同じ値段で買っているものが、違う

冒頭の数字に戻ります。準工業地域のマンションは住居系の100.1、戸建ては100.6。ここまでが事実です。

ここからは私の意見です。値段が同じということは、「準工業地域だから安く買えた」という得は無い、ということです。同じ値段を払って、住居地域の人は「隣に作業場50m²超の工場は建たない」を買い、準工業地域の人は「隣に150m²の工場が建ちうる」を買っています。

商業地域は22.8%高く、近隣商業は8.3%高い。用途地域は値段に出ます。準工業地域だけが0.1%で、住居系と見分けがつかない。差が値段に出ていないのは、買う側が用途地域を見ていないからだと私は考えています。

根拠は3つです。2004年の相談者は「周りもマンションや住宅が多く工場はほとんどありません」と、今の景色で判断していました。中古マンションの11.8%が準工業地域に建っていて、その買主の多くが同じ判断をしたはずだと私は見ています。そして条件をそろえて0.1%という数字は、市場が「隣に工場が建ちうる」ことに値段を付けていないことを示しています。

安く買えていないなら、準工業地域を選ぶ理由は値段ではありません。容積率200%で大きな家が建てられること、駅に近い工場跡地にマンションが多いこと。そちらを見て選ぶなら、準工業地域は損な選択ではないと私は思います。「安いから」で選ぶと、安くない値段で、隣に何が建つか分からない土地を買うことになります。

準工業地域の家を買う前に確かめる4つ

順番があります。値段は最後で足ります。

  1. 敷地だけでなく、隣接地の用途地域を見る。市区町村の都市計画課か、市のウェブの都市計画図で確認できます。自分の敷地が準工業地域なら、隣も準工業地域である可能性が高く、そこに建ちうるものは別表第二の(る)で決まります
  2. 隣の空き地・駐車場・古い工場に何が建てられるかを、建蔽率と容積率まで見る。準工業地域の88.2%は60%・200%です。隣が3階建ての工場や倉庫になっても、用途地域の制限では止められません
  3. 平日の昼に現地へ行く。2008年の投稿者は「目の前がプレス工場」を自分で見ています。稼働時間、搬入のトラック、音。売る側の「問題ないレベル」は、その人が平日昼に立った感想ではありません
  4. その市区町村の実際の取引価格を見る。上の集計のとおり、準工業地域のほうが高い市区町村が半分あります。「準工業地域だから安くしました」と言われたら、その市で本当にそうなっているかを聞き返せます

用途地域の変更は、市区町村の都市計画の見直しで決まります。変更案は公告と縦覧の手続きを通るので、市の広報や都市計画課のお知らせを見ていれば、「知らないうちに」にはなりません。2004年の回答者が建て替えの手続きで初めて知ったのは、その案内を見ていなかったからだと私は読んでいます。

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この記事は2026年9月時点の法令と、2026年1〜3月期までに公表された取引データで書いています。個別の土地に何が建てられるかは、政令で除外されるものや地区計画で決まる部分があるので、契約の前に市区町村の建築指導課か都市計画課で確かめてください。

「準工業地域の土地は安い」と言われて見に行く前に、この記事の数字を1つだけ持っていってください。土地は95.2、家は100.6、マンションは100.1。安いのは更地の値段までで、住む値段は同じです。同じ値段で何を買うのかは、隣の敷地に立って考えるものだと思います。

よくある質問

準工業地域の住宅は後悔しますか

値段の面で後悔する材料は、この集計には出ませんでした。中古戸建ては住居系の100.6、中古マンションは100.1で、買うときも売るときも住居系と同じ水準です。後悔の声が出ているのは値段ではなく、目の前の工場の音や鉄粉、買った後に用途地域が変わることなど、住み心地のほうです。2004年・2008年・2009年の投稿は本文に引用しました。

準工業地域の土地は安いですか

同じ市区町村・面積100〜200m²でそろえた53市区町村で、住居系の95.2でした。第1種低層住居専用地域と直接くらべると94.0です。ただし準工業地域は建蔽率60%・容積率200%の組み合わせが88.2%を占め、第1種低層の容積率80〜100%より建てられる床が広い。土地の単価は安くても、建った戸建ての値段は106.0で逆転します。

準工業地域のマンションは資産価値が下がりますか

専有50〜80m²・築2000年以降でそろえた83市区町村で、住居系の100.1でした。築0〜10年から築31〜45年までの4つの帯で見ても99〜100で、古くなっても差は開いていません。ただし市区町村ごとには割れていて、草加市や神戸市東灘区では25%以上安く、相模原市南区や和泉市では35%以上高く売れています。

準工業地域に学校や病院は建てられますか

建てられます。建築基準法 別表第二(る)準工業地域の欄で禁止されているのは、列挙された危険な工場、危険物の貯蔵・処理、個室付浴場の3つだけです。学校と病院が禁止されているのは(を)工業地域の欄で、「五 学校(幼保連携型認定こども園を除く。)」「六 病院」と書かれています。

住居地域なら工場は建ちませんか

建ちます。第1種・第2種住居地域で禁止されているのは「原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計が五十平方メートルを超えるもの」で、50m²以下の作業場なら建てられます。準工業地域との違いは、この50m²の線があるかないかです。

出典と集計条件

  • 価格の集計は、国土交通省 不動産情報ライブラリの不動産取引価格情報(API XIT001)を使いました。2023年1〜3月期から2026年1〜3月期までの779,190件のうち、用途地域の記載がある774,746件を対象にしています。2026年1〜3月期は公表の途中です
  • 中古マンションは「中古マンション等」167,037件。用途地域別の比は専有面積50〜80m²・築2000年以降にしぼり、市区町村ごとに準工業地域と住居系それぞれのm²単価(取引価格÷専有面積)の中央値を出して比を取り、両方に15件以上ある市区町村だけで比の中央値を見ています(同じ町名内の比較だけは両方に8件以上)。築年帯別は同じ条件で築0〜10年・11〜20年・21〜30年・31〜45年に分けたものです。差額の中央値は市区町村ごとの中央値の差を60m²に換算しました
  • 中古戸建ては「宅地(土地と建物)」347,076件のうち地域が住宅地のもの。比は敷地100〜200m²・築2000年以降の総額の中央値で、対象は62市区町村です
  • 土地は「宅地(土地)」260,633件のうち地域が住宅地のもの。比は面積100〜200m²のm²単価の中央値で、対象は53市区町村です
  • 「住居系」は第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域・第1種中高層住居専用地域・第2種中高層住居専用地域・第1種住居地域・第2種住居地域・準住居地域の7つです。商業地域・近隣商業地域・工業地域も同じ条件で住居系と比べました
  • 同じ市区町村どうしの比較でも、町ごとの地価差や駅からの距離の違いは残ります。この記事の数字は用途地域だけの影響ではありません
  • 建蔽率・容積率の割合は、同じデータの建蔽率・容積率の欄を用途地域別に数えたものです
  • 建築基準法 別表第二(い)(ほ)(へ)(と)(る)(を)、都市計画法9条5項・11項(e-Gov法令検索、2026年9月5日取得)
  • Yahoo!不動産 知恵袋「準工業地帯に土地を買って家を建てる時の注意点を教えて下さい」(2004年12月14日)Yahoo!知恵袋「準工業地域について」(2009年1月22日)e-mansion「目の前がプレス工場」(2008年11月22日)Yahoo!知恵袋「工場騒音の苦情について相談です」(2021年12月4日)。引用は投稿された文章のままです

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